デメリット・日本での導入事例 サバティカル休暇とは

働き方改革が注目される中で「サバティカル休暇」への関心が高まっています。

今回は、サバティカル休暇とは何なのか、社員や企業のメリット・デメリット、実際の導入事例などをわかりやすく説明します。

サバティカル休暇とは?

サバティカル休暇の制度概要や、注目を集めている背景を紹介します。

勤続年数の長い社員が長期休暇を取れる制度

サバティカル休暇は法律で定められた制度ではないため、全ての企業に共通した定義はありません。一般的には、一定期間以上勤続している社員が取得できる長期休暇制度として導入されています

もともとは、19世紀のアメリカで大学教員を対象に導入されたのが始まりと言われています。いまでも多くのアメリカの大学では7年に一度、半年または一年間、大学の公務から解放される制度として運用されています。1990年代にIT企業を中心に人材獲得競争が激しくなる中で、他社との差別化を図る目的で企業にも導入が拡大したようです。

休暇を取得する目的は自由で、休暇期間中は旅行、留学、資格取得など好きな活動に取り組むことができます。

サバティカル休暇の期間は1ヶ月~1年程度

サバティカル休暇期間は1ヶ月~1年としている企業が大半ですが、中には2年以上取得可能な企業もあります。

長期休暇を前提としているため、数日~一週間程度の短期休暇は、サバティカル休暇ではなく「リフレッシュ休暇」や「勤続◯◯年休暇」として別制度として運用されています。

ただし、企業によってはそれらの短期間の休暇をサバティカル休暇と呼んでいるケースもあるようです。

▼リフレッシュ休暇について詳しく

サバティカル休暇中は「給与なし」が一般的

サバティカル休暇中は、給与は出ません

サバティカル休暇は企業が任意で導入する制度であり、給与の有無、支給額は企業によって異なります。

休暇期間中は無給としている企業が大半ですが、基本給の3割を支給する企業や、手当という形で一律30万円を支給する企業もあるようです。

コラム:サバティカル休暇が注目されるワケ

日本では2018年の3月に、経産省と中小企業庁がまとめた報告書の中でサバティカル休暇についての言及があり、注目が高まりました。

報告書の中では、人生100年時代を見据えて、個人の学び直しや振り返りを支援するために「サバティカル休暇」の制度整備を促進する事が説明されています。

サバティカル休暇、どんな良さがあるの?

ここからは、サバティカル休暇を利用するメリット・デメリットをご紹介します。

サバティカル休暇のメリット3つ

サバティカル休暇の主なメリットは以下の3つです。社員は安心して長期休暇を取ることができ、企業にとっては働く環境を改善するきっかけになります。

  • リフレッシュできる
  • スキルアップできる
  • 業務の標準化ができる

リフレッシュできる

長い休暇を取ることで、気持ちを一新することができます

長期休暇で得られる心身の回復は、週末などの短期間では得難いもの。サバティカル休暇を取得することによって、ワーク・ライフ・バランスを整えることができます。結果、休暇明けには心身ともに充実して業務に取り組むことが期待できるでしょう。

スキルアップできる

留学や資格取得によりスキルアップができます

スキルアップすることで、キャリアの選択肢も広がります。また、付加価値の高い仕事をすることができるようになり、業務を通して企業に還元することができます。

業務の標準化ができる

サバティカル休暇取得に際しては、仕事の棚卸しや整理、マニュアル化などが行われます。これらがないと業務が滞ってしまうからです。この機会を利用して、業務の標準化や効率化を推し進めることができます

社員にとっては、属人化していた業務が標準化されることで、日頃から休暇を取得しやすくなるメリットも。「自分にしかできない仕事が多くて普段は休みづらい」といった状況が解消されるでしょう。

サバティカル休暇のデメリット

サバティカル休暇のメリットは大きいものの、長期休暇ならではのデメリットや懸念点もあります。

  • 期間中は給料が出ないことが多い
  • 復帰後のキャッチアップが大変

期間中は給料が出ないことが多い

サバティカル休暇中は、無給であることがほとんどです。そのため、休暇に入る前から、サバティカル休暇中の生活費や留学費などを計画的に用意しておく必要があります。

復帰後のキャッチアップが大変

長期間現場を離れるため、勤続年数が長い人でも、休暇明け直後は業務の把握や遂行に手間取ることが予想されます

復帰後のキャッチアップに備えて休暇前に資料を整理するなど、つまずかないための工夫をしてもいいでしょう。

サバティカル休暇の導入事例

欧米ほどではありませんが、日本でもサバティカル休暇や類似の休暇制度が導入されている企業があります。

企業の導入事例を、対象者の条件など制度内容もあわせてご紹介します。

ヤフー

ヤフー株式会社は、2013年にサバティカル制度を導入しました。

対象は勤続10年以上の正社員で、2~3ヶ月の範囲で長期休暇を取得できます。期間中は基準給与1ヶ月分を「休暇支援金」として受け取れます。

ソニー

ソニー株式会社は2015年に「フレキシブルキャリア休暇制度」を導入しました。

期間は休暇の目的によって異なります

配偶者の海外赴任や留学に同行し、知見や能力を向上させてキャリアの継続を図る休職(最長5年)や、専門性を深化・拡大させる私費就学のための休職(最長2年)が可能です。

リクルート

リクルートグループは「STEP休暇」という名称で、最大28日間の長期休暇制度を導入しています。

試用期間終了後、勤続3年以上の社員なら誰でも取得できる休暇です。3年ごとに利用でき、取得者には一律30万円の手当が支給されます。

ファインデックス

株式会社ファインデックスは、2018年にサバティカル休暇制度を導入しました。

社員は勤続10年ごとに最長6ヶ月の休暇を取得できます。また、休暇中は基本給の3割が支給されます。

ANA

旅客運送業大手のANA(全日本空輸)は2021年4月、最大2年間取得できるサバティカル休暇を導入しました。休暇中は無給ですが、1年以上取得する場合は補助金20万円が支給されます(補助金については2021年の限定的な措置となる見通し)。

コロナ禍による業績悪化をうけ、人件費削減の狙いがあるとされていますが、年単位での取得は大手企業でも珍しく、注目を集めました。

コラム:大学教授や公務員にもサバティカル休暇がある

「サバティカル休暇」という名称とは限らないものの、大学教授や国家公務員には同様の制度があり、広く利用されています

大学には国立・私立を問わず、サバティカル制度が導入されています

制度内容は大学によって異なりますが、研究を目的として通常の職務を離れる休暇であることが共通しています。そのため、大学によってはサバティカル研修や研究休暇と呼んでいるところもあります。

国家公務員にも、サバティカル休暇に似た制度が用意されています。

自己啓発等休業制度」という名称で、取得するには2年以上の在籍期間が必要です。

休業期間中は無給で、休業できる期間は目的によって異なります。大学等における修学のためなら2年間、国際貢献活動のためなら3年間の休業が認められています

まとめ

サバティカル休暇は、一定期間勤続している社員が長期休暇を取得できる制度です。バックアップ体制が整えば社員にも企業にもプラスの効果をもたらしてくれます。

今後は企業を選ぶ際に、サバティカル休暇を導入しているかどうかチェックしてみてもいいのではないでしょうか。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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