なったらどうする? 【一覧】職業病とは?意味や例・原因と対策

劣悪な労働環境が続くことで、職業病になってしまうことがあります。そうなった時にはどうすればいいのでしょうか?

この記事では、職業病の原因や種類、対策予防について説明します。

職業病とは?意味を解説

職業病とは一体どのようなものなのでしょうか。意味や発症の原因、労働災害との違いについて説明します。

職業病とは、仕事が原因で発症する病気

職業病とは、特定の職業や業務に携わることで発症しやすくなる病気です。

「職業性疾病」や「業務上疾病」とも呼ばれ、例えば「石油精製や塗装で使用する化学物質が原因で発症するがん」、「トンネルの建設工事で粉じんを吸い込むことにより発症するじん肺」などがあります。

一方、「スーパーで品出しを担当している人が、プライベートの買い物でも商品がキレイに並んでいるか気になってしまう」など、特定の職業に就く人にみられるクセなども職業病と呼ばれることがあります。

職業病の6割は「腰痛」

職業病にはさまざまな種類がありますが、その中でも多いのが腰痛です。

厚生労働省によると、腰痛は「4日以上の休業を要する職業性疾病」の約6割を占めています。

腰痛を発症しやすい仕事として、重い荷物を取り扱う業務や、長時間のデスクワークや立ち仕事、車の運転などが挙げられます。

また、2011年に発表された「労働者死傷病報告」では、腰痛を発症した人の26.6%が看護職や介護職といった保健衛生業・医療保健業でした。これは、介護・看護の際に患者の体を支えたりする必要があり、腰に負担がかかりやすいことが理由だと考えられます。

職業病と労働災害の違い

職業病と労働災害の違いは、発症のタイミング、および発症した原因「継続的な業務」にあったかどうかです。

通勤や勤務中にケガを負う、あるいは病気にかかる労働災害は、主に突発的な事故であるものに限られます。また、同じ病気でも発症のタイミングや条件によって労災認定される場合とされない場合があります。

一方、職業病は「チェーンソーなどを使った作業を長時間行ったことで発症した末梢血管や神経の障害」など、継続的な業務によって徐々に発生するものを指すため、病気によっては初期段階だと自覚症状がなく、気づいた頃には重症化・慢性化していることもあります。

ちなみに、じん肺関連の病気など職業病でなおかつ労働災害にも該当するという病気もあります。

「職業病かも」と思ったら?対策を解説

もし職業病の疑いがあるときは、どうしたら良いのでしょうか。対策について順番に説明します。

【1】職業病リストで思い当たる症状がないか確認

職業病にかかった疑いがあるときは、厚生労働省の「職業病リスト」をみて、自分の仕事や症状に一致するものがあるか確認しましょう。

「職業病リスト」にある症状は労災補償の対象となり、業務内容や環境が原因となるものと認められれば保険給付をもらうことができます。 

※労災補償となる職業病は、下記の【一覧】労災補償となる職業病の種類 で詳しく説明しています。

※参考→職業病リスト|厚生労働省

【2】労災指定病院で仕事が原因のケガ・病気と伝える

職業病の可能性があれば、労災指定病院を受診して「仕事が原因のケガや病気」であることを伝えましょう。

もし職業病と診断されれば、診察代や治療費、薬代、入院費はすべて無料です。病院から労働基準監督署にこれらの費用が請求されるため、窓口で支払いをする必要はありません。

「なんとなく風邪っぽいかも」と近所の病院に行ったなど、労災指定ではない病院を受診した場合、一旦医療費を全額支払う必要があり、その後労働基準監督署に請求手続きを行うことで、医療費が全額返ってきます。

【3】会社で労災の手続きをしてもらう

労災保険の給付をもらうために、会社に労災の申請の手続きをしてもらいましょう。

もし会社が労災の手続きをしてくれない場合、労働基準監督署に相談することもできます。

※労災保険の詳しい手続きについては→労災保険とは?どんなときにおりる保険?

【4】場合によっては休職や転職を考える

症状によっては休職してしっかり治すことが必要です。

特に安静を必要とする場合は、医者の指示に従って無理をしないようにしましょう。

また、職業病の原因となった業務が復帰後も続く場合は再発の恐れもあるため、転職を考えるのも一つの方法です。

職業病の予防のためにできること

職業病を予防するためにはどうしたらいいのでしょうか。具体的な対策について説明します。

定期的に健康診断を受ける

早期発見のためにも定期的に健康診断を受けましょう

労働安全衛生法によって、企業は社員に定期的な健康診断を受診させることが義務付けられています。

ただし、検査項目が企業によって異なるため、検査内容によっては職業病にかかっていることに気づかない場合もあります。

そのため、身体に異変を感じたら早めに受診することが大切です。

労働環境の見直しを会社に相談する

職業病を防ぐために労働環境の見直しをしてもらえるよう、上司や会社に相談しましょう

一人で相談するのが不安な場合、同じ業務を担当する複数人の社員に協力をお願いしましょう。

例えば、設備や作業方法の見直しや、防じんマスクや保護メガネのような労働衛生保護具を整えることなどを提案し、安心して働ける環境を整えてもらいましょう。

コラム:職業病という英語はない?

職業病は日本独自の言葉であり、英語では該当する単語がありません。

そのため、仕事に伴う危険という意味で「occupational hazard」を使うのが適切でしょう。また、副作用を意味する「side effect」を使っても良いでしょう。

【一覧】労災補償となる職業病の種類

労災補償の対象となる「職業病リスト」にはどのような疾病があるのでしょうか。

原因ごとに職業病を説明します。

※参考→職業病リスト|厚生労働省

業務中の負傷が原因の病気

業務中の負傷が原因の病気には、頭部を負傷したことによる慢性硬膜下血腫や、腹部の負傷によるヘルニア、皮膚の負傷による細菌感染などが挙げられます。

状況によってさまざまな病気が考えられます。

物理的な原因による病気

作業環境や作業で取り扱うものによって引き起こされる職業病です。

作業の際にはあらかじめ危険性を理解し、リスクを減らすための配慮をした上で行うことが多いものの、野外での作業で強い紫外線を浴びた場合など、気づかないうちに疾病を起こしやすくなっている可能性も考えられるので、注意が必要です。

業務 疾病
紫外線にさらされる業務 前眼部疾患、皮膚疾患
赤外線にさらされる業務 網膜火傷、白内障等の眼疾患、皮膚疾患
レーザー光線にさらされる業務 網膜火傷等の眼疾患、皮膚疾患
マイクロ波にさらされる業務 白内障等の眼疾患
電離放射線にさらされる業務 急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
高圧室内作業、潜水作業に係る業務 潜函病、潜水病
気圧の低い場所における業務 高山病、航空減圧症
暑熱な場所における業務 熱中症
高熱物体を取り扱う業務 熱傷
寒冷な場所における業務、低温物体を取り扱う業務 凍傷
著しい騒音を発する場所における業務 難聴等の耳の疾患
超音波にさらされる業務 手指等の組織壊死

身体に過度な負担のかかる作業が原因の病気

身体の特定部分に負担が集中することで引き起こされる職業病です。

職業病で最も多い腰痛も含まれます。重い荷物を持つ業務や立ち仕事、デスクワークをしている人は腰痛対策をするよう心がけましょう。

業務 疾病
体に過度の負担が持続的にかかるような重激な業務 筋肉、腱、骨、関節の疾患・内臓脱
重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務、腰部に過度の負担のかかる業務 腰痛
さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務 前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害、運動器障害
電子計算機への入力を反復して行う業務、上肢に過度の負担のかかる業務 後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手指の運動器障害

化学物質が原因の病気

作業環境や作業で取り扱う化学物質によって引き起こされる職業病です。

自覚がないまま有害物質にさらされていることも多いため、何らかの症状が出た場合、原因となった化学物質について調べる必要があります。

業務 疾病
弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務 眼粘膜の炎症、気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
すす、鉱物油、うるし、テレビン油、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務 皮膚疾患
蛋白分解酵素にさらされる業務 皮膚炎、結膜炎、鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
木材の粉じん等を飛散する場所における業務 アレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
落綿等の粉じんを飛散する場所における業務 呼吸器疾患
石綿にさらされる業務 良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚
空気中の酸素濃度の低い場所における業務 酸素欠乏症

粉じんを吸い込むことが原因による病気

粉じんを吸い込むことが原因による職業病には、じん肺が挙げられます。

業務中に粉じんを吸い込むことで発症しますが、初期症状がほとんどないのが特徴です。ひどくなるとせき、たん、息切れなどの症状を引き起こすので、早めに対策をすることが大切です。

細菌やウイルスが原因の病気

作業環境や作業で取り扱うものが保有する細菌やウイルスによって引き起こされる職業病です。

医療関係者の場合、ウイルスを保有した患者と接する機会が多いので、二次感染を防ぐためにも注意する必要があります。

業務 疾病
患者の診療もしくは看護の業務、介護の業務、研究その他の目的で病原体を取り扱う業務 伝染性疾患
動物やその死体、獣毛、革、その他動物性の物、ぼろ等の古物を取り扱う業務 ブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
湿潤地における業務 ワイル病等のレプトスピラ症
屋外における業務 恙虫病

発がん性物質が原因の病気

作業環境や作業で取り扱う発がん性物質によって引き起こされる職業病です。

初期症状がない場合が多いので見逃しやすく、ほかの部位に転移してしまう可能性もあります。発がん性物質の種類によってがんになりやすい部分が異なります。

業務 疾病
ベンジジンにさらされる業務 尿路系腫瘍
ベーターナフチルアミンにさらされる業務
四―アミノジフェニルにさらされる業務
四―ニトロジフェニルにさらされる業務
オーラミンを製造する工程における業務
マゼンタを製造する工程における業務
ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務 肺がん
ベリリウムにさらされる業務
ベンゾトリクロライドにさらされる業務
コークス、発生炉ガスを製造する工程における業務
石綿にさらされる業務 肺がん、中皮腫
ベンゼンにさらされる業務 白血病
塩化ビニルにさらされる業務 肝血管肉腫、肝細胞がん
ジクロロメタンによりさらされる業務 胆管がん
電離放射線にさらされる業務 白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫
クロム酸塩、重クロム酸塩を製造する工程における業務 肺がん、上気道のがん
ニッケルの製錬、精錬を行う工程における業務
砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬、精錬を行う工程、無機砒素化合物を製造する工程における業務 肺がん、皮膚がん
すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト、パラフィンにさらされる業務 皮膚がん

まとめ

職業病とは特定の職業や業務に携わることで起こりやすくなる病気のことです。

厚生労働省が作成した「職業病リスト」には労災補償の対象となる疾病が定められているので、該当する場合は労災保険の給付を受けることができます。

職業病を早期発見するためにも、定期的な健康診断を心がけるようにしましょう。

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