働く人目線で徹底解説 年次有給休暇はいつから義務化された?
年次有給休暇(以下、有給休暇)の仕組みはわかっているけれど、義務化についてよく知らないという方は意外と多いのではないでしょうか。
有給休暇はいつから義務されたのか、働く人にとってどんな影響があるのか。義務化に関する疑問をわかりやすく解説します。
有給休暇はいつから義務化された?対象は誰?
ここでは義務化の対象になる人や今後の有給休暇の取得方法など、義務化の概要を説明します。
【2019年4月から】全企業で義務化
有給休暇の取得は2019年4月に義務化されました。働き方改革の一環で労働基準法が改正され、対象社員に年5日以上の有給休暇を取得させる義務が、企業側に課されました。
企業規模は関係なく義務化され、中小企業で働く人も、対象者の条件に当てはまれば年5日は必ず有給休暇を取ることになります。社員に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、会社には違反者一人に対して30万円以下の罰金などの罰則が設けられています。
有給はいつからいつまでに5日取得する?
有給休暇が付与される日(基準日)から1年以内に5日以上取得します。
労働基準法で定められている基準日は入社から半年後です。
2019年4月1日に入社した場合は2019年10月1日が基準日となり、1年後の2020年9月30日までに少なくとも5日は有給休暇を取ることになります。
注意しなければならないのは、誕生日休暇など会社が独自に設けている特別休暇を取得しても、義務化の対象である5日のうちにはカウントされない点です。特別休暇を使っても5日の計算には入れず、別の日に有給休暇を取りましょう。
対象は年10日以上の有給が付与される人
義務化の対象者は1年間に10日以上の有給休暇が付与される人です。
年10日以上の有給休暇をもらっていれば、中途入社の方はもちろん、アルバイトなど有期雇用契約者や、労働基準法の規定で一部例外とされている管理監督者も1年で5日以上有給休暇を取ることになります。
有給休暇が年10日以上付与される人の例
- 入社後6ヶ月が経過している正社員またはフルタイムの契約社員
- 入社後3年半以上経過している週4日出勤のパート社員
- 入社後5年半以上経過している週3日出勤のパート社員
※有給休暇の発生要件についてくわしくは→意外と知らない 年次有給休暇にまつわる知識のすべて
有給の取得方法は大きく2パターン
義務化により、個人が有給休暇を取る方法は大きく2つのパターンに分かれます。2つの違いは、全社的に休暇取得日を決める計画的付与制度があるかないかです。
【計画的付与あり】会社全体で決めた日に取る
計画的付与制度がある場合、会社が定めた日が自動的に有給休暇になります。
ただしすべての有給休暇が計画的付与制度に使われるわけではなく、最低5日は個人が自由に取得できる日数として残される決まりになっています。
(例)有給休暇が年11日付与される人で、そのうち5日が計画的付与制度に当てられている場合 | |
5日 | 会社によって既に取得日が決められている |
6日 | 個人で自由に日程を決めることができる |
計画的付与制度を導入する会社は、その旨を就業規則に記した上で労使協定を結ぶ必要があります。
労使協定が結ばれている以上、有給休暇と定められた日に社員が休みを取らないことは、原則として認められていません。会社で計画的付与制度が導入されている場合、決められた日はしっかり休みましょう。
【計画的付与なし】個別に希望して取得日が指定される
計画的付与制度がない場合はこれまでと同様、社員それぞれが必要な時期に有給休暇を取得します。
しかし基準日から半年後など、一定期間が経ったタイミングで有給休暇の請求・取得日数が5日未満だった場合は、会社側から希望の取得日を確認され、有給休暇を取る日付が指定されます。
既に5日以上取得していた場合は、残りの有給休暇について会社から日程を決められることはありません。
有給休暇の義務化による働く人への影響は?
これまで有給休暇を積極的に使ってきたかどうかによって、個人への影響は異なります。
気兼ねなく有給で休めるように
義務化によって会社側から有給休暇取得をすすめられるため、周りに気を遣うことなく休むことができます。
内閣府の調査によると、有給休暇を使うことに「ためらいを感じる」「ややためらいを感じる」と回答した人は63.8%もいて、取得をためらう理由としてトップだったのは「みんなに迷惑がかかると感じるから」でした。
周囲への配慮から自分だけ休むことに引け目を感じる人は少なくありません。これまで周りの負担を考えて有給休暇を取っていなかった人にとっては、義務化によって有給休暇が取りやすくなったといえます。
※参照:
仕事と生活の調和レポート2019 第3章Ⅲ 4.年次有給休暇の取得に関する意識と評価|内閣府(公表:2020年3月、参照:2022年4月4日)
自由に取れる有給は減ってしまう
計画的付与制度が会社で導入された場合、自分の都合で取得できる有給休暇の日数は少なくなります。
最低でも5日は個人が自由に取得できることが法で定められていますが、有給休暇をこれまで積極的に活用していた人は不自由に感じるかもしれません。残りの日数をできるだけ有効に使えるよう、有給休暇をいつ取得するか、あらかじめ計画を立てておきましょう。
有給休暇の義務化に伴うQ&A
ここでは半休を取った場合の扱いや前年の繰越分はどうなるのかなど、義務化によって生じる有給休暇の疑問にお答えします。
半休を取った場合も5日のうちに入る?
半日単位で取得した場合は、0.5日として5日のうちにカウントされます。
例えば金曜日の午後と月曜日の午前で有給休暇を使った場合、0.5日×2で計1日分となり、義務化の対象である5日のうち1日分を取得したことになります。
中には3時間など時間単位の有給休暇取得が可能な会社もありますが、会社のルールにかかわらず時間単位で取得した有給休暇は義務化された5日に含むことはできません。
これまで有給休暇を時間単位で取得することが多かった方は、半日単位か1日単位で計5日分は確実に取れるよう、計画を立てておきましょう。
会社から5日以上取得するように言われることがあるのはなぜ?
有給休暇に関する会社からの説明で、5日ではなく8日など、中途半端な日数を取得するように言われることがあるかもしれません。
これは、入社年と翌年以降で有給休暇の基準日(付与日)が変わったためと考えられます。
入社年と翌年以降で基準日が変わった場合、「入社年の基準日」から「翌年の基準日の1年後」までをひとつの期間とみなし、その長さに応じた日数を計算して取得することができます。
日数の計算方法は、「月数÷12×5日」です。
例えば入社日が2019年4月1日で、入社年は同年10月1日に有給休暇が付与され、翌年度以降は4月1日に有給休暇が付与される場合では、2019年10月1日~2021年3月31日の18ヶ月間をひとつの期間とします。
この場合、期間の長さに応じた日数は18(月数)÷12×5日=7.5日となり、少なくとも7.5日の有給休暇を取ることができます。半日単位の有給休暇がない会社の場合は、日数を繰り上げて8日以上取得します。
※引用:
年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省(施行:2019年4月、参照:2022年4月4日)
前年の繰越分を5日使った場合の扱いは?
前年の繰越分を今年のうちに5日使った場合も、義務化の対象となる年5日の有給休暇を消化したとみなされます。
1年間で5日以上の有給休暇を取れば良いため、使った有給休暇が前年の繰越分か今年の付与分かは問われません。
入社1年目で、法定の基準日より前に有給が付与された場合は?
法定の基準日である入社後6ヶ月を待たずに年10日の有給休暇が付与された場合は、付与された日から1年以内に5日の有給休暇を取得します。
例えば2019年4月1日入社で、入社日に年10日の有給休暇が付与される会社ならば、2019年4月1日から2020年の3月31日までが義務化の対象となる1年とみなされます。
また、10日のうち一部だけを基準日より前倒しで付与された場合は、付与日数が合計で10日に達した日が基準日となり、その日から1年以内に5日以上有給休暇を使うことになります。
※引用:
年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省(施行:2019年4月、参照:2022年4月4日)
まとめ
今回の有給休暇の義務化は働き方改革の一環で決まったものですが、もともと労働者には有給休暇すべてを使う権利が与えられています。
年5日といわず、積極的に有給休暇を取得しましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。