年収が高い業界は? 給料が高い業界・会社に転職する方法

国税庁の調査によると、業種別の平均月収は電気・ガス・熱供給・水道が68.7万円でトップ。最下位の宿泊、飲食サービスの21.6万円とは大きな開きがあります。

給料が高い業界とそうでない業界は何が違うのか給料が高い業界・企業に転職するにはどうしたらいいのか、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中の経営コンサルタント・坂口孝則さんに聞きました。

Q. そもそも給料はどうやって決まるのでしょう?

坂口孝則さん(以下、坂口):結論から言えば、給料は「どの業界で働いているか」によってほぼ決まってしまうんです。

業界によって給料の相場はだいたい決まっていて、基本的には相場からかけ離れた給料が支払われることはありません。つまり「どの業界で働くか」を決めた時点で、今の給料はもちろん、働き方や将来の昇給の可能性についてもほぼ決まってしまいます。

たとえば、まったく同じ能力のAさんとBさんがいて、Aさんは「飲食業界」、Bさんは「情報通信業界」で働いているとしましょう。

この場合、Bさんのほうが高給になる可能性が高いと言えます。飲食業界の給与水準よりも情報通信業界の給与水準が高いからです。

身も蓋もない話になりますが、給料を上げたければ「平均給与が高い、稼いでいる業界・企業を選べということになるでしょう。

給料はどう決まる?働いている業界によって給料はほぼ決まってしまう。「平均給与が高い、稼いでいる業界」を選ぶのが給料を上げる近道

Q.給料が高い業界とはどんな業界ですか?

坂口:一言で言えば、利益率の高い業界です。利益率が高い業界は、給与水準が高くなる傾向があります。

たとえばコンサルティングや情報通信産業など、形のないものを売る業界です。また総合商社や不動産など、設備投資や製造コストがあまりかからない業界も高い利益を上げることができます。

【業界別40歳推計年収ランキング】以下順位:業界名:40歳推計年収(万円)。1:総合商社:1,257。2:コンサルティング:1,246。3:海運:896。4:医薬品:816。5:不動産:812。6:建設:808。7:飲料・乳業・酒類:792。8:ゲーム:786。

逆に、製造業や飲食業など価格競争が激しいものを売る業界は、給与水準が低い傾向にあります。設備投資や製造コストがかかる上に、単価が低いビジネスモデルは利益率が低く、どうしても給与水準が低くなってしまうのです。

また、業界や職種によってはAIに取って替わられて仕事がなくなってしまうことも考えられます。そうなれば給料が上がるどころか、仕事そのものがなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、どんな業界で働いているかによって、給料はもちろん将来性までが決まってしまうのです。

Q.給料が高い業界・企業に転職するには?

坂口:私が提案したいのは、自分が行きたい業界の中で比較的入りやすい企業に狙いを定めることです。

もちろん、同じ業界の中でも業績が良い企業のほうが給料は高い傾向にあります。中には下のランキングのように、30歳の推計年収が1000万円を超える会社もあります。しかし、このような会社に転職するのは簡単なことではありません。

【企業別30歳推計年収ランキング】以下順位:社名:30歳推計年収(万円):平均年収(万円)。1:M&Aキャピタルパートナーズ:2,392:2,487。2:キーエンス:1,840:2,110。3:GCA:1,744:2,063。4:ストライク:1,341:1,539。5:ヒューリック:1,281:1,636。6:日本M&Aセンター:1,257:1,413。7:三菱商事:1,217:1,607。8:フロンティア・マネジメント:1,171:1,398。9:伊藤忠商事:1,168:1,520。10:日本商業開発:1,138:1,501。11:三菱物産:1,089:1,430。12:ファナック:1,073:1,364。13:丸紅:1,064:1,389。14:住友商事:1,050:1,389。15:ドリームインキュベータ:1,038:

※出典:平均年収「全国トップ500社」最新ランキング/東洋経済オンライン

また、いくら給料が高いからといって、希望と違う業界に入って辛い仕事をするのは不幸なことです。それよりは目指す業界の中で入りやすい企業を狙い、そこで実務経験を積んで専門性を高めることをおすすめします。それが結果として、収入を上げていくことにつながる可能性が高いからです。

私自身、コンサルティング会社で経験を積んだことが、その先のキャリアにつながりました。当時学んだことは今の仕事にも活きています。同じように当時の同僚たちも、その会社で実力をつけてさらに給与水準の高い企業に転職するなど、キャリアを切り開いています。

転職はタイミングも大事です。現時点では、入りたい会社が採用活動を行っていなくとも、いずれ人材を募集する可能性もあります。また、求められる専門性やスキルは時代と共に変わっていきます。

チャンスが巡ってきた時に、「これだけの経験、実績を積んできました」と胸を張って言えるような努力を積み重ねておけば、採用される確率はぐっと上がるはずです。

Q.給料に満足できる会社を選ぶには?

坂口:ひとつはすでにお話したように、給与水準の高い業界で業績のいい会社を選ぶことです。ただし、それは狭き門。簡単に実現できることではありません。

そこで提案したいのは、リスクとリターンの視点から会社を選ぶことです。なぜなら、給料はリスクが高いほどリターンが大きくなるという側面があるからです。といっても、これだけではわからないと思いますので具体的にご説明しましょう。

極端な例ですが、次のような2つの会社があったとします。

A社:年収400万円だが、定年退職するまで毎年少しずつ昇給する

B社:年収1000万円だが、成績しだいでは年収は大幅にダウンする

A社の場合、社員は雇用と昇給が保証されている(リスクが低いかわりに、給料は抑えられています(リターンが小さい。いわゆる年功序列型の給与体系です。

会社からすれば、これから雇う人がどれだけの成果を上げてくれるかは不透明です。つまり、給料というコストは固定されてしまうのに、どれだけのリターンが得られるかがわからないのです。

それに、一度給料を上げてしまうと、成績が下がっても簡単に給料を下げることができません。そのため、成果に応じた給料を払いたいと思っても、業績が下がったときのことを考えると簡単に給料を引き上げることができないのも理解できます。

リスクが低い給与制度のモデル。成績が悪くても給料が大きく下がることはない。リスクが低い(給料が下がらない)とリターンは小さくなる(給与水準が低い)傾向がある

一方、B社の場合、社員は成績しだいで年収の大幅ダウンもある(リスクが高いかわりに、高い成果を上げれば高い給料が得られます(リターンが大きい。いわば、成果主義型の給与体系です。

会社としても、成績が悪ければ給料を下げられるという前提があるので、高い成果を上げたときにはそれに応じた給料を支払いやすくなりますし、優秀な人材には高い給料を支払って会社に止まってもらおうと考えるのも当然と言えるでしょう。

リスクが高い給与制度のモデル。成績しだいで給料は大きく変動する。リスクが高い(成績によって給料が大きく変動する)とリターンは大きくなる(高い給料を得られる)傾向がある

以上から、給料とは業界・業種以外にもリスクとリターンの大きさで決まるものということが理解いただけると思います。

もし、高いリスクをとってでも大きいリターンを狙いたいのであれば、スタートアップやべベンチャー企業を選ぶのもいいですし、歩合制の営業のような仕事を選ぶのもいいでしょう。もっと大きなリスクを取るのなら起業という選択肢もあります。リスクは高いですが、成功すれば高い収入を得ることができます。

逆にリスクを取りたくないのなら、安定した給料がもらえる会社を選ぶといいでしょう。

このようにリスクとリターンの視点から会社選びを考えれば、将来、給料に不満を持つ可能性は小さくなるのではないでしょうか。

Q. 転職で給料を上げるために必要な考え方とは?

坂口:大切なのは気負いすぎないことです。もし転職の選考に落ちてしまったとしても、大学入試や資格試験と違って、必ずしも実力が足りなかったからと考える必要はありません

転職はマッチングです。たまたま人材を欲している企業があって、その企業が求めるスキルや人柄と求職者がマッチすれば採用に至るというシンプルな話なんです。逆に、その企業が求めているポジションにマッチしなければ、どんなに実力がある人でも採用には至りません

ですから、あまり気負いすぎずにコツコツと努力を重ねていくことが大切だと思います。そうすれば、きっとチャンスは巡ってきます。その時、チャンスをつかめるよう日々の仕事にベストをつくしましょう。

もし希望の会社に転職できなくても、積み重ねた努力が次のキャリアを切り開いてくれるはずです。

目の前の仕事に真剣に取り組んで、当たり前のことを真面目にやっていく。これが結果として給料を上げるための近道だと思います。

取材・文/北村有(@yuu_uu_

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この記事の話を聞いた人

経営コンサルタント

坂口孝則

未来調達研究所株式会社取締役

2001年、大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『牛丼いっぱいの儲けは9円』『未来の稼ぎ方』(幻冬社新書)、『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』(SBクリエイティブ)など多数。「スッキリ」はじめテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。

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