産業医・精神科医が教える 仕事のストレスがスッと軽くなる処方箋3つ

「仕事がつらい」と感じる人に共通しているのが「真面目で責任感が強い」こと。真面目で責任感が強すぎるあまり、自分を追い込んでしまう人が少なくありません。

そうした人たちがストレスを抱え込まないためにどうしたらいいのでしょうか。産業医・精神科医として働く人のメンタルケアに取り組む、井上智介さんにお話を聞きました。

真面目で責任感が強い人がストレスを溜めないための4つの方法

井上智介さん(以下、井上):「真面目で責任感が強すぎる人」は、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまいがちです。休養を取ったり、好きなことをしてリフレッシュしたりすることが大切とわかっていても、真面目で責任感が強いために自分のことよりも仕事を優先してしまうのです。

そのような人たちがストレスを溜め込まないようにするにはどうしたらいいのか、すぐに実行できる4つのストレス解消法をご紹介します。

真面目で責任感が強い人がストレスを溜め込まないための4つの方法 方法(1)自分の好きなことリストを作る 方法2:あらかじめ休む予定を入れておく 方法(3)寝る時間に目覚ましをかける 方法4:信頼できる人に話を聞いてもらう

方法(1)|自分の好きなことリストを作る

実は、どんな方法がストレス解消に効果的かは個別性が高く、人それぞれです。たとえば「運動はストレス解消にいい」と言われますし、実際にエビデンスもありますが、普段から運動をしない人にとってはハードルが高く、運動しようと考えることがかえってストレスになってしまいかねません。

そこでおすすめしたいのが、「自分の好きなことリスト」を作っておくことです。

人はストレスが溜まっている状態だと「どうやってストレス解消しようか」と考える余裕がありません。だから、考えるのではなく自分がしたいことを好きなことリストから選ぶだけでいい状態にしておく必要があるんです。

リストの内容はどんなことでもかまいません。たとえば「旅行に行く」という大きなことでも、「映画を観る」「サッカー観戦に行く」といった週末にできるレベルのことでもOKです。ただ、できれば「コンビニでちょっと高いスイーツを買う」「いつもより高級なお酒を買う」といった、その日にすぐ実行できることをたくさん集めておくといいでしょう。

目安としては50個の好きなことを集めてください。もちろん50個に限らず、後から追加してもかまいません。

集めたリストはスマホの中にメモしておいて、いつでも見られるようにしておきましょう。たとえば仕事帰りにパッと見て、「今日はサウナに寄って帰ろう」とか「お気に入りの店で食事して帰ろう」などと、すぐに選べるようにしておくことが大切です。

方法(2)|あらかじめ休む予定を入れておく

2つ目の方法は、あらかじめ「休む」予定を入れておくことです。真面目な人は、空いている時間があるとすぐに仕事を入れてしまいがちなので、そうなる前にブロックしておくのです。

空いた時間に休養しようと考えるのではなく、「休養する」というスケジュールをあらかじめ入れておくことが大切です。

ただし、ひとりで過ごす予定を入れてしまうと、真面目な人ほど「やっぱり仕事をしよう」と予定を覆してしまいます。そうならないよう、できれば友人や家族などと過ごす予定を入れる、食事するお店に予約を入れておくといったことをおすすめします。

このように誰かと約束しておくことで予定をキャンセルしづらくなり、半ば強制的に自分を休ませる環境が整えられると思います。

方法(3)|寝る時間に目覚ましをかける

睡眠はほぼ万人に共通したストレス解消法です。肉体的疲労だけでなく、精神的疲労にも有効なので、しっかり睡眠を取れる環境を整えることはとても重要です。

普段から頑張っている人ほど睡眠が必要なのですが、悩ましいことに頑張れば頑張るほど睡眠時間が短くなるという矛盾を抱えがちです。そんな状態が続けば、精神的にもバランスを崩してしまいます。

そこでおすすめしたいのが、寝る時間に目覚ましをかけること。目覚ましをかけることで寝る時間をスケジュールに組み込み、そこで1日を終わりにする習慣をつけましょう。

人間の意思はとても弱いもので、特に真面目な人は睡眠が大事だとわかっていてもつい仕事を優先してしまいます。そうならないようにアラームを使って、意思の力に頼らなくてもすむ状態を作るのです。

とはいえ、たとえばいつも夜中の1時に寝ている人が、今日から23時に寝てくださいと言ってもすぐに眠れるものではありません。そこで、1週間ごとに15分ずつ寝る時間を早めていきましょう。

仮に毎日1時に寝ているなら、今週は0時45分にアラームをかけて、次の週は0時30分に、その翌週は0時15分にと、1週間単位で寝る時間を前倒しするのです。質のよい睡眠をとるためには、遅くとも23時には寝るようにするのがベストです。

方法(4)|信頼できる人に話を聞いてもらう

4つ目は、信頼できる人に話を聞いてもらうことです。愚痴ることと言ってもいいでしょう。

「愚痴るのは良くない」と言われますが、実はとても大事なことなんです。愚痴を聞いてもらうだけで、心のモヤモヤを浄化してストレスを解消することができます。

ただし、話す相手はきちんと選びましょう。勇気を出して話したのに「それくらい頑張れよ」「みんな我慢してるんだ」と言われてしまっては逆効果です。家族や恋人など、自分を受け入れてくれる信頼できる人に「わかるよ」と共感してもらって、自分の現状や立場を認めてもらうことが大切です。

話を聞いてもらって共感してもらうことは、自分を承認してもらうことと同じです。たとえ「自分はダメな人間だ」と思っていても、認めてくれる人がいると思えれば気持ちが楽になるはずです。

なぜ真面目で責任感の強い人はストレスを溜めやすいのか

井上:ストレスを溜めこまないための具体的な方法をご説明しましたが、こうした方法でストレスを解消するだけでなく、ストレスを溜め込みにくい体質に変わることも大切です。

そのためにはまず、なぜ真面目で責任感の強い人がストレスを溜め込みやすいのかを知っておきましょう。その理由としては、主に次の3つがあげられます。

真面目で責任感が強い人がストレスを溜めてしまう3つの理由 理由(1)完璧主義になりやすい 理由(2)ルールを守りすぎてしまう 理由(3)人を頼るのが苦手

理由(1)|完璧主義になりやすい

真面目な人ほど、自分の失敗や妥協を許せない「完璧主義」に陥りがちです。「減点思考」の人が多く、周りから見れば小さなミスでも大きなダメージを受けてしまいます。

その結果、失敗やミスができない環境を自分で作って、強いストレスや緊張を抱えてしまう傾向にあります。

理由(2)|ルールを守りすぎてしまう

たとえば「どんな時も仕事上の期日や約束は絶対」といったように、真面目な人ほど常に「模範的な行動を取ること」を自分のルールにしている人が多いです。

そのため「愚痴をこぼしてはいけない」「どんな人とも仲良くすべき」「辛いことも乗り越えなければいけない」などと、「〜しなければいけない」と自分を縛ってしまう傾向があります。中には休日さえも「充実した1日を過ごさなければいけない」と考えて心が休まらないという人も。

ルールを重視しすぎると、状況に応じた柔軟な行動を取れなくなるので、どうしてもストレスを抱えてしまいがちです。

理由(3)|人に頼るのが苦手

責任感の強さから、誰かに頼ることが苦手な人は多くいます。「自分の仕事は自分で」という意識が強く、頼ることで人に迷惑をかけてしまうと考えてしまいがちです。

中には、「人に頼ると仕事ができないと思われてしまう」「誰かを頼ると自分の価値が落ちてしまう」と考えている人もいます。その結果、一人で仕事を抱え込んで強いストレスを感じてしまうのです。

真面目で責任感が強い人は自分への評価が厳しい

以上のように大きく3つの理由から、真面目で責任感の強い人は、自分への評価が厳しくなりがちです。本来、真面目で責任感が強いことは長所なのですが、時に自分を追い込んでしまう原因にもなるのです。

仕事のストレスがスッと軽くなる3つの処方箋

井上:では、自分への評価が厳しい人が、必要以上に自分を責めてストレスを抱え込まないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。ここでは仕事のストレスがスッと軽くなる3つの処方箋をご紹介します。

ストレスを溜めない体質に変わる3つの処方箋 処方箋(1):「100点満点」を目指さず、決めた時間までに完成したものでOKとする 処方箋(2):小さなことでいいので人に「頼みごと」をして、人を頼る練習をする 処方箋(3):自分を褒める習慣を身につけるために、1日を振り返って褒めポイントを探す

処方箋(1)|完璧を追求するのをやめる

まず1つ目は、自分が納得する「100点満点」を追求するのをやめることです。

真面目で責任感が強い人は、「ここまでできたらOK」と自分が納得するまで仕事をやり続けてしまうことが多いです。そのため遅くまで残業したり、休日も家で仕事をしたりと大きな負担を背負ってしまいがちです。

そこで私が提案しているのが、自分の納得感で判断するのでなく時間で区切ること。たとえば「夕方の5時までにできたものでOKとする」というように、決めた時間までで仕事を終わらせるよう行動を変えていくのです。

たとえば仕事の資料を作るときに、完璧を目指して多くの時間やエネルギーをかけても、一晩経ってから見直してみると、もう一度手を入れたくなることが多々あります。つまり、完璧を目指してもキリがないのです。

ですから自分の基準で100点を目指すよりも、たとえ80点でも「会社や上司から見て合格点ならいい」と考えることが、長く働き続けるためには大切なことだと思います。

処方箋(2)|人にお願いをしてみる

次に、ちょっとしたことでいいので、自分の仕事を他の人にお願いしてみましょう。

責任感が強い人ほど「自分にしかわからない仕事がある」「人には任せられない仕事がある」と考えがちです。でも、実際には他の人が代われない仕事なんてまずありません

ただ、言葉でそう言われても腹落ちさせるのは難しいもの。だからこそ、「仕事を人に任せても問題なかった」「自分でやらなくてもうまく回った」という経験を積むことがとても大切なのです。

お願いするのは、ほんの小さなことでいいですし、仕事に直結することでなくてもかまいません。たとえば「そこのファイルを取ってください」でも十分です。

まずは1日1回でいいので誰かに何かをお願いしてみましょう。そして何かお願いをしたら、それを記録しておくことも有効です。記録することで「お願いの成功体験」が積み上がっていく実感を持てるはずです。

処方箋(3)|自分を褒める習慣を身につける

そして、3つ目は「自分を褒める習慣」をつけること。夜寝る前に1日を振り返って、自分の褒めポイントを探してみましょう。

真面目で責任感の強い人の多くは、「明日はこれをやらなきゃ」「週末までにこれをやらなきゃ」と先のことしか見ていないため、自分がその日1日に何をしたのか振り返ることがほとんどありません。ですが、それでは自分を褒めることはできません。

とはいえ、ただ漠然と1日を振り返ろうとしても、自分の行動は意外と思い出せないもの。そこで、おすすめするのが1日を時間で区切ってみることです。

たとえば、「朝起きてから会社に行くまで」「仕事を始めてからお昼休みまで」「お昼休みから夕方まで」「会社を出て家に着くまで」などと1日を区切って振り返ることで、褒めポイントを見つけやすくなります

最初は1日1個でいいので、自分を褒めてあげることを大切にしてください。

誰もがすごいと思うような褒めポイントを毎日見つけるのは難しいので、ごく小さなことでかまいません。たとえば、「満員電車で他の人の邪魔にならないようカバンを胸に抱えた」「遅刻せずに出社できた」「期限内にレポートを提出できた」といったことでも十分です。

いい意味で「自分の代わりはいる」と思っておこう

井上:真面目で責任感が強い人は、自分を犠牲にして人のために何かをしてあげたり、人の要求に応えようとしたりしてしまいがちです。

それは素敵で立派なことですが、頑張りすぎて自分を苦しめてしまわないように、いい意味で「自分がやらなくても代わりの人はいくらでもいる」ということを知っておいてほしいと思います。

産業医という職業上、仕事を頑張りすぎて体を壊してしまった人をたくさん見ているからこそ、私は「健康よりも大事な仕事は世の中に何一つない」と断言できます。

何よりも大切なのは健康です。健康があってこそ、自分と自分が愛する人の幸せを実現することができるのです。その優先順位は決して間違えないようにしていただきたいと思います。

取材・文/いしかわゆき(@milkprincess17

この記事の話を聞いた人

産業医・精神科医

井上智介

島根大学医学部を卒業後、大阪を中心に産業医・精神科医として活動。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係トラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた精神的なケアを行う。また、「おおざっぱに笑ってラフに生きてほしい」という思いから、「ラフドクター」としてブログやSNS、講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信している。著書に『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)など。