期間や金額・手続きのすべて 失業保険を会社都合でもらうとき

「倒産」「解雇」「退職勧奨」など、会社(雇用主)側に理由があって退職したことを意味する「会社都合退職」。自己都合退職のときと異なる失業保険の日数や手続きについて解説します。

失業保険を会社都合退職でもらうときの日数・金額

まずは会社都合退職で失業保険をもらうときの受給期間給付金額について説明します。

期間・日数:待期期間直後から90~330日間もらえる

会社都合退職の場合、失業保険がもらえる日数は最低90日、最大で330日です。

これは年齢と雇用保険に加入していた期間によって異なります

【会社都合退職】失業保険の給付日数。雇用保険に加入していた期間:半年以上1年未満:1年以上5年未満:5年以上10年未満:10年以上20年未満:20年以上。29歳まで:90日:90日:120日:180日:なし。30~34歳:90日:120日:180日:210日:240日。35歳~44歳:90日:150日:180日:210日:240日。45歳~59歳:90日:180日:240日:270日:330日。60~64歳:90日:150日:180日:210日:240日

また、会社都合退職であれば、自己都合退職のように2カ月の給付制限期間がありません。

そのため、自己都合退職の場合よりも早く失業保険をもらうことができます。

職場から離職票を受け取り次第、早めにハローワークで申請手続きをしましょう。

金額:退職時の給料の50~80%程度

失業保険でもらえる金額は、おおよそ退職時の給料の50~80%です。具体的な金額は、年齢や雇用保険に加入していた期間、退職前の半年間にもらった給料(賞与などを除く)によって異なります。

※ただし60~64歳の場合、45~80%

【例】

会社都合退職したAさん(28歳)がもらえる失業保険の金額
→約29万9,970円~47万9,880円

<条件>

  • 雇用保険加入期間3年
  • 退職時の月給20万円

 失業保険の計算方法 ※60歳未満の受給資格者

【失業保険の計算方法】失業保険でもらえる金額=基本手当日額×受給日数。基本手当日額(過去半年の賃金総額※÷180)=賃金日額×給付率(50~80%)。残業代や各種手当を含む。ボーナスは含まれない失業保険の金額を求めるには、まずは「賃金日額」を算出します。

賃金日額とは、過去半年間の給料を180日で割った金額です。

賃金日額に給付率(50~80%。賃金日額と離職時の年齢によって変わる)をかけると、1日あたりにもらえる失業保険の金額の「基本手当日額」がわかります。

失業保険の総額を算出する場合は、基本手当日額に「受給日数」をかけます。

ただし、給付率を算出するには複雑な計算が必要なので、正確な金額はハローワークに行って確かめましょう。

【例】

会社都合退職したAさん(28歳)がもらえる総額

→失業保険の総額は約44万5,140円

<条件>

  • 雇用保険加入期間3年
  • 月給20万円

賃金日額:月給20万円×6カ月÷180日
=約6,666円

基本手当日額:0.8×賃金日額-0.3×{(賃金日額-5,200)÷7,590}×賃金日額」で計算されます。支給金額の計算式に当てはめると、0.8×6,666円-0.3×{(6,666円-5,200)÷(7,590}×6,666円で、1日あたりの支給額は4,946円(小数点以下切り捨て)となります。

総額:4,946円×90日=44万5,140円

基本手当日額には上限がある

基本手当日額には下記の通り、年齢によって上限額が決まっています。

退職前の給料が高くても、青天井でもらえる金額が増えるわけではないので注意しましょう。

30歳未満 7,065円
30歳以上45歳未満 7,845円
45歳以上60歳未満 8,635円
60歳以上65歳未満 7,420円

(令和6年8月1日時点)

※参考:「雇用保険の基本手当日額の変更~8月1日(木)から実施~」(公表:2024年7月30日、参照:2024年8月22日)

失業保険を会社都合退職でもらう手続き

【会社都合退職:失業保険をもらうまでの5ステップ】ステップ1:ハローワークに書類を提出する。ステップ2:7日間の待機期間を過ごす。ステップ3:雇用保険受給説明会に参加する。ステップ4:求職活動を始める。ステップ5:初回の失業認定日にハローワークに行く

会社都合退職で失業保険をもらう場合、必要な手続きとその手順を説明します。

1:ハローワークに書類を提出する

まずは自宅のエリアを管轄するハローワークで、求職申込書や離職票を提出しましょう。

失業保険の申請期限は、原則として離職日の翌日から1年以内です。

会社都合退職であれば、申請から約1カ月で給付が始まるので、退職後はすみやかに手続きをしましょう。

必要書類を提出するとその場で面談が行われ、退職理由を確認されます。受給資格が認められると、この日が「受給資格決定日」となります。

【持ち物】

  • 雇用保険被保険者証
  • 雇用保険被保険者離職票1(資格喪失確認通知書)
  • 雇用保険被保険者離職票2
  • マイナンバーカード(なければ、個人番号確認書類と運転免許証やパスポートなどの身元確認書類)
  • 証明写真2枚(縦3cm×横2.4cmの正面上半身、かつ6カ月以内に撮影したもの)

※2022年10月1日以降に受給資格決定が行われた人について、本人の希望があれば、マイナンバーカードによる本人認証を活用することで、顔写真を用意する必要がなくなりました。なお、本人が希望しない場合は従来どおりの手続きとなり、写真が必要となります。

参照:
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/001280862.pdf

  • 本人名義の普通預金通帳(一部の金融機関を除く)

2:7日間の待期期間を過ごす

失業保険の申請手続きをした後は、完全に失業状態であることを確認する期間として、7日間の待期期間が発生します。

この期間はアルバイトを含め、働いてはいけません。もしアルバイトなどで収入を得ていた場合、待期期間が延長されるので注意しましょう。

会社都合退職の場合、7日間の待期期間の翌日から、失業保険の受給期間のカウントが始まります。

※失業保険受給中のアルバイトについて詳しくは→「失業保険受給中のアルバイトはOK?いくらまでなら良い?罰則は?

3:雇用保険受給者説明会に参加する

ハローワークが開催する「雇用保険受給説明会」に出席します。

説明会の開催日時は、申請した日から1~3週間後に設定されることがほとんどです。

このときに初回の「失業認定日」が正式に通知されます(受給資格決定日から約28日後)。

雇用保険受給説明会の開催日や開催場所については、申請時=受給資格決定日の時点でハローワークから指示があります。

4:求職活動を始める

失業保険の支給が決定される「失業認定日」までに、求職活動をしましょう。会社都合退職の場合、初回の失業認定日までに最低1回の実績が必要です。

ただし、「雇用保険受給説明会」への参加も求職活動にカウントされるため、この時点ですでに実績が1回ある状態になります。

【求職活動の例】

  • ハローワークで就職相談、紹介状の発行
  • 転職サイト経由での求人応募

5:初回の失業認定日にハローワークに行く

受給資格決定日から約1カ月以内に設定される初回の「失業認定日」に、ハローワークに行きます。

書類審査と面談をして、求職活動中かつ就業していないことが認められた場合、失業保険の支給が決まります。

初回の受給額は、待期期間の翌日から認定日の前日までの期間分となります。

初回の失業認定日より1週間以内を目安に、受給期間分の失業保険が指定の銀行口座へ振り込まれます。実際は2~3日以内に振り込まれることが多いようです。

コラム:失業保険受給中に就職するとお祝い金がもらえる?

失業保険受給中に早めに再就職すると、失業保険は支給されなくなりますが、代わりに「再就職手当」をもらうことができます。

これは受給期間がたくさん残っている場合に支給される「お祝い金」のようなもので、「ハローワーク就職祝い金」と呼ばれることも。

ただし再就職手当をもらうためには、厚生労働省が定めている要件にすべて該当していることが条件となるので注意が必要です。

※再就職手当がもらえる条件について詳しくは→「再就職手当をもらうための8つの条件とは?申請の流れや計算方法も

失業保険を会社都合退職でもらうための条件

ここでは、会社都合退職と認められるための条件を説明します。

会社側に原因があって退職した場合

会社都合退職で失業保険がもらえるのは、「倒産」「解雇」「退職勧奨」など、会社側の理由により労働契約解約の申し出を受けて退職したときです。

この場合、社会保険の手続きでは「特定受給資格者」として扱われます。

会社都合退職になる場合】

  • 会社が破産したことにより離職した
  • 会社の経営不振を理由とした人員削減により解雇された
  • 「希望退職制度」に応募して退職した
  • 雇用契約の更新を希望したのに更新されなかった(雇い止め)
  • 自分の成績不振により会社に解雇された
  • 会社から退職勧奨を促されて退職した(離職届や退職届を提出していない)

自己都合退職になる場合】

  • 違反や違法行為で懲戒解雇になった
  • 「早期退職優遇制度」に応募して退職した
  • 退職勧奨後に自分から退職を申し出て退職した

ちなみに、失業保険を受給するための前提として、離職日以前の1年間に雇用保険に加入していた期間が通算6カ月以上あることが条件です。

※自己都合退職について詳しくは→「自己都合退職とは?会社都合退職との違いも解説

自己都合が会社都合になる場合も

会社から不当に自己都合退職とされた場合、ハローワークで失業保険の手続きをする際、離職票とともに、会社都合退職である証拠を提出することで、会社都合退職として判断してもらえることがあります。

会社は会社都合退職者を出してしまうと、厚生労働省からの「助成金」がもらえなくなる可能性があり、それを避けるために自己都合退職として扱う場合があるので注意が必要です。

また、会社都合退職(特定受給資格者)でなくても「特定理由離職者」にあたる場合は、失業保険を早くもらうことができます。

結婚に伴う引っ越しや事業所の移転によって、通勤が困難となり退職したときなどは、自分が該当するかどうかハローワークで相談してみましょう。

※会社都合の証拠となる資料について詳しくは→「会社都合退職とは?メリット・デメリットも紹介

コラム:会社都合退職はデメリットもある?

会社都合退職は失業保険を早くもらうことができますが、転職活動に悪影響がないとは言い切れません。

なぜなら、企業によっては、過去に会社都合退職をした転職者に対して「能力不足で解雇されたのかもしれない」などと考えて不採用とする場合もあるからです。

そのため、転職活動する際は「会社が経営不振のため、人員削減により解雇」など、退職に至った経緯を詳しく説明すると良いでしょう。

まとめ

60歳未満の受給資格者が失業保険を会社都合退職でもらう場合、受給日数は90~330日で、金額は退職時の給料の50~80%程度です。

手続き後に7日間の待期期間がありますが、以降は受給期間扱いとなり、自己都合退職よりも早く失業保険をもらうことができます。

会社都合退職後は、ハローワークですみやかに手続きをしましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト