計算方法をわかりやすく解説 退職金に住民税はいくらかかる?

退職金住民税はどれくらいかかるのでしょうか。退職金にかかる住民税の計算方法と納付方法、退職金を受け取った場合に確定申告が必要な場合についてお伝えします。

退職金に住民税はかかる?

退職金には住民税と所得税がかかる

退職金には住民税と所得税がかかります

退職金には退職時にまとめて受け取る「退職一時金」と、退職後に分割して受け取る「企業年金」があり、どちらも税金がかかります。

この記事では退職一時金にかかる住民税について説明します。

勤続年数と金額によっては課税されない

退職金は長年の勤務に報いる意味があり、老後の大切な財産となるものです。そのため、税金の負担が軽くなるよう優遇されています。

勤続年数と受け取った退職金の額によっては、住民税も所得税も全くかからない場合があります。

下の図は、勤続年数ごとの非課税上限額をまとめたものです。

【住民税・所得税がかからない退職金の上限額【一覧】】(勤続年数/非課税上限額) 1/40万円 |2/80万円 |3/120万円 |4/160万円 |5/200万円 |6/240万円 |7/280万円 |8/320万円 |9/360万円 |10/400万円 |11/440万円 |12/480万円 |13/520万円 |14/560万円 |15/600万円 |16/640万円 |17/680万円 |18/720万円 |19/760万円 |20/800万円 |21/870万円 |22/940万円 |23/1010万円 |24/1080万円 |25/1150万円 |26/1220万円 |27/1290万円 |28/1360万円 |29/1430万円 |30/1500万円 |31/1570万円 |32/1640万円 |33/1710万円 |34/1780万円 |35/1850万円 |36/1920万円 |37/1990万円 |38/2060万円 |39/2130万円 |40/2200万円 |41/2270万円 |42/2340万円

※休職期間も勤続年数に含まれます。1年に満たない端数は切り上げて計算します(例:「19年5ヶ月」であれば「20年」)。

退職金の額が、勤続年数に応じた非課税上限額を超えると課税されます。住民税を計算してみましょう。

自分で税金を納付する必要はない

退職金にかかる住民税と所得税は、退職金を受け取る時に差し引かれます

会社が税額を計算して徴収するので、自分で納付する必要はありません。そのため、通常は確定申告も不要ですが、条件によっては必要になるケースもあります。

※くわしくはこちら→確定申告が必要な2つのケースとは?

退職金にかかる住民税の計算方法は?

退職金の住民税を計算する3つのステップ

退職金にかかる住民税の計算方法を図にすると、下記のようになります。

【退職金にかかる住民税の計算方法】 退職金(収入金額)=退職所得額【1】+退職所得控除額 |退職所得額【2】(退職所得の1/2)*税率10%=退職金にかかる住民税額

計算方法について詳しく説明していきましょう。退職金にかかる住民税は、次の3つのステップで計算できます。

<退職金にかかる住民税の計算手順>

ステップ1:退職所得額を計算する

ステップ2:課税の対象となる金額(課税退職所得額)を計算する

ステップ3:課税退職所得額に税率(10%)をかける

ステップ1:退職所得額を計算する

まず退職所得額(上の図の【1】)を確認しましょう。

退職所得額は、退職金の金額から退職所得控除額を引いた金額です。

退職所得控除額=住民税、所得税がかからない上限額」なので、上の「住民税、所得税がかからない退職金の上限額の一覧表」で確認できます。

退職所得金額=退職金の額−退職所得控除額

なお、退職所得控除は次の表の計算式で算出します。

20年以下/勤続年数×40万円 |20年を超える/(勤続年数-20年)×70万円+800万円 |※退職所得控除額が80万円未満の場合は、80万円として計算します。

ステップ2:課税の対象となる金額(課税退職所得額)を計算する

次に課税の対象となる金額(課税退職所得額)を計算します。上の図の【2】の金額です。

課税退職所得額は、退職所得額に1/2をかけて算出します。

課税退職所得金額=退職所得額×1/2

ステップ3:課税退職所得額に税率(10%)をかける

課税退職所得金額に一律10%の税率をかけると、退職金から引かれる住民税の金額が出ます。

なお、税率の内訳は、都道府県民税が4%市町村民税(東京23区の場合は特別区民税)が6%です。

住民税額=課税退職所得金額×10%

退職した翌年の住民税は増える?

住民税は前の年の所得にかかりますが、退職金で所得が増えた場合、翌年の住民税は増えるのでしょうか。

退職金は翌年の住民税に影響しない

退職金を受け取っても、翌年に支払う住民税が増えることはありません

退職金は他の収入と合算せず、退職金だけで税額を計算するからです。

退職金にかかる住民税は、退職金を受け取る時に徴収されているので、翌年に納付を求められることはありません。

確定申告が必要な2つのケースとは?

受け取る退職金はあらかじめ、住民税と所得税が差し引かれているため、基本的には確定申告をする必要はありません

ただし、状況によっては、退職金の確定申告もしくは退職前に受け取った給与・ボーナスの確定申告が必要になります。

<確定申告が必要なケース>

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出していない
  • 年の途中で退職して再就職していない

それぞれのケースについて解説していきましょう。

なお、確定申告は所得税を計算して申告・納税する手続きです。申告の内容は税務署から市区町村に通知されるため、住民税について別途申告などの手続きは必要ありません

確定申告の進め方とポイント

「退職所得の受給に関する申告書」を出していない

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、確定申告が必要です。退職所得控除を受けるには「退職所得の需給に関する申告書」を勤務先に提出する必要があります。

この申告書を提出していないと、退職金の金額に一律20.42%の所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。

20.42%の税率で源泉徴収された所得税の金額が、退職所得控除の適用を受けて計算した税額よりも多い場合は、確定申告することで所得税の還付を受けることができます。

なお、住民税は、申告書を提出していなくてもあらかじめ課税退職所得の10%が徴収されているため、確定申告によって還付されることはありません

「退職所得の受給に関する申告書」は勤務先から受け取るか、もしくは国税庁のホームページからダウンロードすることができます。退職金を受け取る前には、忘れずに勤務先に提出しましょう。

退職所得申告書のサンプル画像

 ※出典:退職所得の受給に関する申告書|国税庁

年の途中で退職して再就職していない

年の途中で退職して、年内に再就職していない場合は、退職前に受け取ったその年の給与やボーナスについて確定申告を行う必要があります。なぜなら勤務先での年末調整を受けられないからです。

会社に勤務している間は、毎月の給与やボーナスから所得税が源泉徴収されています。

ただし、1年間の給与所得の額が確定しないと、正確な所得税の額を計算することはできません。そこで、会社は年末調整を行って、源泉徴収した金額と年末に確定した所得税額との差額を清算します。

年末調整は12月頃に行われるため、そのタイミングで再就職していない場合は、年末調整を受けられません。自分で確定申告をしましょう。

所得税を払いすぎていた場合は、所得税の還付を受けられます。

 まとめ

退職金にも住民税がかかります。退職金にかかる住民税の計算方法を知って、どれくらいの負担になるのか把握しておきましょう。

また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないなど、確定申告が必要なケースについても理解しておきましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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