<学部学科別>理系の職業 工学部出身者の職業図鑑
工学部で学んだことを活かせる職業ってなんだろう…と悩んでいませんか?
機械工学や電気・電子工学、情報工学など…理系の中でも特にエンジニアリングを学ぶ工学部。
そんな工学部系の学科を卒業した人がどのような職業に就いているか、なれる職業をご紹介します。
工学部出身者の進路内訳
まずは業種別に見てみましょう。文部科学省によると、工学部出身者の進路内訳は次の通りです。
- 大学院修士課程への進学…36% →その後エンジニアに。
- 製造業(自動車や機械、電化製品など)…14%
- 建設業(建築士や技術者)…10%
- 情報通信業…8%
- 卸売・小売…4%
- サービス業…4%
- 公務員…3%
- 学術研究・専門・技術サービス…3%
- 運輸業・郵便業…1%
- その他…8%
- 未定など…9%
工学部は、理系の学部の中でも特に就職に強い学部と言われています。就職した人の約8割が専門職として、大学で学んだことを生かして働いています。
主に、開発・設計職に代表されるモノづくりエンジニアやITエンジニアなど…専門知識と製図能力、論理的思考力を活かして活躍する人が多いです。
大学院進学率は理学部よりも低めですが、修士課程修了後の就職率が他の学部より高いのも特徴的です。
学生時代に得た知識・スキルを活かして技術者になる、というのが最もポピュラーな道なわけですが、その一方、技術者は仕事が忙しいことでも知られます。
基本的に納期前に業務が立て込みがちなのはどの業種・職種も共通。
但し、平均的な残業時間は、機械・電気系のハードウェアよりも、IT系のエンジニアの方が長めの傾向が見られます。
次の章からは、こうした仕事の忙しさも交えながら、各職業について解説していきます。
機械工学系学科の職業
ロボット、飛行機、ロケット、自動車、船舶、鉄道、精密機器、電化製品、医療機器など…世の中の機械は、メカニクス(機構)と駆動部そしてエレクトロニクス(電子制御)で成り立っています。
機械工学科出身者は、このうちのメカニクス部分や駆動部の知識(熱力学・機械力学・流体力学・材料力学など)を活かし、メカの開発・設計に関連する職種、いわゆる機械系のエンジニア職に就くのが一般的です。
機械設計・開発…機械系エンジニアの花形
構造や材料・形状などの要件定義を行い、CADなどを使って機械のメカニクス領域や筐体の設計・開発を担うのが、機械設計・開発職です。
学科で培った専門知識や製図経験が存分に活かせる職種であり、機械工学系出身者にとって、最もオーソドックスな進路の1つと言えるでしょう。
華々しい印象とは裏腹に、短納期・高品質を顧客から求められることもあって、業界全体として残業時間は多め。
その中でも、大手企業など上流にいる企業の方が、発注者側から依頼を受けて設計・開発を行う下流の企業よりも、残業時間が少なくなる傾向にあります。
平均年収は20代で395万円、30代で504万円、40代で601万円、50代で787万円。
機械設計・開発の平均年収
機械設計の活躍する分野
機械設計が活躍する業種・業界は実に幅広く、製造業の多くに広がっています。国際的産業分類に基づくと、次のような区分になります。
- 一般機械系
農業機械や建設機械、工作機械、繊維機械、ボイラーなど - 輸送用機械
自動車・バイク、鉄道、航空機、船舶など - 電気機械
各種電気機械に加え、発電機、通信機器など - 精密機械
カメラ/レンズなどの光学器械や時計、医療機器、測定機などこのように様々な場面に活躍のフィールドが広がっているのが特徴です。
家電のような一見すると電子設計の領域に該当しそうな分野であっても、例えばDVDプレイヤーのモーター部分など、機械設計の出番は多いもの。
生活のありとあらゆる場面に機械が組み込まれている現代、たとえばロボット産業、宇宙開発、玩具・ゲームなど…上記に含まれない領域でも、工学部機械工学科の卒業生たちは活躍しています。
機械設計は業界を超えたキャリアチェンジも可能
いちど特定の業界で設計者になってしまったら、二度と他の業界の製品は作れないの? と思いがちですが、扱ってきた材料や素材(強度や耐熱性)やベースとなる技術に類似性がある場合は、異業種への転職も可能です。
例えば、家電メーカーから自動車部品メーカーへ、カメラメーカーから医療機器メーカーへ…などは、機械設計のキャリアチェンジとして比較的多いパターンです。
転職はできるものの、業界によって求められる品質・安全性のレベルは異なります。
特に上で例に挙げた自動車や医療機器のような命に関わる製品の場合は特に高い水準を求められることになりますから、入社後のギャップに対応できるかまで考えた上で判断することが良いでしょう。
金型設計…世界に誇る日本のモノづくりの根幹
工業製品を均一かつ大量に生産するための金型を設計する職業。製造業において重要資産と位置づけられています。
主にCADなどを使って設計を行いますが、自動車のボディに代表されるようなプレス型をはじめ、ダイカスト金型、射出成形金型など…金型の種類によって設計のノウハウは異なります。
ドイツでは「金型は生産工学の王」と呼ばれるように、金型は製造業の根幹をなす存在。
各国の工業水準は金型技術によって決まると言われる中、日本の金型技術は、その精密さにおいて世界最高峰とうたわれています。
国内の金型メーカーは熟達した独自ノウハウで日本のモノづくりを支えてきました。
ですが、近年ではマイクロ放電や3Dプリンターなどの新技術を金型作成に活用する企業が出現するなど、変革期にさしかかっています。
今後はこうした金型設計の働き方の変化を楽しむことも醍醐味の1つと言えるでしょう。
平均年収は、機械設計・開発を参照。金型設計は、各種機械メーカー・機械部品メーカーおよび金型メーカーに在籍しています。
金型メーカーの場合、大手企業から仕事を受注するため、一般的に無理な納期や業務量の集中が起きやすい傾向にあると言われています。
品質管理…製品の品質を守る番人としてニーズ増
品質管理は、製品の品質チェック役を務めます。いわば、不良品を出さないための番人といったところ。
国の安全基準や国際規格に照らしあわせて安全性や耐久性のチェックを行うだけでなく、工場から汚染物質が出ないか…など、生産ラインにも目を光らせます。
近年では自動車のリコール増など、消費者の品質に対する目が厳しくなっています。品質管理は今後も需要が絶えない職種となりそうです。
生産技術・生産設備設計
生産技術は、工場の生産ラインの企画・設計・導入・メンテナンスを手がける職業。
その仕事の一環として、計測器や加工機、組み付け機、洗浄機など…工場内の設備を設計する、設備設計の仕事があります。
新たに生産ラインを構築する際はもちろん、生産性向上を狙った既存設備の改善など、活躍の場は多種多様。使いやすいだけでなく、コストやメンテナンスのしやすさなど様々な条件を加味し、ベストな設備を構築します。
生産ラインの入れ替えや改善は休日しか行えないため、平日に振替休日を取得し、工場が休みとなる日に出社して業務にあたることもしばしば。
残業時間は月に40~70時間程度と設計職と並んで多いと言われていますが、中にはほとんど残業のない企業や、週に2回定時退社日を設けている企業も。プライベートを大事にしたい人は、あらかじめ応募する企業の忙しさを確認してみると良いでしょう。
平均年収は20代で394万円、30代が516万円、40代625万円、50代751万円。
航空整備士
車の整備士というと高卒・専門卒が多い印象ですが、航空会社で旅客機を整備する航空整備士は、機械の仕組みや原理、強度に対する理解度が求められるため、工学部出身者が多く活躍しています。
中でも機械工学科で学んだ知識が生きる職業と言えるでしょう。格納庫内で抜本的な点検・整備を行うドッグ整備と、空港内のラインと呼ばれる駐機所で飛行機が飛び立つ前の最終チェックを行うライン整備とに分かれて業務を進めます。
航空整備士になるためには、航空整備士の資格(二等航空運行整備士や二等航空整備士)が必要です。
また、ボーイング747などの大型機やボーイング767などの中型機の整備を行うためには、航空整備士として4年以上の実務経験を積み、一等航空整備士の資格を取得する必要があります。
機械工学科からは鉄道整備士という道も…
運行している鉄道の車両は、90日以内ごとに行う月検査と、3日以内ごとに行う車両検査の2つの検査で定期的に安全が確認されます。
月検査では整備士が5人1組となって、モーターや制御機器、上回り(屋根・パンタグラフ部分)、下回り(モーター等駆動部分)、ドアや車内など、車両の各箇所の点検・整備を実施。列車検査では2人1組となって消耗品や摩耗部品および車体外観のチェックを行います。
鉄道整備士は自動車や航空機と異なり、必要な国家資格はありません。機械系のバックボーンを活かして鉄道会社に就職し、現場で技術を学んでいくことになります。
機械工学科から目指せる公務員
機械工学科から目指せる公務員としては、国や都道府県の研究所で機械研究を行う機械系研究職や、都営地下鉄やバスなど公営交通の路線・車両メンテナンス職、公園・道路・河川などの機械設備の建設・保全などが挙げられます。
また、採用人数はかなり限られますが、警察署や科学警察研究所(科警研)に勤める機械工学職という職業があります。
具体的な仕事内容は、物理学や機械工学を応用した交通事故や作業事故の分析および原因究明、交通警察に関する機械工学の研究などがあります。
電気電子工学系学科の職業
半導体やエレクトロニクス・物性デバイスなど…ハードウェア関連を扱う電子工学、あるいは電気エネルギーや発電・電気設備について研究する電気工学を包括する電気電子工学科。
機械工学科同様、就職にはめっぽう強く、たとえば東海大学の電気電子工学科の場合、就職内定率は97.0%、大企業への就職内定率は51.5%、上場企業への就職内定率は34.6%(2013年度実績)とされています。
その一方、高度専門技術者や研究者を目指し、大学院に進学する人も多いのが特徴です。
電気電子工学科を卒業した人に最も多い職業は、学科で学んだことや取得した資格を活かして働く技術者です。
電子回路技術者(回路設計)…デジタルでいくか、今こそアナログを極めるか
パソコンや家電をはじめ、自動車やロボット、精密機械など…あらゆる電子機器に使われている電子回路(=半導体などのICチップ)やICチップそのものを設計・開発する職業。
電子回路技術者は、回路設計、半導体技術者、LSI設計技術者などとも呼ばれます。
そのキャリアは、アナログ回路設計者とデジタル回路設計者の2つに別れます。デジタル回路設計が0と1の2つの信号レベルを扱うのに対し、アナログ回路では波形のように連続的に変化する信号を扱います。
アナログ回路設計はデジタルよりも設計が難しく、10~20年でようやく一人前といわれています。その分、極めれば市場価値は高いと言われています。
身の回りに電子機器があふれる現在、電気回路技術者のニーズはデジタル・アナログともに高く、各種メーカーで採用が行われています。
残業は、機械設計同様決して少なくはありません。納期が迫ると残業も増えがちですが、傾向として、大手企業は手が回らなくなった際に外注するなど調整がつきやすいため、中小企業よりは残業時間が短くなると言われています。
平均年収は20代で458万円、30代で544万円、40代で685万円、50代で765万円。
電子回路技術者(回路設計)の平均年収
電気設備設計…ビルや商業施設や工場などの建物に命を吹き込む仕事
ビルやショッピングモールといった大型施設、工場、設備など…建物内の電気設備の設計を行う職業です。
発電設備や、配電盤と分電盤・制御盤を結ぶ幹線設備、空調機などの動力設備、監視カメラ、照明さらにはそれらを統括する中央監視塔設備など…多岐にわたる電気設備を、発注者の目的やコスト、法規に合わせながら理想的なかたちにしていきます。
建築設計が建物の“身体”を作る仕事だとすれば、電気設備設計は建物が目的通り機能するよう“命”を吹き込む仕事と言えるでしょう。
なお、非常用照明装置や予備電源設備、避雷設備といった防災設備の計画を代表で行う場合に限り、建築士の資格が必要となります。
電気設備設計は、ゼネコンや建築設備会社、エンジニアリング会社、プラントメーカー、電気設計事務所などに勤務します。設備設計は残業が発生しやすい職業と言われています。
受注単価が安いため数をこなさなければならない、工事の中でも後工程なので図面に修正の必要が出やすい、といった点が要因です。
平均年収は、20代で341万円、30代で484万円、40代で513万円(建設・ブラント・不動産業界の機械・電気系設計開発職の平均年収)。
電気設計(機械・電気系設計開発職)の平均年収
電気工事施工管理…一級資格が取れたら引っ張りだこ
電気工事施工管理は、電気設備を策定した設計通りに施工するための管理を行う職種です。
工事の施工計画を作成することに加え、計画通りに工事が進んでいるか工程の管理と監督業務を行います。電気工事施工管理として働くのに資格は必要ないものの、主任技術者へのキャリアアップを目指すには電気工事施工管理技士の国家資格が必要です。
現状、需要に対し、資格保有者が圧倒的に少ない上、高年齢化も進んでいるため、若手の有資格者が広く求められています。
なお、電気工事施工管理も、電気設備設計同様、建設設備メーカーやゼネコンなどに勤務します。
電気工事施工管理は残業が発生しやすい職業です。なぜなら、電気工事は工事の中でも最後工程に近く、前工程(土木・建築工事)が遅れると、たちまちスケジュールがタイトになってしまうため。
但し、工事の発注者側であるメーカーの施工管理は、残業時間が比較的少なめの傾向にあります。
サービスエンジニア
パソコンやプリンター・複合機、工場・研究所・医療施設にあるような各種製造装置や医療機器など…機器の点検・修理をする人がサービスエンジニアです。
複合機や大型の機器の場合、故障した製品を預かることが難しいため、直接サービスエンジニアが現地へ行って、クライアントの前で故障原因の特定や修理を行うことになります。心細い反面、クライアントから直接頼りにされるやりがいがあるのが特徴です。平均残業時間は月28.9時間です。
サービスエンジニアの仕事は、残業20時間未満という求人も散見されますが、扱う製品によっては非番の時でも緊急呼び出しがある会社もあります。
また、残業代が付かないみなし残業を取っている場合もあるため、企業選びの際に注意しましょう。
生産技術・プロセス開発(機械・電気・半導体系)
生産技術・プロセス開発とは、研究開発された新商品を、工場内でいかに効率的かつ安定的に生産するか…最適な製造工程(プロセス)を検討する職業です。製法・技術の開発から製造工程の考案、設備の導入、および製品によっては工場内の温度や湿度といった環境面の検討も行います。
また、ファクトリーオートメーションが進む工場では、産業用ロボットのプログラミングやカスタマイズを行うこともあります(ロボットティーチング)。
業務内容が多岐にわたるため、企業によっては、生産技術部門の中でも応用開発や設備の基本設計を手がけるプロセス開発と、実際の設備の導入や改善を行う製造技術…などとというように、チームが分かれている場合があります。
機械系の生産技術同様、残業時間は月40~50時間と多めです。
プラントエンジニア(電気)
プラントエンジニアは、工場・プラントなどの生産設備の設計・管理を行う職種です。
プラントの基本設計やオペレーション、メカのメンテナンスは機械系のプラントエンジニアが行いますが、プラント各所への電源供給システムやプラント設備全体の制御システムの構築など…電気系は電気工学出身の電気系プラントエンジニアが行うことになります。
プラントエンジニアはプラントメーカーやプラントエンジニアリング会社に勤務することになります。
プラントエンジニアの残業は、プロジェクトや時期によって変動します。基本的には比較的落ち着いていますが、納期が迫った際や何か問題が起きた場合は突発的に残業が発生します。
電気系学科から目指せる公務員
電気系学科から目指せる公務員の職業は、電気系のバックボーンを活かし、技術系地方公務員として活躍することが主です。
例えば、下水道設備工事の設計・監督業務や、営繕(公営建築物の維持・管理)、技術専門校での職業訓練指導、空港における電気設備の維持管理・運用などが挙げられます。浄水場や水再生センター、水道局などに配属となります。
コラム:電気系の学生は売り手市場が続く
以前より電気系の学生は就職に有利と言われてきましたが、その傾向は現在も続いています。
リクルートワークス研究所の調査では、「半導体・電子・電気部品」で2017年度の新卒採用が積極化されることが判明。
また、電気工学系大学教員と各電力会社で組織される産学連携組織・パワーアカデミーによると、電気工学系の学科は過去40年間ずっと売り手市場であったとされています。
電気は現代文明にとって最も重要な技術といっても過言ではありません。そのため、電力メーカーや電機メーカーのみならず、自動車や家電、各種デバイスなど…多様な企業で募集が行われています。
加えて工場設備は業界問わず電気仕掛けですから、ありとあらゆるメーカーで求人が行われているのが現象です。他にもテレビ局や交通機関など…電気系の学生の活躍の場は枚挙に暇がありません。
※参考:パワーアカデミー「人材ニーズの高い電気工学」
※参考:リクルートホールディングス「ワークス採用見通し調査(新卒:2017年卒)」
情報通信系(電子情報工学科など)系学科の職業
情報通信系の学科では、通信やメディアなどのソフトウェア領域について学んだバックボーンを活かして、いわゆるITエンジニアと呼ばれる職業に就くことができます。
プログラマ / システムエンジニア(PG/SE)…ハードな仕事だが食いっぱぐれナシ
システムエンジニアは、依頼者の要望に基づき、システムの仕様設計を行う職種。
その仕様設計に基づき、C、Java、C++、C#、Objective-C、JavaScript、Rubyなどのプログラム言語でプログラミング(コーディング)を行うのが、プログラマです。
このため、システムエンジニアはプログラマの上に立ち、プロジェクトの全体を取りまとめる上流工程の役割を担います。
プログラマ・システムエンジニアには、例えば下記のような種類があります。
- 家電や電気製品など、モノを動作させるプログラムを作る組み込みファームウェア開発者
- PCやスマートフォンのソフトウェア開発者
- webサイトやweb上で動作するシステムの開発者
勤務先は、システム開発専門のSIer(システムインテグレーター)のほか、ソフトウェアベンダーやITサービス企業、アプリメーカー、web制作会社、自動車メーカー、電機メーカー、家電メーカー、フリーランスなど…多岐にわたります。
平均年収は、20代で389万円、30代で501万円、40代で598万円、50代で647万円とされていますが、web系の企業や大手企業のインハウスSEでは、より高額となる傾向にあります。
プログラマ・システムエンジニアの平均年収
この職業は残業が多いことで知られ、中には月100時間以上という企業も。
その中でも自社の開発を担うインハウスSEは、社内相手のため納期調整がききやすく、残業が発生しづらい傾向にあります。SIerなど、クライアントから依頼を受けて開発を行うような場合に、労働時間が長期化する傾向があります。
ITエンジニアはユニークな採用方法が多い
IT系企業ではエンジニアを対象に、ユニークな採用試験が行われることも。
- 面接ナシ。プログラミングの実技テストのみのスキル一本採用(セプテーニ/2014年度採用)
- 高いスキルを持つ技術系学生を初任給600~1000万円で採用する『新卒エンジニアスペシャリスト採用』(DeNA/2012年度採用)
- 自己PRや履歴書ではなく卒論・卒制で先行を行う「卒制/卒論採用」(チームラボ/2014年度採用)
- Githubアカウントを一次選考の対象とするGithub採用(サイバーエージェント/2013年~2017年度採用 ほか)
…など、これまでにもあの手この手で優秀な人材の奪い合いが行われてきました。この状況から、いかに情報系の学生の需要が高いかがわかります。
インフラ系エンジニア(ネットワーク/サーバー)…企業のインフラを守る二大巨頭
インフラ系エンジニアは、企業の情報インフラを支える仕事。より細かくはネットワークエンジニアとサーバーエンジニアの2つの職業に分かれます。
ネットワークエンジニア
企業や自治体、学校などにコンピュータのネットワークを構築するのが、ネットワークエンジニア。クライアントの要望に基づいてネットワークの設計・構築をするだけでなく、ネットワークシステム構築後の保守・運用(増設/変更や障害対応など)を行います。
必要とされる知識・スキルは、TCP/IP、スイッチング技術、ルーティング技術。加えて、無線LANやロードバランサ、呼制御サーバー、IPS等の技術力が求められます。
残業は企業や現場によってまちまちですが、作業内容次第では社内のネットワークを停止させる必要があるため、会社に人が居ない休日や深夜に出勤する場合もしばしば。
平均年収は20代で368万円、30代で491万円、40代で626万円、50代で799万円。
ネットワークエンジニアの平均年収
サーバーエンジニア
サーバーエンジニアとは、その名の通り、サーバーの構築・運用・保守作業を行う職業。
依頼者の要望やコストを汲み取りながら、LinuxやUNIXやWINDOWSなどのサーバーを構築します。
加えてアプリケーションのインストールや、実際に稼働してからはメンテナンスや監視を通じて常にサーバーの状態を良好に保つことがミッションです。
Twitterの「バルス祭り」のようにトラッキングの増大が見込まれる際に予防策を打ったり、ハッカーなどからサーバーが攻撃を受けた際の対処はもちろん、サーバールームの配線やサーバーをサーバーラック(棚)に収めるラッキング作業などの力仕事も。
クラウド系技術の進化やスマートデバイスの普及に伴い、主にコンシューマー向け事業で採用が活発化していると言われています。
プログラマ・SEに比べれば残業は少なめですが、突然のサーバーダウンやメンテナンスで突発的な残業が発生したり、深夜勤務が発生したりということも。
サーバーエンジニアの平均年収は20代で399万円、30代で529万円、40代で623万円、50代で792万円です。
サーバーエンジニアの平均年収
社内SE(ヘルプデスク)…一般企業の情報システム部門
社内SEは一般企業などに勤め、その会社のIT・インフラ周りを担う職業です。
ヘルプデスクとも言われます。「情報システム部門(通称「情シス」)」などと呼ばれることも多く、社内で起きたパソコンのトラブルやサーバー障害への対応に加え、外部のシステム・サーバー系業者との窓口業務もこなします。
コンピュータまわりの何でも屋として、頼りにされる存在です。
社内SEの平均年収は20代で372万円、30代で506万円、40代で625万円、50代で724万円。社内SEを雇用する企業は中堅以上の企業規模の企業が多いため、平均年収も高めの傾向にあります。
社内が相手のため、トラブルさえがなければ早く帰れる傾向にありますが、会社規模に対して社内SEが少なすぎる企業では、むしろオーバーワークが予想されます。
コラム:広がるIT人材採用の動き
2016年現在、工学部出身者の採用ニーズは高い傾向にあります。中でも注目が集まるのは、情報通信系学科を筆頭とした、IT系の人材
。2016年4月25日の日本経済新聞では「大卒理工系奪い合い」という見出しで、自動車業界から保険・金融業界に至るまで、様々な領域でIT人材の採用が活発化していることが報じられました。
同記事によると、各社の2017年春入社の新卒採用計画は、2016年春と比較して理工系の採用予定人数が11.2%増加している模様です。
製造業では工場のIT化、多くの企業でセキュリティ対策へのニーズが高まりつつあります。
加えて家電や自動車はIoT製品の開発やAIの開発・応用、保険・金融ではフィンテック(ビッグデータを活用した金融商品の開発)など…今後も幅広い業界でIT系人材の採用は活発化する見込み。
こうした傾向は新卒だけではありません。2016年4月15日に、転職支援大手のエンジャパンが行った発表(92%のコンサルタントが、希少性の高い 人材ニーズは今後も増え続けると回答。―『ミドルの転職』コンサルタントアンケート集計結果)によると、中途採用における「希少性の高い人材ニーズが多い職種」で、技術系(IT・WEB・通信系)は全19職種中1位という結果に。
「希少性の高い人材」とは、「同じような経験やスキルを持っている人がまだ市場にいないことから評価されている方」。つまり、企業の採用ニーズが多いものの、条件に合致するスキルの持ち主が少ないため、ライバルのいない中、自由に低い競争率で転職ができる職種だということです。
同調査の中では、特に「AI機能(を搭載した)ERPパッケージ(をつくる)エンジニア」や「分散DB性能改善経験(を持つエンジニア)」と「データサイエンティスト、グロースハッカー、フォレンジック」といった職種のニーズが高いとされています。 ※引用中の()は転職hacksにて補足
理系のバックボーンを活かして就職・転職しようという人は、未経験OKのITエンジニアにキャリアチェンジし、市場価値を高めるのも手です。
応用化学科系学科の職業
プラスチックや合成繊維、金属化合物、医薬品など…自然界には存在しない物質にまつわる学問を学ぶ応用化学科。その就職先は、理学科の化学系学科と同じく、化学の知識が活きる素材メーカーや製薬メーカーなどが一般的です。
まとめ
以上が工学部の学科ごとの職業です。機工学部は就職に強いと言われています。
械工学系学科は機械系のモノづくり、電気電子工学系学科は電気系のモノづくり、情報工学系学科はIT系のエンジニアリング…と、大学で学んだ学問が職業に直結しやすいのが工学部出身者の特徴です。
エンジニアは残業が多いイメージがありますが、さすがに毎日終電のような企業は少ないもの。納期や職場環境次第で早く帰れる場合も多々あります。
あまり忙しそうだと身構えず、まずは専攻や知識に応じて活躍するフィールドを定め、その中で自分に合う職種を見つけると良いでしょう。