意味や違いを解説 わかりやすい諭旨解雇・諭旨退職

更新

ネットやテレビのニュースで耳にする「諭旨解雇」や「諭旨退職」。その意味や懲戒解雇との違い、転職への影響についてわかりやすく解説します。

諭旨解雇・諭旨退職とは?意味や違い

諭旨解雇、諭旨退職はそれぞれ、違反行為をした社員に対する懲戒処分の一種です。意味や違いを見ていきましょう。

【懲戒処分の種類の図表】(処分の程度が軽いものから):戒告・譴責(譴責)/従業員への注意・指導。譴責では始末書の提出を伴う|減給/一定の範囲内で給与が減給される。|出勤停止/身分はそのっま、期間の上限がなくその間の給与が発生しない。|降格/役職の降格があり、事実上の減給。|諭旨退職(ゆしたいしょく)/企業が退職(解雇)を勧告し、従業員が従えば自主退職、従わない場合懲戒解雇とする。|諭旨解雇/企業が解雇を予告、もしくは解雇予告手当を支払い、更に退職金を支払った上で従業員を解雇する。|懲戒解雇/制裁としての解雇。解雇予告手当が不要で、離職票に懲戒解雇による退職であることが記載される。

【諭旨解雇】懲戒解雇よりも一段階軽い懲戒処分

「諭旨解雇」とは、違反行為をした社員への懲戒処分のひとつで、懲戒解雇よりも少しだけ処分を軽くした解雇のことを言います。

※懲戒解雇について詳しくは→懲戒解雇とはどういう意味?事例や転職・退職金への影響も

諭旨解雇は会社側の温情措置としての意味合いが強く、たとえば社員が経歴詐称や収賄、セクハラといった、本来であれば懲戒解雇にあたる違反行為をした場合でも、本人が深く反省しており「情状酌量(※)の余地がある」と判断された場合には、「懲戒解雇ではなく諭旨解雇」というかたちがとられることがあるようです。

※情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)とは…主に裁判において使われる用語で、罪人が法を犯した背景・事情(=情状)の同情すべき点を汲み、刑罰を軽くする(=酌量)すること。

一方的な制裁としての懲戒解雇に比べ、諭旨解雇は会社と社員が合意した上での解雇だと解釈できます。

【諭旨退職】諭旨解雇よりもさらに軽い懲戒処分

「諭旨退職」とは、会社が社員に退職願を提出するよう促し、あくまで社員自らが退職を申し出たものとして扱う、諭旨解雇よりもさらに軽い懲戒処分のことを言います。解雇ではなく自主的な退職、という位置づけになるため、諭旨解雇と同様、会社の温情措置と言えるでしょう。

ただし、諭旨退職というかたちがとられるのは会社側の都合であるケースも。「解雇」という処分はそれ自体が会社のマイナスイメージにつながったり、場合によっては解雇予告手当を支払う必要があったりと、会社側の負担も少なくないからです。

諭旨解雇も諭旨退職もルールは会社によって異なる

諭旨解雇も諭旨退職も法律で定められた制度ではないため、会社によって判断基準や対応はまちまちです。

いずれの場合でも、会社の就業規則に諭旨解雇や諭旨退職の要件やルールを明記していなければいけません。

コラム:退職勧奨との違いは?受け入れないと懲戒解雇?

諭旨退職は一見「会社が社員に退職願(届)を提出するよう促す」という点では、退職勧奨(会社が社員に自主退職するよう強要すること)と同じようにも見えます。しかし、両者の最も大きな違いは「会社都合退職か自己都合退職か」という点です。

そもそも退職勧奨は、退職の意思がないにもかかわらず退職を強要されることから、原則会社都合退職になります。

※退職勧奨について詳しくは→退職勧奨とは?受けたときの対処法を解説

一方、諭旨退職は諭旨解雇と同様、社員本人に非がある懲戒処分であるため、あくまで自己都合退職となります。

また、諭旨退職するよう会社から言い渡されたとき、決められた期限までに退職願(届)を出さず、退職時期をむやみに引き延ばすと、場合によっては懲戒解雇になってしまうこともあります。

懲戒解雇は懲戒処分としては最も重く、その後の転職活動にも悪影響が出かねないので、諭旨退職の処分を受けたときには、退職の手続きをスムーズに進めましょう。

諭旨解雇・諭旨退職で退職金や失業保険はどうなる?

諭旨解雇・諭旨退職の処分を受けると、退職金や解雇予告手当、失業保険はどのような扱いになるのでしょうか。

【諭旨退職・諭旨解雇・懲戒解雇の違いの一覧】(諭旨退職・諭旨解雇・懲戒解雇):「退職金」もらえるが一部カットされることも・もらえるが一部カットされることも・もらえない|「解雇予告手当」もらえない・もらえる・もらえない|「失業保険」いずれも自己都合退職※3カ月の給付制限あり

退職金…もらえるが一部カットされることも

諭旨解雇・諭旨退職になった場合、懲戒解雇と違って退職金がもらえることも多いようです。ただし、本来もらえる金額から一部カットされる会社もあります。

解雇予告手当…諭旨解雇ならもらえる

諭旨解雇になった場合、解雇を宣告(解雇予告)された日から退職日までが30日に満たない場合、その分の解雇予告手当がもらえます。例えば即日解雇の場合、30日分の解雇予告手当がもらえます。

一方、諭旨退職の場合、解雇ではないので解雇予告手当はもらえません

失業保険…自己都合退職扱い

諭旨解雇・諭旨退職ともに自己都合退職。失業保険を受け取るには3ヶ月の給付制限がつきます

整理解雇や普通解雇(※)は会社都合退職となるのに対し、諭旨解雇や諭旨退職、懲戒解雇は処分としての退職なので、あくまで自己都合退職となります。

※整理解雇・普通解雇とは

◆整理解雇
いわゆるリストラ。会社の経営悪化により、人件費削減のために行われる解雇。

◆普通解雇
例えば「業績・態度がかなりひどく、何度指導をしても改善されないとき」「病気で職場復帰が難しいとき」など、労働契約の継続が困難な事情があるときに行われる解雇。

諭旨解雇・諭旨退職は転職でバレる?再就職への影響は?

諭旨解雇や諭旨退職になった場合、転職活動をするときに履歴書・面接で申告する必要はあるのでしょうか?また、それによってバレてしまうことはあるのでしょうか?

履歴書・面接での申告は不要

たとえ諭旨解雇・諭旨退職になった場合でも、その事実について履歴書や面接で積極的に申告する必要はありません。履歴書の職歴欄には単に「一身上の都合により退職」と書けば問題ないでしょう。

諭旨解雇・諭旨退職は、会社が社員の再就職やその後の人生を考慮したうえで、懲戒解雇ほどの社会的制裁を与えないという温情措置です。懲戒解雇よりは再就職の道が開けているといえるでしょう。

刑事罰を受けた場合は履歴書の賞罰欄に記載する

刑事罰を受けて諭旨解雇・諭旨退職になった場合、その事実について履歴書の賞罰欄に記載しましょう。賞罰欄がある履歴書はそう多くはありませんが、もしも会社指定の履歴書などで賞罰欄があった場合、正直に記載をしないとのちのち告知義務違反に問われることもあります。

※刑事罰とは…刑法犯を犯して有罪判決を受けて科された罰のこと。窃盗・詐欺などによる懲役、禁固刑、罰金刑などがこれにあたります。

※履歴書の賞罰欄について詳しくは→履歴書の「賞罰」欄を書く方法 記入例から「罰」の基準まで

離職票・退職証明書を提出するとバレる

離職票・退職証明書には退職理由の記載欄があるため、転職先からいずれかの提出を求められた場合、諭旨解雇・諭旨退職で退職したことがバレてしまいます。その結果、面接でそのことについて説明しなくてはならないことも。

また、重大な違反行為をした場合、業界内での噂やニュースなどで諭旨解雇・諭旨退職になったという事実が明らかになってしまうこともあるでしょう。

諭旨解雇・諭旨退職にまつわるQ&A

諭旨解雇・諭旨退職にまつわるQ&Aを紹介します。

仕事に関係ない不祥事でも、懲戒処分になる?

私生活で痴漢行為や暴力事件、交通事故などの不祥事を起こした場合も、懲戒処分になるのでしょうか?

基本的に職場外で起きた業務に直接関係ない違法行為は、原則懲戒処分の対象となりません

私生活で起こしてしまった違法行為は、原則懲戒処分の対象にはなりません。ただし、その行為が企業秩序や業務の運営に多大な悪影響を与えると客観的に認められ、就業規則の明記がある場合には、懲戒処分の対象となります

不祥事を起こした社員が指導的な立場にある場合や、業務の内容上、規律を守ることが強く求められる場合などは懲戒解雇も考えられますが、そこまでの判断がためらわれる場合は諭旨解雇や諭旨退職といった温情措置をとることが多いようです。

以下に実際の判例をご紹介します。

<実例1>
通勤時に起こした不祥事による諭旨解雇が【無効】になった例/東京メトロ事件
(東京地裁/平成26年8月12日判決/労働経済判例速報1104号64頁)

▼内容
駅員が通勤中に乗車していた自社の電車内で14歳の女性に痴漢行為をはたらき、迷惑防止条例違反で逮捕起訴され、罰金20万円の略式命令を受けた。

会社は痴漢行為を行った従業員に対しての就業規則に基づき、従業員を諭旨解雇した。これに対し従業員は諭旨解雇が無効だとして裁判を起こした。

▼判決
諭旨解雇は無効。従業員には前科前歴や懲戒処分歴が一切なく、勤務態度にも問題がなかった。さらに、本件刑事事件はマスコミにより報道されることはなかった。これらの点から諭旨解雇より緩やかな処分の選択が可能だったと判断された。

※参考→私生活上の非行に対する懲戒処分の限界(東京メトロ(諭旨解雇・仮処分)事件))|弁護士法人 天満法律事務所

<実例2>
私生活での不祥事による懲戒解雇が【有効】になった例/小田急電鉄事件
(東京高裁/平成15年12月11日判決/労働経済判例速報867号5頁)

▼内容
従業員が休日に他社の電車内で女子高生に対する痴漢行為をはたらき、迷惑防止条例違反で逮捕され、懲役4カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。その後、従業員が過去にも2回ほど、同様の事件で逮捕されていたことが明らかになった。

そこで、会社は懲戒解雇処分とともに、退職金を不支給とした。これに対し、従業員は退職金の全額不支給は不当として、支払い請求の裁判を起こした。

▼判決
懲戒解雇は有効になったが、業務外の犯罪行為の場合、強い背信性がなければ退職金の全額不支給はできないとして、本来の支給額である3割の支払を命じた。

※参考→退職金の不利益的取扱い(小田急電鉄事件)|社会保険労務士事務所 早稲田労務経営

諭旨解雇・諭旨退職に納得できないときは拒否できる?

諭旨解雇に納得できないときは、不当解雇として異議申し立て(拒否)できるのでしょうか?

諭旨解雇は本人に非がある懲戒処分のひとつであるため、不当解雇として異議申し立てをしても、原則認められないことが多いでしょう。

諭旨解雇はそもそも懲戒処分であり、違法行為をしたなど明らかに社員に非がある場合がほとんどなので、拒否しても認められないことが多いでしょう。

それでも、諭旨解雇の処分は重すぎるといった不服を唱える場合は、裁判で会社と争うことになります。時間と費用、精神的な負担を抱えなくてはいけないことを覚悟しなくてはいけません。

まとめ

諭旨解雇・諭旨退職はともに懲戒処分ですが、懲戒解雇にはあたらないとする会社の温情措置としてとられることが多いようです。それゆえに、退職金や解雇予告手当ももらえる傾向が強いでしょう。

また、諭旨解雇・諭旨退職は履歴書・面接での申告は不要で、再就職への影響も懲戒解雇に比べて少ないと言えますが、離職票や退職証明書の提出によってバレることもあります。

監修者:山本 征太郎(社会保険労務士)

1985年静岡県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務したのちに独立し、山本社会保険労務士事務所東京オフィスを設立。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。主に労務顧問、人事労務相談、就業規則作成、行政対応、電子申請、給与計算代行などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

  • HOME
  • わかりやすい諭旨解雇・諭旨退職|意味や違いを解説