もらえる期間・申請方法は? 産休・育休中は給料の約7割が支給!
産休・育休を取得する予定の人の中には、その期間中に給料が支払われるのか不安に思う人も多いのでは?
給料が支払われるのか、支払われないなら手当でどれだけ補填されるのかは、子育て中の家計に関わる大切な問題ですよね。
ここでは「産休・育休期間に給料が支払われるのか」「給料以外にお金をもらう方法はあるのか」「毎月いくらくらいもらえるのか」について説明していきます。
産休中・育休中に給料は原則支払われない
産休中・育休中は基本的に給料が支払われません。なかには産休中・育休中に給料の何割かを支払う企業や全額支払う企業もありますが、数としてはほんの一握りです。
産休とは、出産予定日の6週間前から出産後8週間まで休業すること。
育休とは、産後休業の翌日(産後57日目)から子どもが1歳になるまで休業することで、最長子どもが2歳になるまで伸ばすことが可能です。産休・育休ともに法律で定められた労働者の権利ではあるものの、その期間内の給料の支払いについて規定はありません。
給料=労働の対価ですので、働いていない期間に給料を支払う企業はまれだといえます。
雇用保険・健康保険から給料の5~7割が支給される
産休・育休期間中に企業から給料は支払われませんが、給料の5~7割に相当する手当金や給付金を、健康保険や雇用保険から受け取ることができます。
ここからは、産休・育休それぞれの期間でもらえる手当について解説します。
産休中に取得できる「出産手当金」
手当の目的
産休中に給料が支払われない女性に対し、出産や生活にかかる費用を援助するため。
いくらもらえる?
出産手当金=支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×2/3×産休で休んだ日数
※標準報酬月額とは、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した額。くわしくは「標準報酬月額・標準賞与額とは?|全国健康保険協会」を確認してください。
例えば、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額」が30万円で、産休で休んだ日数が98日であった場合、65万3,333円(=30万円÷30×2/3×98日)を出産手当金として受け取ることができます。
どんな人がもらえる?
勤務先の健康保険に加入している人
ただし、下記に該当する人は残念ながら手当をもらうことができません。
- 加入している健康保険が国民健康保険の場合
※国民健康保険組合によっては、支給されるところもある
- 産休中でも、一日あたりの出産手当金より多い給与(日額)が支払われている場合
※健康保険に1年以上継続して加入している人が産休中に退職すれば、出産手当金の支給対象になります。
いつもらえる?
申請してから1~2ヶ月後に振り込まれます。
申請から受け取りまでの流れ
1産休前に出産手当金の申請用紙を入手する
申請用紙は勤務先や協会けんぽで入手することができます。ネット上からダウンロードすることもできます。
※参照:出産手当金「支給申請書」
2入院時、担当医に申請用紙を提出し、必要事項を記入してもらう
3産後56日経過してから、出産手当金の申請用紙を提出する
担当医・勤務先の記入が終わり次第、出産手当金の申請用紙を職場の健康保険窓口、または加入している協会けんぽや健康保険組合に提出します。56日以前でも申請できますが、その場合は経過後に再度申請が必要です。
4出産手当金を受け取る
申請から1~2ヶ月後に、申請用紙に記入した振込先に出産手当金が振り込まれます。
育休中に取得できる「育児休業給付金」
手当の目的
出産後も仕事を続ける予定の母親や父親に対し、育児や生活にかかる費用を援助することで、雇用を円滑に継続するため。
いくらもらえる?
産後休業の翌日(産後57日目)から子どもの1歳の誕生日前日まで、一定の要件を満たす場合は2歳まで、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。父親が取得する場合は、出産日の当日から支給されます。
ここでいう一定の要件は、
- 保育園に入所申し込みをしたが、入所できない場合
- 子育てを担当する予定の配偶者が病気等、やむをえない事情で養育が困難になった場合
- 子育てを担当する予定の配偶者が死亡した場合
などを指します。
※一定の要件についてくわしくは→Q&A~育児休業給付~|厚生労働省
例えば、0歳10ヶ月で保育園に入れた場合は1歳までしか育児休業給付金は支給されませんが、1歳になっても保育園に入所できなかった場合は最長1歳6ヶ月まで支給されます。また、母親・父親ともに育休を取得する場合、育児休業給付金の対象期間は、子どもが1歳2ヶ月まで延長できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。
育児休業給付金でもらえる金額は、育休前の給料や育休で休んだ月数により変動しますので、具体的にいくら育児休業給付金がもらえるのか知りたい人は、下記の方法で計算してみてください。
~育児休業給付金 計算方法~
●育休開始から180日目まで
育児休業給付金=
育休取得前6ヶ月の賃金を180で割った額×67%×支給日数
※1ヶ月あたりの育児休業給付金の上限額は30万5,721円(2021年3月現在)
●育休開始から181日目以降
育児休業給付金=
育休取得前6ヶ月の賃金を180で割った額×50%×支給日数
※1ヶ月あたりの育児休業給付金の上限額は22万8,150円(2021年3月現在)
どんな人がもらえる?
育休を取得する本人で、育休に入る前の2年間のうち11日以上働いた月が12ヶ月以上ある人、かつ雇用保険に加入している人。
ただし、下記に該当する人は育児休業給付金を受け取ることができません。
- 育休中でも会社から給料が8割以上出ている場合
- 雇用保険の加入期間が1年未満の場合
- 育休対象期間中、ひと月の勤務日数が10日を超える場合
※10日を超える場合でも、就業時間が80時間以下であれば受け取ることができる
いつもらえる?
育児休業給付金がはじめにもらえるのは、育休に入ってから3ヶ月後。その後は2ヶ月ごとに申請し、給付されるのが一般的なスケジュールです。振込先に入金されるのは2ヶ月ごとが基本です。
申請から受け取りまでの流れ
1育休前に勤務先に育休予定を伝える
「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業基本給付金支給申請書」を勤務先から受け取ります。
2必要事項を記入して勤務先に提出
必要事項を記入したら、なるべく早く勤務先に提出しましょう。事業主を経由して受給資格確認手続きと初回支給申請を同時に行う場合、「休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで」まで申請が可能です。
3育児休業給付金を受け取る
はじめにもらえるのは、育休に入ってから3ヵ月後。その後は2ヵ月ごとに申請すれば、申請用紙に記入した振込先に雇用保険から育児休業給付金が振り込まれます。
育休中に取得できる「児童手当(子ども手当)」
手当の目的
子どもがいる家庭に対し、育児や生活にかかる費用を援助するため。
いくらもらえる?
子ども1人につき、3歳までの間は1ヶ月1万5,000円が支給されます。
※年収が所得制限限度額を超えている場合の支給額は、1ヶ月につき5,000円となります。くわしくは「所得制限限度額|内閣府」を確認してください。
どんな人がもらえる?
子どもが生まれ、現住所の市区町村の役所に申請した人
いつもらえる?
申請した翌月から支給されますが、毎月ではなく2月・6月・10月にまとめて支給されます。
例えば、11月に申請した場合、翌年の2月に3万円(12月~1月分)、6月に4万5,000円(2月~5月分)、10月に4万5,000円(6月~9月分)が支給されます。
申請から受け取りまでの流れ
1現住所の区役所や市役所などの自治体に申請する
申請には、以下のものが必要です。
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- 児童手当認定請求書
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- 申請者の健康保険証の写し
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- 申請者名義の振込先口座のわかるもの
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- 申請者の印鑑
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- 申請者とその配偶者の個人番号(マイナンバー)がわかるもの
- 本人確認書類
2児童手当を受け取る
指定した振込先に申請した翌月から、2月・6月・10月に児童手当が振り込まれます。
出産にかかる分娩・入院費用も手当で補填される
産休・育休中は給料の5~7割の手当金や給付金をもらうことができます。それだけでなく、出産にかかる分娩・入院費用に対しても、出産育児一時金という手当が支給されます。
産後であっても出産の翌日から2年以内であれば申請が可能なので、産前に申請し忘れてしまった人も期間内であればまだ間に合います。
手当の目的
出産に直接要する費用や、出産前後の検診費用などの出産にかかる費用の経済的負担を減らすために支給される。
いくらもらえる?
子ども1人につき42万円。双子の場合は、84万円、三つ子の場合は126万円もらうことができます。
加入している健康保険組合や勤務先よっては、独自の付加給付や特別手当などの制度がある場合もあります。
どんな人がもらえる?
健康保険または国民健康保険に加入している人(被保険者の配偶者や扶養家族を含む)、かつ妊娠4ヵ月(85日)以後の出産をした人
※妊娠85日以後で、死産もしくは流産となった場合でも出産育児一時金は支給されます。
いつもらえる?
申請から1~2ヵ月後に振り込まれます。
申請から受け取りまでの流れ
出産育児一時金は、加入している協会けんぽや国民健康保険組合を通すのではなく、産院などの医療機関を通して申請する「直接支払制度」が一般的です。
●直接支払制度(医療機関に直接支払われる)の場合
※小さな規模の産院の場合、直接支払制度が利用できないこともあります。
1医療機関に申請する
医療機関側に「直接支払制度」を利用したい旨を伝えましょう。「直接支払制度合意書」をもらい、記入をして医療機関に提出します。
2健康保険証を医療機関に提示する
入院時に支給対象となる健康保険証を医療機関に提示します。
もし、退職した勤務先の健康保険から給付を受けたい場合、今持っている健康保険証と退職した勤務先の健康保険の資格喪失を証明する書類も合わせて医療機関に提出しましょう。
3出産にかかった分娩費用・入院費用によって支払われる
出産にかかった費用が出産育児一時金を超えた場合
退院の際に超過分を医療機関に支払います。
出産にかかった費用が出産育児一時金を超えなかった場合
受取代理制度と同様に、明細書と必要書類を協会けんぽなどのに提出する必要があります。
約1ヶ月~2ヶ月半後に指定口座に差額分が振り込まれます。
●受取代理制度(医療機関が代理人として受け取る)の場合
※受取代理制度の申請ができるのは、出産予定日まで2ヶ月以内の人のみ
※利用できるのは、厚生労働省へ届け出を行った一部の医療機関のみ。
1申請書と領収書を提出する
自分で記入後、医療機関に記入をしてもらい、提出しましょう。提出先は、出産時に加入していた健康保険によって異なります。
- 本人が被保険者の場合(会社勤務など):勤務先の健康保険の窓口に提出。
- 配偶者の被扶養者の場合:配偶者の勤務先の担当部署に提出。
- 本人が国民健康保険に加入している場合(無職・自営業など):居住地の市区町村の国民健康保険窓口に申請。
22週間~2ヶ月後に振り込まれる
出産育児一時金を申請してから2週間~2ヶ月後、指定口座に子ども1人につき42万円が振り込まれます。
まとめ
産休中・育休中は残念ながら基本的に給料が支払われません。ただし、出産手当金・育児休業給付金・児童手当で1ヶ月に給料の5~7割のお金をもらうことができます。出産にかかる費用も出産育児一時金で補填されます。
ただし、毎月手当金が振り込まれるわけではないため、振り込まれるタイミングを把握したうえで家計のやりくりをしましょう。くれぐれも手当の申請を忘れぬよう、はやめに手当内容・申請期限を確認しておくことが大切です。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所