金額や請求方法も紹介 中小企業に多い退職金共済とは?

退職金共済とは、主に中小企業の加入が多い退職金制度の1つです。

中小企業退職共済制度(中退共)を中心に、概要や金額、受け取り方などをご紹介します。

退職金共済とは

退職金共済とは、在職中に外部に積み立て、退職時にまとめて受け取る退職金制度のことです。

退職金制度のひとつですが、一般にイメージする企業から支払われる退職金とは異なります。

ここでは、退職金共済の種類や金額について説明します。

退職金共済に入っていれば、中小企業でも退職金が出る

中小企業では退職金制度がないことも多いですが、勤め先が退職金共済に加入している場合、退職金を受け取ることが可能です。

退職金共済の中でももっともポピュラーな「中小企業退職金共済制度(中退共)」には、2019年3月末時点でおよそ37万社が加入しています。自社が退職金制度に加入しているかどうか知りたい場合は、就業規則を確認すると良いでしょう。

※出典→中小企業退職金共済「事業概況」|独立行政法人勤労者退職金共済機構

中退共には試用期間中の人や定年退職が決まっている人を除き、原則として従業員全員が加入できます

加入できる企業の要件は以下の<1>か<2>のいずれかです。

業種:資本金・出資金の総額/常用従業員数。一般業種:3億円以下/300人以下。卸売業:1億円以下/100人以下。サービス業:5,000万円以下/100人以下。小売業:5,000万円以下/50人以下。

掛金5,000円・納付年数10年の場合、退職金は63万2,800円

掛金月額は5,000~3万円の16種類あり、事業主が従業員ごとに設定します。この掛金はいつでも変更ができます。

短時間労働者(パートタイマーなど)は上述の16種類に加えて、2,000~4,000円から設定することが可能です。

ちなみに、2019年3月のデータでは「掛金5,000円」の加入者が全体の6割ほどを占めており、掛金を低く設定する企業が多いようです。

※出典→中小企業退職金共済「事業概況」|独立行政法人勤労者退職金共済機構

退職金共済への納付年数・掛金と退職金の目安額表。以下、納付年数×掛金:退職金額。4年×5千円:24万円。4年×1万円:48.1万円。4年×1万6千円:77万円。10年×5千円:63.2万円。10年×1万円:126.5万円。10年×1万6千円:202.4万円。20年×5千円:133.3万円。20年×1万円:266.6万円。4年×1万6千円:426.6万円。30年×5千円:210.6万円。30年×1万円:421.3万円。30年×1万6千円:674.0万円。40年×5千円:295.8万円。40年×1万円:591.7万円。40年×1万6千円:946.8万円。※新規加入・掛金増額なしの場合。()内は掛金に対する増額割合
※参考→基本退職金額表|中小企業退職金共済事業本部

ちなみに、東京都産業労働局が中小企業を対象に行った調査(2016年)では「勤続10年」「大学卒」「自己都合」で退職した人の平均退職金は、約115万円でした。

一方、中退共加入で「掛金5,000円」「納付年数10年」の場合、平均の半額ほどの退職金をもらえることがわかります。

※退職金の目安について詳しくはこちら→退職金はいくらもらえる?相場は?

※より詳しい計算はこちら→退職金のシミュレーション|独立行政法人勤労者退職金共済機構

支給金額は「基本退職金+付加退職金」

中退共の退職金の金額は、基本退職金と付加退職金の合計で決まります。

基本退職金とは、掛金月額と納付年数によって決められた固定金額のことで、付加退職金とは基本退職金に上乗せされる金額のことを指します。

付加退職金は、厚生労働大臣が定めた支給率に従って支給されます。例えば、直近3年の支給率は、2017年度が0、2018年度が0.0044、2019年度が0でした。

※金額について詳しくは→制度について-退職金|独立行政法人勤労者退職金共済機構

43ヶ月(3年7ヶ月)以上納付すると支給額がプラスでお得

中退共制度は長期加入者ほど有利になるよう利率が設定されており、納付期間が43ヶ月未満の場合は掛金相当額を、43ヶ月以上の場合には運用利息を上乗せして受け取ることができます。

また、中退共の退職金は、基本的に納付年数が1年(12ヶ月)以上でなければもらえません。入社してすぐに退職を考えている人は注意しましょう。

納付期間ごとの損・得ボーダーライン一覧表。以下、納付期間:退職金と掛金総額【損/得】※掛金5,000円の場合。(ア)11ヶ月以下:退職金の支給なし【損・-5,000~-5万5,000円】。(イ)12ヶ月以上23ヶ月以下(1年以上1年11ヶ月以下):退職金が掛金総額を下回る【やや損・-4万2,000円~-5万6,500円】。(ウ)24ヶ月以上42ヶ月以下(2年以上3年6ヶ月以下):退職金と掛金総額が同額【プラスマイナスゼロ】。(エ)43ヶ月以上(3年7ヶ月以上):退職金が掛金総額を上回る【得・+50円~(40年納付だと+55万8,950円)】

退職金共済の種類

退職金共済には、ここまで説明してきた「中小企業退職共済制度(中退共)」のほかにも「特定業種向けの共済制度」と「特定退職金共済制度(特退共)」があります。

それぞれの制度の違いを知り、退職金共済について整理しておきましょう。

中小企業退職共済制度(中退共)

加入者数が最も多い、中小企業向けの退職金制度です。

国が管轄する独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営を担っています。新規加入の場合などに国から事業主へ助成金が出ることや、長期加入者ほどもらえる退職金の額が多くなることが特徴です。

特定業種退職金共済制度(建築業、清酒製造業、林業向け)

運営元は中退共と同じで、いわゆる「現場」で働く労働者の雇用の安定を目指して設けられた特定業種向けの退職金制度です。

制度は3種類あり、建築業向けの「建築業退職金共済(建退共)」、清酒製造業向けの「清酒製造業退職金共済(清退共)」、林業向けの「林業退職金共済(林退共)」があります。

月ごとに掛金を納付する「中退共」と異なり、「建退共・清退共・林退共」では働いた日数に応じて掛金を納付します。なお、従業員は中退共と併用して加入することはできません(事業主の併用は可能)。

また、特定業種退職金共済の場合、会社を辞めたときではなく業界を辞めたときに退職金が支払わます。

特定退職金共済制度(特退共)

市町村や商工会議所が保険会社などに運営を委託している退職金制度です。

中退共では加入期間が12ヶ月未満だと原則として退職金が支給されませんが、特退共では支給されます。そのため、従業員にとっては加入期間が短くても退職金を受け取ることができるというメリットがあります。

一方、事業主が設定できる掛金が1,000円からと低額です。そのため、中退共と比較すると、納付総額が支給額を上回るまで時間がかかることが従業員にとってのデメリットとなります。なお、中退共と特退共は併用可能です。

中小企業退職共済制度で退職金を請求する5ステップ

中小企業退職金共済制度(中退共)で退職金を受け取るための手順をご紹介します。

中小企業退職共済制度で退職金を請求する5ステップ:(1)事業主から「退職金共済手帳」を受け取る(2)添付書類を用意する(3)「退職金(解約手当金)請求書」に記入・押印する(4)「」「退職金(解約手当金)請求書」を送付する(5)審査が終わるまで4週間~2ヶ月半程度待つ

退職金の請求期限は従業員が退職した日から5年間となっていますので、未請求の方は早めに請求しましょう。なお、退職金を受け取ることができるのは、退職者本人(退職者が死亡した場合はその遺族)のみです。

中退共以外の退職金共済でも請求方法もほぼ同じですが、共済手帳を渡される流れや必要な書類が若干異なります。

詳しく知りたい場合は、以下のリンク先をご確認ください。

<建退共、清退共、林退共の請求方法>

<特退共の請求方法>

1事業主から「退職金共済手帳」を受け取る

退職の意思を会社に伝えると、退職後もしくは退職日前に、事業主から「退職金共済手帳」が渡されます。

事業主が退職金共済手帳を渡してくれない場合は「中退共本部給付推進管理課」に問い合わせましょう。

2添付書類を用意する

本人確認のため、以下の添付書類を用意します。添付書類は退職金の金額によって異なります。

中小企業退職共済制度で退職金を請求する際の添付書類一覧表。退職金が300万円以上の場合は、印鑑証明書+個人番号カードの両面コピー。または、印鑑証明書+通知カード(コピー)orマイナンバー入り住民票(原本)+運転免許証や健康保険証等の身分証明書。|300万円未満の場合は、住民票or印鑑証明書+個人番号カードの両面(コピー)。または、)住民票or印鑑証明書+通知カード(コピー)orマイナンバー入り住民票(原本)+運転免許証や健康保険証等の身分証明書。

ただし、退職者が死亡した場合は、上記のほかに戸籍謄本や委任状を提出する必要があります。詳しくは以下をご覧ください。

3「退職金(解約手当金)請求書」に記入・押印する

共済手帳3枚目の「退職金(解約手当金)請求書」に必要事項を記入します。

印鑑証明書を添付する方は、請求書の押印欄に必ず実印を押印しましょう。記入し終えたら、退職金(解約手当金)が振り込まれる金融機関の窓口に請求書を持っていき、金融機関記入欄に記入及び押印してもらいます。

この際、記載間違いなどがあった場合に口座番号や住所・氏名を確認される可能性があるため、(必須の持ち物ではありませんが)念のため、通帳(またはキャッシュカード)と印鑑、本人確認書類を持っていくと安心です。

4「退職金(解約手当金)請求書」を送付する

中退共事業本部の宛名ラベルを印刷して封筒に貼り、「退職金(解約手当金)請求書」と添付書類を同封して書留郵便などで送付します。

5審査が終わるまで4週間~2ヶ月半程度待つ

請求書の記入漏れや添付書類の不足がなければ、4週間程度で退職金を受け取ることができます。

ただし、未納の掛金がある場合は支払いまで1~2ヶ月半程度かかる場合があります。

なお、振込予定日は振込日の2週間ほど前に発送される「退職金等振込通知書」によって知ることができます。

受け取り方法は「一括払い(一時金払い)」か「分割払い」の2種類

60歳以上の方は「一括払い(一時金払い)」と「分割払い」の2種類から受け取り方法を選択できます。

「一括払い(一時金払い)」では退職金を一度に、「分割払い」では5年間または10年間に分割して受け取ることが可能です。

ただし、退職金は課税対象であるため、銀行口座には税額を差し引いた金額が振り込まれます。 

<分割払いの受け取り金額と年間スケジュール例>

例:退職金180万円・5年分割の場合

分割払いは年4回(2、5、8、11月)に支払われる。

分割退職金9万1,800円から、税額7,029円を差し引いた額が支払われる。

<1年間あたり受け取り金額>

  • 2月:8万4,771円
  • 5月:8万4,771円
  • 8月:8万4,771円
  • 11月:8万4,771円

=339,084円

<5年間での受け取り金額>

339,084(円)×5(年間)
1,695,420円

分割払いはさらに2種類に分けられる

分割払いは全て分割で支払う「全額分割払い」と、一括払いと分割払いを組み合わせる「一括分割払い(併用払い)」の2種類があり、収入状況などに応じて選択できます。

ただし、年齢が60歳に満たない方や退職金が少額の方は分割払いを選択できません。

分割退職金のシミュレーションで詳しい計算ができます。

転職先の会社で納付期間を引き継ぐための条件

転職先も中退共などの共済制度に加入している場合、転職後も納付期間を引き継ぐことができます。

多くの場合その手続きは、従業員本人からの申し出があれば総務や経理など転職先の担当者が行ってくれます。

なお、退職金共済は長期加入者ほど受け取る退職金の金額が有利になるよう設定された制度です。

引き継がずに退職金をもらうべきか迷った場合は、そのまま継続することをおすすめします。

それでは、3つの転職パターンごとに通算制度の適用条件や送付書類を確認してみましょう。

※手続書類のダウンロードはこちらから→各種手続様式一覧(中退共関連)

1「中退共」の加入企業間で転職した場合

中退共の加入企業間を転職した場合、適用条件や送付書類は以下の通りです。

<適用条件>

  • 掛金が12ヶ月以上納付されていること
  • 前の企業で退職金を請求していないこと
  • 前の企業を退職してから3年以内に申し出ること

<送付書類>

  • 掛金納付月数通算申出書
  • 前の企業の共済手帳(以前の共済手帳)
  • 新しい企業の共済手帳(新しく交付された共済手帳)

同一企業内で復職したり、正社員からパートタイマーに変わったりした場合は( )内の書類が必要になります。

<送付先>

中退共本部 保全課(※1

ただし、会社の倒産やリストラなどを理由に退職する場合は、厚生労働省の認定を受ければ納付期間が12ヶ月未満でも通算できる可能性があります(※2)。

2「建退共・清退共・林退共」と「中退共」の加入企業間で転職した場合

建退共・清退共・林退共の加入企業と中退共の加入企業間で移動があった場合、適用条件や送付書類は以下の通りです。

中退共から建退共へ、またはその逆というパターンだけでなく、建退共から林退共などへと移動することもできます。

<適用条件>

(ア)異なる企業に転職した場合

  • 前の企業で退職金を請求していないこと
  • 前の企業を退職してから3年以内に申し出ること
  • 従業員本人が通算を希望し、その旨を申し出ること
  • 自己都合による退職ではないと厚生労働大臣から認定されていること(※2

(イ)同一企業内で職種を変更した場合
(※例:土木作業員から事務職への異動など)

  • 事業主が従業員の同意を得て通算を申し出ること

<送付書類>

(ア)異なる企業に転職した場合

  • 移動通算申出書
  • 前の企業の共済手帳
  • (新しい企業の共済手帳)
  • 掛金納付月数通算退職事由認定申請

(イ)同一企業内で職種を変更した場合

  • 移動通算申出書
  • 移動前の共済手帳
  • (移動後の共済手帳)

移動先が「中退共」の場合、( )内の書類が必要になります。詳しくは移動先の事業本部に問い合わせてください。

<送付先>

  • 移動先が「中退共」の場合
    中退共本部 保全課(※1
  • 移動先が「建退共・清退共・林退共」の場合
    移動先の共済制度の都道府県支部

3「特退共」と「中退共」の加入企業間で転職した場合

通算契約を結んでいる団体に限り、特退共の加入企業と中退共の加入企業間で納付期間を通算することができます。

この場合の適用条件や送付書類は以下の通りです。

<適用条件>

  • 前の企業で退職金を請求していないこと
  • 前の企業を退職してから3年以内に申し出ること
  • 中退共本部と特退共団体の間で退職金引渡契約を結んでいること

<送付書類>

(ア)特退共→中退共の場合

  • 特定退職金共済制度から中小企業退職金共済制度への通算申出書
  • 特退共の共済手帳

(イ)中退共→特退共の場合

  • 中小企業退職金共済制度から特定退職金共済制度への通算申出書
  • 中退共の共済手帳

<送付先>

(ア)特退共→中退共の場合
中退共本部 保全課(※1

(イ)中退共→特退共の場合
特退共団体(各都道府県の商工会議所・商工会)

※1
〒170-8055
東京都豊島区東池袋1-24-1
中退共本部 保全課

※2
厚生労働省から認定を受けるには、以下のいずれかの方法で申請を行ってください。

(ア)「掛金納付月数通算退職事由認定申請(PDF)」を以下の宛先に送付する。

〒100-8916
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
厚生労働省 雇用環境・均等局 勤労者生活課機構調整係

(イ)電子申請システムを利用して申請する。

まとめ

中退共を中心に退職金共済の受給額や受け取り方を説明しました。

中退共では納付期間と掛金の金額によって受給金額が大きく異なり、申請から受け取りまでには長くて1~2ヶ月かかります。退職金共済に加入している方、今後加入予定のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

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