Webデザイン編 卒業生に聞く、職業訓練校の実態

職業訓練校のメリットは理解したもの、実際に通うイメージがつかない…という人も多いはず。今回は、職業訓練校でWebデザインやコーディングを学ばれた、ゆかりさん(仮名・関西在住)に話をお聞きしました。

事前にネットでWebデザインの職業訓練に通う人の体験談を読み、自分の希望にあうコースをリサーチした上で、ハローワークで「職業訓練を検討している」と伝えたという、ゆかりさん。職業訓練の選考や毎日のスケジュール、実際の講義の様子について、インタビュー形式で紹介します。

職業訓練の選考は難しい?若者の方が受かりやすい?

──職業訓練の選考について、教えていただけますか?

ゆかりさん:選考は面接と筆記試験の2つがありました。面接は15分程度で、フランクな雰囲気ではありませんが、圧迫面接というわけでもなく。職業訓練を志望する理由や、周囲の人とコミュニケーションが取れるかどうかなどを聞かれました。

──面接の前に、履歴書のようなものは作成するのですか?

ゆかりさん:事前にいままでの経歴を棚卸しして記入する書類(通称ジョブ・カード)は作成しました。

記入様式が決まっており、空欄を自分で埋めるものではありましたが、過去の学歴や職歴をまとめたり、現在の関心事や自分の強み、今後のキャリアに対する考え方などについて深堀りして言語化する必要があったので大変でしたね。

ジョブ・カードについてくわしくはこちら

──筆記試験の難易度はいかがでしたか?

ゆかりさん:漢字の読み書きや熟語の問題、計算問題など、内容自体は中学校~高校卒業レベルでしょうか。学力にある程度自信のある方なら、特に対策しなくても問題ないと思います。

──筆記試験は個別に受けるのですか?

ゆかりさん:いえ、私の場合はそのコースに応募している全員で受けました。そのため、何人の応募があったのか、おおよその倍率はこのタイミングでわかりますね。私のコースは定員20人に対して、60人ほど受けていたと思います。

──ちまたでは「職業訓練は若者のほうが合格しやすい」という声もありますが、実際どうなんでしょう?

ゆかりさん:そんなことはないと思います。Webデザインコースということもあり、20代後半~30代前半の若い世代が多く応募しているようでしたが、選考では40代~50代の方も見かけましたよ。入校後のクラスの年齢層と比率は、受験時とほぼ同じでした。

あと、コースによって男女比率や年齢層に違いはありそうです。私のWebデザインのクラスは半数以上が女性でしたが、エンジニアやプログラミングのコースでは男性が多かったみたいです。

▼ポイント(ゆかりさんの場合)

  • 選考は「面接」と「筆記試験」
  • 倍率は、筆記試験時にわかる
  • 男女比率や年齢層はコースによって異なる

※選考内容や選考時に倍率が分かるかどうかは、訓練コースによって異なります

毎日のスケジュールは?忙しい?

──入学後は、どのようなスケジュールで進むのでしょうか?

ゆかりさん:授業は10時から始まります。7時頃には起きて家事をひと通り済ませたら、9時には家を出ていました。1コマ50分で、午前は3コマ、午後は3~4コマありました

1日のスケジュール(ゆかりさんの場合)7時~9時:朝食家事。9時:出発。10~13時:授業。13時~14時:休憩。14時~17時:授業。17時:帰宅。18時~21時:夕食家事。21時~22時:予習復習。22時~翌7時:就寝。

──けっこうみっちりあるんですね。授業のスピード感はどうでしたか?

ゆかりさん:選択するコースの期間とカリキュラムによると思います。期間が短すぎると詰め込み学習になってしまうのではないかと思い、ある程度期間に余裕のある6ヶ月コースを選びました。

カリキュラムも、PhotoshopやIllustratorなどのデザインツールの基本的な使い方からグラフィックデザインに関する知識、実際のホームページ作成に至るまで、Webデザインについて幅広く学べるものに決めました。

──宿題などはあるのでしょうか?

ゆかりさん:家に持ち帰ってやるような課題はありません。ただ、カリキュラムの後半になってくると内容も難しくなるので、自宅学習がかかせなくなります。訓練校の講師の方にも予習・復習はしっかりするようにいわれましたね。

──思ったよりも大変そうですね…。途中でリタイアする人が出てくるのでは?

ゆかりさん:そもそも職業訓練校はハローワークの取り組みで、一番の目標は「再就職」にあります。なので、就職先が決まったらいつでも辞めていいし、退校自体が咎められることはありません。自分の向き不向きを理解した上で、途中で違う道を目指す方もいました。

それと就職活動の状況については、ハローワークに定期的に報告します。私も職業訓練に通いながら、転職活動をしていました

▼ポイント(ゆかりさんの場合)

  • 講義は1コマ50分で、1日6~7コマ
  • 日々忙しさは訓練期間とカリキュラムによる
  • 課題はないが、予習復習は必須
  • 職業訓練に通いながら就職活動を行う必要あり

※希望コースの期間・カリキュラムについて、くわしくは職業訓練検索(ハローワーク)より確認してください

講師の人はどんな人?クラスの雰囲気は?

──ここからはクラスの様子についてお聞きしたいのですが、講師の方はどんな経歴の方なのでしょうか?

ゆかりさん:講師はグラフィックデザインやWebを本業としている方でした。アシスタントと2名体制だったので、生徒10人に対して講師1人といった感じですね。

──教え方はいかがでしたか?

ゆかりさん:正直なところ、講座が始まるまでは不安でした。「デザイナー」という職種に対する勝手な思い込みで、感覚でお仕事を進めていくイメージがあったので、物事を言語化したり人に教えたりするのは上手なのかな…?と。でも、実際にはとても丁寧な指導で安心しました

ただ、技術的な仕組みなどは問題なく教えてもらえましたが、実際の制作では自分の頭で考え、アウトプットすることが求められると感じましたね。そこを教えるのには限界があるというか、個人が持っているセンスや感性も大切なんだなと。

──同じ講座にはどんな人が通われていましたか?

ゆかりさん:私のように全くの未経験の方もいましたし、Web関連の業務経験がある方やイラストレーターの方もいました。あとは、お子さんの送り迎えをしているママさんもいましたね。

──本当に様々ですね。クラスの方とは仲良くなれましたか?

ゆかりさん:はい。卒業後もやり取りが続いていて、食事に出かける友人が何人かいます。私のクラスはかなり仲が良かったのか、お昼休みは隣のクラスからうるさいと言われるくらい盛り上がっているときもありました(笑)。

──それは楽しそうですね! 一方でコミュニケーションが苦手だと、なかなか苦労しそうな気もしますが、どうでしょうか?

ゆかりさん:たしかに、過去にはクラスに馴染めず退校した人もいたようです。デザインの授業では、わからないことを生徒同士で教え合ったり、ペアでワークをすることが多々あったので、ひとりで黙々と授業を受けていればよいというわけにはいかないですね…。

▼ポイント(ゆかりさんの場合)

  • 講師は現役のグラフィック・Webデザイナー
  • 作品制作ではセンスや感性も大切になる
  • 講義ではペアワークもあり、個人プレーはNG

職業訓練校の感想は?どんな人におすすめ?

──実際に通ってみてどうでした?

ゆかりさん:Webデザイナーは未経験者だと求人が少ないため、本気で目指すのであれば、ある程度のスキルを身に付けなきゃいけないという想いがあったので、思い切って応募してよかったと思っています。社会人になってから学校に通えることはありがたいし、純粋に楽しかったですね。

──最後に、職業訓練校はどういった方におすすめでしょうか?

ゆかりさん:私自身も一歩踏み出したことで、職業訓練の経験を生かしてキャリアチェンジできたので「異業種への興味はあるけど、自分ひとりでは不安」という人に、ぜひ行ってみてほしいです。失業給付をもらいながら通えるので勉強に集中できるし、気持ち的にも楽だと思います。

ただ、実際に通うとなると、結局はやる気も努力も必要になると思います。なので、環境こそあれば、自分で努力できる人に向いているのではないでしょうか。

▼ポイント(ゆかりさんの場合)

  • 共に頑張る同志に出会えるので、一人では不安な人におすすめ
  • 最終的には自分自身の努力が、スキルの習得と就職につながる

こちらの質問の意図を瞬時に把握し、ひとつひとつ丁寧に回答してくださったゆかりさん。そのコミュニケーション能力の高さから、職業訓練でチームリーダーをされていたというお話にも納得させられました。

また、きっかけはほんの少しの興味でも、最終的にはスキルと身につけようと意欲を持って授業に望み、最後までやり遂げられる人が、実際にWebデザイナーとして就職できるのだと感じました。

Webデザイナーの職業訓練がある地域は限られています。まずは居住地に受講できるコースがあるか確認し、自分に合いそうなカリキュラムや訓練期間を探してみてください。

▼職業訓練校についてくわしく

この記事の執筆者

ライター・編集者

柴田 栞

株式会社クイック

転職Hacks編集部のライター・編集者。履歴書の書き方などの転職に役立つノウハウや、キャリアに関する記事を多数執筆。

同世代の働き方や生き方に「寄り添い、共に悩み、考える」ことをモットーに、読者が「自分らしく」活躍できる仕事や職場を見つけられる助けとなることを目指して活動中。