男女の割合は?税金は高い? 年収900万円の手取りと生活レベル

年収900万円」と聞くと、高収入のイメージが強いですが、実際の手取りはどれくらいになり、どのような生活を送ることができるのでしょうか。

今回は、年収900万円の人の手取り生活レベルについてくわしく解説します。

年収900万円の割合は?どれくらいいる?

年収900万円台は全体の1.9%

国税庁の調査結果を見ると、年間給与額が900万円超~1,000万円以下の人は全体の1.9%しかいないことがわかりました。

年収900万円超の人は、給与所得者の中で6.8%を占めています。

給与階級別のくわしい割合は、以下のとおりです。

【給与階級別の割合】~100万円:8.1%|~200万円:13.3%|~300万円:14.8%|~400万円:17.4%|~500万円:15.0%|~600万円:10.5%|~700万円:6.7%|~800万円:4.6%|~900万円:2.9%|~1,000万円:1.9%|1,000万円超~:4.9%|※国税庁|令和3年分民間給与実態統計調査

同調査によると、日本全体の平均給与は443万円であるため、倍以上の収入がある年収900万円以上の人は、生活水準が一般的な世帯と大きく違うと予測することができます。

※参考:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査

年収900万円台の男性は3.0%、女性は0.4%

同調査を男女別に見ると、男性で年収900万円超~1,000万円以下である人は3.0%です

また、年収が900万円を超えている男性の割合は10.6%で、約1割を占めました。

その一方で、女性で年収900万円超~1,000万円以下である人はわずか0.4%

年収900万円を超えている人の割合を合計しても1.6%しかいません。

【男女別・給与階級別の割合】▼男性の給与階級別構成比|~100万円:3.5%|~200万円:6.7%|~300万円:10.5%|~400万円:16.9%|~500万円:17.5%|~600万円:13.8%~700万円:9.4%|~800万円:6.8%|~900万円:4.4%|~1,000万円:3.0%|1,000万円超~:7.6%|▼女性の給与階級別構成比~100万円:14.3%|~200万円:22.5%|~300万円:20.9%|~400万円:18.0%|~500万円:11.4%|~600万円:5.9%|~700万円:3.0%|~800万円:1.7%|~900万円:0.8%|~1,000万円:0.4%|1,000万円超~:1.2%|※国税庁|令和3年分民間給与実態統計調査

それぞれの性別で年収のボリュームゾーンを見てみると、男性は400万円超500万円以下、女性は100万円超200万円以下です。

この結果から、年収900万円超の男性は10人に1人なので特に稼いでいる方に入り、女性は50人に1人と周囲をはるかにしのぐトップクラスの年収であることがわかります。

コラム:20代・30代で年収900万円以上の人は極めて稀

年2回のボーナスをそれぞれ月給2カ月分とした場合、年収900万円の人の月給(ボーナスを含まない毎月の額面収入)は56万2,500円と換算できます。

1カ月あたりの月給
900万円÷{12カ月+(2カ月分×2)}
=56万2,500円

2022年の厚生労働省の調査結果をもとに、月収55万円以上の人の割合を試算すると、20代は同世代の約0.4%、30代では約3.0%でした。

20代で年収900万円以上である人は極めて少なく、30代でも30人に1人という限られた人であることがわかりました。

※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

年収900万円の手取り・税金は?

年収900万円になると、税金や保険料でどれくらい天引きされ、いくら手元に残るのでしょうか。

会社員で年収900万円になった場合の手取り額や天引き率などを「既婚・子ども1人」と「独身」それぞれのケースで紹介します。

手取り年収は670万円程度

年収900万円の場合、税金や社会保険料が差し引かれた手取り額は670万円前後になります。

12カ月で割ると手取り月収は約55.8万円です。

ただし、具体的な手取り額は養っている家族の有無や保険料などによっても変わります。

例として、以下の2世帯の手取り額や税金・保険料の天引き額などを計算しました。

【手取りの年収額の例】A.年収900万・48歳・既婚・16~18歳の子ども1人|手取り額:677.0万円|天引き額:223.0万円|天引き率:24.8%|所得税:49.1万円|住民税:47.2万円|社会保険:126.7万円|B.年収900万・35歳・独身手取り額:660.6万円|天引き額:239.4万円7|天引き率:26.6%|所得税:66.3万円|住民税:54.6万円|社会保険:118.5万円

※利用ツール→ZEIMO「年収手取り額計算

年収の1/4程度が税金で天引きされる

年収900万円になると累進課税により税負担の割合が増え、税金・社会保険料で年収の1/4程度(240万円前後)が差し引かれます

35歳・独身で年収900万円の場合、26.6%が天引きされます

給与階級別の天引き率は、以下のとおりです。

 【給与階級別の天引き率・額】〈35歳・独身の場合〉年収|天引き率(額)|1,000万円|27.4%(273万5,560円)|900万円|26.6%(239万3,860円)|800万円|25.9%(207万1,360円)|700万円|24.8%(173万2,920円)|600万円|23.3%(139万8,200円)|500万円|22.2%(110万9,480円)|400万円|21.6%(86万2,120円)|300万円|21.0%(63万80円)

ちなみに妻や子どもなど扶養家族がいる人は、配偶者控除や扶養控除が受けられるため、独身の人に比べて税金が低く抑えられ、天引き率は数%下がります。

たとえば年収900万円で2人の扶養家族がいる場合、天引き率は24.8%になり、独身の人に比べて1.8ポイント低くなります。

年収900万円の生活レベルは?2世帯家計簿シミュレーション

年収900万円世帯は、具体的にどんな生活を送っているのでしょうか?

共働きをしているA世帯と、独身のB世帯を例に、1カ月の家計簿をシミュレーションしてみました。

A世帯|夫(48歳)、扶養内でパートで働く妻(45歳)、私立高校に通う子ども1人がいる場合|手取り56万円万円、支出合計50万円、貯金6万円(妻のパート代も一部、貯金にまわす)|住居:16万円(都心の分譲マンション3LDK、4500万円、30年返済)|食料:8万円|水道・光熱:3万円|通信:2万円|日用品・衣服:3万円|保険・医療:3万円|自動車:6万円(約600万の新車、8年ローン)|教育:5万円(私立高校の授業料・通学代)|小遣い:4万円

B世帯|独身(35歳・男性)の場合|手取り56万円、支出合計50万円、貯金6万円|住居:18万円(賃貸、都心のタワーマンション中層階、1R)|食料:7万円(外食中心)|水道・光熱:2万円|通信:2万円|日用品・衣服:3万円|保険・医療3万円|自動車:4万円(約400万の新車、8年ローン)|趣味・娯楽:10万円(海外旅行、ゴルフなど)

【結婚】片働きになっても暮らしは余裕

年収900万円であれば、パートナーが結婚を機に仕事を辞めたとしても、とても余裕のある暮らしができます。

2022年の総務省統計局の調査によると、2人以上の世帯の1カ月あたりの消費支出は平均29万865円。年間の支出として試算すると349万380円でした。年収900万の手取り額は約670万円であるため、片働きだとしても300万円程度ゆとりがあります

総務省統計局の調査データには持ち家に住んでいる人も含まれているので、家賃などの住居費をほとんどかかっていない傾向がありますが、年収900万円台であれば家賃や住宅ローンなどで月に15~20万円程度の出費があったとしても、問題ない計算になります。

※出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要

【家】都内の一戸建てを購入できる

一般的に住宅ローンは年収の5倍程度で組むことが多いため、年収900万円の住宅ローンの目安は4,500万円になります。

東京都の相場なら、23区外の一軒家や渋谷区や中央区などの都心にある3LDKの中古マンションを購入できます。23区内で都心から離れたマンションなら新築・3LDKも購入できるでしょう。

ただし、子どもがいる場合は住宅ローンの返済期間と教育費の支払いが重なるため、ローンを組むときは子育てにかかる費用も十分に考慮する必要があります。

ちなみに、2022年の総務省の調査によると、年収900~1,000万円世帯(二人以上)の持家率は84.3%で、ほとんどが賃貸ではなく自身の家を持っていることがわかります。

※参考:総務省「令和4年度家計調査 <貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高 年間収入階級別

【教育】オール私立で通わせるなら共働き・節約が必要

幼稚園から大学まですべて私立に通わせるとなると、年収900万円であっても片働きだと心許ない印象です。共働きで世帯収入を増やしたり、節約をして生活費を工面したりすることが必要になると考えられます。

一般的に、子ども1人を0歳~大学卒業の22歳まで育てるとなると、国立・公立学校に通わせた場合でも養育費・教育費合わせて約3,000万円かかると言われています。

子どもを幼稚園〜大学まで私立に通わせるとなる場合は、学費でさらに約1,400万円が必要になり、養育費・教育費の総額は約4,400万円になります。22年で割ると年間200万円の出費です。

年収900万円(手取り年収670万円)で子どもを幼稚園〜大学まで私立に通わせる場合、月計算で手元に入る給料の約3割を教育費が占める計算になります。

※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査 調査結果の概要」「国公私立大学の授業料等の推移

【公立学校と私立学校の学費(総額)の目安】教育課程/公立の学費/私立の学費/私立と公立の差額/幼稚園/3歳/13万3,353円/30万9,170円/17万5,817円|4歳/14万838円/27万6,125円/13万5,287円|5歳/19万8,555円/33万9,341円/14万786円/小学校1年生/37万9,539円/213万6,449円/175万6,910円|2年生/28万3,211円/140万2,725円/111万9,514円/3年生/31万5,794円/151万9,595円/120万3,801円|4年生/32万9,198円/159万2,088円/126万2,890円|5年生/38万774円/168万3,972円/130万3,198円|6年生/42万3,506円/166万4,831円/124万1,325円|中学校/1年生/53万1,544円/180万6,991円/127万5,447円/2年生/44万3,848円/121万8,559円/77万4,711円|3年生/ 64万925円/127万8,255円/63万7,330円/高校(全日制)/1年生/62万9,459円/127万6,978円/64万7,519円|2年生/45万7,895円/94万1,873円/48万3,978円|3年生/45万5,762円/93万7,550円/48万1,788円/大学/4年制|253万6,757円/396万9,723円/143万2,966円|合計/828万958円/2,235万4,225円/1,407万3,267円|※大学は令和3年度の入学料+授業料(4年分)より算出

【貯金】年間100万円程度が理想

一般的に貯金にまわす金額は手取りの15%程度が目安とされているため、年収900万円(手取り年収670万円)の場合は年間100万円程度を貯金できると理想的です。

月に換算すると8万3,000円になります。手取り月収は56万円程度あるため、単身世帯は生活費の節約を意識しなくても十分貯められる額です。

子育て世代の場合は教育費や保険料などで出費がかさむため、しっかり家計を管理しないと毎月8万円近く貯金するのは難しいかもしれません。

年収900万円以上を目指す方法

給料を上げて年収900万円以上を目指したい場合に、どのような仕事を選べば良いのでしょうか。

部長以上の役職に就く

社内で部長以上の役職(部長、本部長、事業部長、取締役など)に就くことができれば、年収900万円以上になれる可能性が上がります。

厚生労働省の調査によると、役職別の月の賃金は係長級で36万9,000円、課長級で48万6,900円、部長級で58万6,200円でした。

このデータを元に、毎年夏・冬で合計4カ月分のボーナスが支給されると仮定すると、係長級の年収は590万4,000円、課長級は779万400円、部長級は937万9,200円となり、部長以上の役職であれば年収900万円を超える可能性が高いと言えます。

※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 役職別」

【役職別の平均月収】<役職/月給/年収>係長級/36万9,000円/590万4,000円/課長級/48万6,900円/779万400円/部長級/58万6,200円/937万9,200円|※年収は月収16カ月分で試算|※出典:厚生労働省「令和4年賃金基本調査 結果の概況 役職別」

資本金10億円以上の企業では、約2割が年収900万円以上

年収900万円を目指すには、上位の役職を狙う方法もありますが、企業規模が大きな会社であれば社員の年収が高い傾向にあるため、年収900万円以上を達成できる可能性があるかもしれません。

国税庁の調査結果によると、年収900万超の従業員の割合は、資本金10億円以上の企業になると17.4%に上ります。1億円以上10億円未満の割合(7.1%)と比べると、2倍以上の差です。

※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査結果

【企業規模別の年収900万円超の社員】企業規模(資本金)|割合|2,000万円未満| 4.1%|2,000万円以上5,000万円未満|3.8%|5,000万円以上1億円未満|4.1%|1億円以上10億円未満|7.1%|10億円以上|17.4%|※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査結果」

歩合制の仕事を選ぶ

歩合制の仕事を選べば自分の頑張りと能力次第でインセンティブがつくため、基本給がそれほど高くなくても年収900万円以上を目指すことが可能になります。

歩合制が採用されていることが多い職種としては、不動産営業、保険営業、MR、ファンドマネージャー、自動車ディーラー、タクシーやトラックのドライバー、販売員などがあります。

転職して年収アップを狙うには?

転職は給料を上げる方法の一つですが、転職したからといって必ず年収が上がるわけではありません。まずは企業に勤める社員の給与が上がる仕組みを理解することが大切です。

これから転職を考えている方は、下記の記事から「給与が高い業界・会社に転職する方法」もぜひチェックしましょう。

また、年収を上げる方法は転職以外にもいくつかあります。幅広い選択肢のなかから自分に合った年収アップの方法を検討したい方は、下記の記事も確認してみてください。

この記事の執筆者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。

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