仕事内容や金額について解説 特殊勤務手当とは?

国あるいは会社から支給される手当の中に「特殊勤務手当」というものがあります。特殊勤務手当をもらえる仕事、もらえる金額についてわかりやすく解説します。

特殊勤務手当とは?

危険で困難な仕事に対して支給される手当

特殊勤務手当とは、危険や困難を伴い身体的・精神的な負担が大きい仕事など、特殊な仕事を行う労働者に支給される手当です。

具体的な仕事内容として、放射線の除染作業、爆発物の処理業務、看護師・医師の夜間救急医療業務などが挙げられます。

特殊勤務手当は原則、公務員に支払われる手当ですが、民間企業でも支給されることがあります。

例えば、私立学校に勤務する教員や、東京電力福島第一原子力発電所における除染業務を行う作業員などです。

特殊勤務の一覧

人事院が規定している特殊勤務手当の対象となる作業内容は、下記の通りです。

なお、担当している特殊業務が2つ以上あったとしても、いずれか1つのみの支給となり、すべての手当を受け取ることは禁止されています。

特殊勤務手当の種類 具体的な仕事内容例
1.高所作業手当 地上10メートル以上での作業など
2.坑内作業手当 トンネル、ダムでの掘削作業など
3.爆発物取扱等作業手当 爆発物、化学物質などの鑑定・処理など
4.水上等作業手当 灯標上で行う大型蓄電池・灯具の交換作業など
5.航空手当 パイロットとしての操縦訓練など
6.死刑執行手当 死刑囚への死刑執行作業
7.死体処理手当 死体の収容・検視など
8.防疫等作業手当 感染症に対する検査・消毒作業など
9.有害物取扱手当 青酸ガスを用いた輸出入植物への殺虫作業など
10.放射線取扱手当 放射線技師の診療でのエックス線照射作業など
11.異常圧力内作業手当 潜水器具を着用しての潜水作業など
12.狭あい箇所内等検査作業手当 ボイラー内部での構造検査・使用再開検査など
13.道路上作業手当 道路の維持修繕工事、除雪作業など
14.災害応急作業等手当 災害発生下での巡回監視・応急作業など
15.山上等作業手当 国有林でのチェーンソーによる伐採・刈払いなど
16.移動通信等作業手当 遭難救助で、現場に出動して行う通信施設の臨時設置・運用保守など
17.航空管制手当 航空路管制業務など
18.夜間特殊業務手当 深夜に行われる出入国の審査・警備など
19.夜間看護等手当 深夜に行われる救急医療業務など
20.用地交渉等手当 事業に必要な土地の取得に関する交渉など
21.鑑識作業手当 指紋や写真を利用して行う犯罪鑑識の作業など
22.刑務作業監督等手当 収容された者が行う刑務作業の監督の業務など
23.護衛等手当 皇族の護衛など
24.犯則取締等手当 難民認定法に違反した疑いのある外国人への、違反調査の取調べなど
25.極地観測等手当 南極地域観測に関する業務など
26.国際緊急援助等手当 海外の地域における国際的な緊急援助活動など
27.小笠原業務手当 小笠原諸島に置かれた官署の所掌する業務など

※参考:人事院規則9-30(特殊勤務手当)

該当する仕事は勤務先によって異なる

特殊勤務に該当する仕事は、勤務先によって異なります。国家公務員は人事院規則、地方公務員は各地方自治体の条例によって、対象の業務と手当の条件が規定されています。

各自治体の実態に沿って規定されているため、人事院規則にはない独自の特殊勤務手当がある地域もあります。

また、民間企業の場合、特殊勤務手当の内容や金額は、その会社がある自治体の条例または会社独自の規定を適用しているケースが多くあります。

コラム:特殊勤務手当は見直しで減少傾向

総務省は、2004年頃から段階的に特殊勤務手当の内容を見直し、6年かけて、総支給額を152億3,400万円から4億900万円まで削減しました。

【特殊勤務手当の支給状況】 2004年/152.34億円 |2008年18.85億円 |2009年6.45億円 |2010年4.09億円

見直しが行われた理由は、重複支給が行われていたからです。

2004年段階では210もの手当があり、そのなかには特殊勤務に該当しないような休日勤務手当・年末年始勤務手当も含まれていました。これらの是正措置により、2021年現在、適正な支給がされています。

※参考:集中改革プランにおける給与適正化の取組状況等について(都道府県・政令指定都市の状況)(平成22年)|総務省

職種別|特殊勤務手当の金額

特殊勤務手当は、給与締め日までの作業回数分が、給料と一緒に支払われるケースがほとんどです。また、特殊勤務手当は課税対象となっています。

3つの職種について、特殊勤務手当が支給される具体的な仕事内容と、その金額について紹介します。

医師・看護師

医師看護師は患者の生命を扱う職業柄、肉体的・精神的な負担が大きいことから、多くの施設で特殊勤務手当が設けられています。

具体例として、東京都立病院の特殊勤務手当を紹介します。東京都立病院の特殊勤務手当は、生命に関わる業務に対して支払われるものです。

東京都立病院に勤務する職員の特殊勤務手当

業務内容 手当の金額
1.産科医業務手当

a.分べんに係る業務

b.緊急搬送された妊産婦に対する診療業務

a.1万円/回

b.2万円/回

2.夜間または休日における救急医療業務手当 2万円/勤務
3.医療安全対策・感染管理などの特定看護分野従事手当 2,700円/日
4.分べん介助業務手当 3,000円/回
5.新生児特定集中治療室に入院する新生児の診療を行う新生児担当医業務手当 1万円/新生児1人

また、医師や看護師は夜間に緊急で勤務することもあるため、人事院規則では「夜間看護等手当」という特殊勤務手当を設けています。各病院は夜勤手当と合わせて、夜間看護等手当を任意で設定しています。

人事院規定の夜間看護等手当

支給条件 手当の金額
1.その勤務時間が深夜の全部である場合 7,300円/回
2.その勤務時間が深夜の一部を含む場合

a.深夜における勤務時間が4時間以上

b.深夜における勤務時間が2時間以上4時間未満

c.深夜における勤務時間が2時間未満

a.3,550円/回

b.3,100円/回

c.2,150円/回

※夜勤手当について詳しくはこちら→【夜勤手当のすべて】割増賃金との違いから計算方法まで

※出典:
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例 |東京都
人事院規則9-30(特殊勤務手当)

学校の教員

学校に勤める教員にも、特殊勤務手当が支給される場合があります。

東京都の公立学校職員の特殊勤務手当の金額は、下記の通りです。非常事態における業務や、生徒の課外活動における引率業務が、特殊勤務手当の支給対象となります。

東京都の学校職員に関する教員特殊業務手当

業務内容 手当の金額
(1)非常災害時などの緊急業務

a.非常災害時における生徒の保護、または緊急の防災・復旧の業務

b.特に被害がひどい災害発生時における生徒を含む避難住民の救援業務

c.生徒の負傷、疾病などに伴う救急業務

d.生徒に対する緊急の補導業務

a.3,200円/日

b.6,400円/日

c.3,000円/日

d.3,000円/日

(2)宿泊を伴う修学旅行などの引率業務 1,700円/日
(3)宿泊を伴う、あるいは休日に行われる対外運動競技などの引率業務 5,200円/日
(4)休日に行われるクラブ活動・部活動の指導業務 3,000円/日

※出典:学校職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則|東京都

除染作業員

東日本大震災に伴う、東京電力福島第一原子力発電所での放射能の除染作業を行う作業員にも、特殊勤務手当が支給されています。特殊勤務手当の金額は下記の通りです。

環境省が定めている管理区域における除染作業(※2019年4月以降)

帰還困難区域 6,600円/日
居住制限区域 3,300円/日

なお、支給対象となる仕事は除染だけではなく、仮置場の設計や測量、造成、管理などの業務、現場調査業務、工事現場監督の支援業務なども含みます。

また、作業時間の長さによっては満額が支払われるわけではありません。1日の作業時間が4時間に満たない場合、上記手当の60%にあたる金額が支給されています。

※出典:不適正除染110番への情報提供及び特殊勤務手当について|環境庁

まとめ

特殊勤務手当とは、危険や困難を伴うことで身体的・精神的な負担が大きい仕事、あるいは特殊な仕事に従事した労働者に支給される手当です。

原則として公務員に支払われるものですが、民間企業に勤める労働者にも支給されることがあります。

自治体や企業によって具体的な仕事内容や金額が異なるため、どのような仕事をすると特殊勤務手当が支給されるのか気になる場合は、自治体の条例や就業規則をチェックしてみましょう。

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