有給の使い方や残業代の計算方法も解説 完全月給制ってどんな給与形態?

雇用契約書や就業規則、求人に書かれている「完全月給制」とは、どのような給与形態なのでしょうか? この記事では、完全月給制の特徴や有給休暇の使い方、残業代の算出方法などを解説します。

完全月給制とは? ただの月給制じゃないの?

完全月給制とは「欠勤しても減給されない」給与形態

完全月給制とは、欠勤・遅刻・早退をしても減給されない給与形態のことです。

たとえ病気で数日間休んだり用事で半日休みを取ったりしても、月給は満額支払われるため、安定した給与をもらえるのが特徴。もちろん、所定労働時間を超えた労働には残業代が支払われます

月給制には「月給日給制」もある

そもそも月給制とは、あらかじめ定められた給料が月単位で支払われる給与形態のこと。月給制には完全月給制のほか、月給日給制というものもあります。

月給日給制とは、欠勤・遅刻・早退による減給がある給与形態のこと。数時間の欠勤も減給の対象になる場合が多いため、給与を減らさないためには有給休暇を使う必要があります。

※月給日給制について、詳しくは→月給日給制とは?休むと減給!?

完全月給制と月給日給制のほか、給与形態の種類は下記のように様々です。

完全月給制

月給が決まっており、欠勤しても減給はない

(例)月給20万円の場合、何日欠勤してもその月の給与は20万円

月給日給制

月給が決まっており、欠勤すると減給される
月単位で支払われる手当(通勤手当、役職手当など)がある場合、減給対象に含まれるか含まれないかは会社によって異なる。

(例)月給20万円の場合、1日欠勤するとあらかじめ定められた1日分に相当する金額がその月の給与から引かれる。

日給月給制

日給が決まっており、働いた日数分をまとめて月に一度支給する。

(例)日給1万円の場合、20日働くと20万円、19日働くと19万円支給される

日給制

日給が決まっており、出勤した日数分の給与が支給される。

ただし、これらの定義は法律で定められたものではないため、各会社によって異なる定義をしている場合もあります。雇用契約書や就業規則を確認し、「どのような時に欠勤控除されるか」などを知っておくようにしましょう。

【有給】完全月給制でも、休むなら有給休暇を使用

完全月給制を採用されている場合でも、休むなら有給休暇を使うのがよいでしょう

その理由は、出勤率が80%を下回るようだと、次年度の有給休暇が付与されない恐れがあるからです。また、減給されないからといって有給休暇を取らずに欠勤すると、評価が下がる可能性もあります。「昇給や賞与の査定に出勤日数が関わっている」「企業の方針として有給取得率アップを目指している」など、さまざまな事情が考えられるので、注意してください。

あらかじめ決まっていた予定で休む場合はもちろん、急病で休む場合も有給休暇を使うのがよいでしょう

【残業】完全月給制でも残業代は出る?

完全月給制でも、残業代はきちんと出る

完全月給制もほかの給与形態と同じく、所定労働時間を超えた分の残業代はきちんと支払われます。

さらに、1週40時間、1日8時間の法定労働時間を超えた労働の残業代は、割り増しで加算されます。

なお、会社によっては法定労働時間内でも、所定労働時間を超えていれば割り増しで支払われる場合もあります。詳しくは、雇用契約書や就業規則を確認してください。

時間外・深夜・休日労働の残業代計算方法

ここでは、1週40時間、1日8時間の法定労働時間を超えている場合の残業代計算方法を解説します。下記の例は法定で定められた下限の割増率を元に計算しています。実際の割増率は雇用契約書や就業規則を確認してください。

完全月給制の残業代を計算するには、まず時給単価を知る必要があります。この時給単価を、それぞれの計算式に当てはめて残業代を算出してください。

時給単価 = 月給 ÷ 1ヶ月あたりの平均所定労働時間

時間外労働

残業代 = 時給単価 × 法定労働時間外の時間数 × 1.25 

深夜残業(午後10時~午前5時)

残業代 = 時給単価 × 法定労働時間外の時間数 × 1.5

休日労働(法定休日)

残業代 = 時給単価 × 法定労働時間外の時間数 × 1.35

休日労働(法定外休日)

残業代 = 時給単価 × 法定労働時間外の時間数 × 1.25

※残業代について、詳しくは→正しい残業代の計算方法

【残業代計算例】基本給25万円、法定労働時間外の労働が40時間の場合

実際に、基本給25万円、法定労働時間外の労働が40時間の場合の残業代を計算してみましょう。

1日あたりの所定労働時間は8時間、1ヶ月の勤務日数は月20日とします。

残業代=時給単価×時間外労働時間×1.25
   =(月給÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間)×法定時間外の労働40時間×1.25
   =(25万円÷<1日の所定労働時間×1ヶ月の勤務日数>)×40×1.25
   ={25万円÷(8時間×20日)}×40×1.25
   =(25万円÷160時間)×40×1.25
   =1,562.5円(時給単価)×40(時間外労働時間)×1.25
   =7万8,125円

上記の計算により、この月の残業代は7万8,125円だと分かります。

【入社・退職】完全月給制は月の途中で退職できない?

完全月給制で就業しているケースでも、月の途中に退職することは可能です。

ただし、民法には月の前半に退職を申し込んだ場合はその月の末日、月の後半に退職を申し込んだ場合はその翌月の末日から退職できるという規定があるので、月の途中に退職したい場合は会社と合意することが大切です。

期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

※引用元:民法627条第2項

また、月の途中に入社することも可能です。完全月給制の企業で月の途中に入社する場合は、給与を日割りで支払われるケースが多いようです。対応方法は企業によって異なるので、給与がどう支払われるのか知りたい方は採用条件通知書を確認するようにしましょう。

まとめ

・完全月給制は、欠勤・遅刻・早退しても減給されない給与形態
・とはいえ、休む場合は有給休暇を使うのが基本
・残業代は、ほかの給与形態と同じように計算できる

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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