介護福祉士実務者研修編 卒業生に聞く、職業訓練校
職業訓練校のメリットは理解したもの、実際に通うイメージがつかない…という人も多いはず。今回は、職業訓練校に通い「介護福祉士実務者研修」を修了した、あきらさん(仮名・京都府在住)に話をお聞きしました。
ご自身の祖母が認知症を患ったことをきっかけに、40歳目前で介護について一から学ぶことを決めた、あきらさん。職業訓練の選考や実際の講義の様子などについて、インタビュー形式で紹介します。
介護福祉士実務者研修の選考は?
――まず、介護福祉士実務者研修の選考はどのようなものでしたか?
あきらさん:筆記試験と面接でした。筆記試験は、国語と数学です。国語では漢字の読み書きや、類義語や対義語の回答の選択問題でした。数学は割り算や方程式、図形の角度を算出するものがありました。
――試験は大きな会場で受けるのですか?
あきらさん:はい。筆記試験の会場には自分を含めて16人いて、入学後に周りを見渡すと全員合格していたことがわかりました。
ただそういったことは稀で、違う日程では25名の定員に対して45人くらいの応募があったそうです。運が良かったですね。
――面接ではどのようなことを聞かれましたか?
あきらさん:過去の職歴や介護職を目指す理由などを聞かれました。あと、職業訓練は幅広い年齢の方が集まるので、そういった方とやっていけるかどうかも確認されました。
自分は緊張しいで面接も苦手なのですが、対策はとくにせず、ぶっつけ本番で向かいました。質問に対しても、思っていることをありのままに答えましたね。
▼ポイント(あきらさんの場合)
- 選考は筆記試験と面接
- 応募者の数は当日の選考会場でわかった
- 面接対策は特にしなかった
※選考内容や選考時に倍率が分かるかどうかは、訓練コースによって異なります
毎日忙しい?クラスの雰囲気は?
――続いて、講義生活について教えていただけますか?
あきらさん:まず期間は6ヶ月です。講義自体は朝の9時半から夕方17時まで、6時間の授業でした。朝は6時半に起きて、1時間半くらいかけて通学していました。9時前には絶対に学校に到着していましたね。
それと失業給付の制限を超えない程度に、毎週金曜日の深夜はガソリンスタンドでアルバイトをしていました。学校までの交通費は全額出るわけではないので、その足しにしようと思って。前職のガソリンスタンドの派遣も夜勤が当たり前だったので、慣れたものです。
――講義はどのように進みますか?
あきらさん:最初の3ヶ月は主に座学でした。介護の基礎や障害・認知症などについて学びます。入学時にテキストを8冊もらったんですが、分厚くてはじめは不安でしたね。
ヒューマンスキルなどの講義では、ディスカッションするようなグループワークもありました。
――座学のほかに、実技や実習などの講義もあるのでしょうか?
あきらさん:はい。カリキュラムの後半では、医療的ケアといって喀痰吸引(たんの吸引)などを行う実技の講義もあります。
2~3名のチームに分かれて実際の介護施設に訪問する、職場実習もありました。予定では1週間ありましたが、コロナ禍で行けなくなった場合は、訓練校の校内で行うカリキュラムが用意されていました。
――講師の方はおひとりですか?
あきらさん:いえ、講義内容によって講師が変わりました。おそらく全員で6人かな? 人柄は本当にバラバラで「教え方がうまいな」と思う人いれば、話し方がきつくて「怖いな」と思う人もいましたね(笑)。
――クラスメートの方の年齢層は? 仲良くなりましたか?
あきらさん:20代の方から60代もいたので、かなり幅広かったですね。介護職はどちらかというと女性が多い職種ですが、自分のクラスは男性の方が多かったです。
自分はクラスのメンバーと話していた方だと思います。卒業時には複数人で食事もしましたね。
▼ポイント(あきらさんの場合)
- 講義は、9時半から17時の6時間授業
- 交通費の足しにするため、深夜アルバイトしていた
- 前半は座学がメイン、後半は実習がある
- 講師は複数人で、クラスは男性の方が多かった
テストは難しい?実技はどんな感じ?
――試験などはありましたか?
あきらさん:週に何回か、認定テストがありました。テスト前は必死に勉強しましたね。受かるまで追試があります。
クラスのメンバーとのLINEグループでは、試験前に出題されそうな部分を教えあったりしました。自分は実務者研修の試験対策のアプリを見つけて、テストに出そうな問題などを共有していました。
――実技試験もあるのでしょうか?
あきらさん:起床介助や車椅子への移動を、制限時間内に行うといった試験がありました。喀痰吸引の試験もあります。
実践できるのは講義時間内だけなので、体で覚えるように繰り返し行いました。あとは、一連の流れや気をつけるポイントを忘れないように、頭の中で何度も確認しました。
▼ポイント(あきらさんの場合)
- 週に何回か認定テストがあり、受かるまで追試がある
- 試験対策アプリなども利用して試験勉強をした
- 実技の試験に向けて講義内の実践に加え、頭の中で何度も確認した
就職活動は?実際に介護職に就ける?
――続いて、就職活動についてお聞きしてもよいでしょうか?
あきらさん:1日みっちり講義があって、認定テスト前には試験勉強もあったので、就職活動は結構大変でしたね…。
本格的にはじめたのは4ヶ月目くらいです。職業訓練校を卒業する日に内定をもらい、いまは定期巡回型の訪問介護ステーションで正職員として働いています。
――卒業までに内定が決まる方がほとんどですか?
あきらさん:いいえ。クラスの半分くらいは卒業後も就職活動をしていました。自分は早い方で、クラスで3番目だったかと思います。
施設の種類はまちまちですが、介護施設で正職員として就職した人が多かったと思います。
――就職活動は主にハローワークを利用したのでしょうか?
あきらさん:ハローワークはほとんど使いませんでしたね。クラスメートが、介護職の就職支援サービスを教えてくれて、そちらを使いました。
合計3社受けたんですが、1社目は自力で受けたら書類選考で落ちてしまって。2社目からはそのサービスを使いました。履歴書の書き方などのアドバイスももらえて、面接にも同席してくれました。
▼ポイント(あきらさんの場合)
- 就職活動は4ヶ月目から本格的に開始
- 卒業後もクラスの半数は就職活動をしていた
- 民間の就職支援サービスを利用した
職業訓練校の感想は?どんな人におすすめ?
――実際に介護職で働かれて、いかがですか?
あきらさん:人と関わる仕事なので、もちろん難しさはありますが、今は楽しいですね。
やはり利用者さんによって状況が異なるので、一人ひとりに寄り添った対応をすべきだと感じ始めています。その時々に応じたベストな対応は何か、日々追求しながら仕事をしています。
――職業訓練校での学びが転職先でも活かされていると感じますか?
あきらさん:そうですね…。職業訓練はあくまで、介護の基礎や心構えを教えてくれるだけです。
実際に働いてみると、そういった理論的な部分以上に「介護とはなにか」を自分なりに考え、日々それに向き合っていくことが大切だと実感しています。
「介護」に対する考え方は、訓練校の講師の方でも、人によってそれぞれでした。なので、講義での学びをもとに、訓練期間も就職後も、介護職を経験された先輩方それぞれの良いところを吸収し、自分のものにしていくことが大切だと思います。
――さいごに、職業訓練校に通ってよかったと思いますか?
あきらさん:はい。40歳目前という年齢的にも正社員での再就職が難しい中、職業訓練の経験があったからこそ正職員として働けていると思うので、通ってよかったと思います。
▼ポイント(あきらさんの場合)
- 職業訓練では介護の基礎や心構えを教えてもらえる
- 自分の「介護観」をみつけ、日々向き合う必要がある
- 就職後も、経験者から良い点を吸収していくのが大事
新卒入社したガソリンスタンド店を辞めてから、パチンコ店や居酒屋など、いくつかのアルバイトを経験したという、あきらさん。
お話を聞く中で、いままで働いてきた接客業と介護の仕事、その両者には「人に寄り添い、相手の喜ぶ顔が見たい」という共通の想いがあるのではないかと感じました。
介護系の職業訓練は、研修内容によって期間やカリキュラムが異なります。まずは居住地に受講できるコースがあるか確認し、自分に合いそうなカリキュラムや訓練期間を探してみてください。
▼職業訓練校についてくわしく
この記事の執筆者
ライター・編集者
柴田 栞
株式会社クイック
転職Hacks編集部のライター・編集者。履歴書の書き方などの転職に役立つノウハウや、キャリアに関する記事を多数執筆。
同世代の働き方や生き方に「寄り添い、共に悩み、考える」ことをモットーに、読者が「自分らしく」活躍できる仕事や職場を見つけられる助けとなることを目指して活動中。