ブラック企業の定義と、求人票でダマされないための注意点

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ブラック企業のイメ―ジ

「残業代未払い」「長時間労働」「パワハラ」……。「ブラック企業」という言葉には、日本の労働環境にまつわるさまざまな問題が含まれています。

転職を考えている人だけではなく、社会人なら誰でもその実情が気になるもの。ここでは、巷にあふれるブラック企業についての情報を取り上げながら、その定義や見分け方について紹介していきます。

【目次】
1.どんな会社がブラック企業?
法的定義はなく、各団体が独自に定義
ブラック企業を見分ける5つのチェックリスト
ブラック企業の労働条件は違法・悪質
厚労省、ウソの職安求人の罰則化&企業名公表
2.転職活動中のブラック企業の見分け方
入社リスク軽減! 求人票の「ブラック企業あるある」
『就職四季報』にもヒントが
求人情報をチェックするときのキホン
3.ブラック企業への対処方法は?
4.まとめ

1.どんな会社がブラック企業?

会社に鞭打たれるイメージずいぶん前から「ブラック企業」という言葉がネットをはじめとするさまざまなメディアをにぎわせてきました。その一方で、話題性のわりに内容をきちんと把握している方は少ないのではないでしょうか。

ファーストステップとして、どんな会社がブラック企業なのか、その定義を考えていきます。

法的定義はなく、各団体が独自に定義

ブラック企業という言葉はインターネットから生まれたスラングなので、労働基準法などでその内容が明確に定義されているわけではありません。おおよそ、「過酷な労働環境で若者を使い捨てる会社」という漠然としたイメージを抱いている人が多いのではないでしょうか。

法的な記載がないとはいえ、ブラック企業についての考え方を独自に定義している団体もあるので紹介していきます。

厚労省が紹介する“一般的特徴”は3つ

厚生労働省では『労働条件に関する総合情報サイト』で、ブラック企業について定義はしないとしながら、一般的な特徴として以下のことをあげています。

(1)労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す。
(2)賃金不払い残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
(3)上記のような状況の中で労働者に対し過度の選別を行う

一般的に言われているブラック企業のイメージと共通する部分が多く、それらが的確に整理されています。
※詳しくは→労働条件に関する総合情報サイト

「使い捨て型」「選別型」「無秩序型」と3タイプで分けるNPO団体も

一方、労働相談を行うNPO法人「POSSE」は、ブラック企業にありがちな例として、以下のような3つのパターンを挙げています。

(1)時間労働や過剰なノルマで社員を徹底的に働かせる「使い捨て型」
(2)社員をたくさん採用し、必要な人材だけ残して辞めさせる「選別型」
(3)セクハラやパワハラを放置している「無秩序型」

こちらも、厚労省があげる一般的な特徴とリンクします。3つのパターンを複数持ち合わせている会社もありそうです。
※詳しくは→若者を食いつぶすブラック企業の実態

ブラック企業を見分ける5つのチェックリスト

さらに具体的な項目をあげているのが「ブラック企業対策プロジェクト」という団体。この団体は、弁護士、労組、福祉など各分野の専門家がタッグを組み、ブラック企業がない社会を目指す取り組みを行っています。

とくに気をつけてほしいポイントとして『ブラック企業診断書』というチェックリストを発表していますので、自分の企業がブラック企業では? と悩んでいる人はぜひチェックしてみてください。

【ブラック企業診断書】
チェックの数が多いほど要注意!

  • 新規学卒社員の3年以内の離職率3割以上
  • 過労死・過労自殺を出している
  • 短期間で管理職になることを求めてくる
  • 残業代が固定されている
  • 求人広告や説明会の情報がコロコロ変わる

※詳しくは→ブラック企業対策プロジェクト

ブラック企業の労働条件は違法・悪質

仕事を抱え上司に怒られるイメージここまででブラック企業に対するイメージが明確になりましたか?

以上のことをまとめると、ブラック企業とは、残業代の出ないサービス残業やパワハラ、退職強要など、違法または悪質な労働条件で働かせる会社のことと言えるでしょう。特に新卒者や社会経験の少ない若者が被害に遭っているケースが多いです。

明らかに違法性が認められる労働条件だけではなく、肩書だけ与えられて残業手当なしで長時間労働を強いられる「名ばかり店長」「名ばかり管理職」や「偽装管理職」など、グレーゾーンにあたる状況も多いことからブラック企業に悩まされる人は減らず、根深く社会問題化しているようです。

一方、社会人経験が浅い新入社員が、ちょっとした壁にあたっただけで「ブラック企業だ!」と会社に責任転嫁してしまうケースも。

「社内の雰囲気が想像と違った」「上司に叱られた」「得意先とうまくコミュニケーションがとれない」などは、社会人として一人前に成長していく過程で誰もが経験することです。本当に「ブラック判定」すべきかは、上記の定義に当てはまるかを調べたり、第三者に相談して冷静に判断しましょう。

厚労省、ウソの職安求人の罰則化&企業名公表

ブラックリスト暗い話ばかりではなく、ブラック企業の現状が改善される兆しもあります。

ブラック企業では、違法または悪質な労働環境を隠すためにウソの求人を出していることがあります。その点について、2016年6月、厚労省はハローワークや民間の職業紹介事業者に労働条件を偽った求人を出した企業と幹部に対し、懲役刑を含む罰則を設けるべきとする報告書をまとめました。

これは、求人票に記載されていた賃金が受け取れない、就業時間や仕事内容が事前に聞いていたものと違うなど、ブラック企業と求職者のトラブルを防ぐためのものです。今後、議論を本格化させ、職業安定法の法制化を目指しています。

一方、ブラック企業の劣悪な労働環境の象徴ともいえる長時間労働については、2015年5月に厚労省が長時間労働を防ぐため、行政指導の段階で企業名を公表する基準を決定しました。その内容は以下のとおりです。

・対象は複数の都道府県に事業所を持つ大企業
月100時間以上の残業をしている社員が、複数の事業所にまたがって一定数いる

この基準に基づき、2016年5月、厚労省千葉労働局が初めて企業名を公表しました。しかし、公表された企業はわずか1社。厚労省によると該当企業が1社しかなかったということですが、だからといってブラック企業がそれだけとは考えられません。違法な残業をさせているのは大企業に限ったことではないと考えると、企業名を公表する基準のハードルが高いといえるでしょう。
※企業名の公表について詳しくは→千葉労働局の報道発表資料

また、厚労省は年内にも企業への労働基準監督署(労基署)の立ち入り調査基準を、違法な残業が月100時間から、月80時間に引き下げる予定です。こうすることで、企業名の公表よりスピーディーに長時間労働の環境を改善していきたいという方針です。

この方針に対しては、労働基準監督官の人手不足、立ち入り調査を増やしただけで状況が改善されるのかなど、疑問の声もあがっています。いずれにせよ、今後のなりゆきを見守っていきたいものです。

【コラム】ネット上ではブラック企業をランキング化する動きも

ワーストランキング「ブラック企業」という言葉が生まれたのは2000年代なかば。IT業界で働く人たちがハードな労働環境を自虐的に揶揄する言葉として、ネットに書き込んだのが始まりだとされます。

一般レベルにまで広がったのは、2009年に公開された映画『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』の前後あたり。2013年には「新語・流行語大賞」にもノミネートされました。

それにともない、2012年頃からインターネットの掲示板サイトを中心に、実際の企業名をあげたブラック企業のランキングをつくったり、ブラックリストをつくったりという動きも生まれました。今では企業名を入力してスペースを入れただけで、検索候補に「◯◯株式会社 評判」や「◯◯株式会社 ブラック」などと表示されることもあります。

どちらも、口コミを元にしていたり、投稿者が匿名だったりします。匿名だからこそリアルな状況を書ける一方、誹謗中傷にも近い主観的な思い込みよる書き込みの可能性もあります。いずれにせよ、数少ないネガティブな投稿に一喜一憂せず、自分でもリサーチして企業の実情を確かめることが重要です。

 2.転職活動時のブラック企業の見分け方

入社リスク軽減! 求人票の「ブラック企業あるある」

ブラック企業から逃げるイメージインターネット上にはブラック企業に関するあらゆる情報があふれていますが、よりよい環境で働きたいのは誰でも同じですよね。

ここでは、転職活動中や求人票などでよく目にする「ブラック企業あるある」をピックアップして、それらがはたして本当なのかジャッジしていきます。

ただし、入社を考えている企業があてはまるからといって必要以上に慌てずに。ブラック企業の実情はケースバイケースなので「これだからブラック企業!」と断言できないケースも多いのです。知っておけばブラック企業に遭遇するリスクは軽減できるぐらいにとらえておいてください。

求人票の「夢・感動・成長」

夢を見る人会社説明会や求人票で業務とは関係のない「感動」「成長」「夢」というポジティブな言葉が並び、同時に具体的な業務内容や入社したらどんな待遇になるのかがはっきりしない企業には気をつけましょう。

そこを明らかにしてしまうと、採用希望者が減ってしまうため、前向きな言葉を並べて会社のイメージアップにつなげようとしていることがあるからです。

一方、過去の業績でその企業にしかなしえなかったような業界を活性化させる技術や製品を開発したなど、夢を形にした社員がいるのは本当のことかもしれません。その企業の業績をチェックしながら判断するといいでしょう。

不自然な大量採用

大量採用イメージ現状の社員数に対して、明らかに多くの採用を行っている場合は、それだけ人の出入りが激しいという状況が推測できます。採用が従業員数の1割を超えたら赤信号の目安だと考えるといいでしょう。特に若手層の採用に力を入れている場合は注意が必要です。

ただしこの場合は、採用数が多すぎるからといって即ブラック企業だという思い込みは危険です。事業規模の拡大で人材が大量に必要になったという可能性も考えられるからです。

今後さらに業績を伸ばし、成長が見込める企業という明るい見通しの可能性もあります。新規事業の立ち上げや、時流に乗った成長分野がないかなどをチェックしてみましょう。

高すぎる給料

給料が高いイメージ2015年に発表された国税庁の「民間給与の実態調査結果」によると、20代後半の給与所得者の平均年収は344万円です。単純にこれを12ヶ月で割ると、20代後半の平均月収は約28万円になります。ここから税金や保険料が引かれるわけですから、リアルな手取りはこの7~8割、つまり20~22万円程度になるでしょう。ちなみに、大卒の初任給は業界、職種、地域にもよりますがおおむね17~20万円が相場だといわれています。

それにも関わらず、求人票に示されている基本給が平均月収のレベルをはるかに超える高い金額の場合、注意が必要です。それだけ労働条件がハードなのか、それとも入社後の昇給がないのか、何かしらの訳アリだと想像できますね。

また、明らかに給料が高い場合は、基本給にあらかじめ残業代が含まれている「みなし残業」だったり、成果に応じて給与が決まる成功報酬制だというケースも。求人票を見るときは、金額だけをチェックするのではなく、注釈も確認しましょう。

一方、外資系のコンサルティング会社や金融機関、マスコミの一部など、特定の業界は若いうちから給与が高く設定されています。あなたが所属しようと考えている業界全体の給与相場を把握しておくことが大切です。
※引用元:平成27年 国税庁「民間給与の実態調査結果」P22

ハローワークの求人

ハローワークハローワークにはブラック求人が多いと言われがちです。その理由は、民間企業が運営している転職サイトと違い、無料で求人を載せられるからです。そのため、採用に力を入れず、人材を大事にしない企業が多く集まると思われているのです。

もちろん、ハローワークにも優良企業がたくさんあります。その見極めは求人票の賃金欄です。基本給のほか、各種手当の内訳が詳細に記載されていて、賞与実績の記載欄もあるので判断の材料にするといいでしょう。ハローワークの求人には、中小企業まで幅広い求人を探すことができたり、地方や地元の求人を探せるなどのメリットもあります。

その一方で、「求人票=雇用契約書」ではないため、入社後に求人票の内容と違うというトラブルも少なからず起きているようです。厚労省では、そんな現状を改善するための対策に乗り出しています。

詳しくは、「1.どんな会社がブラック企業?」の中の「・厚労省の対策の行方は? ウソの職安求人の罰則化&企業名公表」をご覧ください。

【コラム】若者応援企業なら安心か?

中小企業に就職する場合は情報が少なく、ブラック企業にあたってしまう確率が高くなるといえるでしょう。そこで、若者と中小企業がより良いマッチングを行えるよう、厚労省は「若者応援企業」という事業を行っています

通常の求人情報より詳細な企業情報・採用情報を公表する中小企業を「若者応援宣言企業」として公表しています。「若者応援宣言企業」になると以下のようなことが明らかになります。

(1)過去3年分の新卒者の採用実績や定着状況
(2)前年度の有給休暇や残業時間の実績
(3)事業主都合による解雇や退職勧奨の有無
(4)採用内定の取り消しの有無

※詳しくは→厚労省/「若者応援宣言」事業

ただし、厚労省により公表されているからといって、ブラック企業ではないと保証されているわけではありません。過去には、「若者応援宣言企業」のリストにあった企業が、ブラック企業だと裁判になったことも。あくまでも、転職先を探すひとつの手段として参考にするといいでしょう。

『就職四季報』にもヒントが

ブラック企業かどうかを見分けるツールとして『就職四季報』(東洋経済新報社)を活用するのも手です。『就職四季報』は企業から掲載料をもらわず、編集部が出したアンケートに企業が回答した内容を掲載しています。そのため、転職サイトや企業の採用サイトでは見られない入社後の働き方に関するデータがわかります

ブラック企業に関しては以下の項目が参考になります。各項目を同業他社と比較することで、より客観的な現状がわかってきます。

『就職四季報』ではここをチェック!

(1)若者を使い捨てする企業か?→3年後離職率(大卒者の3年離職率の平均30%と比較)
(2)長く働ける安定した企業か?→平均勤続年数
(3)休みが取りやすいか?→有給休暇の取得率
(4)辞める人が多いか?→従業員数に対する毎年の採用実績数
(5)女性でも活躍できるか?→男女別の採用実績数&配属部署の状況
(6)賃金が上がるか?→35歳賃金の最低額(一部の高賃金社員がいる場合、平均額があがるため最低額で比較する)

企業側が回答しなかった項目の枠内には、「NA」(No Answer)と記されていますが、この答えが多いからといって一概にブラック企業だとは決めつけられません。情報開示にデリケートなメガバンクなど、ほとんどデータを公表していないケースもあるからです。

求人情報をチェックするときのキホン

以上をふまえたうえで、求人情報を見るときは以下のような点に注意してみましょう。

(1)労働時間と賃金、雇用形態(トライアル採用などに要注意)について、あいまいな表現をしていないか?
(2)企業ホームページの募集要項と就職情報サイトの採用情報では、同じ企業であっても労働条件の記載が異なる場合がある。両方を見比べて、違いがないかチェック。
(3)ネットの情報は変更可能。面倒でも求人情報をプリントアウトして保存しておく。

 3.ブラック企業への対処方法は?

ブラック企業と戦うイメージ今、働いている会社が「ブラック企業なのでは?」と気がついたときにどうすればいいのでしょうか?

ここでは働き始めや、まだ転職するエネルギーがある場合、長期間勤務していたり体や精神に支障をきたしそうな場合、もうどうしたらいいかわからない場合の3つに分け、ケース別の対処法を探っていきます。

自分を責めず、転職の道を探る

まだ働き始めで、次の仕事を探すエネルギーがある人は、体や精神を壊す前に自己都合退職をして転職しましょう。

ブラック企業は違法行為を犯しているにも関わらず、「社会人としての自覚がたりない」、「君の仕事が遅いからだ」「この業界では常識だ」などと言って、本来なら非のない働く側に仕方のないことだと思いこませようとする傾向がありますが、必要以上に自分を責めず、冷静に行動しましょう。

勤務記録を残して有利な退職につなげる

長い間、勤務していたり、このままいけば体や精神を壊しそうな人は、勤務記録を残して会社都合退職や有利な退職につなげましょう。

ブラック企業では自己都合退職に追い込まれるケースが多いです。そうなると、残業代はもちろん退職金なども受け取れないことも。求人票や雇用契約書はもちろん、毎日の出退勤時刻、業務内容をメモしておくことも有効です。

専門の弁護士やNPO、労働組合や公的機関に相談を

辞めたくても退職させてもらえない状況の人、どうすればいいかわからない人は、一人で悩まず専門家に相談すべきです。個人的な相談にも対応しているところもあるので、以下の窓口を参考にしてください。

【相談窓口】
(弁護士)
ブラック企業被害対策弁護団

(労働組合)
日本労働組合総連合会(連合)
全国労働組合総連合(全労連)

(NPO)
NPO法人労働相談センター
NPO法人POSSE
NPO法人もやい

(行政)
労働基準監督署(労基署)全国労働基準監督署の所在案内(厚生労働省HP)
東京都労働相談情報センター

4.まとめ

ブラック企業に関して、明確な定義はありません。しかし、共有されているイメージとしては、「違法労働や悪質な条件での労働を従業員に強制する会社」といったところのようです。

この実情を頭に入れ、自分の働き方を客観的に分析して、会社を判断する目を持つことが大切です。とくに転職を考えている人は、ブラック企業の見分け方を参考にしながら、有利な転職につなげてください。