就職するメリット・デメリット NPO法人とは一体何なのか|給料は?

NPO法人」という言葉を耳にしたことはあっても、その実態についてはあまり知らないのではないでしょうか。

NPO法人の仕組みや、就職する上でのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

NPO法人とは?仕組みや種類

ここではNPO法人とは何なのか、その実態や種類について解説します。

社会貢献を目的とした非営利組織

NPO法人とは「営利を目的とせず社会貢献をする団体」を指し、正式名称は「特定非営利活動法人」といいます。

環境保全やいじめ・教育問題など、さまざまな団体が事業を通した社会問題の解決を目標としています

NPO法人の数は2024年5月末時点で49,816団体、そのうち寄附金額が多くよりニーズが大きいと認められた認定NPO法人が1,294件と、制度の使いやすさが向上した2012年の法改正以降、増加傾向が続いています。

※参考:認証・認定数の遷移|内閣府NPOホームページ(参照日:2024年7月1日)

非営利でもお金を儲けるのはOK

「非営利」と聞くと、NPO法人では少しもお金を儲けてはいけないものと勘違いしがちですが、正しくは利益を分配することが禁止されているだけで、利益を出すこと自体は問題ありません

つまり、事業で得た利益を活動外で使用したり、支援者に配当として支給したりすることはできないものの、さらなる活動展開のために使用することはOK。そのために必要な職員の給与もきちんと支払われます

一方、NPO法人と混同しやすいボランティア団体は、組織としての継続的な運営を目的としていないため、基本的に団員は無報酬で活動します。

一般企業との違いはお金の流れ

NPO法人と一般企業の違いはお金の流れです。一般企業の場合、サービスや商品を受け取るクライアントや消費者がその対価としてお金を支払います。

一方、NPO法人は主にサービス・商品を受け取る本人ではなく、支援者が寄付という形でお金を負担します。

【NPO法人】 支援者→(寄付金)→NPO法人→(商品サービス)→利用者 【一般企業】 利用者→(対価)→一般企業 |一般企業→(商品サービス)→利用者

また、NPO法人には下記の通り、いくつかの収入源があります。そのうち株式会社と大きく異なるものに「支援者からの寄付金」があります。寄付金を受け取る時、一般企業は税金がかかるのに対して、NPO法人は税金がかかりません。

【NPO法人に集まるお金】(出資元/内訳): 国・地方自治体/委託事業収入・補助金・自主事業収入・寄付金・助成金 |一般企業/自主事業収入・寄付金・助成金 |個人/自主事業収入・寄付金 |会員/会費

活動分野は20種類と幅広い

内閣府によると、法律で定められているNPO法人の活動分野は、以下の20種類とされています。

(1)保健、医療または福祉の増進を図る活動 介護支援サービスなど
(2)社会教育の推進を図る活動 英会話教室、パソコン教室の経営など
(3)まちづくりの推進を図る活動 地域イベントの開催など
(4)観光の振興を図る活動 観光をメインとしたまちづくりなど
(5)農山漁村または中山間地域の振興を図る活動 農作物の直売販売活動など
(6)学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動 スポーツ教室を経営する、伝統芸能・文化継承を目的とした活動など
(7)環境の保全を図る活動 リサイクルショップの経営など
(8)災害救援活動 被災地でのボランティア活動など
(9)地域安全活動 地域パトロールなど
(10)人権の擁護または平和の推進を図る活動 戦地体験を語り継ぐ講演会など
(11)国際協力の活動 日本に来た留学生の支援など
(12)男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 セクシャルハラスメントの被害相談、女性の雇用充実を図る活動など
(13)子どもの健全育成を図る活動 いじめ相談、児童虐待防止の活動など
(14)情報化社会の発展を図る活動 パソコン講座の実施など
(15)科学技術の振興を図る活動 太陽光発電の発電効率化についての研究開発など
(16)経済活動の活性化を図る活動 地域の経済活性化の促進活動など
(17)職業能力の開発または雇用機会の拡充を支援する活動 資格取得の支援活動など
(18)消費者の保護を図る活動 悪徳商法から守る、商品知識の普及を図る活動など
(19)前各号に掲げる活動を行う団体の運営または活動に関する連絡、助言または援助の活動 (1)から(20)までの活動を行う団体に、助言や支援を行う助成活動など
(20)前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動 所轄庁が定めた、NPO法人が活発になるように創設された分野

福祉やまちづくり、国際協力などと活動分野は幅広く、社会貢献度の高い事業が多くあります。NPO法人で働きたい場合は、まず自分の興味のある分野がないか探してみましょう。

※出典:内閣府NPOホームページ「活動分野」(参照日:2024年6月25日)

NPO法人に就職するメリットとデメリット

NPO法人に就職するメリットとデメリットを紹介します。

メリットはやりがいと融通のきく働き方

NPO法人のメリットは、主にやりがいと融通がききやすい働き方の2つがあります。

社会貢献を通してやりがいを感じられる

NPO法人で働く最大のメリットは、やりがいや働く価値を見出しやすい点です。NPO法人の活動は公共性が高く、社会問題に課題意識を持っている人にとっては大きなやりがいを感じられるでしょう。

活動を通じて困っている人と直接関わることが多いため、笑顔や感謝の言葉をかけてもらえる機会も多くなります。

働き方に融通がききやすい

NPO法人で働くもう一つのメリットは、働き方に融通がききやすいことです。

NPO団体連盟組織の一つである新公益連盟の2017年調査によると、在宅ワークの導入率が一般企業が11%だったのに対しNPO法人では64%と高い数字を示しています。また、フレックスタイム制の導入率でも、NPO法人が2ポイントリードしていることがわかります。5年以上前からNPO法人は一般企業に先駆けて、柔軟な働き方を実践してきたといえるでしょう。

【人事制度導入状況】(NPO法人/一般企業): <在宅ワーク>64%/11% <フレックスタイム制>52%/50%

また、NPO法人には、プライベートの時間を確保しやすいというメリットもあります。
2017年の調査では一般企業の平均残業時間が22.4時間だったのに対し、NPO法人では13時間でした。働き方改革関連法が施行される2019年以前から、NPO法人は労働時間・残業時間が短い傾向にあったようです。

【平均残業時間】(全体/5時間未満/5~15時間未満/15~25時間未満/25時間以上): <NPO法人> 13時間/43%/14%/26%/17% <一般企業> 22.4時間/3%/19%/38%/39%

デメリットは給料の低さと一般企業とのギャップ

NPO法人で働くことのデメリットは、給料の低さや一般企業とのギャップが挙げられます。

平均年収は約340万と低い

同じく新公益連盟の2017年調査によると、NPOで働いている人の平均年収は339万円。これは国税庁が調査した同年の正社員の平均年収485万円と比べてもかなり低い水準で、その傾向は今でも続いているようです。

加えて、10年以上前の資料にはなりますが、第一生命経済研究所の2006年資料では、NPO法人で働く20~30代の職員のうち3分の2が、平均年収200万円を切っていました。

NPO法人だけの収入では生活するのが困難だとして、職員の29.3%が兼業をして生計を立てているというデータもあります。

これには利益を求めないNPO法人の特質が関係しているといわれており、お金よりもやりがいを重視する風潮は「やりがい摂取」として問題になっています。

※やりがい摂取について詳しくはこちら→やりがい搾取とは?危ない5つの職業と対策

※参照1:新公益連盟「ソーシャルセクター組織実態調査2017」(公表日:2017年12月6日、参照日:2024年6月25日)
※参照2:国税庁「令和2年度民間給与実態統計調査結果」(公表日:2021年9月、参照日:2024年6月27日)
※参照3:第一生命研究所「NPOで働く若者の活動実態と生活意識」(参照日:2024年6月27日)

一般企業へのキャリアアップが難しい

NPO法人は一般企業とは違い、社会貢献を目的としたボランティア団体だというイメージが強いため、一般企業の求人に応募しても、キャリア志向が低いとみなされて不利になることがあります

なお、NPO法人で長い間働いてスキルを磨いたとしても、NPO法人では一般企業のように役職制度がない場合もあるため、履歴書では長年平社員に見えることも

NPO法人から一般企業への転職を考えている時は、役職がなくても自分が培ってきたスキル・経験が最大限伝わるような履歴書・職務経歴書を書く、あるいは前職の所属団体にかかわらず経験値やスキルを重要視してくれる企業を選ぶようにしましょう。


ここまでNPO法人に就職するメリットとデメリットを見てきましたが、自分がNPO法人に向いているかどうか気になっている人も多いのではないでしょうか。

NPO法人と株式会社の両方を経営している人から見た「NPO法人に向いている人」について、下記の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。

▼NPO法人の経営者に聞いてみた

NPO法人にはどうやって就職するの?

NPO法人で働くにはどうしたら良いのでしょうか。ここではNPO法人に就職するための準備を紹介します。

NPO法人の採用フロー

NPO法人へ就職する流れ自体は、一般企業と大きく変わりません。

就活サイトやNPO法人サイトの採用ページ、あるいはハローワーク、転職エージェントなどを介して求人を探すことができます。

NPO法人への就職フロー

  1. 求人の情報収集
  2. 説明会への参加
  3. 書類選考
  4. 面接

ただし、多くのNPO法人は定期的な採用を行なっておらず、希望の求人を見つけられる機会は少ないでしょう

もし志望する求人を見つけた場合は、すぐに応募することをおすすめします。

希望の求人が見つからない場合、今の仕事を続けながら、選考に有利になる資格を勉強したり、分野が近いボランティア活動に参加してみたりして、自分の付加価値を高めましょう。

面接までに準備しておくべきこと

NPO法人の求人に応募するにあたって、面接に備えて準備しておくと良いことは以下の通りです。

志望するNPO法人が求めている人物の把握

面接に合格するためには、志望するNPO法人がどんな人材を求めているのかを正しく把握することが大切です。

NPO法人の活動分野は幅広く、団体によって求めている人物像は異なるため、志望先で自分がどう貢献できるのかを分析し、アピールする必要があります。

例えば、猫の殺処分ゼロを目指しているNPO法人の保護団体「ねこけん」では、野良猫の不幸な命を増やさないことを目的としているため、野良猫の現状や人と動物との付き合い方といった知識や、現状の問題を解決したいという当事者意識が求められるでしょう。

ただし、NPO法人の求人には求める人物像が記載されていない場合も多くあります。

その場合は、志望するNPO法人の活動内容や理念を調べた上で、どうしてそのNPO法人に惹かれ共感し、一緒に働きたいと思ったのか、自分の中でエピソードを整理しておくと良いでしょう。

アピールできる活動経験があると選考に有利

NPO法人はそれぞれの団体が社会貢献に対する強い理念を持っており、その理念に通じるような経験やスキルをアピールすると良いでしょう。

例えば、先程紹介した猫のNPO法人の保護団体「ねこけん」では、保護活動や物資支援、殺処分の現状に対する知識や実体験などがアピールの材料となります。

面接で話すエピソードは、団体の活動に必要な知識や社会問題への強い関心、その解決に向けて活動していた経験などを盛り込むと良いでしょう。

まとめ

NPO法人とは、社会貢献を目的として活動する非営利団体です。

NPO法人に就職することで、大きなやりがいを感じながら生活様式に合った働き方ができる一方、給料やキャリア面では一般企業と比べて厳しい面も多く、昇進を目指してバリバリ働きたい人には向いていないでしょう。

もしNPO法人への就職を考えている場合は、どうして働きたいと思ったのか自分の考えを整理し、本当に自分に合っているのかどうか検討しましょう

この記事の担当者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。

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