部長・課長の4割が降格? 役職定年制度まるわかり|年齢や退職金も

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企業によっては導入されている役職定年制度。それまで築き上げたキャリアによって得た役職を離れ、異なる環境で再スタートを切ることに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。実際の導入事例などを踏まえ、役職定年制度の実情について詳しく解説します。

 役職定年制度とは?

役職定年制度の概要や導入している企業の割合、その開始年齢などについて、人事院の「民間企業の勤務条件制度等調査」(2017年)の結果を基に解説します。

定年退職前に役職から外される制度

役職定年制度とは、定年退職の直前である55歳~59歳頃になると部長や課長といった役職から外される制度です。役職定年後の仕事内容は人によってさまざまで、役職がなくなっただけで仕事内容は以前と変わらないというケースもあれば、以前とまったく違う分野の仕事を任されるケースもあるようです。

役職定年制度を導入している企業は全体の約16%

役職定年制度がある企業は全体の16%で、500人以上の大企業では30%にものぼります。

【企業規模別】役職定年がある企業数とその割合表:500人以上規模→4,862社・30.7%、100人~499人規模→23,020社・17.6%、50人~99人規模→16,383社・10.4%、全体→44,265社・16.4% ※調査対象企業数は44,265社

役職定年制度を導入している企業のうち、今後も継続する意思のある企業は約95%に及びます。このことから、多くの企業が役職定年に対して一定の効果を感じていると言えるでしょう。

一方で、以前から役職定年制度を導入していない企業のうち、今後も導入の予定がない企業は約90%となっており、導入へのハードルが高いことがうかがえます。

役職定年になる年齢は部長も課長も55~60歳

役職定年の開始年齢は企業によって異なりますが、おおむね50代後半、とりわけ55歳~57歳くらいのケースが多いようです。

部長・課長にかかわらず、55歳で役職定年になる年齢のピークを迎え、60歳までを目処に徐々に減っていきます。

役職定年の年齢(部長級)の割合を示したグラフ:54歳以下→2.3%、55歳→41.0%、56歳→6.4%、57歳→21.2%、58歳→17.3%、59歳→4.6%、60歳→6.0%、61歳以上→1.1%

役職定年後の配置で降格になる人が4割

役職定年になった部長級の人のうち、約4割の人が降格になっています。出向や転籍を含め、部長職では41.9%、課長職でも同等の割合で役職定年後に降格となっています。

役職定年後のポスト(部長級)の割合を示したグラフ:同格のスタッフ職→44.0%、格下のスタッフ職→33.4%、格下のライン職→7.5%、出向・転籍→1.0%、退職→0.2%、その他→13.4%、不明→0.5%

ライン職とは部長や課長、係長といった管理職を指し、スタッフ職とは専門知識やスキルを生かしてライン職のサポートを担当する職種で、主査や主幹と呼ばれることもあります。

企業が役職定年制度を設けるワケ

役職定年制度の主な目的は人件費の削減です。この制度が導入されたきっかけは、1988年の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の法改正により、60歳未満定年制が禁止になったことでした。

これにより、企業は給料のほか、厚生年金、健康保険料などをこれまでよりも余計に払わなければならなくなったため、経費削減策として役職定年が生まれたのです。

また、定期的に役職が入れ替わることで「能力のある後継者が役職に就くチャンスが増える」「役職を退いた社員が若手を育成する環境が生まれる」といったメリットもあるため、大手企業を中心に役職定年制度が導入されています。 

コラム:公務員にも役職定年はある?

国家公務員は2021年以降、役職定年制度の導入が決定しています。政府は国家公務員の定年を65歳に引き上げることを予定しており、2021年には61歳、以降3年ごとに1歳ずつ引き上げ、2033年には65歳とする方向で検討しています。

それに伴って役職定年制度を導入し、課長級以上のポストは60歳以降で課長補佐級以下、もしくは専門スタッフ職というポストに引き下げ、年収は7割程度になるよう調整する見込みです。

 国家公務員の定年が延長されれば、その流れが地方公務員にも波及すると予測されています。

役職定年で給与、退職金は増える?減る?

役職定年後、給与をはじめ年金や退職金といった手当の金額はどの程度変わるのでしょうか。

役職定年後の給与は減るのが一般的

役職定年後は管理職から一般社員になるため、管理職手当てがなくなり、多くの場合年収が下がります具体的な金額としては、平均2割程度年収がダウンするケースが多いようです。

例えば役職定年前の年収が600万円で定年後の減額率が25%の場合、年収600万円から450万円になります。

役職定年で退職金の増減はない

退職金は役職定年にかかわらず、勤続年数で確定しているケースが多いようです。そのため、定年まで勤め上げれば退職金が減額されることはほとんどありません。 

給料ダウンに伴い年金も減ることが多い

役職定年になった場合、年金は給料にともない減額になることが多いようです。

会社員の年金には老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の2種類があり、役職定年が影響してくるのは老齢厚生年金の方です。

例えば役職定年前の年収が600万円・定年後の年収が400万円、役職定年が55歳、定年退職が60歳、年金受給期間を65歳から85歳までの20年間とした場合、役職から離れず定年まで勤めた場合よりも年金額は82万円程度少なくなります。

▼具体的な計算方法

役職定年前と役職定年後の年収の差額=150万円…(1)

老齢厚生年金を算出する公式は

「平均標準報酬額x5.481÷1000x厚生年金加入月数」

(1)を12ヶ月で割って、月収(標準報酬月額)の減収額を算出。

1,500,000÷12=125,000 →月額12万5,000円の減額…(2)

給与が減るのは役職定年から定年退職までの「5年間=60カ月…(3)」なので、老齢厚生年金の算出式に(2)と(3)の数値を当てはめると1年あたりの減額の概算が求められる。

125,000×5.481÷1,000×60=41,107.5 →1年あたり4万1,107円の減額

仮に年金受給期間を65歳から85歳までの20年間とした場合、
41,107×20=822,140 →82万2,140円

役職定年の問題点とつらい現状

世間では「役職定年はつらい」といった声も聞かれますが、実際のところどうなのでしょうか。役職定年になった際の問題点や体験談などを例に、役職定年の現状について紹介します。

職場環境が変わることがストレスに

役職定年後の配置転換や降格によって、かつての部下が上司になったり、異動してこれまでの業務と関係のない仕事を任せられたりすることもあります。そのため、これまでのキャリアがまったく生かせない日々を過ごすことになるケースも。

そうなった場合、管理職として活躍していた以前とのギャップにストレスを感じたり、仕事にやりがいを感じられない状態になったりするといった問題があります。

また、元部下に指導される立場になったことで居心地の悪い思いをしたりする人も少なくないようです。

仕事へのモチベーションが下がる

明治安田生活福祉研究所の調査によると、役職定年後に約4割の人の年収が半分未満にダウンしており、そのうちの約6割が仕事へのモチベーションが下がったと答えています。

また、これまで何らかの肩書きがあった人が、役職定年によってそれがなくなったことも、モチベーションの低下に影響していると考えられます。

※参考:50 代・60 代の働き方に関する意識と実態|明治安田生活福祉研究所

【体験談】役職定年のつらい現状

会社によって役職定年者への対応はさまざまですが、中には役職定年後に厳しい現実に直面している人もいるようです。以下は役職定年の体験談です。

会社の再就職斡旋制度を利用するも就職難

A社の役職定年は55歳。ただし、その実態は配置転換というよりも退職勧奨に近いものだった。

A社では、役職定年者には人材派遣会社を経由して再就職先を探す再就職先斡旋制度が用意されている。しかし50代後半での不本意な転職がうまくいくケースは少なく、4社も5社も再就職試験を受けては落ち、1年が過ぎることも珍しくない。

役職定年前のポストが課長だったSさんも再就職に苦労した一人。役職定年から1年後に再就職が決まったものの、課長だった頃の働き方とのギャップが大きく、仕事にやりがいを感じられない状態が続いている。

役職定年度全くの異業種に配属されキャリアを生かせず

役職定年者はそのまま同じ部署に留まることが多かったB社。

近年、役職定年者が増えるに従い、役職を離れた元上司が後輩に口出しするケースが多く、役職定年者が部署内で厄介者扱いされる傾向に。

そこでB社は役職定年者専用の子会社を設立したものの、役職定年者が元のキャリアを活かせるケースは少なく、不満を感じている社員が多いという。

役職定年導入企業の事例

大手企業における役職定年の実際の導入事例について紹介します。 

制度を廃止後、再導入したソニー

ソニーでは2000年に役職定年制度を一度廃止しましたが、幹部人材の高齢化を危惧して2013年4月に制度を再導入しています。

ソニーの役職定年は、事業部長以上が57歳、統括部長が55歳、担当部長や統括課長は53歳。同年齢を迎えた社員は統括職から外したうえで、各社員の役割に応じた社内での処遇を提示されます。一方、他社への転職を支援することもあるようです。

対象者の受け皿に新会社を設立した富士通

富士通では、55歳(課長・部長の場合)から57歳(本部長の場合)で管理職から外れる「役職離任」制度が役職定年に当たります。

給料は管理職としての格付けに応じて、離任前の100%、85%、55~85%のいずれかになりますが、実際には25%ダウンする人が大多数

一方で管理職を務めた50代SEの活性化を狙い、2015年10月には新会社「富士通クオリティ&ウィズダム(FJQW)」を設立。管理職を離れた55歳以上のSEを全員FJQWに異動させ、新たな活躍の場を提供しています。

まとめ

役職定年とは、役職者が定年退職を迎える前に役職を外れる制度で、会社によっては年収がダウンしたり仕事内容が大きく変わったりすることもあります。

自社あるいは転職先で役職定年制度が導入されている場合、待遇や働き方がどのように変わるのか確認しておきましょう。

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