医療事務コースの卒業生に聞いた 職業訓練校の選考と講義・就職のリアル

職業訓練校のメリットは理解したもの、実際に通うイメージがつかない……。という人も多いはず。今回は、3ヶ月間の医療事務の職業訓練を受講した、かなさん(仮名・神奈川県在住)にお話をお聞きしました。

医療事務の職業訓練については、ハローワークの棚にあったパンフレットで知ったというかなさん。選考内容から1日のスケジュールやクラスの様子、実際の就職状況までをインタビュー形式で紹介します。

職業訓練の選考はどのような内容?

──まず職業訓練の選考について、お伺いしてもよろしいでしょうか?

かなさん:私の場合、選考は面接でした。当日は私1人に対して面接官は2名で、訓練校で実際に指導している先生方でした。事前に一般的な就職活動で使う履歴書を作成し、その場で提出しました。

ハローワークの相談員の方からは「よっぽど問題がない限り落ちることはない」と聞いていました。

──実際の面接では、どのようなことを聞かれましたか?

かなさん:職業訓練校の志望理由、前職の業務内容や退職理由、求職活動の状況、卒業後のキャリアビジョンについて聞かれました。その際卒業後はもちろん医療事務として就職したい」と伝えました

──では、選考で大変だったことは?

かなさん:うーん…。個人的には、選考より失業給付まわりの手続きのほうが大変でしたね。私の講座は訓練給付金の対象だったので、その申請にも苦労しました

教育訓練給付金についてくわしくはこちら

 ▼ポイント(かなさんの場合)

  • 選考は面接のみ。基本的には落ちることはない
  • 選考より、失業保険の事務手続きが大変だった

毎日のスケジュールは?講義は難しい?

──続いて、職業訓練校に通われていたときのスケジュールを教えていただけますか?

かなさん:講義は1コマ45分か50分で、休憩が10分間でした。朝は8時50分~9時までホームルームがあり、午前中4コマ、午後2コマが基本的な一日の流れでした。

医療事務の職業訓練学校に通ったかなさんの1日のスケジュール。6:00:朝食食事。7:00投稿。8:00:入室、ホームルーム。9:00~12:30:授業。12:30~13:30:昼食。13:30~15:00:授業。15:00~17:00:放課後。17:00~19:00:買い物帰宅。19:00~21:00:夕食・家事。21:00~12:00:自由時間(予習・復習も含む)。24:おお~翌日6:00:就寝

講義自体は月~金の平日のみで、土日と祝日は休みです。8時30分に学校が開門し、15時にはすべての講義が終わっていたと思います

生徒が完全撤収しなければいけない17時までは放課後の時間となり、全国開催の医療事務の試験日は試験会場を学校に指定して、放課後そのまま受けることができます

試験がない日は、パソコン室で履歴書の作成や求人情報の収集など、就職活動の準備をしている人もいましたよ

──実際の講義はどのように進むのでしょうか?

かなさん:基本的には座学でした。講義自体は手元の教科書をもとに進みますが、先生から別途、プリントが配布されました。カリキュラムには医療事務の試験の受験も含まれていて、講義では実際の練習問題を解くこともありましたね

医療事務にまつわる知識を学ぶ以外に、WordやEXCELなどの基本的なPCスキルを習得する時間もあります

──医療事務と聞くと、専門的で難しそうな印象です。実際の試験はどうでしたか?

かなさん:長文を読み解く正誤問題が多いのですが、私自身、文系の大学に通っていたということもあり、そこまで苦手意識はなかったですね。レセプト点検の問題では計算もしますが、基本的には電卓を使います

※レセプト(診療報酬明細書)…患者の診療費の負担分が書かれた請求書。医師による診察・処置・検査が点数化されて記載されており、当日の会計もレセプトをもとに決まる。

クラスの中には「自分に向いていないかも」と嘆いていた人もいましたが、放課後に先生に質問をしたり、先生のご厚意で用意された補習を受けたりして、頑張っていましたよ。

──グループワークなどはありましたか?

かなさん:先生の講義を聞く授業スタイルなので、グループワークはありません。ただ、たまに隣の人の練習問題の丸付けをしたり、書いたレセプトを見せあって確認したりすることはありました。

──職業訓練校では、課題などは出るのでしょうか?

かなさん:いわゆる家でやるような「宿題」はありません。家ではその日習ったところを復習したり、練習問題を見直したりはしていました。

あと、わからない部分があったときは放課後の時間に、講師の先生に聞くようにしていました。

 ▼ポイント(かなさんの場合)

  •  講義は1コマ45~50分で、1日6コマが基本
  • 座学が基本。教科書とプリントとともに進む
  •  グループワークや宿題はない
  •  放課後、わからない点は講師に質問していた

クラスメイトとの関わりは?どんな雰囲気?

──クラスのメンバーについて、お聞きしてもよろしいですか?

かなさん:年齢層は幅広かったです。新卒のような若い方から、私より上の30~40代の方も多かったですね。子育てを機に一度離職したお母さん世代の方もいらっしゃいました。

約25名のうち、ほとんどが女性で、男性は2名だけでした。

──クラスのメンバーと仲良くなったりしましたか?

かなさん:私は、席の近い人とお話ししたぐらいですね。クラスの雰囲気は、和やかで楽しい感じでした。

年代の近い方同士でいくつかグループのようなものが形成されていて、男性は2人だけだったので会話している姿をよく見ました。

──クラスの方は全員卒業されたのでしょうか?

かなさん:いいえ。1人途中で退校された方がいました。ただ、理由についてはわかりません。

 ▼ポイント(かなさんの場合)

  • 年齢層は幅広く、ほとんどが女性だった
  • クラスの人とは休み時間に少し話した程度
  • 理由は不明だが、退校した人もいた

実際に医療事務として就職できる?

──医療事務として就職されたのですか?

かなさん:はい。今は派遣社員として病院に勤めています

クラスメイトも全く別の仕事に就いたという話は聞いてないので、おそらく全員、医療関係に就職したのではないかと思います。

──派遣社員という働き方を選ばれた理由は?

かなさん:はじめは正社員での就職を目指していましたが、就職活動をすすめる上で、特に病院の場合は「経験者優遇」であるという業界の傾向が見えてきました

今の派遣登録先は、転職活動中に開催された企業説明会で知ったのですが、将来的に正社員で働くためにも、まずは現場を知ろうと考え、派遣社員という働き方を選びました

今の職場にも、派遣で働かれている方は多くいます。

──実際に働かれてみて、いかがですか?

かなさん:派遣契約だからかもしれませんが、前職と違って定時で帰れるのは嬉しいですね人間関係も悪くないので充実しています。

──正直、職業訓練に学んだことは実際の業務に活かされていると思いますか?

かなさん:いまの主な業務は、コロナ禍ということもあってワクチン接種の対応がメインです。現状、職業訓練で学んだ窓口の対応やレセプト業務はできていませんが、将来任せていただけるように、いまは任された一般事務のお仕事をひとつひとつ頑張っています

▼ポイント(かなさんの場合)

  • 派遣社員として医療事務の仕事に就いた
  • 定時で帰れており、人間関係も良好
  • 現在は一般事務の仕事がメイン

職業訓練校の感想は?どんな人におすすめ?

──職業訓練校に通ってみて、実際のところどうでしたか?

かなさん:今まで触れてこなかった、まったく新しいことを学べるので、新鮮で面白かったです。

ただ、就職活動と職業訓練での勉強を並行で進めていくのにはびっくりしましたね。てっきり学校を卒業してから就職活動するものだと思っていたので…。

──さいごに、医療事務の職業訓練はどんな人におすすめでしょうか?

かなさん:医療事務になりたいというビジョンはあるが、知識やスキルがない方ですかね。

それと、職業訓練のキャッチフレーズが、急がばまわれをもじった言葉「急がば学べ」なんです。本当にそのとおりだと思いますし、学ぶことはいくつになってからでも遅くはないと思います。

職業訓練には医療事務以外にもいろんなコースがあります。ハローワークにはチラシなども置いてあるので、気になっているのであれば、まずは相談員の方に聞いてみると良いのではないでしょうか

 ▼ポイント(かなさんの場合)

  • 就職活動と職業訓練は並行して進めるので注意
  • 「学ぶことはいくつからでも遅くない」

実際に病院で働いているから今だからこそ、多様な患者さんを対応するには、それ相応の力と経験値が必要だと実感しているという、かなさん。

未経験からの転職先としても人気が高い医療事務ですが、いわゆる「事務業務」をこなすだけではなく、様々な状況の患者さんと接する「柔軟な対応能力」も問われるのではないかと感じました。

医療事務コースの職業訓練は、基本的にほとんどのハローワークで用意されていますが、まずは居住地に受講できるコースがあるか確認してください。

▼職業訓練校についてくわしく

この記事の執筆者

ライター・編集者

柴田 栞

株式会社クイック

転職Hacks編集部のライター・編集者。履歴書の書き方などの転職に役立つノウハウや、キャリアに関する記事を多数執筆。

同世代の働き方や生き方に「寄り添い、共に悩み、考える」ことをモットーに、読者が「自分らしく」活躍できる仕事や職場を見つけられる助けとなることを目指して活動中。