キャリアチェンジは可能? 営業がきつい4つの理由と対策

営業に憧れて入社したものの、なかなか成果を出せず「きつい」「向いていない」「もう辞めたい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では営業が「きつい」と感じる4つの理由と対策を解説。さらに営業経験を生かせるキャリアチェンジの方法についても紹介します。

営業はなぜきつい?理由と対策

営業の仕事を「きつい」と感じる理由はさまざまですが、その中でも代表的な以下の4つについて、体験談や対策とあわせて解説します。

  • 理由1:ノルマを達成できない
  • 理由2:自社製品・サービスに自信が持てない
  • 理由3:テレアポや飛び込み営業がつらい
  • 理由4:営業トークが苦手

理由1:ノルマを達成できず心身ともに追い込まれる

【体験談】

  • 商品の単価が安く、大口受注でもない限り達成が見込めない目標を課せられ、モチベーションが下がった。
    (アウトソーシング、20代男性)
  • 支店や部単位で目標を達成していないと、連帯責任で全員休日出勤させられた。
    (保険、20代女性)

営業職は売上目標のノルマがあることがほとんど。ノルマを達成できないと上司から厳しく詰められた挙げ句、時には休日出勤を強いられることもあり、心身ともに追い込まれる方が多いようです。

対策1:必要な行動量を逆算する

目標を達成するために必要な行動量を逆算しましょう

「到底達成できない目標を与えられる」という悪質なケースもありますが、そもそも自分自身の行動量が足りていない場合もあります。

例えば、目標が月100万円、成約単価が10万円の場合を考えてみましょう。

目標達成のために必要な成約件数は10件

商談からの成約率が25%なら、必要な商談数は40件10件×25%)

さらに、架電からのアポ率が10%なら、必要な架電数は400件40件×10%)となります。

このようにやるべきことを明確にすると、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルも回しやすくなります。

対策2:効率のよい時間配分を考える

目標達成のために必要な行動を1日・1週間・1ヶ月・半期の行動計画に落とし込みましょう

目標を達成できない人は、目先のことに時間を浪費してしまい、効率のよい時間の使い方を意識できていない場合が少なくありません。

1週目は商談、2週目はフォロー、3週目にクロージング、4週目は架電…など、締め切りから逆算して行動計画を立てましょう

時間配分を考える上では「パレートの法則」の考え方も役に立ちます。「パレートの法則」とは、イタリアの経済学者ビルフレット・パレートが発見した「2割の要素が全体の8割を生み出している」という、経済活動に見られる法則のことです。

これを営業に当てはめると「2割の顧客が全体の8割の売上を生み出している」ことになります。売上の大部分を占める2割の顧客に対するフォローを中心に行動計画を立て、時間を効率よく使いましょう

理由2:自社製品・サービスに自信が持てず売ることに罪悪感を持つ

【体験談】

  • 競合と比較して価格が高く、営業として数字を追いたいという気持ちと、お客様に対して申し訳ないという気持ちの板挟みで苦しかった。
    (OA機器メーカー、20代女性)
  • 証券会社で扱う商品は「絶対に上がる、儲かる」とは言えない世界。含み損を抱えているお客様に対して「損切りして別の商品を」という提案をするのは心苦しかった
    (証券、30代男性)

ライバル社の製品より性能が劣る、相場より価格が高いなど「売れない」理由はいくらでも挙げられるものです。

このように自社製品に自信が持てないと、売ることに対して罪悪感を持ってしまい、つらいと感じる方が多いようです。

対策1:自社・顧客・競合を知る

自社・顧客・競合の3つの観点から情報を整理し、自社製品の本当の価値(本質)を理解しましょう。

自社製品が競合製品より優れている点をたくさん並べたところで、それが顧客の求めていることとは限りません。

具体的に顧客のどのような課題を解決できるのか顧客にどのような利益をもたらすのかを言語化できなければ、魅力を感じてもらうことは難しいでしょう。

たとえ部分的には競合製品より劣っていても、自社製品に価値を感じてくれる顧客はいるものです。自社・顧客・競合を徹底的に理解すれば、営業効率を高めることにもつながります

最初にご紹介した自社・顧客・競合の3つの観点からビジネス環境を分析する手法を、それぞれの頭文字(Company・Customer・Competitor)を取って「3C分析」と呼びます。
これ以外にも「SWOT分析」「コア・コンピタンス分析」「STP分析」など、マーケティングの知識が役に立つでしょう。

対策2:顧客の利益にならない提案はしない

上記の観点から客観的に情報を整理した上で、顧客の利益にならないと判断した場合は一旦手を引くという選択肢もあります。

その誠実さは短期的な成果にはつながらなくても、信頼関係の礎となり、次のチャンスにつながるはずです。

逆に、はっきり「NO」と意思表示している顧客をしつこく深追いすると、相手の心象を悪くするばかりか、他の顧客に充てられる時間も減って、営業効率を下げることにもつながりかねません。引き際はきちんと見極めましょう

理由3:テレアポや飛び込み営業で体力やメンタルが削られる

【体験談】

  • 多い日には1日100件以上の架電。営業電話なので断られるのは当たり前だが、相手の虫の居所が悪いと理不尽に怒鳴られることも多く、そのたびに傷ついた。
    (PR、20代男性)
  • 月に35度を超える暑さの中、飛び込み営業をしていた。ヒールで大量の資料を抱えて訪問するもほとんどが門前払い。成果にもなかなかつながらず、体力的・精神的に疲弊した。
    (保険、20代女性)

営業職はこのように、たくさんの架電や飛び込み営業をこなさなくてはならない上、冷たい態度で断れることも日常茶飯事。そのたびに傷つき、気持ちの切り替えが上手くできないことに悩んでいる方が多いようです。

対策1:「上手くいかなくて当たり前」と割り切る

そもそもテレアポや飛び込み営業は成功率が非常に低く「断られて当たり前」なので、むやみに自分を責めないようにしましょう

近年はホームページに電話番号が掲載されていない、セキュリティ上アポイントがないとビル内に入れない、という企業も多くあり、ハードルが以前より上がっているとさえ言えます。

まずは決められた量をこなすことだけに集中し、結果がどうあれ数をこなした自分を褒めてあげましょう。

相手の冷たい態度や横柄な態度で傷ついたときの「自分なりの気持ちの切り替え方」も身につけておくとよいでしょう。

対策2:小さな成功体験を大切にする

「この時間帯に電話をかけると担当者につながりやすい」「伝え方を変えたらうまくいった」など、小さな成功体験は忘れないよう書き留めておきましょう

世の中にはさまざまな「営業ノウハウ」が溢れていますが、あなたが実際にやってみてうまくいった経験ほど確実なものはありません。時間があれば、自分だけのトークスクリプトや営業マニュアルにまとめるとよいでしょう。

理由4:営業トークが苦手で商談をうまくまとめられない

【体験談】

  • 商談の機会をいただき、入念に提案書を作りこんだものの、提案書の作成に時間をかけすぎた結果、肝心のプレゼンの練習に時間を割けなかった。案の定、当日は「提案書をただ早口で読み上げる人」になってしまった。
    (MR、20代女性)
  • 採用広告の営業を行っていた新人時代、初めて新規顧客にアポイントが取れた。
    緊張しながらも入念に下調べを行い、顧客の採用課題についていくつも仮説を立ててアポに向かったものの、先方の要望は「説明会動画を作りたい」というもの。
    予想もしなかった回答にパニックに陥った私は「動画」から話を逸らそうと必死に……。相手をあきれさせてしまった。
    (広告、20代男性)

営業と言えば話し上手で、聞き手を引き込みながら堂々とプレゼンを行う……というイメージがあります。

しかし、そうした理想のイメージとは裏腹に、覚えた定型文しか話せなかったり、臨機応変に答えられなかったりで商談がうまくいかず、つらいと感じる方が多いようです。

対策1:営業の仕事はまず「話を聞くこと」

営業の仕事は「話すこと」より前に「相手の話を聞くこと」にあります

訪問前に顧客について調べ、具体的にどのようなことに困っているのかいくつか仮説を立てておきましょう。

そして、訪問時には仮説に沿って質問し、仮説が当たっているかどうか相手の話を聞き出します。
相手がどのようなことに困っているか、それを解決するのに自社製品がどう生かせるのか、対話を意識することで商談をスムーズに進められます。

「アポが取れた!」と気合を入れるのは良いですが、自社製品の利点を並べるだけでは単なる押し売りにしかなりません。

対策2:ロープレで客観的なアドバイスをもらう

大事な商談前はロールプレイングを行い、客観的なアドバイスをもらうようにしましょう。イメージするのと、実際にやってみるのとでは大違いです。

また、何度も繰り返し行い、その度に改善点について具体的なフィードバックをもらうことで、短期間で飛躍的に成長が期待できます。最初は緊張するかもしれませんが、繰り返し行うことで、経験が浅い社員でも自信をもって提案に挑めるようになるはずです。

コラム:営業がきついと言われる業界

「営業がきつい」と言われる代表的な業界には、下記のようなものが挙げられます。

不動産(投資用不動産、住居用不動産) 数千万円以上する高額な商品を個人に販売しなくてはならないため、成約率は低い。
基本給が安く、営業成績に応じてインセンティブが支払われる場合が多く、収入が安定しない。
金融(銀行、証券、保険) 昨今、保険や投資信託を銀行でも購入できるようになるなど、銀行・証券・保険の垣根を越えて資産の争奪合戦が勃発。
販売したりフォローしたりしなければならない商品の種類が以前より増え、負担が増加。
元本が保証されていない商品も多いため、損失がクレームに発展することも多い。
MR(医薬品、医療機器) 自社の医薬品を販売するのと同時に、その効果や副作用についてフィードバックをもらうことが主な仕事。
担当エリア内の施設を1日10件以上訪問することもある上、プレゼン準備や報告書の作成などの内勤業務も多く、体力勝負。
商社 扱う商品のロットが大きく億単位のお金が動くため、責任重大。
海外とのやり取りが多いことから、仕事が早朝や深夜にまで及ぶことも珍しくない。
長期的な海外出張や海外転勤も多い。
広告代理店 広告の成功可否がクライアントの売上を左右するだけあって、予算に比例して緊張感、責任感が増す。
出稿チャネルの多さ、出稿サイクルの早さから、常に締め切りとの戦いで激務になりやすい。
自動車ディーラー 車両以外にもローン、保険、クレジットカード、車検、タイヤ交換などさまざまな販売ノルマが課せられる。
フェアやキャンペーンが週末に開催されるため、休日にサービス残業することも少なくない

これらの業界の共通点は、顧客単価が高くノルマが厳しいこと。

さらに、顧客からのクレームが多いといった精神的なつらさや、勤務時間が長い、休日出勤が多いといった労働環境の悪さが拍車をかけているケースも多いようです。

そもそも営業の役割・魅力とは?

今はつらくても、就職活動中には営業を志す理由が何かしらあったはずです。営業職の役割や魅力をあらためて確認してみましょう。

営業の役割は「市場を開拓し、会社の売上を作ること」

市場を開拓し、会社のトップライン(売上)を作ることが営業のミッションです。

自分の働きが売上に直結することから、会社に貢献している実感が得やすく、花形の職種と言えるでしょう。

また、市場の変化をいち早く察知し、社内にフィードバックすることも重要な役割です。

営業の魅力は「成果が分かりやすく、総合力が身につくこと」

成果が数値に表れ、社内外の人と関わりながらさまざまな能力を身につけられるのが営業の魅力。具体的な魅力は下記の5つが挙げられます。

  • 成果が数値に表れる
  • 収入UPや昇進が早い
  • 社内外に人脈を広げられる
  • 経営に関する幅広い知識・スキルを身につけられる
  • 他業界に転職しやすい

成果が数値に表れる

営業は仕事を受注したり、売上目標を達成したりする度に、これまでの努力の成果を数字で確認でき、やりがいを感じやすい職種です。

去年の数字と比較することで、自分自身の成長もはっきりと実感できます。

収入UPや昇進が早い

営業は成果が分かりやすいため、ほかの職種に比べ昇給や昇進が早いのも特徴です。

基本給以外に業績連動給や報償などのインセンティブがあることも多いため、昇給・昇進を伴わなくても、営業成績の良い時期は高給が狙えます。

社内外に人脈を広げられる

営業は顧客に対しては会社の顔として接すると同時に、社内では顧客の代弁者となり、利害調整のためのさまざまな部署との折衝が必要になることもあります。

大変な仕事ですが、だからこそ社内外に広く深く人脈を広げることができます

経営に関する幅広い知識・スキルを身につけられる

法人営業の場合、顧客のビジネスモデルや利益構造に精通していなくてはならないため、仕事をする中で経営に関する幅広い知識・スキルを身につけることができます

特に金融機関やコンサルティング会社などに勤めていると、どの業界でも通用するスキルが多く身につくでしょう。

他業界に転職しやすい

営業は売上の実績から能力を判断しやすいことから、同業界だけではなく他業界の営業職にも転職がしやすくキャリアの可能性が大きく広がります

リクルートやキーエンス、野村證券をはじめとする「営業力」で評価されている企業での職歴があると、さらに転職に有利でしょう。

営業から別職種へキャリアチェンジは可能?

どうしても「営業が向いていない」「これ以上続けたくない」と感じたときでも、20代であれば比較的簡単に別職種へのキャリアチェンジが可能です。

30代になるとそのハードルが高くなるため、20代後半に差し掛かっている場合は、早めに決断することをおすすめします。ここではキャリアチェンジの主なルートを2つ紹介します。

1:転職を考える前に、社内で異動希望を出してみる

会社に愛着があり、社内で営業以外にやってみたい仕事があるなら、まずは働き慣れた社内で異動希望を出してみましょう

転職は今やめずらしいことではありませんが、リスクがあることもまた事実。まずは社内で異動の可能性を探り、希望が通らなかった場合に転職を検討しましょう。

異動を希望する前に、やりたい仕事に必要な資格を取得するなどしておくと、人事部に効果的にアピールできるでしょう。

※異動希望の出し方について詳しくは→「異動希望の出し方ガイド|理由の例文・書き方のコツ

2:営業経験が生かせる企業・職種に転職する

社内での異動希望が通らず、それでも営業職以外にキャリアチェンジしたい場合は、営業経験を生かせる企業、職種を探すのがおすすめです。

営業経験があると転職しやすい企業2つ

営業経験があると、顧客企業(今の仕事で営業対象としている企業)やベンチャー企業に転職しやすいと言われています。

顧客企業であれば、業界知識や人脈を生かすことができます。

ベンチャー企業の場合は、職種・職能に関係なく、会社の成長のために必要なことを主体的に取り組む姿勢を求められるため、これまでの営業経験で得た目標達成のためのノウハウや積極的な姿勢がそのまま生かせると言えるでしょう。

顧客企業 業界に関する知識や人脈を生かし、広報や経営企画、商品企画に携われる可能性がある。
ベンチャー企業 成長中のベンチャー企業は人手不足なので、未経験であっても転職しやすい。営業職で身についた主体性や積極性が評価されやすい

営業経験があると転職しやすい職種4つ

営業経験があると、下記のような職種に転職しやすいと言われています。

下記の表を参考に、自分の経験をどう生かせるか、なぜキャリアチェンジしたいのか、言語化できるようにしておきましょう。

経営企画 営業で顧客のニーズを分析し、商材やサービスの提供で課題解決を行ってきた経験を生かし、より長期的な視点で事業計画の策定など企業経営の根幹に関わることができます。
マーケティング 営業で顧客ニーズを分析し、自社製品・サービスをどのように売り込むか考えた経験を、新商品の開発や販売戦略の策定に生かせます。
また、例えば前職で素材メーカーの営業をしており、その卸先の企業に転職した場合は、素材の知識を生かした商品開発なども考えられます。
広報・PR 営業で顧客ニーズを分析し、自社製品・サービスをどのように売り込むか考えた経験を、自社の認知度やブランド力向上に生かせます。
広報の場合は社内コミュニケーションの活性化も重要な任務です。チームプレー型の営業だった場合は、チームのパフォーマンスを上げるためにどのような工夫をしたかもアピールできます。
経理・会計 営業で数字を管理・分析した経験を、会社全体のお金の流れを管理・分析することに生かせます。
簿記2級以上などの資格が必要になるケースが多いため、取得しておくとよいでしょう。

まとめ

営業の仕事が「きつい」と感じるのは、数字で結果が評価される厳しさや営業活動の中で受けるさまざまなストレスにより、心身ともに追い込まれることが大きな理由と言えます。

ただし、その分結果が出ればやりがいも大きく、意識して取り組めばさまざまなスキルを身につけることもできます。

「どうしてもつらい」「辞めたい」という場合は、営業の経験を生かせる職種にキャリアチェンジするのも一つの手です。

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