非課税や全額支給の実態とは 交通費は上限あり?なし?
毎日の通勤に必要な交通費。自腹を切って支払うと負担が大きいため、全額支給されるか気になるところです。
会社から支払われる交通費に上限はあるのでしょうか。
交通費に上限はある?ある場合はいくら?
交通費の上限額はあるのでしょうか?また、ある場合は一体いくらなのでしょうか?
ここでは、上限規定がある場合と規定がない場合に分けてご紹介していきます。
交通費に上限があるかは企業による
交通費(通勤手当)に上限があるかどうかは、企業によって異なります。
そもそも交通費の支払いは、会社が任意で行うものです。
ほとんどの企業が交通費を支給していますが、実は法律上、会社が交通費を払う義務が定められているわけではありません。
そのため、交通費の上限金額も会社が自由に決めることができます。
交通費支給や上限規定の有無に関しては、企業の求人票や就業規則、雇用契約書(雇用条件の通知)などを見ればわかります。自分が勤める会社の規則を確認してみましょう。
上限規定ありの場合平均3万4,000円
「企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査」によると、上限規定がある企業では、上限額の平均は月3万4,260円です。
交通費を支払っている企業のうち、期間を定めずに雇われている常用労働者(≒正社員)の通勤手当に関しては、上限の規定がある割合が39.3%となっています。
中でも上限額が「4万円以上」の割合が29.8%、次いで「1万~2万円未満」が23%となります。
企業規模が大きいほど上限額が高くなる傾向にありますが、自宅と職場が遠く上限を超える場合などは、差額を自腹で払わなければならない可能性があります。
交通費の負担が重い場合は、職場の近くに引っ越すなど対策を検討してみましょう。
また、実際の交通費の相場は、フルタイム勤務で1万2,447円、パートタイム勤務で7,710円と、上限を大きく超えることはない金額におさまっているようです。
※参考→企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構
上限規定なしの場合、交通費全額支給
求人票や雇用契約書に「上限規定なし」「交通費全額支給」などと規定されていれば、基本的に交通費は全額支給されると考えて良いでしょう。
ただし、交通手段や通勤距離などに条件がある場合とない場合があります。
条件がない場合
同調査によると、上限規定がない56.2%の企業のうち約8割が、事実上の制限もないとしています。
このようなケースであれば、例えば遠方から新幹線で通勤している社員の交通費も、会社側が支払ってくれます。交通費がかさむ人にとっては、全額支給してくれる会社はありがたい存在です。
条件がある場合
上限規定がない企業のうち約1割が実際には上限があると回答しています。この場合の上限額の平均は2万7,583円となっています。
交通費の支払いに関して、実は細かい条件がついていることも少なくないので、面接や給与の確認時に、念のため会社に問い合わせておくと安心です。
実際のケースとして考えられるのが、自宅と会社の距離が2km未満の場合、交通費の支給対象にならないことがあるという場合です。理由は税金が関係するためです。
詳しくは次の「交通費は一定の範囲で非課税になる」で解説しています。
国家公務員は月5万5,000円が上限
国家公務員の交通費の上限は、月5万5,000円です。国家公務員の通勤手当については人事院規則で定められています。
公共交通機関を利用する場合は「半年分の定期代」を一括で支給されるのが特徴で、そのひと月あたりの限度額が5万5,000円に設定されています。
自動車などを使用して通勤する人に対しては、距離に応じた金額(2,000円~3万1,600円)が支給されます。
地方公務員は自治体によって金額が異なりますが、国家公務員に準ずる形で定められています。
※参考→国家公務員の諸手当の概要|人事院
交通費は一定の範囲で非課税になる
交通費の上限などの規定は、非課税の枠内におさまるように決められていることが多いです。
交通費は給与と異なり、一部は課税対象になりません。ここでは非課税限度額や非課税の条件について説明します。
公共交通機関では月15万円まで非課税
公共交通機関または有料道路の利用に対する通勤手当は、月15万円まで所得税が非課税となります。
以前は交通費の非課税限度額が10万円でしたが、平成28年度の税制改正により15万円に引き上げられました。
具体的な条件は以下の通りです。
交通費として認められるのは、「1ヶ月あたりの合理的な運賃の額」です。つまり、複数ルートがあっても基本的に最短距離・最安値の経路を選ぶ必要があります。
わざわざ遠回りをしてより多くの交通費を手に入れようとする行為は、不正受給や横領にあたります。
非課税限度額を超えると課税対象になる
非課税限度額を超えた場合と、自転車や徒歩通勤で片道2km未満の場合は、所得税が課税されます。
例えば自宅から会社まで片道16kmの自動車通勤で、交通費が1万5,000円支給されている場合、1万2,900円が非課税で、差額の2,100円が課税対象となります。
通勤距離が片道2km未満の場合、自動車や自転車、徒歩で通勤していると全額が課税対象です。
厳密には公共交通機関を使う場合通勤手当は非課税対象ですが、距離が近いと必ずしも交通機関を使う必要がないため、通勤距離が2km未満の社員に対しては一律に「交通費なし」と決まっていることもあります。
「2km未満でバス代が支給されない」のはこのケースに当てはまります。
ちなみに、年金や健康保険などの社会保険料の場合、交通費もすべて「標準報酬月額」に含まれます。所得税とは異なり、一部が金額の計算から除外されることはありません。
※標準報酬月額について詳しくはこちら→標準報酬月額とは?
交通費に上限を設けるのは違法?
そもそも、企業が交通費に上限を設けることは違法ではないのでしょうか?
交通費は「上限あり」や「支給なし」でも違法ではない
交通費をまったく支払わない会社はほとんどありませんが、交通費の支給は法律で定められた義務ではありません。そのため、上限を設けることや、支給しないことは違法ではありません。
ただし労働条件を書面で通知しなかったり、実態が就業規則と異なったりすると違法になる可能性があります。
職業安定法では求人広告などで虚偽の記載をすることを禁止しています。交通費に上限がある旨を伝えられた場合は、就業規則を確認してみると良いでしょう。
※参考→職業安定法|厚生労働省
就業規則の記載に反すると無効
「就業規則には全額支給と明記してあるのに、自腹で通勤するよう命じられた」
など、就業規則の記載に反した業務上の命令は無効です。言われたままに交通費を負担せず、おかしいと感じたら就業規則を確認し、総務や経理部門などに相談してみましょう。
パート、アルバイトも交通費の有無は会社による
パート、アルバイトに交通費を支給するかどうかは会社によります。
パートタイムやアルバイトには交通費が支給されないというイメージがあるかもしれませんが、そうとは限りません。非正規雇用でも「交通費全額支給」を掲げている求人はたくさんあります。
「非正規雇用や短時間勤務だから交通費なし」というルールではなく、フルタイム勤務と同様、会社ごとに交通費支給の有無・条件・上限が決まっています。
また、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」では、会社がパート、アルバイトであることを理由に差別的な待遇をしてはいけないことを定めています。
※アルバイトの交通費について詳しくはこちら→交通費支給の距離や基準
まとめ
毎日の通勤に必要不可欠な費用だからこそ、上限があるのか、全額支給してもらえるのかは知っておく必要があります。
勤務先、転職先の会社の交通費事情がどうなっているのか、求人票や就業規則を確認してみましょう。