公務員との違い・就職のメリット 公益社団法人とは

公益社団法人という言葉を聞いたことがあっても、その実態を詳しく知っているという人は少ないのではないでしょうか。公益社団法人の意味や、就職するメリットなどをわかりやすく解説します。

公益社団法人とは?

公益社団法人とは一体どのような組織なのでしょうか。具体的な事業内容法人数実際に働いている職員数などを紹介します。

公益性のある事業を展開する民間組織のこと

公益社団法人とは、不特定多数が恩恵を受けるような公益性の高い事業を行う非営利の民間組織です。略称として「公社」と表記されることもあります。

具体的な事業内容としては、主に環境保全高齢者福祉支援などが挙げられ、地域医療振興協会や日本青年会議所など、さまざまな団体があります。

その他、公益性があるとされている事業は全部で23種類。「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」によって定められています。

▼公共性があるとされている事業23種類

  1. 学術および科学技術の振興を目的とする事業
  2. 文化および芸術の振興を目的とする事業
  3. 障害者もしくは生活困窮者または事故、災害もしくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  4. 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
  5. 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  6. 公衆衛生の向上を目的とする事業
  7. 児童または青少年の健全な育成を目的とする事業
  8. 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  9. 教育、スポーツなどを通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、または豊かな人間性をかん養することを目的とする事業
  10. 犯罪の防止または治安の維持を目的とする事業
  11. 事故または災害の防止を目的とする事業
  12. 人種、性別その他の事由による不当な差別または偏見の防止及び根絶を目的とする事業
  13. 思想および良心の自由、信教の自由または表現の自由の尊重または擁護を目的とする事業
  14. 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  15. 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  16. 地球環境の保全または自然環境の保護及び整備を目的とする事業
  17. 国土の利用、整備または保全を目的とする事業
  18. 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  19. 地域社会の健全な発展を目的とする事業
  20. 公正かつ自由な経済活動の機会の確保および促進ならびにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  21. 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  22. 一般消費者の利益の擁護または増進を目的とする事業
  23. 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

また、株式会社が利益の余剰金を株主や従業員に配当として分配するのに対し、公益社団法人は非営利組織なので分配ができず、代わりに来年度以降の活動費として貯蓄することになります。

ただし、職員に対する給料や報酬は、必要経費であって利益の分配には該当しないため、きちんと支払われます。

※参考:
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 別表(23事業)
東京都の公益社団・財団法人一覧

一般社団法人との違いとは

一般社団法人とは、公益社団法人の前身にあたります。公益社団法人を設立するためにはまず、事業内容の制限がない非営利組織である「一般社団法人」を設立します

そののち、内閣総理大臣または都道府県知事による厳密な審査を受け、事業の公益性を認められた場合にのみ公益社団法人を名乗ることができます。

【データ】公益社団法人の数・職員数

内閣府の2018年の調査によると、公益社団法人の数は4,169で、公益社団法人や公益財団法人の総称である「公益法人」全体の43.6%を占めています。

合併や解散・認定の取り消しもあるため、ここ数年の法人数は緩やかな増加傾向にあります。

【公益社団法人 法人数と職員数の推移】(2013年/2014年/2015年/2016年/2017年/2018年): <職員数>57,860人/62,878人/64,528人/72,636人/74,316人/75,346人 <法人数>3,810/4,089/4,126/4,150/4,152/4,169

加えて、公益社団法人で働いている職員は、2018年時点で7万5,346人というデータもあります。

ボランティアを含む職員数が10人未満の法人が全体の74.9%とされているため、公益社団法人には小規模の団体が多いということがわかります。

※参考:公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告(2018年)|内閣府

わざわざ公益社団法人にする目的とは

【公益社団法人にする目的】 ・運営資金がタメやすく経営が安定する ・収益を事業のためだけに使える ・株式会社より設立費用が安い

公益社団法人の運営上のメリットは、運営資金が集めやすく経営が安定する点です。事業内容によっては国や自治体から補助金が出るため、一般企業のような倒産のリスクが低くなります。

資金が集めやすい理由として、補助金の他に「寄付金控除」という制度があることも挙げられます。

公益社団法人に寄付をすると、寄付者は優遇措置として確定申告で税金が一部免除されます。そのため、節税したい企業や個人から寄付金が集まりやすいのです。

また、株主に配当として利益を分配しなければならない株式会社と違って、公益社団法人は収益を翌年度以降の運営資金として貯蓄し、そのすべてを活動のためだけに使うことができます

加えて、株式会社よりも設立費用が安いという点も、公益社団法人を作るメリットと言えるでしょう。

コラム:NPO法人や財団法人との違いは?

公益社団法人もNPO法人も、社会全体の利益のために活動し、利益を分配できない非営利組織という点では共通しています。

ただし、NPO法人の方が補助金や支援金プログラムが充実しているため、費用面での設立・運営が簡単です。

その反面、公益社団法人の方が設立の難易度が高いため、社会的な信用度は高いといえるでしょう。

他にも混同されがちな団体として、一般・公益「財団」法人も挙げられます。

両者の違いは、法人格の対象と設立時の基本財産です。社団法人は「人の集まり」が法人格になるのに対して、財団法人は「財産」が法人格となります。

また、財団法人は設立時の財産として300万円以上必要になり、設立のハードルが高くなっています。

  一般・公益社団法人 一般・公益財団法人
法人格の対象 志を同じくする人の集まり お金や不動産などの財産
設立時の財産 不要 300万円以上
※設立後2年間300万以上を維持できなれば解散

※NPO法人について詳しくは→NPO法人とは一体何なのか|給料や就職するメリット・デメリット

公益社団法人に就職するメリット

公益社団法人に就職するメリットは「社会的信用度が高いこと」と「安定的な待遇」が挙げられます。

社会貢献できて、社会的信用度が高い

公益社団法人は、事業内容の社会貢献度が高く、仕事にやりがいを感じやすいというメリットがあります。

また、法務局で会社情報を登録するだけで設立できる株式会社とは異なり、政府による厳しい審査を通過しているため、社会的な信用度が高い点もメリットと言えます。

信用度が高い分、寄付金が集めやすかったり、企業や行政から仕事を委託してもらいやすかったりなど、事業を展開する上で有利に働くことが多くあります。

公務員に準じた安定した給料や待遇

公益社団法人は民間組織ですが、政府や地方自治体と一緒に仕事することが多かったり、行政職員が出向してきたりすることもあるため、給料などの待遇を公務員に準拠している法人も多くあります。

ただし、収益を多くあげたとしても、公益社団法人は非営利組織であるため利益の分配ができません。

そのため、従業員には最低限の給与しか支払えないなどの理由から、給料は特別高いわけではないと言われています。

実際、公益社団法人はどのくらいの給与水準なのか、2021年度採用の求人を参考にしてみましょう。(※あくまで一例であるため、すべての法人が以下の例のような給与体制を取っているとは限りません)

<公益社団法人 福岡医療団>

1基本月額(※予定金額)

18万8,000円~22万7,000円
※昇給は年1回
※職歴などがある場合は一定の基準により、上記の金額に加算

2諸手当・賞与

通勤手当・家族手当・時間外手当、住宅手当。
賞与は年2回(年間3.7ヶ月+20,000円)支給。

<公益社団法人 全国農業共済協会(略称:NOSAI協会)>

1基本月額(※予定金額)

大卒初任給の場合:基本給 20万6,300 円
※院了・既卒も同額

2諸手当・賞与

通勤手当、暫定手当、住宅手当、扶養手当、超勤手当、食事手当など。
賞与は年間4.5ヶ月分支給(※国家公務員に準拠)。

また、公益社団法人は国や自治体からの補助金が出るため、突然倒産する・解雇されるというリスクは低いでしょう。

公益社団法人に就職するには?

公益社団法人の選考フローや、就職するための方法を紹介します。

公益社団法人の選考フロー

公益社団法人の選考フローは、基本的に一般企業のフローと変わりません

興味のある公益社団法人のホームページやハローワーク、就活・転職サイトから求人を見つけて応募し、書類選考ののち、筆記試験・適性検査・面接を受けるという流れです。

また、面接の回数や、新卒採用か中途採用かは法人によって異なります。志望する法人の採用活動の詳細については、直接問い合わせて確認しましょう。

求人数が少ないので情報収集が必要

公益社団法人は求人数が少ないため、転職サイトやハローワークなどで求人が出るまで粘るか、場合によっては直接問い合わせる必要があります

求人数が少ない理由は「認定の基準が厳しく法人数自体が少ない」「小規模の団体が多く欠員が出た時しか募集しない」といったことが挙げられます。

また、転職サイトやハローワークでは募集せず、ホームページで突発的に募集をかけている場合もあります。

気になっている事業や法人がある場合は、いつどこで求人を出しているのか、常に情報収集するようにしましょう。

専門的な知識や経験があると有利

応募にあたって、志望先の公益社団法人の事業に関連する知識や経験があると有利でしょう。

例えば、発展途上国への経済協力を展開する公益社団法人の場合、その国の知識や言語力、異文化交流の経験があると望ましいでしょう。

一方で、健康増進を狙いとして運動場やキャンプ施設を運営している公益社団法人などでは、そこまで専門性が求められないこともあります。

公益社団法人は、社会全体の利益のための事業をしていることから、その職員には強い目的意識が求められるでしょう。

就職を希望する段階で、事業についての事前知識・実務経験などのアドバンテージがあると、強いアピールポイントになります

まとめ

公益社団法人とは、環境保全や高齢者福祉支援など、公益性のある事業を展開している非営利組織を指します。

厳しい審査の末、政府から認定を受けているため、社会的な信用度が高く、待遇が公務員に準じて安定している法人が多いというメリットがあります。

採用活動に関しては、一般企業とは違って、就職サイトやハローワークでは求人を出さずにホームページ上で突発的に求人を出す場合もあります。

公益社団法人に就職したい場合は、求人を逃さないように、常に情報収集するようにしましょう。

  • HOME
  • 転職の前に
  • コトバ解説:公益社団法人とは|公務員とは違う?就職するメリット