転職を成功させるために 知っておくべき転職エージェントの裏側4つ

会社選びから書類作成、面接対策まで、転職活動をトータルにサポートしてくれる転職エージェント。便利なサービスですが、うまく利用して転職を成功させるには押さえるべきポイントがあります。

転職エージェントとして5000人超の転職相談を受けてきた山田実希憲さんにお話を聞きました。

そもそも転職エージェントとは

山田実希憲さん(以下、山田):転職エージェントとは、無料で転職をサポートしてくれるサービスです。

専任の担当者がついて、求人の紹介はもちろん応募書類のチェックや面接対策、選考スケジュールの調整や年収交渉といった企業とのやりとりまで、転職活動をトータルにサポートしてくれます。

また転職サイトや企業のHPなどに掲載されていない求人情報、つまり一般には公開されていない非公開求人を紹介してもらえるのも転職エージェントを利用するメリットです。

転職を成功させる手段のひとつとして、利用価値のあるサービスと言えるでしょう。

▼転職エージェントについて詳しく知りたい人は…

知っておくべき転職エージェントの裏側4つ

山田:ただし、便利で良さそうなサービスだからといって、転職エージェントにすべてを任せてしまってはいけません。転職エージェントのアドバイスにしたがった結果、意図しない転職をしてしまうケースもあるからです。

せっかく転職を決意したのに、そんな結末は絶対に避けたいところ。そこで、転職を成功させるために知っておくべき転職エージェントの裏側をお伝えします。

〈知っておくべき4つの裏側〉

  • なぜ転職エージェントは無料で利用できるのか
  • 転職エージェントを使った転職は部屋探しに似ている
  • 転職エージェントには得意、不得意がある
  • 良い転職エージェントは、あえて転職を引き止めることがある

これら4つの裏側について、具体的にどういうことなのか、ひとつずつご説明していきましょう。

裏側1|なぜ転職エージェントは無料で利用できるのか

山田:転職エージェントは、なぜ無料で利用できるのでしょうか。理由はシンプルです。それは、採用する側の企業がお金を払っているから。具体的には、紹介した企業に求職者が入社した場合、その企業から成功報酬を受け取るのが転職エージェントのビジネスモデルなのです。

つまり、転職エージェントは企業の採用を支援する存在であり、企業の採用枠にマッチする人材をいかに確保するかが彼らの仕事の主眼です。ですから、転職エージェントにとって「求職者はお客様である企業に提供する商品」とも言える側面があるのです。

山田:そのため、中には求職者の希望をあまり重視せず、その人が企業の求めるスキルや能力を満たしているかということばかり見てしまいがちな転職エージェントもいます。

それでも紹介された企業が理想の転職先であれば問題ありません。ただ、スキルや能力ばかり見て、「なぜ転職したいのか」「転職で何を叶えたいのか」といったことを置き去りにしてしまうと、転職が成立しても結局は社風や働き方が合わず再び転職を考えることにもなりかねないということは知っておいてください。

転職エージェントの本音を確かめるには?

山田:もし自分が単なる商品として見られているのではないか気になった場合は、紹介された求人について「なぜこの案件を紹介してくれたのですか?」「なぜ私にこの会社が合うと思ったのですか?」と担当の転職エージェントに質問してみるといいでしょう。

その答えによって、転職エージェントが自分を単なる商品として見ているのか、理想の転職を実現するために真剣に向き合ってくれているのかがわかるはずです。

いずれにせよ会社選びをする際には、理想の働き方が実現できそうか価値観や社風が合っているか、転職エージェントに確認することはもちろん、面接の場で企業の担当者に直接質問するなどして、自分で確かめることが大切です。

裏側2|転職エージェントを使った転職は部屋探しに似ている

山田:2点目は、転職エージェントを使った転職は部屋探しに似ているということです。

転職エージェントが企業と求職者をマッチングするように、不動産会社は物件と入居者をマッチングします。また、転職エージェントが転職サイトに載っていない非公開求人を紹介してくれるように、不動産会社は不動産情報サイトに載っていない物件を紹介してくれます。そして、どちらもマッチングが成立した場合に報酬が発生します。

山田:部屋探しについて言えば、ほとんどの不動産会社の営業マンはお客さんの希望に合った物件を見つけようと頑張ってくれます。

ただ、中には契約を取るために「人気の物件だから今決めないと他の人に取られますよ」と考える時間を与えずにその場で決断を迫る営業マンや、「希望の家賃だとこんな感じの部屋しかご紹介できません」と、わざと条件の悪い物件を見せた後にそれよりも多少は条件の良い物件を紹介して、「これは掘り出し物ですよ!契約しないと損です」と印象操作のようなことをする営業マンもいるのです。

そして、実はこれに近いことを転職エージェントもやろうと思えばできてしまいます。もちろん、実際に求職者を騙すようなことをする転職エージェントなど私は聞いたことがありません。そんなことをしたら、求職者はもちろんクライアントである企業の信頼を失って仕事を続けていけなくなるからです。

決断を急かされた場合は要注意

山田:ですが、転職エージェントもビジネスです。求職者の希望を叶えたいと思いつつも、できるだけ効率よく売上をあげなければなりません。そのため、中には希望条件と少し違っていても内定が出やすい企業を紹介したり、「こんなに良い企業から内定が出るなんて!すぐに返事をしないとダメです」などと決断を急がせたりする転職エージェントがいるのも事実です。

もちろん、本気で良い企業だと思って薦めていたり、本当に企業が早い返事を欲しがっていたりするケースもあります。ですが、その場合でも求職者が納得して判断できるよう、決断を急かすのではなく「何か心配なことはないですか?」「求めていることはこの会社で実現できそうですか?」と問いかけてくれるのが良い転職エージェントだと言えるでしょう。

もし転職エージェントに「今すぐ承諾しないとこの内定は流れてしまいます」などと言われても焦らずに、本当にその会社でいいのか、不安なことはないかしっかり考えて返事をしてください。

裏側3|転職エージェントには得意、不得意がある

山田:3点目は、転職エージェントには得意、不得意があるということです。

1人の転職エージェントが扱える案件には限りがあります。そのため、転職エージェントによって得意とする業種や職種はそれぞれ違いますし、逆にあまり扱ったことのない業種や業界があるのも当然です。

転職エージェントには特定の業界や職種に特化して求人を扱う「特化型エージェント」もありますが、それでも1人の転職エージェントが業界内のすべての企業を扱うことは不可能でしょう。

ですから、優秀で市場価値の高い人でも、その人に合う求人案件を転職エージェントが持っていなかったら支援を受けることはできません。転職エージェントとしても、1人の求職者のために新たな企業を開拓して求人情報を集めてくるということは難しいのが現状です。

ただ逆に言えば、自分の希望する業界や職種を得意としている転職エージェントが見つかれば転職が成功する可能性は高まるはずなのです。

転職エージェントの得意分野を知るには?

山田:転職エージェントの得意分野を知るには、これまでどんな案件を手掛けてきたのか質問してみるといいでしょう。「得意な領域を教えてください」とストレートに聞いてもいいと思います。もし、その転職エージェントの得意分野が自分の希望と合わない場合には、エージェント会社に担当者を変えてもらえるよう依頼しても問題ありません。

2〜3社に登録しておいて相性のいい転職エージェントを探す、すでに転職した人から良い転職エージェントを紹介してもらうといった方法もおすすめです。

裏側4|良い転職エージェントは、あえて転職を引き止めることがある

山田:最後のポイントは、良い転職エージェントは転職を引き止めることがあるということです。

求職者の中には、転職で何を叶えたいのかがはっきりしないまま「周りが転職するから自分も…」などと考えている人や、「会社が嫌だからとにかく転職したい」「今は不遇だけど転職したらきっとうまくいく」などと転職そのものが目的になっている人もいます。

山田:そんなとき、求職者のことを真剣に考えてくれる転職エージェントなら、「転職先でも同じ状況にならないように、もう一度考え直しましょう」「今は辞めないほうがいいと思います」と、考える時間を持つことを提案する、あえて転職を引き止めるといった選択をすることもあるはずです。

なぜなら転職で叶えたいことがあいまいだったり、転職そのものが目的になっていたりする場合、転職しても不満が解消されず、再び会社を辞めてしまうケースが少なくないからです。

▼プロが転職を引き止めるケースとは?

こんな転職エージェントは要注意

山田:もし担当の転職エージェントが、転職の理由や目的を深掘りして聞くことなく、「とにかく応募してみましょう」と言わんばかりに求人を薦めてくる場合は要注意です。他にも「書類選考の通過率は●%なので、最低20社は応募しましょう」などと言って、求人の説明を十分にしないまま、とにかく応募させようとする場合も注意してください。

そのような場合、転職エージェントの意識が、求職者の希望に合った転職を実現することよりも、とにかく転職を成立させて成功報酬を得ることに向いてしまっている可能性があるからです。

そんなときは、上でご説明したように「なぜこの求人を提案してくれたのですか?」と質問してみましょう。そうすることで、「理想の転職を実現するためにきちんと向き合ってほしい」という転職エージェントに対する意思表示にもなります。

転職エージェントとWIN-WINになるために

山田: 転職エージェントを使って転職を成功させるには、転職エージェントとの信頼関係を構築することが大切です。 そのためには転職で何を叶えたいのか希望を伝えることはもちろん、とにかく求人だけ紹介してくれればいいのか、きちんと向き合ってサポートしてほしいのか、転職エージェントに何を求めるのか本音を伝えてください。

初めて転職する人や転職エージェントを利用したことのない人は、初めてであることを伝えるといいでしょう。転職活動をどう進めたらいいのかといった基本的なことからアドバイスしてくれるはずです。

転職を成功させることは、求職者と転職エージェントの共通の目的です。「理想の転職の実現」というゴールに向けて、転職エージェントとWIN-WINの関係を構築していただければと思います。

取材・文/盛田栄一

この記事の話を聞いた人

転職エージェント

山田実希憲

Gemini Career(GEMINI Strategy Group)代表取締役CEO

1979年生まれ。法政大学卒業後、リフォーム会社を経て人材紹介会社であるJAC Recruitmentに転職。現在はジェミニキャリア(ジェミニストラテジーグループ)で経営、組織、採用に関するコンサルティング、個人の人生経営・キャリア支援を提供。累計5000名を超えるビジネスパーソンの転職相談を受ける。著書に『年収が上がる転職 下がる転職』(すばる舎)、『いずれ転職したいので、今のうちに自分の強みの見つけ方を教えてください!』(ぱる出版)がある。

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