状況ごとに対処法を解説 内定後の留年、どうしたらいい?

せっかく内定をもらったのに、留年。こんなとき冷静でいられないのも当然です。

でも、まずは落ち着いてください。内定後に留年しても、企業によっては入社を待ってくれますし、次の就活で不利になることもありません

この記事では、「留年が決まった」「留年しそう」「次年度の就活が決まった」という3つの状況別に対処法をご紹介します。

【留年が決まった人】リスク回避の3STEP

留年するとなると「内定が取り消されるんじゃ…」と不安が募りますよね。けれど、悩んでいても解決しません。まずは自分の現状を把握し、それに合わせて適切に行動しましょう。

留年によるリスクを回避するために大切なこと/内定は取り消されるとは限らない/やるべきことは次の3STEP―STEP1.「留年は確定か」「救済措置がないか」確認、STEP2.「入社したいかどうか」「卒業見込みがいつか」確かめる、STEP3.企業への連絡。お詫びの姿勢で、なるべく直接伝える。

STEP1.  学校で「留年は確定か」「救済措置がないか」確かめる

まずは落ち着いて現状確認

あわてて教授や内定先の企業に連絡する前に、「留年は確定かどうか」確かめましょう。ポイントは5点です。

  1. 正しく履修登録できていたか
  2. 成績発表を迎えているか
  3. 落とした単位は必修の科目か
  4. 卒業に必要な総単位数が足りているか
  5. 落とした単位の【学部・学科、担当教授名、講義名】

重要なのは、1の履修登録できていたかと、2の成績発表を迎えているかどうか。履修登録にミスがあったり、成績発表を迎えてしまったりした場合、教授や学校事務も学生を救済することが難しくなってしまいます。なるべく早く確認しましょう。

学校に救済措置がないか確認・交渉

留年が確定であれば、まず学校に救済措置がないか確認します。

資格などが単位になる可能性も

学校によっては、TOEICなどの検定試験の結果や学部・学科に関係する資格を単位として認めることがあります。国公立・私立・通信制大学のいずれでも可能性があります。実際に教務課などへ行き尋ねてみましょう。

挽回のチャンスをもらえないか交渉

実際に成績評価を決める教授に直談判してみるのも1つの手段です。再試験や追加レポート、課題提出〆切の延長など、挽回のチャンスがもらえるかもしれません。特に「成績発表の前」であれば取り合ってくれる可能性があります

STEP2.内定先へ連絡する前に自分の状況・気持ちを確認

救済が受けられない場合、留年は確定です。内定をもらった企業になるべく早く連絡する必要があります。

内定は取り消されるとは限らない

企業側の対応は内定取り消しだけとは限りません。次のようなケースがあります。

主な内定取り消し以外の対応

  • 卒業まで入社を待ってくれる(1年以内が多い)
  • アルバイトなどで入社し、働きながら卒業を目指すことを認めてくれる
  • 大学を中退して入社することを認めてくれる

ただし、対応には傾向があります。

公務員(大卒程度試験)の場合

国家公務員・地方公務員とも、免許や資格が必要な教員・社会福祉士などを志望しない限り、採用募集での条件は年齢制限(多くは30歳以下)のみ。募集要項では大学卒業が条件でないことが多いため、すぐに取り消されるとは考えにくいです。

ただし、自治体や職種によって募集要項・留年時の対応は変わります。必ず先方に確認しましょう。

一般企業の場合

一般企業では内定取り消しとなることが多いようです。しかし、会社の状況やあなたの意欲・能力によっては、入社時期をずらすなどの対応を取ってもらえるかもしれません。

このほか、内定は取り消されるものの「次年度の選考は最終面接のみ」などの優遇を受けられる可能性もあります。

自分の状況と照らし、「気持ちを確かめる」のが先

企業へ連絡する前に、あらかじめ伝える内容を決めておく必要があります。中でも押さえておくべきは「入社したいかどうか」「卒業できるかどうか、できるならいつか」の2つ。

内定は企業とあなたの互いの合意に基づくものです。企業に全ての判断を委ねるのはやめましょう

1入社したいかどうか、気持ちを確かめる

まず決めるべきなのは、入社したいかどうかです。

このとき、企業への義理や現状逃避などの一時の感情ではなく、長い目でみたキャリア・人生を優先して考えてください。保護者、教授、大学のキャリアカウンセラーなど信頼できる人に相談するのも良いでしょう。

内定辞退を選択する場合はStep3.企業への連絡の仕方(例文つき)を参考にしてください。

2卒業できるかどうか、できるならいつか確認する

「入社したい」と伝える場合には、卒業見込みに関しても確認しましょう。ポイントは4点です。

  1. 足りない単位の数は必修とそれ以外でそれぞれいくつか
  2. 単位の取得が可能かどうか(制度面・学力面…)
  3. 単位を取得するのにかかる時間はどれくらいか
  4. 学費面で問題がないか(奨学金はもらえなくなる)

中でも3の卒業に必要な時間は企業にとって重要な情報。学校の制度などと照らし、いつなら卒業できるか慎重に検討してください。制度面だけで判断が難しいなら、教科の担当教授と相談の上、期間を見積もりましょう。

コラム:中退には大きなリスクが伴う

卒業できるか不安で中退を考えることもあるかもしれませんが、内定後のタイミングの留年では、経済的な理由がない限り基本的には卒業を目指すべきです。

中退には大きなリスクが伴います。労働政策研究・研修機構の2017年の調査によると、大学などを中退した人で、直後に正社員として雇用されるのはたった1割。大卒者の8割弱が正社員雇用される事実と比べると、厳しいと言わざるを得ません。また、中退して数年が経っても半数以上は正社員になれないまま中退した人はキャリアの選択肢を狭められてしまうのが実情です。今後のキャリア・給料を考えると、卒業したほうが良いと言えます。

※参考→「大都市の若者の就業行動と意識の分化」―労働政策研究・研修機構

それでも経済的・精神的理由などでどうしても中退する場合は、ハローワークや民間の既卒向けの就職支援サービスを利用しましょう。

※詳しくは→学校を中退した場合の履歴書の書き方と、不利にしないコツ

STEP3.企業への連絡の仕方(例文つき)

基本は「お詫び」の姿勢:直接伝えるのがベター

企業への連絡はできるだけ早く行いましょう。大切なことは、入社したいときも、内定を辞退するときも、基本は「お詫び」であること。また、約束を破ってしまっているので、メールなど文面で伝えるのは失礼です。なるべく電話などでアポイントを取り、直接謝罪を伝えましょう

就職エージェントなどが仲介している場合は、企業より先にエージェントに連絡してください。企業への連絡をサポートしてもらえます。

電話では「内定に関する相談」として約束をつけます。連絡する時間帯は営業時間内の14時~17時がベストです。

(トークスクリプト)「内定に関する相談としてアポイントを取る」―内定者「お世話になっております。内定者の〇〇大学の□□と申します。 内定のことでご相談がありお電話いたしました。人事部の△△様はご在席でしょうか。」(取り次ぎ)内定者「お忙しいところ失礼いたします。 〇〇大学の□□です。ただいまお時間よろしいでしょうか。」(人事「どうぞ、大丈夫です」)内定者「お恥ずかしい限りですが、卒業が叶わず4月に入社することが難しくなってしまいました。△△様はじめ御社に大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。 御社に伺い、直接お詫びを申し上げる機会をいただけませんでしょうか。」

ここで理由について聞かれた場合は、「卒業論文の提出ができず」「期末試験に不合格となってしまい」など事実のみを簡単に伝え、直接謝罪するときに詳細を説明しましょう。

詳細の伝え方は次の通りです。

<入社したい場合>

▼STEP1:留年の理由を伝える

お電話でもお伝えしたとおり、卒業が叶いませんでした。卒業研究の論証が不十分として、最後の最後まで教授に掛け合っていましたが、提出できなかったことが原因です。この度は私の努力不足で多大なご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。

▼STEP2:入社意思を伝える

しかし、現在も御社で働きたいという気持ちは人一倍ございます。なぜなら…(志望理由を伝える)。

▼STEP3:卒業に必要な期間を伝える

現在教授と調整を続けており、このまま研究を進めれば1年で卒業できる予定です。

▼STEP4:入社機会を設けてもらえないか願い出る

どうか入社する機会をいただけませんでしょうか。

ここで具体的に「1年待ってほしい」「来年再挑戦させてほしい」と要望を伝えるのは身勝手に思われかねないため、好ましくありません。企業から質問を受けて初めて「許していただけるならば…」と伝えましょう。

<内定辞退する場合>

▼STEP1:留年の理由を伝える

お電話でもお伝えしたとおり、卒業が叶いませんでした。必修の民法の試験に合格できず、約4ヶ月前から準備を重ねてまいりましたが、私の努力不足によるものです。ご迷惑をおかけし申し訳ございません。

▼STEP2:内定を辞退したい旨を伝える

大変申し上げにくいのですが、家族やゼミの教授とも話し合った結果、内定辞退を決意しました。△△さんを始め、人事の方々には面接時から内定後のフォローまで大変お世話になったにもかかわらず、このような結果となってしまい誠に申し訳ございません。

企業から回答が来たら

入社したいと願い出た場合、人事側も社内でどんな対応をとるか相談する必要があるため、多くの場合、回答は後日となります。心もとないですが、じっと待ちましょう。

1入社する機会がもらえるなら、卒業は絶対

入社許可は企業側の温情なので、二度目の留年は許されません。教授や学校の学生支援窓口と相談をした上で予定を立てましょう。内定先で働きながら卒業を目指す場合でも、卒業を最優先して行動してください。中退の場合は速やかに退学の手続きを取りましょう。

2内定取り消しの場合

交渉の甲斐なく内定取り消しとなる可能性も十分あります。この場合は、なるべく早く次年度の就活を始めることが大切です。詳しくは【次年度の就活が決まった人】早めに動こうを確認してください。

【留年しそうな人】諦めず、すぐに対策を

単位をとれるか不安になると「留年するかもしれない」と悩む人も多いですが、ひとりで抱え込むと悪循環にはまる事になりかねません。誰かに相談し、卒業に向けてできることを探しましょう

留年しそうなときに考えるべきこと/ひとりで抱え込まず、教授や先輩など信頼できる人物に相談する/内定先の企業に伝えるかどうかは、人事との関係性で決めよう

(1) 教授・友人・先輩などに相談する

まず、身近な人に相談できないか考えましょう。教授や友人、先輩などに試験や課題、研究のやり方について相談してみてください。

教授に伝えるときは「このままだとまずいと思っています。何から始めれば良いか教えてください」と正直に言えば、何かアドバイスをもらえるはずです。出席日数の問題であれば、これまでの姿勢を謝罪し、挽回のチャンスをもらえないか交渉するのも1つの方法です。

(2) 学生相談窓口に行ってみる

「身近な人に話すのが恥ずかしい」「教授や先輩を信頼できない」「相談内容が誰かに知られてしまうのが嫌だ」という場合には、学校の学生相談窓口の利用をおすすめします。

教員やカウンセラーが、学業・将来・対人関係・「意欲がわかない」などのあらゆる悩みを一緒に考えてくれます。多くの場合相談は無料で行われ、秘密も守られるため、気軽に安心して利用できます。

(3) 大学生用塾・卒論支援サービスに相談する

どうしても適切な相談相手がいないなら、大学生用塾や卒論支援サービスなどの卒業をサポートするサービスの利用を検討しても良いでしょう。専門性の高いテーマも取り扱っている可能性はありますが、相応の金額がかかることは覚悟してください。

ただし、論文等の代行サービスの利用はNG。文部科学省も推奨しないと公式に見解を出しています。あくまで勉強や研究のやり方を支援するサービスを利用しましょう。

なお、履修登録漏れなど、現在の履修科目の単位をすべて取得しても留年してしまう場合には、資格などが単位になる可能性を確認してください。

内定先に伝えるべき? リスクはある?

留年が確定していない段階で内定先の企業に留年の可能性を伝えるのは一長一短です。あなたと企業との関係次第で取るべき行動が変わるため、ここでは伝えた場合、伝えなかった場合両方のメリットとデメリットを紹介します。

伝えた場合のメリット・デメリット

メリット

  • 内定先の人事としっかり時間をかけて対応を決められるため、とれる手段が多くなる
  • 内定先にかかる負担が小さくなる

デメリット

  • 留年が確定していないのに内定を取り消される可能性がある

伝えなかった場合のメリット・デメリット

メリット

  • 卒業出来た場合、無用なマイナス評価を避けることができる

デメリット

  • 人事側が対応に時間を取れないため、柔軟な応対ができない可能性がある

大きな違いは、人事と相談の時間がとれること。しっかり自分を1人の人間として見つめてもらっていると感じているなら相談をおすすめします。就職エージェントがついている場合も同様です。

また、公務員志望の場合は内定を取り消される可能性が低いので、早いうちから相談するのがベターです。

【次年度の就活が決まった人】早めに動こう

内定を辞退した、もしくは残念ながら内定が取り消されてしまった場合は、すぐに次年度の就活を始めましょう。

留年後に就活するときに大切なこと/留年生も新卒扱いとなり、就活で不利なることはない/面接では嘘をつかない範囲でポジティブな印象が伝わるよう心がけよう

留年していても就活で不利になることはない

留年した人も在学中に就活をするなら新卒扱いとなり、ほかの就活生とほとんど同じです。就職浪人が増えている背景もあり、採用側は学生が思うほど留年を気にしません。留年が不利になることはありませんし、自分から話す必要もないでしょう。

現実的な不利益も

人事がさほど気にしないとはいえ、現実的な不利益も存在します。留年に加えて浪人や留学をしているなら (1) 年齢制限がある可能性もありますし、企業によっては (2) 数年以内の再受験が認められないことも。ホームページなどで確認しましょう。

留年でできる時間を有効活用しよう

取るべき単位の数が少ないなら、ほかの就活生より時間がある分戦略も増えてきます。資格取得や短期留学、インターン、コンテスト参加などでアピール材料を作るのも手。特にビジネスコンテスト・ハッカソンでは人事とのつながりができることもあります。

留年について面接で聞かれたら(例文つき)

面接で留年について聞かれた場合は、(1) 留年理由は正直に、かつポジティブ(2) 留年後、前向きに取り組んでいる姿勢で答えましょう。暗い印象では自分の魅力が伝わりません。

たとえば「遊んでいただけ」「バイトばかりしていた」「ゼミの人間関係が悪かった」などの言いづらい理由でも、工夫次第で事実は変えずにポジティブに伝えられます。ここでは面接での「留年理由の答え方」を紹介します。

遊びすぎて勉強にやる気が出なかった場合

たとえ遊び呆けた場合でも、バイトや部活動、学生団体など何か課外活動をしていたなら、「活動にハマりすぎて勉強を後回しにしてしまった」というストーリーのもと「活動で得られたもの」や「反省をどのように生かしているか」を伝えるのがベストです。

留年した理由をおしえてください。

私が留年したのは、3年生の秋からIT系のベンチャー企業でアルバイトをしており、そちらに打ち込み過ぎたことが原因です。

アルバイトでは学生向けのサイト企画を任されるまでになりましたが、学生の本分は勉学であり、学業をおろそかにして良い理由にはならないと猛省しました。

現在は、期末試験の勉強に加え、就職した後にも生かせるよう、ITパスポート取得を目指しています。細かく計画を立てて2月から勉強を始め、最近は過去問演習を進めており、改めて計画性の大切さをかみしめています。

社会人になってからもこの姿勢は忘れずにいたいと思っています。

ゼミでの人間関係が理由の場合

人間関係の問題や不登校などの無気力状態、精神的な病気が理由であるときは、正直に伝えるのは危険です。入社後に同じことが起こるのではないかと面接官に懸念されます。

課外活動をしていたなら上の例と同じように「夢中になりすぎた」とするか、なければ事実をもとに単位を落とした経緯を伝えるようにしましょう。

どうして留年したのですか。

お恥ずかしながら、卒業論文の提出が叶わず留年しました。

4年生に上がってから就職活動と並行して研究を進めていましたが、どうしても研究の方向性が先行研究とかぶり、テーマの決定に時間がかかってしまったことが原因です。

これは教授に相談せず自分で勝手に判断していたことが問題であったと考え、現在は週に1回必ず教授とミーティングを行い、ゆっくりとですが研究を進めています。

この反省を生かし、事前に相談することを忘れずに仕事にも取り組みたいと思います。

卒業を優先して予定を立てよう

留年後の就活などにのめり込み、再び卒業できなかったという展開は避けたいもの。卒業を優先して予定を立てましょう。内定後の留年は、チェック漏れや計画倒れなどが原因であることも多いため、余裕を持って実行できると思える計画を作成することが大切です。計画通りを実行できれば、自然と自信が身につき就活でも良い結果が得られやすくなります。

まとめ

内定後の留年はとてもつらいですが、落ち着いて現状を把握し、リスク回避に向けて行動しましょう。

1留年が決定した人

  • 内定は取り消されるとは限らない
  • まず「留年が本当か」「救済措置がないか」学校で確認しよう
  • 内定先に連絡する前に「入社したいかどうか」「卒業見込みがいつか」確かめよう
  • 企業への連絡は基本お詫びの姿勢で、なるべく直接伝えよう

2留年しそうな人

  • 1人で抱え込まず、教授や先輩など信頼できる人物に相談しよう
  • 内定先の企業に伝えるかどうかは人事との関係性で決めよう

3次年度の就活が決定した人

  • 留年生も新卒扱いとなり、就活で不利になることはない
  • 面接では嘘をつかない範囲でポジティブな印象が伝わるよう心がけよう
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