勤続年数&理由別一覧 退職金はいくらもらえる?相場は?
会社を辞めるとき、気になるのが退職金。
退職金の相場について、年代別や退職理由別など、さまざまな角度から紹介していきます。
退職金の相場はどのくらい?
気になる退職金の相場について、世代別に見ていきましょう。
基本的に、退職金はその会社での在籍期間によって決まります。それぞれの退職金額について、詳しく見ていきましょう。
※引用元
・若年層…東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)』
・ミドル層・定年退職…e-Stat『平成30年 就労条件総合調査(退職給付(一時金・年金)の支給実態)』
※学歴が「高専・短大卒」の場合は、同じ勤続年数の大学卒の退職金額の80%程度、「高校卒」の場合は、同じく70%程度となります。
※若年層の退職金の相場は東京都内の中小企業を対象とした、大手企業を対象としたモデル退職金(卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準。標準者退職金とも)。大企業を含めると、これよりも高い金額になると考えられます。
【若年層】 勤続10年・自己都合退職で約122万円
若年層の退職金の相場は、例えば「勤続10年(推定32歳)」「大学卒」「自己都合」で退職した場合、121.5万円です(ただしこの金額は中小企業における平均で、大企業を含めると金額は高くなると考えられます)。
※引用元:東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)』
自己都合で若くして退職した場合でも、ある程度まとまった金額が支払われていることがわかります。
また、上記の退職金額には、「退職一時金」だけではなく、「退職年金」の額も合算されています。「退職一時金」と「退職年金」についての説明は、後述の「退職金には『退職一時金』と『退職年金』がある」などを参照してください。
コラム 勤続3年以下は退職金が出ない!?
東京都産業労働局の調査によると、退職一時金受給のための最低勤続年数は、自己都合の場合、「3年」が48.8%と約半数、「1年」が17.3%、「2年」が11.9%という結果になっています(2018年)。
「最低でも3年は勤めないと退職金が出ない企業が、半数以上ある」ということです。
在籍期間が3年満たないままに退職を考えている人は、実際に退職する前に立ち止まって考えてみることも大事でしょう。
※引用元:東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情調査(退職金制度<図表7-5>退職一時金を受給するための最低勤続年数)』(2018年)
【ミドル層】 勤続20~24年・自己都合退職で約780万円
ミドル層の退職金の相場は、例えば「勤続20~24年」「大学卒」「自己都合」の場合、約780万円です。
勤続年数が数年違うだけで、退職金の相場に大きな差が出てくることがわかります。
※引用元:e-Stat『平成30年就労条件総合調査(退職給付(一時金・年金)の支給実態)』
※勤続20年以上、かつ45歳以上の定年退職者の平均給付額です。
【定年退職】 勤続35年で2173万円
定年退職したときの退職金の相場は、「大学卒」「勤続35年以上」の場合、2,173万円です。
ただし、例えば「40歳で転職して、60歳で定年退職になった人」など、定年退職でも勤続年数が35年より短い場合、それに応じて退職金の相場も下がります。
※引用元:e-Stat『平成30年就労条件総合調査(学歴・職種、勤続年数階級、企業規模別定年退職者1人平均退職給付額)』
また、企業規模が大きいほど、退職金の金額も高くなります。
例えば従業員1000名以上の大企業が2,435万円なのに対し、100~299人の中小規模の企業では1,785万円と、700万円近い差があります。
公務員の退職金は、民間とどのくらい違う?
2018年のデータによれば、国家公務員の退職金の相場は勤続年数35~39年で定年退職した場合、約2,301万円です。退職金の平均額は、民間企業と同様、退職理由や勤続年数によって大きく変わります。
※引用元:e-Stat『国家公務員退職手当実態調査(平成30年度)退職手当の支給状況』
アンケートは異なりますが、最新の調査結果から、国家公務員と民間企業の退職金を比較してみると、以下のようになります。
退職金の平均額でいうと、定年退職では国家公務員よりも民間企業の方が、自己都合退職では民間企業よりも国家公務員の方が、より多くもらえる傾向があるようです。
※引用元
国家公務員…e-Stat『国家公務員退職手当実態調査(平成30年度)退職手当の支給状況』
民間企業…e-Stat『平成30年 就労条件総合調査(退職給付(一時金・年金)の支給実態)』
※国家公務員の退職金の金額は1万円以下を四捨五入
※民間企業の退職金の金額は企業規模計・大学卒
退職金の種類と、最近の退職金事情
退職金は、従業員に対して退職を理由に支払われる手当
退職金(退職給付金)が支払われる意味としては、以下のようなことが挙げられています。
・老後の生活の保障
・賃金の一部を積み立てして後払い
・企業に貢献した報奨金
しかし、実際には退職金には法的な根拠はなく、会社の就業規則などに、退職金に関する記述がなければ、会社としては支払う義務はないのです。
つまり、「退職金は、退職時に必ずもらえる」というわけではありません。
退職金には、「退職一時金」と「退職年金」がある
退職金と言われてすぐに思いつくのは、一度に全額が支払われる「退職一時金」でしょう。
しかし、退職時に企業から支払われる手当としては、「退職年金」という制度もあります。「企業年金」とも呼ばれ、「国民年金」や「厚生年金」とは別に、各企業が社員のために任意で導入する年金制度です。
▼退職給付金の種類
「退職一時金」制度か「退職年金」制度のいずれかしか導入していない企業もありますし、両方の制度を併用している企業もあります。
もちろん、いずれも導入していない企業もあります。
上記「退職給付金の種類」に記載されている各種退職金の主なものについて、簡単に説明しておきます。
(A)基本給連動型 (退職一時金)
退職一時金の金額を算出する方法のひとつで、退職時の基本給を元にして、以下の式で計算します。
「基本給」 × 「勤続年数」 × 「給付率」= 「退職一時金額」
以前は多くの企業が採用していましたが、企業の業績に関係なく上昇していくことや、社員の企業への貢献度が反映されないことなどがデメリットです。
(B)ポイント制 (退職一時金)
職能、社内評価、役職や社内資格などをポイント化して、ポイント単価を合算して退職金額を算出するシステム。企業への貢献度が重要視され、退職金額に反映されるのが特徴です。
大企業を中心に、ポイント制を導入する企業が増えています。
(C)定額制 (退職一時金)
退職時の基本給は考慮せず、勤務年数によって給付額を決めるシステム。役職に対する特別な上乗せ以外は、「勤続年数」と「退職事由係数」のみで決定します。
メンテナンスなどの管理が容易なので、中小企業を中心に採用されています。
(D)中小企業退職共済制度 (退職一時金)
(E)特定退職金制度 (退職一時金)
中小企業退職共済制度は国が運営し、特定退職金制度は商工会議所や商工会が運営している、という違いはありますが、いずれも、独自で退職金制度を構築するのが難しい中小企業や商店などを対象にした退職一時金制度です。
掛け金を事業主が拠出する社外積み立て型で、企業の退職金支給の原資にあてられます。条件を満たせば、年金として受け取ることも可能です。
(F)確定給付型企業年金制度 (退職年金)
「確定給付企業年金法」に基づく企業年金制度。掛け金は、基本的には企業側が負担しますが、加入者が拠出することも可能です。
企業側が一括運用し、また給付額は企業側が保証しており、社員に責任やリスクはありません。
(G)厚生年金基金制度 (退職年金)
「厚生年金保険法」に基づく企業年金制度。掛け金は、企業と社員が折半して負担します。
確定給付型企業年金と同様に、運用も給付額保証も企業側が行うため、社員に責任やリスクはありません。
(H)キャッシュバランスプラン (退職年金)
基本的には「確定給付型」ですが、確定給付型と確定拠出型の中間的な制度です。掛け金は原則企業型負担ですが、給付金については、一定額までを企業が保証し、その残りについては、景気によって変動します。
企業側と社員側で、リスクを分担する制度です。
(I)確定拠出年金制度(企業型) (退職年金)
「確定拠出年金法」に基づく年金制度で、導入時は、「日本版401k」などと呼ばれていました。
掛け金は企業側が負担しますが、運用先は社員が決め、その運用益が社員に給付されます。
運用実績によって給付額が変動し、社員がすべてのリスクを取ります。
コラム 退職年金は「私的年金」で、3階部分に相当
国民年金と厚生年金が「公的年金」なのに対して、退職年金(企業年金)は「私的年金」です。
よく、「3階建ての3階部分」という言い方がされますが、それは、国民年金を1階部分に、厚生年金を2階部分に見立てているわけです。
(「退職一時金」は年金ではありませんが、3階部分だと思っておいていいでしょう)
公的年金と私的年金の関係
※2015年10月より、公務員の共済年金は厚生年金に統一された。共済年金の職域部分は廃止。
※参考:企業年金連合会「企業年金制度」(2016年)、厚生労働省「公的年金制度の概要」、厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金・個人年金)」
変わりつつある退職金制度
終身雇用と年功序列が当たり前だった時代は、退職金制度が大きく変わることはありませんでした。
しかし、転職が頻繁に行われ、成果主義が取り入れられるようになってきたころから、退職金制度も変化を遂げています。
退職金制度導入率は77.8%だが、減少傾向
退職金制度がある企業は、年々減り続けています。
厚生労働省「平成30年 就労条件総合調査」(2018年)では、退職金制度がある企業は全体の77.8%ですが、10年前に行われた同調査では、83.9%でした。
退職金制度が減っている原因としては、景気の減退、低金利、人口減、団塊世代の退職などにより、年金制度の維持が難しくなったことなどが挙げられます。
※参考:厚生労働省『平成30年就労条件総合調査_結果の概況』
退職一時金制度から、退職年金制度へ移行
「退職一時金」は、企業側の負担が大きく(2002年には積立金に対する優遇税制が全廃)、また、企業が倒産した場合は社員への支払いができなくなる可能性があります。
そのため、最近では、外部機関(生命保険会社や信託銀行など)に積み立てるタイプの「退職年金」が注目されています。
自社の退職金制度を調べるには?
自社の退職金制度を理解しておくことは、非常に大事なことです。
会社に内緒で調べたいときは、就業規則の「退職金規程」を確認しましょう。入社時に確認しておいて、「退職金規程」が変わるたびにチェックしておくのがベストです。
また、社員負担がある年金制度の場合は、給与明細に「企業年金掛金」といった項目があるので、確認してみましょう。
上記の方法でわからない場合は、総務や人事に問い合わせてみましょう。
密かに転職を考えている場合でも、「今から、定年後の資金計画を立てておきたいので」という言い方をすれば、問題ないでしょう。
受け取った退職金に税金がかかるの?
退職一時金を受け取ると、所得税がかかります。
しかし、税制優遇枠があり、下記の計算式で算出される金額よりも少なければ、税金はかかりません。
▼退職一時金の控除額
どの程度の控除額になるのか、実際に計算してみましょう。
「勤続35年、退職金1,500万円」の場合
(35年 - 20年)×70万円 + 800万円 = 1,850万円
退職金(1,500万円)は控除額(1,850万円)の範囲内に収まり、所得税はかかりません。
「勤続15年、退職金250万円」の場合
15年 × 40万円 = 600万円
この場合も、退職金(250万円)は控除額(600万円)以内となり、所得税はかかりません。
退職一時金は、老後の生活を支える大切な収入なので、しっかりと優遇されているのです。
まとめ
「退職金」と言うと、「退職一時金」を指すことが多いのですが、「退職年金」も含めて理解しておきましょう。
- 退職金の相場は、学歴、勤続年数、退職理由、会社の規模などによって異なる。
- 退職金には、「退職一時金」と「退職年金」があるが、両者を導入している企業、片方だけ導入している企業、まったくない企業など、さまざま。
- 今まで多かった「基本給連動型退職一時金制度」の代わりに登場した、「ポイント制退職金制度」や、「確定拠出型年金制度(企業型)」などが注目されている。
退職が決まってから慌てないように、自社の退職金制度を、就業規則などで確認しておきましょう。