ストレスチェックとの関係性も 産業医の面接では何を話す?
勤務先で産業医の面接の対象になったとき「どんなことを聞かれるのだろう?」と不安になりますよね。
産業医の面接で聞かれることや、面接の対象者になる条件などをわかりやすく説明します。
産業医の面接指導とは?
まずは産業医の面接の概要や、面接で聞かれる内容を説明します。
健康に不安のある社員に対して行う面談
産業医の面接は、長時間労働などによる脳や心臓などの深刻な病気を予防するなど、社員の心身の健康を守るために行われるものです。
具体的には以下のような場合に行われます。
- 健康診断の結果やその後の措置について気になる点がある場合
- 長時間労働に該当した場合
- ストレスチェックの結果が悪く、本人が面談を希望した場合
- 休職・休職中・復職に関する相談がある場合
- その他、心身の健康に関する不安などがある場合
産業医ってどんな人?
産業医とは、企業との契約により、労働者の健康管理を行う医師です。産業医として勤務するためには、医師としての資格以外に、労働衛生コンサルタント試験に合格済、または厚生労働省が定める労働者の健康管理に関する研修を修了しているなど、一定の条件を満たしていなければいけません。
労働安全衛生法では、50~3,000人規模の会社では1人、それを超える規模の会社では2人、産業医を配置するよう定められています。
また、従業員が50人未満の会社では、産業医の配置義務はありませんが、健康診断の結果などによっては医師との面接を行うよう義務付けられています。
※参考:
厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
産業医の面接指導では何を聞かれる?
産業医の面接指導では主に3つのチェックポイントがあります。
勤務の状況
普段の労働時間や勤務状況についてのチェックです。主に下記のようなことを確認します。
- 残業がある場合はどの程度行っているのか
- 業務の中で肉体的・精神的な負担が多くないか
- 人間関係の悩みやトラブルはないか
- 突発的な対応が必要な仕事は多くないか
- 待機時間が長い仕事が多くないか
出張が多い場合は出張の頻度や交通手段、宿泊の有無なども判断基準となります。
疲労の蓄積の状況
日々の疲労が蓄積されていないかどうかのチェックです。労働者本人の様子や、休憩時間や休日がきちんととれているかなどを確認します。
また、ストレスチェックで高ストレスと判断された場合は、ストレスの要因や自覚状況について確認します。
普段の生活の状況
普段の生活状況についてのチェックです。飲酒や喫煙の習慣がある場合はその量や頻度、運動の習慣の有無、食事内容や睡眠時間などを確認します。
産業医の面接指導を受けた後はどうなる?
面接後、面接結果をもとに産業医からフィードバックがあり、場合によっては専門医に診察してもらうよう勧められます。配置転換など労働環境の変更が必要となった場合は、上司からその説明があります。
また、産業医は面接後に面接指導結果報告書や就業上の措置に係る意見書を作成し、企業はそれに合わせた対策をとります。
就業上の措置に係る意見書とは、対象となる社員が「このまま仕事を続けても問題ない」「就業時間や業務内容などに何らかの制限を設ける必要がある」「療養のために休職が必要である」といった医師の判断と、働く上で必要となる対処法をまとめたものです。
具体的には、労働時間や出張回数、就業場所の見直しなどです。労働環境について定例会議を実施したり、従業員にアンケートをとったりするなどして業務の効率化を図る場合もあります。
しかし、企業は面接指導結果報告書や就業上の措置に係る意見書に従わなければならない義務はありません。そのため、企業が産業医面接の結果をうまく活用できていないケースもあります。
※参考:
厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の面接指導について」
コラム:産業医との面接で話した内容は会社にバレる?
産業医には守秘義務があり、面接の内容は原則として労働者の許可なしで会社に報告されることはありません。
ただし、労働者が自傷行為をする危険がある場合や、伝染病などで他の労働者の健康にも影響が出るリスクがある場合などは、許可がなくとも会社に報告されるケースもあります。
産業医面接の内容を上司に伝えられたくない場合は、その旨を産業医にしっかり伝えておきましょう。
産業医の面接の対象となるケース
産業医の面接には、受ける義務がある場合と、本人の希望で受ける場合があります。
受ける義務があるケース
以下の場合は、本人の希望にかかわらず、産業医の面接を受ける義務があります。
時間外・休日労働時間が月100時間を超える特定の労働者
時間外・休日労働が月100時間を超えており、かつ研究開発業務従事者または高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、産業医の面接を受ける義務があります。
残業規制が適用されない研究開発職は、時間外労働が月100時間を超えた場合に必ず産業医面接を受けなければなりません。
日割りで毎日5時間以上の残業がある状態です。健康上のリスクが高くなり、疲労や睡眠不足による健康被害が出る場合もあるため、しっかり面接を受けましょう。
なお、高度プロフェッショナル制度の対象となるのは、
- 高度の専門的知識を必要とする業務を担当しており、職務の範囲が明確となっている
- 年収1,075万円以上
という条件を満たした場合に限られます。
具体的には、金融工学などの知識をもとに金融商品を開発する業務や、有価証券市場の相場を分析する業務、事業運営にかかわる重要項目についてのコンサルティング業務などが当てはまります。
※参考:
厚生労働省「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」
本人の希望により受けるケース
本人の希望によって任意で産業医の面接を受けられる場合は、主に以下の5つです。
時間外・休日労働時間が月80時間を超えている
時間外・休日労働が月80時間を超えた場合、希望があれば産業医の面接を受けることができます。残業時間が80時間を超えていることがわかったタイミングで、企業から産業医の面接を受けるよう勧められるケースが一般的です。
ストレスチェックで高ストレスと判断された
ストレスチェックで高ストレスと判断された場合も、産業医の面接を任意で受けることができます。
労働安全衛生法改正により、労働者が 50 人以上の事業所では契約期間が1年以上、週の労働時間が社員の4分の3以上のすべての従業員に対してストレスチェックを毎年実施することが義務付けられました。
ストレスチェックのフォーマットとして、厚生労働省は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を推奨しています。
休職や復職を検討している
休職や復職を検討している場合も、希望すれば産業医の面接を受けることができます。
かかりつけの主治医の意見に加えて、業務内容や労働環境について理解のある産業医の意見を参考にし、生活の中での注意点などを把握することに役立ちます。
健康診断で気になる結果が出た
健康診断で気になる結果が出た場合も、任意で産業医の面接を受けられます。気になる結果の例としては、下記のようなものが挙げられます。
- 血圧が高い
- 貧血の傾向がある
- 肝機能の値が高い
- 心電図に異常がある
- 血糖値が高い
健康に不安がある
業務を行う上で心身の健康に不安がある場合も、希望で産業医の面接を受けられます。上司や同僚に相談しにくい健康上の悩みを話してみるのも良いでしょう。
コラム:産業医の面接は拒否できる?
産業医の面接は、面接の対象となっていても労働者が希望しない限り拒否することができます。ただし、時間外・休日労働時間が月100時間を超える研究開発業務従事者は拒否することができません。
産業医面接は労働者の心身の健康を守るために行われるもの。面接をきっかけにより働きやすい環境になったり、業務の状況が改善されたりすることで心身のストレスが解消される場合もあります。受けることに損はないでしょう。
不調を感じたときに…
産業医の面接対象になった場合、健康被害のリスクが高い状態であることが少なくありません。下記の記事も参考に、労働環境や生活環境の改善を目指しましょう。
▼仕事によってなりやすい病気がある?
▼仕事を休むべき10の症状とは?
この記事の監修者
社会保険労務士
山本 征太郎
山本社会保険労務士事務所東京オフィス
静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。