取り方・相談先を解説 「有給が取れない」状態の改善方法とは?

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有給の取得は法律で定められた労働者の権利である…。

「それは分かっているけど、人手不足だし、有給を取れるような雰囲気じゃないんだよな、うちの会社は」という人も多いのではないでしょうか。

そんな現状でも、有給が取得しやすくなる方法をお伝えします。

【状況別】なぜ有給が取れないのか?理由と対策

「有給を取りたいけど取れない」人はたくさんいます。なぜ、有給をとることができないのでしょうか。よくある理由とその対策を4つの事例で紹介します。

まずは行動を起こしてみて、それでも何も変わらないようであれば労働基準監督署へ相談したり、有給消化を積極的に促している転職先を探してみるのもいいかもしれません。

有給が取れない4つの事例

【ケース1】社内で誰も取る人がいない(営業職・25歳)

仕事の少ない閑散期でも社内で誰も有給を取る人がおらず、有給を取っていいのかわかりません。

自分だけが有給が取りたいと申し出ると「自分勝手な人間だ」と思われるのではないかと心配になって、どうしても躊躇してしまいます。

いくら有給休暇の取得が権利として認められていても、誰も取らない状況で自分だけ申請をするのはなかなか難しいですよね。

そんなときは、まずは信頼できる身近な上司に直接相談をします。そのうえで、上司や仲の良い同僚と一緒に有給の取得について上層部と交渉してみましょう。

誰も有給を取れない状況が変わるのは、複数人で行動を起こすか、経営陣が考え方を変えたときぐらいです。

もし「我慢して待っていても有給を取得できる会社にはならないかも…」と感じているのであれば、転職先を探し始めてもいいかもしれません。

【ケース2】仕事が多すぎる(事務職・33歳)

あまりに仕事が多いため、有給を取得する暇がありません。

人数の少ない職場で全員忙しいため、ほかの社員に仕事を引き継いで欲しいとも言えず、自分から有給取得を諦めてしまっています。

あまりに仕事が多すぎると感じるならば、まずは信頼できる(話を聞き入れてくれそうな)上司に相談してみましょう。

そのうえで、1ヶ月ほど前からこの日は有給を取ると決めてしまい、有給中に進めなければいけない業務は上司や同僚に引き継ぎの相談をしておきます。

もし上司や同僚には頼みにくいのであれば、有給休暇に限らず、休んだ社員の業務を積極的にフォローしましょう。先に自分がフォローする側に回ってみると、気兼ねなく有給を取ることができるかもしれません。

上司や同僚も仕事がパンパンで引き継ぐどころではない場合は、かなりハードですが、事前に有給を申請し、どうにかして仕事を前倒しで進められないか考えてみましょう。

【ケース3】上司が認めてくれない(デザイナー・25歳)

有給を取得したいと上司に申し出ても、「今は忙しいから無理だ」と取り合ってもらえません。

ほかの時期も同様に忙しいため、おそらく別の時期に申し出たところで、同じ理由で断られると思います。

まず、会社側が有給休暇の申請を拒否することは労働基準法違反にあたる可能性があります。

法律上、会社に有給の取得を拒否する権利はありません。あるのは業務に支障が出る場合に限り、取得の時期を変更できる「時季変更権」だけです。

まずは上司に「いつならば取得して良いのか」を交渉してください。その際、口頭だけでは交渉の記録が残らないので、メールや書面での申請をおすすめします。

それでも話し合いにも応じてもらえないようであれば、例えば部長など、直属の上司よりさらに上の役職の人にその状況を相談することで解決するかもしれません。

それでも有給を取得できないときの相談先は、2章「段階別、有給が取れない場合の相談先」でご紹介します。

【ケース4】アルバイト・パートなので取りづらい(コンビニエンスストア店員・21歳)

コンビニでアルバイトをしています。

最近アルバイトでも有給を取れると聞いたのですが、ほかに取っている人を見たことがありませんし、正社員ではないため本当に取得を申し出ていいものか迷ってしまいます。

自分の正当な権利として、まずは店長に申し出てみましょう。

アルバイト・パートであっても条件を満たしているのに有給を与えないのは労働基準法違反にあたる可能性があります。

具体的には、労働日数が週5日以上または労働時間が週30時間以上の場合は正社員と同様に、そのどちらも満たしていない場合は以下の表の通りに付与されます。

派遣やパート・アルバイトで「週30時間未満であり、所定労働日数が週4日以下あるいは年間216日以下勤務」の場合の有給休暇の付与日数の図:週間労働日4日・年間労働日169~216日の場合→6ヶ月で7日、1年半で8日、2年半で9日、3年半で10日、4年半で12日、5年半で13日、6年半で15日。週間労働日3日・年間労働日121~168日の場合→6ヶ月で5日、1年半で6日、2年半で6日、3年半で8日、4年半で9日、5年半で10日、6年半で11日。週間労働日2日・年間労働日73~120日の場合→6ヶ月で3日、1年半で4日、2年半で4日、3年半で5日、4年半で6日、5年半で6日、6年半で7日。週間労働日1日・年間労働日48~72日の場合→6ヶ月で1日、1年半で2日、2年半で2日、3年半で2日、4年半で3日、5年半で3日、6年半で3日。

アルバイト・パートの有給休暇については取得例が少なく、理解不足の結果、頭ごなしに否定される場合もあります。

直属の上司・店長に断られる場合は、彼らよりも上の立場であるエリアマネージャーや本部・人事の担当者に相談してみましょう。

コラム:有給を取得できる人の考え方とは?

転職Hacks編集部で、有給を取得できている人に「有給が取れない会社についてどう思いますか?」とインタビューをしたところ、以下のような答えが返ってきました。

モーレツ社員がもてはやされる時代ではない。余暇も大事にするのが現代の常識」(人事・29歳)
「きちんと仕事をしているなら、有給取得は当たり前の権利だと思うべき」(営業・24歳)
「有給が取れない会社にいてもそう長くは続かないし、結局辞めることになるなら、有給取得に向けて一度行動を起こしてみる価値はある」(企画・28歳)
休むことで体調管理にもつながるので、会社にとってもプラスになる」(システムエンジニア・37歳)

「何となく後ろめたさを感じてしまう」「特に有給を取るほどの用事がない」といった理由で取得をためらってしまう方は、上記の意見を参考にして、有給を「労働者に与えられた当然の権利」と考えてみてはいかがでしょうか。

有給が取れない場合の相談先

有給が取れない場合の相談先は、実はいくつも用意されています。

ここでは、上司に取り合ってもらえない場合に頼るべき相談先を4つご紹介します。

(1)人事部

外部の機関に相談する前に、まずは人事部など、社内の人事労務系の部門に相談してみましょう。

上司の考え方に問題があるため有給が取れない場合は、会社からの指導や配置転換によって、有給取得が可能になる場合があります。

社内で解決できるため問題が大きくならず、立場の悪化するリスクの少ない方法だといえます。

(2)労働組合

社内で相談しても有給が取得できないと感じた場合は、労働組合に相談してみましょう。

労働組合は、労働者が団結して労働条件の改善を図るためにつくる団体のこと。憲法で団体交渉権が保証されているため、企業に対して大きな発言権を持って交渉が行えます。

会社に労働組合がない場合は、会社外で結成されており、1人でも加入できるユニオン(合同労働組合)に相談を持ち掛けてみてください。誰でも1人で加入できるユニオンには以下のようなものがあります。

※労働組合について詳しくは→労働組合とは

(3)労働基準監督署

有給の申請が明らかに不当に受け入れられない場合は、管轄の労働基準監督署(労基)に訴えましょう。

電話やメール・直接など広く窓口が用意されており、匿名で相談することも可能です。

労働基準監督署の監督官には、法律違反を行う企業への指導・調査のみならず強制捜査や逮捕を行う権限もあるため、会社に対して労働組合以上に強い交渉権を発揮することができます。

ただし、労基が実際に動いてくれるのは相談内容が労働基準法に違反しているという明確な証拠がある場合だけです。

相談前に有給の申請記録やそれが拒否された証拠などを集めておきましょう。

(4)労働相談センター・法テラス

労働相談センターは各都道府県の労働局にある相談窓口。法テラスは弁護士や司法書士に対して無料で法律相談を行える場所です。

「有給休暇を取る理由を問いただされた」「有給の買取を持ちかけられた」などの問題について悩んでいる場合は、電話などを用いてこれらの窓口に連絡を取れば、法情報や法制度を教えてもらえます

労働相談センターは、「あっせん」という形で労使間の調整を担当してくれる場合もあります。

◆労働相談センター(NPO法人)
相談用電話番号:0570-00-6110

※参考→東京都労働相談情報センター

◆法テラス
相談用電話番号:0570-07-8374

※参考→法テラス 公式ホームページ

有給が取りやすい会社・業界とは?

「今の会社には見切りをつけて、次こそは有給の取りやすい会社に行きたい」という方に向けて、有給の取りやすい会社・業界と見分けるポイントをご紹介します。

有給が取りやすい会社を見分ける3ポイント

有給が取りやすい会社を見分ける具体的なポイントを3つにまとめました。

(1)企業規模が大きいか

社員数が多く制度の整った大手企業ほど、有給の取得率が高い傾向にあります。

厚生労働省が2018年に行った調査によると、労働者1人当たりの有給休暇の取得日数は社員数1,000人以上の企業で11.9日なのに対し、社員数30~99人の企業では8.7日。実に3日もの差がついてしまっています。

中小企業では人手不足の常態化や労働組合がないという問題が、有給取得を妨げている現状があるようです。

※参考:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」

(2)女性の管理職が多いか

女性の管理職が多い会社は、育休や産休などの制度が整っており、ワークライフバランスが重視されていることが多いです。そのため、有給も取得しやすい傾向にあります。

管理職でなくても、子育て中の女性に正社員が多い会社は、ワークライフバランスが充実している可能性が高いといわれています。産休明けの復帰率などもチェックしておきましょう。

(3)労働組合が機能しているか

労働組合がきちんと機能している会社は、労働者が団結して労働環境を改善できる土壌が整っているため、有給取得もしやすいところが多いです。

しかし、中小企業の多くでは労働組合は存在せず、労働組合のある大手企業であっても全く機能しない「名ばかり組合」や会社の言いなりの「御用組合」であることも。

転職先を選ぶ際には労働組合についても調べ、過去に労働組合にまつわるトラブルが起こっていないか調べておきましょう。

有給が取得しやすい業界とは?

有給が取得しやすい業界の傾向について、最新のデータをもとに解説します。

インフラ・自動車・公務員は有給が取得しやすい

一般企業において有給が取りやすい業界として名高いのが、電気・ガスなどインフラ関係の企業と、トヨタ・ホンダなどの自動車関連企業です。

厚生労働省の産業別労働者1人当たりの有給休暇の取得状況調査において、インフラ(電気・ガス・熱供給・水道)業界が有給取得率76.8%(平均付与日数19.5日、平均取得日数15.0日)と調査された16業界中、最も高いです。

産業別労働者1人当たりの有給休暇の取得状況:(労働者1人平均取得率)電気・ガス・熱供給・水道業76.8%。複合サービス事業72.7%。製造業64.1%。 情報通信業64.0%。 鉱業,採石業,砂利採取業63.9%。 学術研究,専門・技術サービス業63.2%。 金融業,保険業61.2%。 運輸業,郵便業56.5%。サービス業(他に分類されないもの)54.2%。医療,福祉53.4%。不動産業,物品賃貸業52.5%。生活関連サービス業,娯楽業46.7%。教育,学習支援業46.4%。建設業44.9%。卸売業,小売業44.7%。宿泊業,飲食サービス業41.2%。

※参考:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」

また、東洋経済新報社が2020年に発表した『「有給休暇」の取得率が高い300社最新ランキング』では自動車関連メーカーが1位~5位を独占しています。

インフラ業界はまんべんなく、自動車業界は特に大手メーカー系列の企業が多い傾向はあるものの、インフラ・自動車業界はともに有給が取得しやすい業界だというのは間違いないようです。

これらの業界に加えて、公務員も有給が取得しやすいことで知られています。業務が定型化されており引き継ぎやすいうえに、入社した日から20日付与されます。

宿泊・飲食業界は有給が取得しにくい

有給が取得しにくい業界は、ブラックな労働環境になりやすいといわれる宿泊・飲食業界です。

前出の調査でも有給取得率41.2%(平均付与日数16.2日、平均取得日数6.7日)と最下位に位置しており、その労働環境は近年問題視されています。

離職率の高さから、そもそもの付与日数が少ない社員が多いことや、自由に休みづらいシフト制で労働時間が管理されていることがその背景にあるようです。

率直に有給消化率を聞くのが一番の近道

有給の取りやすさを正確に知る一番の方法は、「有給消化率はどれだけですか?」と率直に転職先の人事担当者に尋ねることです。

休みにこだわる姿勢は印象が良くないため避けるべきという意見もネット上にはありますが、長く勤めるためには有給の取りやすさも重要なポイントです。

「まずは内定をもらうことが大事」という考え方もありますが、有給が取れずにストレスを抱えたまま働くことはデメリットでしかありません。

社員のワークライフバランスを重視している会社なら、快く答えてくれるはずです。

まとめ

有給の取得は労働基準法によって定められた正当な権利です。遠慮せず、取得できるよう上司や人事に働きかけてみてください。

恐れずに申請してみると、意外とすんなり取得できたという声もあります。まずは行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

また、2019年4月からはすべての会社で年5日の有給の取得が義務化され、社会全体が「有給の取得は当たり前」という雰囲気になりつつあります。

多くの企業が人手不足にあえぐなか、有給休暇取得率の高さをアピールする企業もかなり増えてきました。

勤務している会社が「どうしても有給を取らせてくれない」「有給を取れるようになる気配がない」という方は、思い切って転職活動をスタートするのもいいかもしれません。

※詳しくは→有給休暇はいつから義務化される?

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