旧姓での転職&働き方も紹介 履歴書に旧姓を使ってもOK?
結婚をした後も旧姓で働きたい! そう考えている方も多いでしょう。
しかし、結婚して夫や妻の姓に変えた場合、戸籍名は新姓となっています。履歴書で旧姓を使用することはできるのでしょうか?
履歴書に旧姓は使わないのが一般的
履歴書には旧姓を使わないのが一般的です。その理由や、転職先で旧姓を使いたい場合の対処法をご紹介します。
履歴書に旧姓が使えない理由
履歴書に旧姓が使われないのは、履歴書が正式な書類として取り扱われるからです。
例えば、履歴書は、社会保険や確定申告の手続きをする際の参考として人事に使われることがあります。社会保険などの公的手続きには、戸籍と同じ氏名を使わなければなりません。
そのため、履歴書には戸籍通りの氏名を記載する必要があるのです。
また、離婚して旧姓に戻す予定がある場合も、正式に戸籍が書き換えられるまでは現在の姓(新姓)を使用してください。逆にこれから結婚する人は、入籍前は現在の姓(旧姓)を書きましょう。
新しい職場で旧姓を使いたいときは
転職後に旧姓を使いたい場合は、面接時に相談するか、履歴書の備考欄にその旨を記載するのが望ましいです。以下のように丁寧に説明すれば、採用で不利になる心配はありません。
備考欄
私事で恐縮ですが、できれば仕事では戸籍上の姓ではなく、旧姓(○○)を使用したいと考えております。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
ただし、企業によっては事務上の規定や習慣などから、旧姓の使用が必ずしも認められるとは限りません。職場とよく相談しましょう。
コラム:選択的夫婦別姓制度とは
結婚後に姓が変更になった人からの「旧姓を使いたい」という需要が高まるにつれて、選択的夫婦別姓制度の導入を求める声が上がり始めています。
選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が望む場合にそれぞれ結婚前の姓のままでいることを認める制度です。
政府が策定した「男女共同参画基本計画」に盛り込まれており、ソフトウェア開発会社サイボウズの青野慶久社長が制度の実現を求めて2018年に国を提訴するなど、近年大きな注目を集めています。
もしかしたら、今後は仕事で旧姓を使ったり、履歴書にも旧姓を書いたりすることが一般的になるかもしれません。
仕事で通称として旧姓を使うのはOK?
履歴書で旧姓を使うのは一般的でないことが分かりました。それでは、仕事で通称として旧姓を使うのはどうなのでしょうか。
旧姓が使用できる職場は全企業の約半数
職場で通称として旧姓が使えるかどうかは、企業の規則や慣習によります。
2016年に行われた内閣府委託調査によると、雇用者に対して「旧姓使用を認めている」または「条件付きで旧姓使用を認めている」会社は49.2%でした。この条件としては、旧姓使用届の提出などが挙げられます。
また、同調査によると20~64歳の既婚女性のうち、実際に現在旧姓を使用しているのは全体の10%のみ。旧姓使用の流れは広がる傾向にありつつも、まだまだ一般的とは言えないようです。
※参考:株式会社インテージリサーチ「旧姓使用の状況に関する調査報告書(概要版)」
職場で旧姓が使用されるものは?
内閣府委託調査によると、旧姓が使用されるものトップ10は以下の表の通りです。
「名札、社員証」「座席表」「社内名簿」など社内で用いられるものの割合が高く、いずれも70%を超えています。その後、「名刺」「メールアドレス」など対外的に用いられるもので日常的に使われるものが続きます。
旧姓と新姓、どちらが便利?
旧姓を使っている人、新姓を使っている人はどうしてその姓を仕事で使っているのでしょうか? それぞれの意見を聞いてみました。
『旧姓』を使っている人の意見
- 仕事相手に新姓を伝えるための手続きを省略できる
- 旧姓の人脈・研究成果・特許などの実績が変わらず維持できる
- 結婚・離婚などのプライベートな情報を知られずに過ごすことができる
『新姓』を使っている人の意見
- 新姓と旧姓の使い分けが面倒なため新姓に一本化した
- 旧姓・新姓両方のハンコが必要になるのが面倒だった
- 旧姓を証明できる身分証明書がない
旧姓使用を選ぶ方には、仕事相手に結婚したことを説明したり、名刺やメールアドレスを変更したりする手間を省略したいという方が多いようです。
また、旧姓で培った実績やメディア出演歴などをリセットしないためという意見も見られました。
一方、新姓を選ぶ方は、ハンコや銀行口座の手続きなどで新姓と旧姓を使い分ける煩雑さを避けるために新姓に一本化することが多いようです。
実際、運転免許証や保険証では旧姓が使えないため、身分証明は新姓のほうがスムーズです。
仕事で旧姓を使う場合の注意点
旧姓の使用が認められている企業であっても、いくつか気を付けなければならないことはあります。ここでは、それらの詳細についてご紹介します。
国家資格によっては旧姓が使えない
国家資格を用いて仕事をする場合、資格の種類によって職場で旧姓が使えるかどうかが異なります。
基本的に国家資格は免許に書いてある名前で仕事をしなければならないと定められています。
しかし、弁護士・司法書士といった資格の場合、「旧姓使用の申請書」を関係団体に提出するなどの手続きを踏めば旧姓利用が認められます。
また、教員・医師といった資格は旧姓の使用を認める制度はありませんが、免許の記載事項と戸籍名が変わっても書き換えが不要なため、事実上旧姓の使用が認められています。
一方、保育士・介護福祉士などの資格では、制度上旧姓の使用は認められていません。ただし、経営者の方針によっては通称としての旧姓使用が認められる場合もあります。現在、旧姓を使用することができるよう、省令改正が検討されています。
※詳しくは→各種国家資格における旧姓使用の範囲拡大について|厚生労働省
制度上、旧姓の使用が認められている国家資格 |
弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、建築士 |
制度で認められてはいないが、事実上旧姓が使える国家資格 |
教員、医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、理容師、美容師、管理栄養士、栄養士、調理師 |
制度上旧姓は使えないが、経営者の方針によっては旧姓が使える国家資格 |
保育士、介護福祉士 |
まとめ
履歴書・職場で旧姓が使えるかどうかや、注意点についてご紹介しました。
日本では女性の社会進出を背景に旧姓が使える範囲が広がってきてはいますが、まだ旧姓のままでは不便な場面もあります。
それぞれの場合のメリット・デメリットを比較検討して、どちらの姓を使うのかを選びましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所