「大丈夫だと思ったのに…」 失敗例で学ぶ、入社前に確認すべきポイント
不幸なことに、せっかく転職しても「こんなはずじゃなかった…」と、すぐに退職してしまうケースは存在します。
そんな失敗を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
典型的な失敗例と、そうならないように入社前に確認すべき3つのポイントを、転職コンサルタントの大熊文人さんにお聞きしました。
ケース1:仕事内容の「認識不足」で、失敗する
開発職として転職したAさん。前職では開発に携わっており、転職の希望条件は「同じ開発職であること」。選考はスムーズに進み、希望通りの職種での転職が決まりました。
転職後しばらくは特に問題なかったのですが、ある日上司から「営業もやってもらう」との声掛けが。どういうことか確認すると、この企業の開発職は、客先や展示会での営業活動・顧客獲得もミッションに含まれているとのこと。求人票には書いていなかったものの、賞与の査定基準にもなっている重要な業務とわかりました。
Aさんは業務内容を変えてもらえないか掛け合ったものの、希望は通らず。どうしても業務を受け入れられなかったため、やむなくまた転職することに…。
開発職のはずが、営業だった?
大熊:希望通りの開発職で転職したはずなのに、失敗してしまったAさん。企業側が仕事内容を的確に伝えていなかったわけですが、企業は決して嘘をついていたわけではありません。
今回の失敗は「同じ職種でも、企業によって業務の中身が異なる」という認識がお互いになく、確認不足だったことに原因があります。
たとえばメイン業務が開発でも、サブ業務として営業活動まで行うケースはめずらしくありません。ですが、Aさんは「開発職は、自社内で開発業務だけをするもの」と思い込んでいたことから特に質問せず、企業側も「開発職は、顧客獲得までするもの」と思い込んでいたため特に通知していませんでした。
大熊:人間は、どうしても自分が経験したことがスタンダードなものだと思い込みがちです。そのため、お互いの認識に違いがないか確認しておかないと、後で問題が生じてしまいます。
ポイント|自分の仕事内容の認識を伝えて、違いを語ってもらおう
大熊:仕事内容に対する認識のズレによる失敗を防ぐには、「仕事内容に対する自分の認識を伝えて、それ以外の仕事があるかどうか企業に質問する」方法が効果的です。
確認の場として内定先にオファー面談の場を設けてもらい、現場の人と業務内容のすり合わせを行いましょう。「今回の担当業務は○○を行うという認識なのですが、ほかにも対応する業務はありますか?」と、あなたの業務の認識を先に伝えれば、相手方も違いを語りやすくなるのでおすすめです。
オファー面談を設定してもらえるか不安かもしれませんが、近年は企業も人材確保に前向きなため、対応してもらえることが増えています。「腰を据えて働きたいので、業務内容の詳細を知りたいと考えています。現場の方とのオファー面談の場を設けていただけないでしょうか?」と意欲を示して申し込めば、断られるケースは少ないはずです。
▼オファー面談とは? 概要はこちらの記事でチェック!
ケース2:想定年収の「数字」だけを見ると、失敗する
結婚を機に、給与アップを目的として転職活動をしていたBさん。転職活動は順調に進み、想定年収500万円という条件で入社が決まりました。
ただ実際に入社してみると、年収は想定よりも少ない結果に…。月給は入社時の条件と相違なかったのですが、ボーナスの金額が大幅に減少していました。
人事に問い合わせてみると「入社時に提示した想定年収は、賞与が満額支給された場合で算出している」とのこと。この企業では在籍1年以上で正式な賞与が支給されるという規定があり、さらにその支給金額も業績によって変動することがわかりました。
賞与の支給条件を確認していなかったとはいえ、会社からの説明もなかったことに「話が違う」と感じたBさん。入社早々、会社への不信感が芽生えてしまいました。
年収500万円のつもりで入社するも…話が違う?
大熊:想定年収と入社後の給与額が違うというケースは、残念ながら発生しやすいトラブルのひとつです。とはいえ、このケースも企業側が嘘をついていたわけではありません。
ではなぜこのようなトラブルが生じているかというと「想定年収が満額支払われる条件を聞けていなかった」ことが原因のケースがほとんど。
分かりやすいのが、ボーナスの計算方法の確認漏れです。想定年収では満額支給で計算されていても、「1年在籍していないと満額支給されない」「経営状況によって変動する」といった条件が別途設けられており、実際の支払額が少なくなるケースがあります。
手当の金額も同じくですね。たとえば「子どもが2人以上なら支給」「家賃○○万円以上で補助を支給」といった条件があり、入社後に満額支払われないことが発覚するケースが意外とあります。
大熊:求人票や面接で伝えてくれる企業もありますが、残念ながら、そこまで詳細を説明してくれる企業は多くないのが実情です。
ポイント|正式な書面&人事との面談で、詳細を聞こう
大熊:このケースの解決法は「想定年収が支払われる条件を詳しく聞く」こと。想定年収の計算方法や、含まれている賞与・手当の支給条件は必ず確認しておきましょう。
確認方法は大きくわけて2つあります。
ひとつ目は「労働条件通知書」を確認する方法。求人票より詳細な条件が明記されている書類で、実際にあなたが働く場合の労働条件が記載されています。
発行されるのが一般的ですが、手元に無ければ企業に依頼して発行してもらいましょう。もし書類の発行を拒むようなそぶりがあれば、その企業は何かを隠している可能性があるので、気をつけた方がいいかもしれません。
▼通知書でチェックすべきポイントは、どこ?
ふたつ目の確認方法は、企業の人事担当者とのオファー面談を行ってもらう方法。労働条件通知書だけではわからない詳細な条件を、直接聞きましょう。
いずれの方法も、お願いしたからといって内定を取り消されることはありません。「腰を据えて働きたいので、給与などの条件の詳細を伺いたい」といったように、入社を真剣に考えていることが伝わる姿勢で打診してみましょう。
ケース3:面接で会った人たちは良かったけど…
面接で会った人たちの雰囲気を見て、最終的に転職先を決めたCさん。人事の人はもちろん部長とも会話をして「この会社なら馬が合いそう」と感じ、入社しました。
ところが入社してみると、部長とは別の現場の配属に。配属先の人とは会ったことがなかったせいか、雰囲気の違いやラフなコミュニケーションにギャップを覚え、困惑する結果に…。
人間関係は、実際に入ってみないとわからない
大熊:人間関係や社風は、正直なところ言葉で説明できるものではなく、実際に入社してみないとわかりません。面接で会った人と一緒に働くとも限らないので、面接で探るには限界があります。
人間関係や社風の「こんなはずじゃなかった」を防ぎたいなら、とにかく入社前に「実際に働く人との接点を増やす」ことが重要になります。今回のケースでは、実際に一緒に働く人に会えなかったことが、ギャップの原因になっていると言えるでしょう。
ポイント|自分に近い立場の人に会ってみよう
大熊:実際に働く人との接点を増やすため、内定後にあらためて仕事内容や雰囲気を聞く場を設けてもらいましょう。可能であれば、職場見学をさせてもらうのが効果的です。
より効果を高めるには、できるだけ自分に近い立場の人に会わせてもらうといいでしょう。同僚になる予定の人であれば、リアルな観点から職場の雰囲気を語ってもらえるはずです。
また、中途入社した人に話を聞くのも効果的ですね。転職者だからこそ感じる企業のいい点・悪い点を聞けたり、即戦力として入社した場合のフォロー体制を話してもらえたりするのは、他にない利点です。
確認のポイントを押さえれば、後悔は無くせる
大熊:仕事内容でも、給与面でも、入社前後のギャップが大きければ大きいほど、離職のリスクは高まります。
内定が出たタイミングでは、嬉しくて即決してしまったり、安心感から「この会社でいいや」となってしまいがちですが、そんなときこそ一度立ち止まって、次の3つのことを確認しておきましょう。
〈内定承諾前に確認しておきたいこと〉
- 入社後の仕事内容の認識(業務範囲)は、ズレていないか?
- 給与の計算方法や、賞与・手当の支給条件は確認したか?
- 職場の雰囲気は、自分に近い立場の人から聞けたか?
大熊:これら3点を確かめておくだけでも、入社後に後悔する確率をグッと減らせます。特に「自分はこれを叶えたくて転職するんだ」という軸がハッキリしているなら、叶えたいビジョンと転職先の実態が近いのかどうか、しっかりすり合わせておけるといいですね。
この記事の話を聞いた人
キャリアアドバイザー
大熊 文人
株式会社クイック
転職支援を行うキャリアアドバイザー。これまでの担当業界は医療業界、建設業、不動産業、製造業、IT業界と多岐にわたる。豊富な支援実績から得た採用市場や業界の事情、転職活動の最適な進め方などの情報提供を積極的に行い、4,000人以上の求職者の転職成功に貢献。『ビズリーチ ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー』のメーカー部門で2018年度MVPを受賞。