抜け道や例外があるって本当? 派遣の3年ルールとは?
派遣でよく聞く「3年ルール」。その内容についてよく知らない人も多いのではないでしょうか? 3年ルールの概要や、その抜け道について紹介します。
派遣の3年ルールとは
派遣の3年ルールとは、一体どのようなものなのでしょうか。まずはその制度について説明します。
同じ派遣先・部署で3年以上働けないという決まり
派遣の3年ルールとは、原則として「派遣社員は同じ派遣先の同じ部署で3年以上は働けない」ことを定めた制度です。
3年ルールは、厳密にいうと「派遣社員」視点と「企業」視点の2種類に分かれます。
【派遣社員】は同じ職場で3年以上働けない
派遣社員の契約期間は、「派遣先1社につき最短1ヶ月~最長3年」と定められています。
たとえ派遣元の派遣会社を変更しても、3年ルールを回避することはできません。これを「個人単位の期間制限」といいます。
ただし同じ派遣先であっても、部署異動をすれば3年を超えて働くことができます。
※くわしくは→部署や課を異動する(3年ルールの抜け道)
例えば2016年4月1日から派遣社員として勤めている場合、その職場で働けるのは最長で3年後の2019年3月31日まで(部署異動をしない場合)。
次の日である2019年4月1日は、期間を過ぎる最初の日として「抵触日」と呼ばれます。
【企業】は派遣社員を3年以上受け入れてはいけない
3年ルールには「個人単位の期間制限」とは別に、「派遣先は3年以上派遣社員を受け入れることができない」という「事務所単位の期間制限」も定められています。
そのため、ある派遣先で派遣社員Aが1年間働いて退職した場合、その後新たに派遣されたBは残りの2年しか働くことができません。
よって「個人単位の期間制限」には当てはまらないものの、「事務所単位の期間制限」に該当しているために、3年に満たない期間でもその派遣先で働けなくなるケースがあります。
このとき、派遣社員Bが派遣元を途中で変えた場合でも、事務所単位の通算期間はリセットされません。
ただし、3年ルールの上限期間を超える場合は、意見聴取をして過半数労働組合等の反対意見がなければ、さらに最長3年間派遣受け入れ期間を延長することが可能です。
実際は、企業が3年で派遣受け入れを打ち切るケースは少なく、延長措置を取っている企業が多いようです。
なお、延長することについて回数の制限はなく、実際には何度も延長することもできます。
※派遣社員についてくわしくは→派遣社員とは?正社員との違い・デメリットもわかりやすく解説
3年ルールにあてはまらない例外ケース
派遣の3年ルールには例外があります。以下の5つのケースでは、派遣であっても同じ派遣先の同じ部署で3年以上働けます。
- 派遣元で無期雇用されている
- 60歳以上
- 終期が明確な有期プロジェクトに派遣されている
- 日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)
- 産休・育休・介護休暇などを取得する人の代わりに派遣されている
コラム:派遣の専門26業種も3年ルールが適用に
かつて、専門知識や技術などを要する専門26業種については、例外として派遣の期間制限がありませんでしたが、現在は専門26業種であっても派遣の3年ルールが適用されます。
2015年に労働者派遣法が改正され、その決まりが廃止されたためです。
※参考:
派遣元事業主の皆さまへ|厚生労働省(施行:2015年9月30日、参照:2022年4月4日)
状況別・派遣の3年ルールの抜け道
派遣の3年ルールの抜け道、すなわち同じ派遣先で3年以上働く方法として、以下の3つが挙げられます。
- 部署異動をする
- 派遣元に無期雇用してもらう
- 派遣先に直接雇用してもらう
部署や課を異動する
1つ目の抜け道は部署異動。
意見聴取をして過半数労働組合等の反対意見がなければ、同じ派遣先でも「人事課→会計課」など課を変えることで、さらに最長3年働くことができます。
ただし、課や部署が変わることで、これまでのスキルが生かせなくなったり、不慣れな業務を担当しなければならなくなったりする場合もあるので、注意が必要です。
派遣元に無期雇用してもらう
2つ目の抜け道は、派遣元(派遣会社)で有期雇用から無期雇用にしてもらうこと。
無期雇用派遣には3年ルールは適用されません。派遣元に有期雇用派遣から無期雇用派遣への変更を依頼し、承諾されれば同じ派遣先で3年以上働くことが可能になります。
無期雇用派遣への転換は、同じ派遣会社の派遣社員として5年以上働くと可能になります。
※無期雇用派遣については→無期雇用派遣とはどんな働き方?メリット・デメリットやボーナスは?
派遣先に直接雇用してもらう
3つ目の抜け道としては、派遣先に直接雇用(正社員、契約社員、パート・アルバイトなど)してもらう方法があります。ただし、この場合は派遣元と派遣先が相談する必要があります。
また、派遣のときよりも給料が下がったり、責任が増えるだけだったりと、条件が悪くなることもあるので、雇用条件をしっかり確認しましょう。
※正社員登用についてくわしくは→「派遣から正社員」が難しいワケ|正社員を目指す2つのルートとは
コラム:正社員を目指して転職活動をする方法もある
派遣の3年ルールに関わらず、ゆくゆくは正社員になることを目指している場合、早いうちから正社員として働ける会社を探して転職活動をしたほうが良いでしょう。
なぜなら、派遣社員としてのキャリアが長くなればなるほど、正社員への道が遠のいてしまう可能性があるからです。
また、派遣先に直接雇用され、契約社員やアルバイトになれたとしても、そこから正社員になれるとも限りません。
ゆくゆくは正社員になれるかもしれないという期待を抱いたまま派遣社員として働き続けると、精神的にも疲れてしまいます。
派遣の3年ルールに関するQ&A
派遣の3年ルールにまつわる疑問を紹介します。
5年ルールとの違いは?
3年ルールと5年ルールは、制度の主旨も対象も異なる、まったく別の制度です。
5年ルールは有期雇用されているすべての労働者を対象にしており、同じ職場(派遣社員の場合は派遣元)で勤続年数を5年超えた場合、(派遣社員の場合は派遣元への)「無期雇用」への変更を申し込むことができるという制度です。
5年ルールにより契約期間満了による雇い止めのリスクがなくなりますが、無期雇用=正社員というわけではないので、雇用条件をしっかり確認しましょう。
3年ルールで派遣を辞めた場合、すぐ失業給付をもらえる?
3年ルールの契約期間満了にて離職した場合、給付制限期間なしで失業給付をすぐにもらえるとは限りません。
例えば、派遣元に対して「次回の更新を希望しない」「新しい派遣先の紹介を拒否した」という場合は「自己都合退職」となり、失業給付の受給手続き翌日から7日間とその後2ヶ月間の給付制限を受ける可能性があります。
一方、契約期間満了前に次の派遣先を紹介されず、さらに契約期間満了後の1ヶ月間、同じ派遣会社からの就業を希望していても働けない場合は「会社都合退職」となり、2ヶ月の給付制限なしで失業給付をもらうことができます。
派遣切りに遭った場合、どうすればいい?
契約満了前に派遣社員との契約を打ち切る「派遣切り」の場合、会社都合退職になり、給付制限なしで失業給付をすぐにもらえます。
そのため、派遣切りに遭った場合はすみやかに手続きをしてください。
※派遣切りについては→「派遣切り」とは?前兆はある?違法性・対処法もわかりやすく解説!
まとめ
派遣の3年ルールとは、派遣社員が同じ派遣先の同じ部署で3年を超えて働くことができない制度です。
ただし、派遣先の部署を異動するか、派遣先に直接雇用してもらえば、そのまま働き続けることも可能です。
また、派遣元で無期雇用にしてもらう方法もあるので、状況に合わせて自分にあった働き方を検討しましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。