手取り・結婚・貯金の厳しい実態 年収200万円で生活できる?

「毎月カツカツの生活」というイメージがつきまとう年収200万円。今は一人暮らしでも、将来的に結婚して子どもをもつとき、車や家を買うときはどうなるのでしょう?

日々の生活から将来の買い物まで、年収200万円の生活の実態を解説します。

年収200万円は人口の14.8%!その実態とは

年収200万円は、日本の平均年収である約443万円を大きく下回る金額です。

全世帯に対する人数の割合や手取り金額など、年収200万円の実態をご紹介します。

年収200万円台の人は6人に1人

年収200万円台の人は給与所得者全体の14.8%(782万人)で、6人に1人という割合です。(令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁)。

男女別では、男性は全体の10.5%=およそ321万人、女性は全体の20.9%=およそ461万人で、女性のほうが多くなっています。

男性としては少なく女性としては普通

男女別の平均年収はそれぞれ男性が545万円、女性が302万円となっていますので、「年収200万円台」は、男性としてはかなり少なく、女性としては普通の収入であるといえます。

ちなみにボリューム層としては、男性は年収400万円超~500万円以下が17.5%と最も多く、女性では100万円超~200万円以下が22.5%で最多です。

<区分/%>【男性】~100万円/3.5|~200/万円/6.7|~300万円/10.5|~400万円/16.9|~500/万円/17.5|~600万円/13.8|~700万円/9.4|~800万円/6.8|~900万円/4.4|~1,000万円/3.0|~1,500万円/5.4|~2,000万円/1.3|2,000/万円~/0.9【女性】~100万円/14.3|~200/万円/22.5|~300万円/20.9|~400万円/18|~500/万円/11.4|~600万円/5.9|~700万円/3|~800万円/1.7|~900万円/0.8|~1,000万円/0.4|~1,500万円/0.8|~2,000万円/0.2|2,000/万円~/0.2

※参考→令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁

手取りは月収13万円・年収160万ほど

年収200万円の人の月収は単純計算で16.6万円、所得税や社会保険料が天引きされた後の手取りは13.3万円手取り年収は約159.6万円になります。

具体的に天引きされる金額はひと月約3万円で、計算例は以下のとおりです。

【年収200万円の人の手取り例(30歳独身男性・東京在住)/】<収入/天引き>総支給額(給与)/16万6,000円/健康保険(協会けんぽ)/8,500円/厚生年金/15,555円/雇用保険/996円/所得税/2,333円/住民税/5,341円/差し引き支給額/13万3,275円

ひとり暮らしの場合はここから家賃、光熱費、食費などを支出していくと考えると、かなりの節約を心がけなければならないとわかります。

コラム:世帯年収が200万円の家庭はどのくらい?

厚生労働省の「令和3年国民生活基礎調査」では、世帯年収で年収200万円未満の割合は18.5%。200万円台だと13.3%です。

<区分/%>~100万円/5.4|~200/万円/13.1|~300万円/13.3|~400万円/13.4|~500/万円/10.5|~600万円/8.3|~700万円/7.9|~800万円/6.0|~900万円/5.3|~1,000万円/4.0|1,000万円~/12.5

※参考→令和3年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省

100万円から400万円が13%前後でほぼ横並び。それ以上の収入では世帯数が徐々に少なくなる一方、世帯年収1000万以上が12.1%とやや高いのもポイントです。

年収200万円の家計簿【1人暮らし/夫婦】

年収200万円の場合、月々の収支はどのようなものになるのでしょうか。

1人暮らしの場合と、夫婦2人の世帯の場合で考えてみましょう。

1人暮らしの場合

1人暮らしの場合の収支例(1ヶ月)は以下の通りです。

地方病院で医療事務として働く20代女性の収支例

【タイプ別/家計簿/ひとり暮らし・年収200万円】20代女性(地方病院の医療事務)/手取り月収/13.7万円/家賃/服飾費¥35,000/¥7,000/水道光熱費/日用品費/¥10,000/¥10,000/通信費/奨学金返済/¥7,000/¥8,000/食費/貯金最低額/¥20,000/¥10,000/交際費/¥15,000/支出計/12.2万円/(貯金最低額含む)/残金/1.5万円

この例の場合では、最低ラインにしている貯金のほかに、1万5,000円が手元に残ったため、合計2万5,000円を貯金することができます。

ただし、体調を崩して働けない期間が発生した場合や、友人の結婚式がありご祝儀を包んだ場合は、貯金ができなかったり収支がマイナスになったりする可能性があります。

赤字の月があっても途方にくれないように、少しずつでも貯金することが重要です。

<節約ポイント>

自炊を心がけ、食費が月々2万円になるように節約しています。

また、貯金の最低額を決めていることでお金を使える範囲が明確になり、最低額を上回れば気持ちの余裕にもつながります。

連絡手段や情報ツールとしてスマホが必須なため、どうしても確保したい通信費は削らずに、服や日用品を安くまとめ買いする・支出を翌月に回す方法で調整します。

ただし、地方在住のため家賃が35,000円に抑えられているものの、これより家賃の高い都市部に住むのは、家賃補助がない限り難しいでしょう。

結婚している場合(子どもなし)

一人暮らしでは、ぜいたくをせずイレギュラーな支出がなければ、日々の生活費は貯金を含めてやりくりできそうなことがわかりました。

では、結婚している夫婦(片働き)の場合はどうでしょうか。

片働きで社宅暮らし、妻は専業主婦の収支例

【タイプ別 家計簿/片働き夫婦・年収200万円】社宅に住む片働きの夫婦/手取り月収/14.0万円/家賃/服飾費¥25,000/¥8,000水道光熱費/日用品費¥15,000/¥8,000/通信費/保険料/¥12,000/¥6,000/食費/貯金最低額/¥25,000/¥10,000/交際費/¥25,000/支出計/13.4万円/(貯金最低額含む)/残金/0.6万円

同じ収入でも、片働きで扶養している配偶者がいると天引きされる税金が安くなるため、手取りが多くなっています。

しかし、それでも臨時の出費に対応するのは難しく、貯金もあまりできないため、生活のさまざまな場面でムダが許されない厳しい収支だといえるでしょう。

<節約ポイント>

二人分の洗濯物がありますが、節水して水道代を抑えています。

また、実家から米や野菜が送られてくるため、食費をあまり使わずに済んでいます。

また社宅に入居することで、家賃の負担を抑えつつ車を使わずに通勤できていることもポイントです。

ただし、外食や賃貸などにお金を使う余裕はまったくありません。

挙式や子どもを考えるなら収入アップを

一人暮らしと夫婦での生活を比べてみると、いずれも気軽に旅行に行くようなぜいたくはできず、一人暮らしでは節約でやりくり可、二人での生活となるとかなり厳しい状況です。

夫婦どちらかが病気になり入院が必要になったりしたら、たちまち生活が行き詰まってしまいます。

社宅や両親の持ち家に住むなど、住居や車の負担が少なければやりくりできますが、通常の賃貸で暮らし、車を利用するような生活は無理があります。

また、数十万円のお金を貯めるには時間がかかるため、結婚式や新居への引っ越し、子育てを視野に入れるのなら、共働きや転職による収入アップは避けて通れない課題です。

車や住宅ローン、貯金にお金を回せる?

車や住居は給料の多い少ないに関わらず、生活を支えるために必要なもの。

実際のところ、年収200万円でこのような“大きな買い物”はできるのでしょうか?

貯金は月1.3万円目標

年収200万円では月々の手取りが13万円前後になるため、最低ラインとして10%にあたる1.3万円を目標に貯金しましょう。貯金の目安は手取りの10%~15%ほどといわれています。

ただし実家で暮らしていたり、勤務先の宿舎や社宅に住んでいたりして住居費や食費の負担が少ない場合は、手取りの30%にあたる4万円程度を目標として考えましょう。

車は40万円までが現実的

車はずばり「中古で40万円程度の軽自動車」が現実的です。

50万円までは、自動車を購入したときにかかる自動車税環境性能割が免除されます。車の価格を抑えて、税金の負担を少しでも減らすようにしましょう。

※参考→自動車税環境性能割|東京都主税局

ローン返済の試算

実際に40万円あるいは50万円の車を購入した際の、ローン返済額を試算してみましょう。金利3%で、返済期間は3年か5年とします。

【ローン返済の試算】返済期間が3年/1ヶ月/1年/返済期間が5年/1ヶ月/1年/40万円の車を買ったとき/11,632円/139,589円/7,187円/86,249円/50万円の車を買ったとき/14,540円/174,487円/8,984円/107,812円

普段貯金している額が1.4~2万円程度だとすると、返済期間3年では家計に赤信号が灯ってしまいます。

自動車は購入時以外にもさまざまな維持費用が必要になるので、5年ほどの返済期間は想定しておくことをおすすめします。

※参考→マイカーローン返済シミュレーション|JAバンク

車の維持費がかかることも忘れずに

車の購入後の税金や維持費も、見逃せない大きな負担です。

車検に年5万円、自賠責保険に年1万数千円程度、さらにガソリン代がかかってくるので、通勤など毎日の行動に必須という場合を除いては、車が本当に必要かどうか慎重に考えなければなりません。立地によっては、毎月の駐車場代もかかります。

毎年5月に支払う自動車税は排気量が大きいほど高くなり、普通車より安い軽自動車でも1万800円必要です。また、車の重さに応じて自動車重量税も設定されています。

このように、購入時も購入後も出費が続きます。車は貯金が貯まってから買うのが現実的です。

住宅ローンは難しい

さらに高額な買い物である住宅は、相当厳しい負担になってしまいます。賃貸ではなくマンションや一戸建てを買いたいと考えている場合は、長期的な視点での検討が必要です。

1,400万円程度まで組めるが、非現実的

住宅金融支援機構が提供している長期固定金利住宅ローン「フラット35」では、年収200万円・返済期間35年・金利1.610%での借り入れ可能額の目安は、約1,600万円となっています。

借り入れ「可能」と聞くと年収が少なくてもなんとかなるのでは? という印象を受けるのではないでしょうか。

しかし、借り入れ可能額はあくまで収入や返済方法をもとにした試算(計画)です。そのため、実際に滞りなく返していける額とは限りませんので、自分の収入から返済できる現実的な金額を考える必要があります。

1000万円の35年ローンだと月3万円

1,000万円の住居で35年ローン、金利が1.610%だった場合、毎月の返済額は約3万円です。

借入額は1,000万円ですが、最終的に支払うのは1,300万円以上になります。借り入れ可能額いっぱいの1,600万円の場合、月々の返済額は約5万円、最終的な支払額はおよそ2,094万円に達します。

※参考:住宅金融支援機構 長期固定金利住宅ローン「フラット35」https://www.jhf.go.jp/

ローンの主な審査項目

国土交通省が行った民間住宅ローンの実態に関する調査では、融資を行う際に考慮する項目として、さまざまな内容が挙げられています。

そのうち令和4年度調査で9割以上の金融機関が挙げている重要な項目は以下の8つです。

  • 完済時年齢
  • 健康状態 
  • 担保評価
  • 借入時年齢
  • 勤続年数
  • 年収
  • 連帯保証
  • 返済負担率

金融機関にとって気になるのは、数十年に渡る返済を、途中でリタイアすることなく遂行してくれるかどうか。

現時点での年収のほかにも、いつ借りるのか(返し終わる時に定年を過ぎて収入が減っていないか)、今後昇給していくのかといった将来的な要素がポイントとなるようです。

年収200万円の人が収入や貯金を増やすには?

年収200万円は、一人暮らしや若いうちならあまり苦しくは感じないかもしれません。ですが、将来や家庭生活を考えると、収入アップは不可欠です。

この章では、そのために有効な2つの手段をご紹介します。

雇用保険や自治体のサポートを利用する

「出費を少しでも減らしたい」そんなときは、就職や生活の公的なサービスを受けられないか確認してみましょう。

公的なサポートとしては、以下のものが挙げられます。

教育訓練給付金

ハローワークで申請できる雇用保険の1つで、中長期的なキャリア形成の支援を目的として、教育訓練の費用の一部が支給される制度です。

厚生労働大臣が指定する教育訓練を受けた人が、一般的教育訓練では受講費用の20%(10万円まで)、より長期的なキャリア形成を支援する専門実践教育訓練では受講費用の50%(年間40万円まで)サポートしてもらえる可能性があります。

雇用保険に加入している(していた)年数などの条件があるため、教育訓練を受けるつもりであれば、給付金の対象となるかハローワークに確認してみましょう。

公営住宅

自治体の公営住宅に入居できると、経済的な負担を抑えられるかもしれません。

例えば東京都営住宅は、東京都内に居住していて、同居する家族がいる人を対象にしています。

応募の条件は、家族が世帯に2人の場合年間351万円(所得金額は227万円)以下の給与収入であることです。

その家賃は、所得が185万6,000円超~204万8,000円の場合、2DKで2万5,200円、3DKで4万3,500円などとなっています(練馬区、築30年以上)。

家賃の負担が大きい、あるいは職場が遠く引っ越したいが実現できずに困っているといった場合に、検討してみてはいかがでしょうか。

年収200万円ほどであれば、公的なサポートを受けられる可能性があります。生活に不安があるときは、自治体の制度や地域のハローワークを活用してみましょう。

正社員やフルタイム勤務への転職を考える

現在、非正規雇用であったり、短時間勤務で家計が苦しかったりするのであれば、やはり正社員やフルタイム勤務を目指すのは有効な解決策となります。

資格があれば資格手当のつく職種に転職したり、非正規であっても昇給や正社員登用の可能性が大きい仕事を探したりしてみましょう。

共働きをするなら配偶者控除を意識して

夫婦2人で片働きであれば、もう1人も就職(再就職や復職も)し共働きで収入を得ることで、家計が楽になります。

この場合収入を150万円以内に抑えていれば配偶者特別控除の対象となり、夫婦のうちメインで稼ぐ方の所得税が安くなります。

収入を増やすために働いたのに、かえって税金の負担がつらくなってしまったという事態にならないよう、意識して働きましょう。

※所得税について詳しくは→所得税の控除とは?控除一覧&計算例

 

まとめ

働く人の6人に1人と言われる水準、年収200万円。一人暮らしや当座の生活はやりくりできても、将来を考えると、そのままでは大変厳しい収入といえるのではないでしょうか。

この記事を、転職や再就職も含めた、ライフプランを考える参考にしてみてください。