思い出したい6つのこと 試用期間中、解雇されそうになったら

試用期間中に解雇されそうなとき、思い出したい6つのポイントを紹介します。会社に言われるがまま不当な扱いを受けてしまう前に、法律上の労働者の権利を知っておきましょう。

1.試用期間でも、正当な理由がないと解雇されない

試用期間であっても、正当な理由がない限り、簡単に解雇されることはありません

「試用期間はお試し期間。能力不足だと判断されたら、解雇されてもしょうがない」と思っている人も多いかもしれません。しかし、そもそも労働契約が成立している以上、企業が労働者を解雇するには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当だと認められる必要があります

ただし「試用期間中」という状況は加味される

そもそも解雇は簡単にできないものの、試用期間における解雇の正当な理由に当たる範囲は、本採用後に比べて広いとされています。そのため「試用期間中である」という状況を踏まえた上で、解雇が正当かどうか判断されます

また、試用期間は法的な性格上、企業が労働契約を解約する権利を一時的に保持している状態だと考えられています。これは「解雇権留保付雇用契約」と呼ばれ、実際の働きぶりを通して応募者の能力や適性を確認し、適性がないと判断したときは、試用期間の終了とともに本採用を拒否(=解雇)できるというものです。

とはいっても、解雇にはやはり、それ相応の理由が必要です。「試用期間だから」と受け入れる前に、解雇の理由や企業の対応が正当かどうか、確認すべきでしょう。

よくある解雇理由と正当性

よくある試用期間の解雇理由は、以下のとおりです。

<労働者側の理由>

  • 病気やけが(※業務に支障があるレベル)
  • 能力不足
  • 欠勤や遅刻
  • 業務命令への違反
  • 経歴詐称

<企業側の理由>

  • 経営不振に伴う人員削減

解雇理由(事由)は就業規則に明記されていることが前提で、企業側は解雇を決断する前に、改善に向けた努力を行う必要があります

例えば「病気やけが」を理由にした解雇は、改善の見込みがあるのに休職などの配慮がなかった場合は不当です。「能力不足」「欠勤や遅刻」「業務命令への違反」による解雇は、解雇前に注意や指導をされていなければ、無効となる可能性が高いでしょう。

一方、企業側が経営不振を理由に解雇を行う場合は、以下の4つの要件を満たさなければ解雇無効となります。

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 被解雇者選定の合即性
  4. 手続きの妥当性

コラム:試用期間中の解雇が認められた判例

ここでは、試用期間中の解雇が認められた裁判の事例を紹介します。

大阪高裁2012年2月10日判決・労働判例1045号5頁、日本基礎技術事件

〈概要〉

試用期間6ヶ月で新卒採用された技術社員が、試用期間中に受けた解雇を無効だと訴えたが、棄却された。

〈判決に関わる理由〉

  • この社員は全体研修で危険な行動をしただけではなく、時間や規則を守ることができない、睡眠不足で集中力がないといった点が見られた。
  • 機械研修でも、パーツ表の確認不足、睡眠不足、集中力欠如について課長から何度も指摘されていたが、改善されなかった。

東京地裁2001年12月25日判決・労経速報1789号22頁、ブレーンベース事件

〈概要〉

試用期間3ヶ月で中途採用された社員が、試用期間中に受けた解雇を無効だと訴えたが、棄却された。

〈判決に関わる理由〉

  • 顧客が緊急を要するとして発注してきた依頼に速やかに応じなかった。
  • 面接時に「パソコン使用に精通している」と言ったのにもかかわらず、それほど難しくない作業も行うことができなかった。
  • 社員は必ず出勤する慣行になっている業務日に休暇を取得した。

上記のとおり、業務を通して適性がないと判断された場合や、企業側が注意や指導を行ったのにも関わらず改善されない場合は、試用期間中の解雇でも正当だと認められる可能性があります。

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント1の図

2.解雇日の30日前までに通知、もしくは解雇予告手当がある

法律上、企業が労働者を解雇するときは、解雇日の少なくとも30日前までに解雇の通知をしなければならないとされています。

解雇の通知を解雇日の30日前までにされなかった場合は、「30日に満たなかった日数×1日の平均賃金」が、解雇予告手当として支払われます。

※平均賃金=直前3ヶ月に支払われた賃金総額÷3ヶ月の総日数(暦日数)

「14日未満は予告や手当なしに解雇できる」は間違い

労働基準法第21条では「試の使用期間(試用期間)の者には解雇予告は必要ない」とされており、ただし書きとして「14日を超えて雇用される場合にはこの限りではない」と書かれています。このため、契約時の雇用期間が14日以内であれば、解雇予告や手当なしに解雇できると解釈されることもあります。

しかし、そもそも企業は客観的に合理的であり、社会通念上相当だと認められる理由がないと解雇できないため、14日以内であれば簡単に解雇できるというのは間違いです。

また、試用期間が「応募者の能力や適性を実際の働きぶりを通して見極める」ための期間であることを考えると、そもそも14日という短期間で能力を判断するのは時期尚早解雇は認められない可能性が高いでしょう。

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント2の図

▼解雇予告手当についてくわしくは…

3.解雇理由や給与の支払いが不当なら、専門家に相談する

「なんの説明もなく、突然解雇を言い渡された」「解雇される前の1ヶ月の給与が支払われていない」など、試用期間の解雇理由や解雇に伴う手当・給与の支払いが不当だと感じる場合は、都道府県の労働センターや弁護士などの専門家に相談しましょう

■総合労働相談コーナー

「総合労働相談コーナーのご案内」厚生労働省
…解雇や雇い止めなど、労働問題の相談に応じてくれる公的な機関。各都道府県に設置されていて、面談もしくは電話で対応してくれます。利用は無料です。

■法テラス

「日本司法支援センター」法テラス
…弁護士や司法書士といった専門家の一次窓口として相談できる機関。「自分が利用できる相談先を知りたい」という電話相談は無料です。収入や資産が一定額以下の方は無料で利用できますが、基本的に法律相談や依頼は有料になります。

なお、専門機関に相談する前に、企業に「解雇理由証明書」の発行を求めておくのがおすすめです。解雇理由証明書には具体的な解雇理由を記載する必要があるため、民事調停や労働審判などで証拠として役立ちます。

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント3の図

4.解雇ではなく退職勧奨された場合は、拒否できる

一方的な解雇が難しいことを理由に、企業が「退職できないか?」「辞めてくれないか?」といった言葉で退職を促してくることもあります。これは「退職勧奨」と呼ばれるもので、行為自体は違法ではありません。

ただし、退職勧奨による最終的な決定権は労働者にあり、辞める意思がなければ退職を拒否することができます。受け入れると合意退職となります。

▼退職勧奨についてくわしくは…

受け入れるなら、会社都合か自己都合かを確認

退職勧奨を受け入れて合意退職する場合は、「会社都合退職」になるのか「自己都合退職」になるのか確認しましょう。どちらになるかによって、失業期間にもらう手当を受け取るまでの期間や給付日数、転職活動時の印象に影響するためです。

基本的には、退職勧奨は会社都合退職として処理されます。その場合は、退職願や退職届は書かなくてOK。退職届を求められた場合は「貴社、退職勧奨に伴い」と一言書くことで、退職勧奨を受け入れて退職したことの証明になります。

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント4の図

5.会社都合退職なら、失業保険が給付制限なしで受け取れる

試用期間中に解雇された場合や退職勧奨を受け入れた場合、退職理由は「会社都合退職」となり、いわゆる失業保険(雇用保険の基本手当)を給付制限なしで、比較的すぐに受け取ることができます。また、給付日数も長くなります

ただし、会社都合退職で失業保険をもらうには「離職日以前の1年間に、被保険者期間が6カ月以上あること」という条件をクリアする必要があるので、雇用保険への加入期間が短い人は注意してください

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント5の図

▼失業保険(会社都合)についてくわしくは…

6.履歴書や面接では「解雇された」とありのままに伝えない

試用期間中に解雇された場合、履歴書や面接で「解雇された」と言葉そのままに伝える必要はありません。ここでは、履歴書への書き方や面接での伝え方を具体的に紹介します。

なお、事実を隠すために嘘をついたり、事実とは異なることを申告したりするのは絶対にNG。中には内定後に退職理由や応募書類に虚偽がないかを確認する「退職証明書」を求める企業もあり、最悪内定取り消しもあり得ます。

退職証明書についてくわしくはこちら

履歴書の職歴欄の書き方

試用期間中に解雇された場合でも、必ず履歴書の職歴欄に記入しましょう。記載しないと空白の期間が生まれてしまい、面接時に聞かれる可能性もあります。

ただ、退職理由は履歴書に必ずしも記載する必要はないため、退職年月と「社名+退職」とだけ書けばOK。解雇の理由が経営不振や倒産など、会社側にあれば「会社都合により退職」と書いてもOKです。

面接での退職理由の言い方

面接で退職理由を聞かれた場合は「自身と企業の求める内容に相違があり、話し合いの末に試用期間での退職となりました」など、解雇や退職勧奨といった言葉を使わずに答えると良いでしょう。

「勤務態度に問題があると言われ、解雇されました」など、状況を詳しく説明する必要はありません。会社側の言い分がそもそも事実とは異なるケースや、ありのままに伝えることで選考が不利になる可能性もあります。

試用期間の解雇について覚えておきたいポイント6の図

おさらい

企業によって一方的に行われる解雇は、試用期間であっても正当な理由がない限り認められません。「試用期間だからしょうがない」と泣き寝入りする前に、その解雇が不当ではないか冷静に考えることが大切です。

試用期間に解雇されそうになったときは、以下の6つのポイントを思い出してください。

 試用期間の解雇で思い出したいポイント1~6の図:1.試用期間でも、正当な理由がないと解雇されない。2.解雇日の30日前までに通知、もしくは解雇予告手当がある。3.解雇理由や給与の支払いが不当なら、専門家に相談する。4.解雇ではなく退職勧奨された場合は、拒否できる。5.会社都合退職なら、失業保険が給付制限なしで受け取れる	。6.履歴書や面接では「解雇された」とありのままに伝えない。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

弁護士

南 陽輔

一歩法律事務所

大阪市出身。大阪大学法学部卒業、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。その後、大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。誰もが利用しやすい弁護士サービスを心掛け、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行う。

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