かわりにもらえる手当を解説 休職中に給料は出ない?うつ病は?
何らかの事情で仕事を続けるのが難しくなり、休職せざるを得なくなったとき、給料はどうなるのでしょうか?
「休職期間でも給料は出るのか」「もし出なければ利用できる制度はあるのか」などを解説します。
休職中に給料はもらえる?
給料が支払われるかは会社によって異なる
休職中に給料が支払われるかどうかは会社によって異なりますが、ほとんどの会社ではまったく支払われません。支払われる場合でも、支払われる期間が決まっていたり、全額でなかったりということもあります。まずは、会社の就業規則を確認してみましょう。
また、下記の条件に当てはまれば、健康保険や労災保険、雇用保険から以下の手当や給付金がもらえます。
- 傷病手当金
…通勤中・仕事中以外でけがや病気をしたときにもらえる手当です。 - 休業(補償)給付
…通勤中または仕事中にけがや病気をしたときにもらえる手当です。 - 介護休業給付金
…介護休業をしたときにもらえる手当です。
上記の手当がもらえる条件や額については「休職・休業中にもらえる手当・給付金」で後述します。
なおこうした休みは、会社によって休職といったり、休業といったりしますが、上記の手当・給付を申請するときは「休業」が正しい表現です。
また、休職期間中にボーナスを満額支給する会社はあまりなく、支給されるとしても寸志程度でしょう。
※休職中のボーナスについて、詳しくはこちら→休職中でもボーナスは支給される?
休職中でも社会保険料・税金は払う必要があるので注意
休職の理由次第では、休職期間であっても手当や給付金をもらうことはできます。
ただし、この期間は会社に籍がある状態なので、健康保険や厚生年金の保険料は支払わなければなりません。
公務員の休職は一定期間給料が出る
国家公務員の場合、病気による休暇は「有給対象となる特別休暇」の扱いとなり、90日間は100%の給料が支払われます。
これは「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」や「人事院規則」で定められているもので、地方公務員についてもそれぞれの地方自治体の条例によって、同じような権利が保証されています。
こうした公務員における休業の手厚い保証は「公務員が民間企業よりも優遇されている」と言われる理由のひとつといえるでしょう。
休職・休業中にもらえる手当・給付金
休職・休業期間中にもらえる「傷病手当金」「休業(補償)給付」「介護休業給付金」について、もらえる条件・金額を解説します。
傷病手当金
傷病手当金とは、通勤中・仕事中以外でけがや病気をしたときにもらえる手当のことです。
例えば休日にスポーツをしている際に手足を骨折し、仕事を休まなければならなくなった場合などにもらえます。
もらえる条件・金額は以下のとおりです。
【条件】
- 業務外で発生した病気やけがの療養を理由に休むこと
- 健康保険に加入していること
- 仕事ができない状態であること
- 3日間連続で休み、4日目以降も仕事ができない状態であること(支給対象は4日目から)
- 休職期間中に給与が支払われないこと
※傷病手当金より給与が少ない場合は、給与の支払いがあっても差額が支給されます
【金額】
1日あたりの傷病手当金の額は、以下の計算式で算出できます。
(支給が開始される日以前の12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均)÷30日×2/3
※標準報酬月額について詳しくは→標準報酬月額の決め方|全国健康保険協会
例えば、12ヶ月間の標準報酬月額の平均が30万円の場合、1日あたり6,667円の傷病手当が支給されます。
傷病手当は最大1年6ヶ月もらえますが、期間中に出勤して給与が発生した期間も含まれます。
また、傷病手当を受けるには医師の意見書(外傷の場合は負傷原因届)などが必要になるため、申請の際は事前に必要書類を確認しましょう。
※傷病手当金の申請書類について詳しくは→健康保険傷病手当金支給申請書|全国健康保険協会
休業(補償)給付
休業(補償)給付は、通勤中または仕事中にけがや病気をしたときにもらえる手当のことです。
例えば、仕事中に機材に足を挟まれ、骨折をして仕事を休まなければならなくなった場合などにもらえます。
もらえる条件・金額は以下のとおりです。
【条件】
- 業務上で発生した病気やけがの療養を理由に休むこと
- 仕事ができない状態であること
- 休業期間中に給与が支払われないこと
※上記3点を満たす場合、4日目から支給されます。
【金額】
1日あたりの休業(補償)給付の額は、以下の計算式で算出できます。
給付基礎日額(平均賃金)×60%+給付基礎日額(平均賃金)×20%
※給付基礎日額(平均賃金)は「直近3ヶ月の賃金総額÷3ヶ月の総暦日数」で算出できます。
例えば、月給が30万円で、7月1日に事故にあった場合は、給付基礎日額が9,890円となり、1日あたり7,912円もらえます。
※休業(補償)給付について詳しくは→休業(補償)給付 給付の内容・手続き|厚生労働省
休業(補償)給付の支給期間も傷病手当金と同じく最大1年6ヶ月です。
期間内に病気やケガが治らない場合は「傷病年金」に切り替えることになります。傷病年金を利用する際は別途手続きが必要になるので注意しましょう。
なお、休業補償と混同されやすいものに「休業手当」があります。「休業手当」は会社都合によって生じた休業に対して、従業員に平均賃金の6割以上を支払うこと。一方、「休業補償」は労災保険から支払われる給付のことを指すため、「支払うのが誰か」「どのようなときに支払われるのか」が異なります。
介護休業給付金
介護休業給付金は、家族の介護のために仕事を休まなければならなくなった場合にもらえます。もらえる条件・金額は以下のとおりです。
【条件】
- 雇用保険に加入している
- 下記1、2を満たす家族を介護するための休業である
- 病気やけが、身体上もしくは精神上の障害によって、2週間以上の常時介護(歩行、排泄、食事などの日常生活のサポート)をする必要がある
- 配偶者(事実婚含む)、父母(義父母)、子(養子)、配偶者の父母(義父母)、祖父母、兄弟姉妹、孫
- 介護休業開始日前の2年間のうち、基本給の支払い対象となっている日がひと月に11日以上あり、それに該当する月が12ヶ月以上ある
- 休業開始の2週間以上前に、介護休業期間の初日と末日を示した「介護休業申請書」を会社に提出した上で休業を取得している
- 休業期間中の就労日数が10日以下である
- 休業期間中に離職していたり、休業期間終了後に離職したりする予定がない
【金額】
介護休業給付金の額は、原則、賃金月額×67%で算出できます。
※賃金月額は「賃金日額×支給日数」で算出できます。
※賃金日額は会社がハローワークに提出する休業開始時賃金月額証明書(票)により決定され、原則、「介護休業開始前6ヶ月間の賃金÷180」で算出できます。
例えば、賃金月額が30万円の場合、1支給対象期間の支給額は20万1,000円となります。
支給の対象期間は1ヶ月ごとで区切られ、最長3ヶ月(通算93日)です。
ただし、2017年1月1日以降に介護休業給付金制度を利用する人については、通算93日を最大3回まで分割して取得することができます。
なお、上記で紹介した条件は無期雇用に該当するものです。
有期雇用者の場合は「1年以上雇用されていること」「介護休業の開始予定日から数えて、93日後から6ヶ月経過する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」が条件として追加されます。
1ヶ月間をまるまる介護休業期間とする場合は「自身の月給の2/3程度」を給付額の目安とすると良いですが、賃金月額に応じて給付金の上限額と下限額が設定されているので注意が必要です。
この上限と下限は毎年8月1日に更新されるため、事前に確認することをおすすめします。
※詳しくは→介護休業給付の内容及び支給申請手続について|ハローワークインターネットサービス
まとめ
一般的に休職期間中は給料の支払いがないことが多いですが、「会社のルール」によっては給与の支払いがあったり、「休職の理由」によっては、手当・給付金を受けられたりする可能性があります。
何らかの事情で休職を余儀なくされた場合は、勤務先の就業規則などを確認するとともに、各種制度の利用も検討しましょう。
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所