対処法・トラブル例も紹介 雇用契約書がない会社は辞めるべき?

雇用契約書とは、給料や労働時間などの雇用条件が記載されている重要書類。一般的には入社時に交わされるものですが、なかには雇用契約書がない会社もあります。

ここでは雇用契約書の役割や、ない場合の対処法などを説明します。

雇用契約書がないのは違法?

まず、雇用契約書がないことが違法なのかどうか解説します。

労働条件が書面で示されていれば違法ではない

雇用契約書がないこと自体は違法ではなく、企業に対して法的な罰則はありません。

雇用契約書がなくても、労働条件通知書などの労働条件の書面通知があれば問題ありません。

ただし、労働基準法では以下の労働条件を何らかの書面で明示することが義務付けられています。

雇用契約書がなく、かつそれに代わる書類もまったくない場合は違法になります。

  • 労働契約の期間 (労働契約が有期の場合、更新の基準)
  • 就業の場所、従事する業務の内容
  • 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇(交代制勤務がある場合は就業時転換に関する事項)
  • 賃金の決定、計算・支払方法、賃金の〆切、賃金支払いの時期に関する事項
  • 退職(雇用)に関する事項(解雇の事由を含む)

雇用契約書とは労働条件の合意を証明する契約書

雇用契約書とは、労働条件とその内容について労働者と会社が合意したことを証明する書類で、雇用契約時に結ばれます。

賃金や労働時間などの労働条件とその合意が記されたものが2部あり、雇用主(会社)と雇用者の双方が捺印した後、それぞれが1部ずつ保管します。

雇用契約書は双方が合意した上で捺印しているため、トラブルがあったときには正式な書類として強い効力を持ちます。

▼雇用契約書のサンプル

雇用契約書の記入例

正社員でもパートでも雇用契約書は交わすべき

雇用契約書は、正社員でもパートでも、雇用形態に関わらず雇用契約時に交わすのが基本です。労働基準法第15条にも「労働契約の内容についてできる限り書面により確認するもの」と記されています。

雇用契約書がなくとも、雇用条件について何らかの書面での明示があれば法律違反にはなりませんが、この場合も双方が雇用条件について合意していることが大切です。

もし雇用契約書や、労働条件通知書などそれに代わる書類がない場合は会社に請求し、内容をしっかり確認しましょう。

トラブル続発!「雇用契約書なし」はこんなに危険

雇用契約書がないことは違法ではありませんが、労働条件の書面通知がないことは違法です。

書面通知がなく、口頭での説明のみだった場合、給料がいくらなのか、勤務時間は何時から何時までなのか、休日は週に何回あるのかなど、労働条件について証明できるものがありません。

その結果、長時間の残業をさせられたのに残業代が出ない実際の給料が面接で説明された金額より大幅に低かったなど、多くのトラブルが起こりえます。

現実にどんなトラブルが起きたのか、巻き込まれた人たちはどうなったのか、労働問題に詳しい弁護士に聞いた実際のケースを5つ、下記の記事で紹介しています。

雇用契約書のない会社は辞めるべき?

労働条件の書面通知を結ばない会社には、何らかの問題があると考えられます。そのような会社に入社した場合の注意点をご紹介します。

労働条件の書面通知のない会社は避けるべき

雇用契約書がなくとも、それに代わる書面があれば問題ありません。しかし、労働条件の書面通知をしない会社には、可能ならば就職しない方が賢明です。

働く人にとって不利な労働条件を隠すために書面通知をしたがらないという可能性も大いにあり得ます。

ただ、小規模の会社では単に入社にまつわる書類の準備ができていないケースもありますので、いつ労働条件の書面通知をしてもらえるのかを確認するのが良いでしょう。

労働条件の書面通知のない会社を辞める方法

もし就職先の会社が労働条件の書面通知をしてくれず、退職したいと思った時は退職希望日の14日前に申し出れば辞められます。

労働条件の書面通知がない=雇用期間の定めがないということなので、民法627条(※)に従って、14日前に退職したいことを会社に知らせれば退職可能となるのです。

一般には退職には1ヶ月以上前からの申し出が必要とされますが、民法627条に従う旨を会社に告げ、できるだけ速やかに退職しましょう。

※民法627条

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する」

労働条件の書面通知がない会社に入る場合の注意点

労働条件の書面通知がない会社に就職する場合、雇用契約書の発行を請求するか、それに代わる文書で労働条件を明示するように頼みましょう。

書面通知を拒否された場合、口頭でいいので雇用条件について説明してもらい、疑問点があればしっかり質問し、内容をメモとして残しておきましょう。

さらに、労働基準法の内容を確認しておくことも重要です。労働基準法では、給料や労働時間、休暇などの基準が定められています。知識として頭に入れておけば、自分の労働条件が違反なのかどうかがわかります。

場合によっては会社に改善を要求することを検討しましょう。

まとめ

雇用契約書または労働条件の書面通知は、労働者と会社がお互い納得して働くために必要不可欠であり、立場の弱い労働者を守る重要な書類です。入社時に雇用契約書を交わす際は内容をしっかり確認しましょう。

また、雇用契約書やそれに代わる書類がない場合、きちんと会社に請求し、トラブルを防ぎましょう。入社を辞めるのも一つの手です。

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