求人票で見分ける方法とは ブラック企業の定義は3つある

ネットでもよく話題になる「ブラック企業」。そもそも明確な定義があるのでしょうか。ブラック企業の定義や見分け方について解説します。

ブラック企業の定義とは?

「ブラック企業」という言葉の定義について、あらためて確認しましょう。

厚生労働省による一般的な特徴は3つ

厚生労働省は「労働条件に関する総合情報サイト」で、ブラック企業について定義はしないとしながらも、一般的な特徴として以下の3つを挙げています

  1. 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
  2. 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
  3. このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う

まとめるとつまり、ブラック企業とは、長時間労働やパワハラの横行といった過酷な労働環境であることに加え、それに適応できる人材だけを選別する企業のことを指す、と言えそうです。

ブラック企業の労働環境は劣悪であるため、労働者は耐えきれずに精神疾患を発症したり、過労死などにつながったりするケースが多くあります。

※出典:
「ブラック企業」ってどんな会社なの?労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省

使い捨て型・選別型・無秩序型と分けることも

若者の労働・貧困問題に取り組んでいるNPO法人「POSSE」は、ブラック企業の典型的なパターンとして、下記の3つを挙げています

  • 時間労働や過剰なノルマで社員を徹底的に働かせる「使い捨て型
  • 社員をたくさん採用し、必要な人材だけ残して辞めさせる「選別型
  • セクハラやパワハラを放置している「無秩序型

上記の特徴は、厚生労働省が挙げた3つの特徴とリンクします。

「ブラック企業」に対するイメージはさまざまありますが、これらの3つの特徴を基準として、自分の勤め先に当てはまる部分がないかチェックしてみましょう。

※参考:
若者を食いつぶすブラック企業の実態|editor

残業時間が月100時間超えは過労死ライン

ブラック企業では、残業時間が過労死ラインに到達しているケースが多く見られます

厚生労働省は、過労死ラインを「2~6ヶ月あたりの平均残業時間が80時間を超えている、あるいは1ヶ月あたり100時間を超えている場合」と定めています。

長時間労働が常態化すると、疲労の蓄積をもたらし、脳や心臓の疾患を患うリスクが高まることがわかっています。

政府が長時間労働を問題視し、法律によって労働時間を適切に管理することを企業に求めているこの時代においてもなお、依然としてブラック企業は存在しています。

入社したいと思った企業、あるいは現在の勤め先の平均労働時間も、一度チェックしてみましょう。

※参考:
過労死等防止啓発パンフレット|厚生労働省

▼残業時間の平均はどれくらい?

コラム:4人に1人が勤め先をブラック企業と認識

連合総合生活開発研究所による2019年の調査で、関東・関西圏の民間企業勤めの2,000人のうち、勤め先がブラック企業だと「思う」と回答した割合は 25.8%でした。4人に1人が、自分の勤め先をブラック企業だと認識していることになります。

業界別に見ると、とりわけ医療・福祉、教育・学習支援業などの業種が含まれる「その他サービス業」が29.5%で最も高くなりました。

 【業種別|勤め先がブラック企業だと思う割合】 その他サービス業/29.5% |卸売・小売業・飲食店・宿泊業/27.0% |建設業/25.9% |運輸・情報通信業/24.1% |製造業/23.6% |金融・保険業・不動産業/20.6% |電気・ガス・熱供給・水道業/14.3%

※参考:
第38回勤労者短観調査|公益財団法人連合総合生活開発研究所

ブラック企業の見分け方

知らずにブラック企業に入社しまうことがないよう、四季報や求人票から見分ける方法を紹介します。

ブラック企業を見分ける6つのチェックリスト

ブラック企業かどうかを見分けるツールとして『就職四季報』(東洋経済新報社)を活用しましょう。『就職四季報』には、転職サイトや企業の採用サイトでは見られない入社後の働き方に関するデータが記載されています。

『四季報』でブラック企業かどうかを見分けるチェック項目は以下の6つです。

  1. 新卒入社した社員の3年以内の離職率→若手を大事にするか
  2. 平均勤続年数
    →安心して長く働ける企業か
  3. 有給休暇の取得率
    →休みが取りやすいか
  4. 従業員数に対する毎年の採用実績数
    →人材の入れ替わりが激しくないか
  5. 男女別の採用実績数や配属部署の状況
    →女性でも活躍できるか
  6. 35歳社員の賃金最低額(一部の高賃金社員がいる場合は平均額があるため、最低額で比較する)
    →将来的に賃金が上がるか?

まず、若手社員を使い捨てることなく大切にするかを見るには(1)新卒入社社員の3年以内の離職率をチェックしましょう。

長く働けるような良好な労働環境・待遇かどうかは(2)平均勤続年数や(3)有給休暇の取得率、(6)中堅社員の賃金最低額を見ると良いでしょう。

(4)の毎年の採用実績数は、人材の入れ替わりの激しさを表します。明らかに採用数が多い場合、採ってもすぐ辞める人も多い=定着率が悪いブラック企業の可能性があります。

加えて(5)男女別の採用実績数や配属部署の状況は、女性が活躍できる職場なのかをうかがい知ることができます。

なお、企業がアンケートに回答しなかった項目には、「NA」(No Answer)と記されています。しかし、「NA」が多いからといって一概にブラック企業だとは決めつけられません。

情報開示にデリケートなメガバンクなど、ほとんどデータを公表していないケースもあるからです。

▼最新データ!新卒の離職率

ブラック企業の求人票、3つのあるある

ブラック企業は、求人票でもある程度見分けることができます

ただし、すべての特徴に当てはまる企業が100%ブラック企業であるというわけではないため「知っておけばブラック企業に入社するリスクを軽減できる程度のもの」ととらえておきましょう。

  • 常に大量に求人を出している
  • 精神論ばかりで待遇に関する記載があいまい
  • 未経験者でもOKなのに給料が高い

常に大量に求人を出している

年がら年中大量採用の求人を出している企業は、人の出入りが激しく、離職率が高い可能性があります。採用してもすぐに辞めるため、人員が慢性的に不足しているケースがほとんどです。

常に大量に採用しなければならないということは、長く安定して働くことができないほど、労働環境や労働条件が劣悪である可能性があります。就職四季報や転職エージェントなどを活用して、離職率についてもあわせて調べておきましょう。

ただし大量採用は、新規事業のための人員拡大というケースもあります。思い込みを避ける上でも、企業のIR情報などがある場合は、経営状況や財務状況をチェックしておきましょう。

精神論ばかりで待遇に関する記載があいまい

肝心の雇用形態や待遇・業務内容に関する情報があいまいなのに「夢・希望・成長」などのポジティブなキーワードを用いて精神論ばかり並べている求人票には警戒しましょう。

労働条件・待遇などを明らかにしてしまうと応募が来ないため、キャッチコピーによって無理やりイメージアップにつなげようとしている可能性があります。

また、ポジティブな言葉を過剰に並べる会社は、劣悪な労働環境に対して「気合」などの精神論で乗り越えるよう強いてくることもあります。求人票から入社後の具体的な働き方がはっきり見えない場合は、ブラック企業の可能性を考えましょう。

未経験者でもOKなのに給料が高い

求人票に「未経験OK」「未経験でも歓迎」などの言葉を盛り込みハードルの低さを語る一方で、基本給が平均的な月収を大きく超えている場合、それだけ労働条件がハード、あるいは入社後の昇給がない可能性があります。

求人票に記載してある給与が、年齢や職種・業種に見合った金額になっているか、平均年収データなどをチェックしつつ確認するようにしましょう。

また、求人票に記載の給料が高い場合、基本給にあらかじめ残業代が含まれている「みなし残業」だったり、成果に応じて給与が決まる成功報酬制だったりするケースも。

求人票を見るときは、金額だけをチェックするのではなく、内訳や算出方法など給与形態についても確認しましょう。

▼最新データ!平均月収はいくら?

コラム:ブラック企業に入社した場合は?

すでにブラック企業に入社してしまっていて、このまま働き続ければ身体的・精神的に支障が出そうな場合は、残業時間などの勤務記録を取りつつ、転職活動を始めましょう。

それも難しい場合、ひとまず退職して療養することも検討すると良いでしょう。

ブラック企業では会社のイメージを損なわないよう、自己都合退職に仕向けられるケースが多くあります。自己都合退職では退職金の金額、失業保険(雇用保険の基本手当)の金額や支給開始日に影響が出ることも。

きちんと会社都合退職だと認めてもらえるよう、求人票や雇用契約書はもちろん、毎日の出退勤時刻、業務内容を証拠としてメモしておきましょう。

※確実に退職したいとき→確実に退職できる3つの理由|病気・結婚などの例文付き

※仕事に限界を感じた時の対処法→仕事が限界…休むべき10の危険なサイン|悩み別の対処法

その他、ブラック企業の見分け方について詳しくは下記の記事を御覧ください。

まとめ

「ブラック企業」という言葉に明確な定義はありませんが、厚生労働省は「極端な長時間労働やノルマ」「コンプライアンス意識の低さ」「従業員に対する選別」の3つを特徴として定めています。

うっかり入社してしまわないように、入社したいと思う企業があった場合、離職率や有給取得率などを調べて、入社後の働き方をチェックしておきましょう。

転職に失敗してしまった場合の対策や、すぐにそこを辞めたい場合の退職方法は、以下の記事を参考にしてみてください。

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