面接当日でもできる! 内定に近づく「いい声」の出し方
面接で良い印象を残すためには「何を話すか」以上に「どんな声で話すか」が大切だということを知っていますか?
面接当日でもできる、誰でも「いい声」が出せるようになるための簡単ボイストレーニング方法を、ボイストレーナーの秋竹朋子さんに聞きました。
「声」が面接の合否を左右するって本当?
――本当に「声」だけで、面接の合否が変わるんでしょうか?
秋竹さん:間違いなく変わります!これまで16年間、約4万人近くの方をトレーニングしてきましたが、20~30社落ちてしまった方でも、声を変えただけでいきなり内定が出たなんてこともありました。
その方が入社後、面接官だった上司に採用理由を聞いたところ「すごくハキハキした声で話すから、やる気があって仕事もできそうな印象だった」と答えたそうです。
――それだけ声が印象に与える影響は大きいんですね。
秋竹さん:面接はほとんどの場合、初対面なので、声による影響がより大きくなるシチュエーションです。
合コンなどをイメージするとわかりやすいですが、相手に関する事前情報がないとき、人は見た目や声といった情報をもとに、無意識かつ瞬間的にその人のイメージを創り上げてしまいます。
有名なメラビアンの法則でも、聴覚情報(38%)は視覚情報(55%)に次いで影響力が高いと言われています。それに対して言語情報が与える影響はたったの7%です。
口では良いことを言っていても、声や話し方がキツかったら、印象は良くありませんよね。
面接もそれと同じで、面接官はあなたと初めて顔を合わせるわけですから、見た目はもちろん、声によって反射的に「この人は仕事ができそうだな」あるいは「頼りなさそうだな」などと判断されてしまうんですね。
みなさん知らないだけで、声って本当に恐ろしいんですよ!
面接当日にできる!即効ボイストレーニング
――「いい声」を出すために、面接当日でもできるボイストレーニング方法を教えてください。
秋竹さん:面接官に好印象を与える「いい声」を出すためには、「呼吸」「発声」「滑舌」の3つのポイントがあります。
それぞれについて、改善のためのボイストレーニング方法を解説しますね。
1)呼吸
面接で「いい声」を出すための1つ目のポイントは「呼吸」です。
呼吸と言っても大切なのは、お腹から声を出す腹式呼吸ができていることです。前提として、この腹式呼吸ができていなければ「いい声」は出せません。
面接は緊張によってどうしても脈が上がり、呼吸が浅くなります。するとお腹ではなく喉からの発声になり、上ずった声・通りにくい声になってしまうんですね。
そんな時こそ、腹式呼吸が簡単にできるようになるトレーニングをやってみましょう。
まずは左手の手のひらを口元に持ってきます。右手はお腹の上に軽く添えます。
そうしたら寒い日に手を温めるイメージで、左手の手のひらに思いきり「ハァーーー」と2秒ほど息を吐きましょう。このとき、お腹が凹むと思います。これが腹式呼吸です。
息を吐いたらその反動で自然に鼻から空気が入ると思うので、再び「ハァーーー」と吐き出します。これを10回繰り返しましょう。
ちなみに、腹式呼吸には緊張をほぐす効果もあるので、あがり症の方には特にオススメです。
面接前にこのトレーニングを3分間やるだけで、脳内にセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。これによって安心感が生まれ、ドキドキを抑えることができるんですよ。
おまけ:慣れたら短い息を連続で吐いてみる
「ハァーーー」というロングトーンでの腹式呼吸に慣れてきたら、今度は「ツッ、ツッ、ツゥ―――」と、歯の間を息がすり抜けるようなイメージで、短い息を連続で吐いてみましょう。
「ツッ」と短い息を吐くたびに、お腹を凹ませます。「ツッ、ツッ、ツゥ―――」でお腹が3回ペコペコするイメージです。
何回かやると腹筋がかなり疲れると思いますが、より腹式呼吸のやり方がイメージしやすくなるでしょう。
2)発声
面接で「いい声」を出すための2つ目のポイントは、「発声」です。
「呼吸」のトレーニングで腹式呼吸のコツをつかんだら、今度はその息に声を乗せてみましょう。実際に話すときの声の出し方がイメージできます。
それでは下記のトレーニングをやってみましょう。
腹式呼吸でお腹を凹ませながら「はぁあぁぁぁぁぁあ↷」と2秒ほどで声を出します。
「はーーー→」という一定のトーンではなく、カラスの「カァーーー↷」のように、はじめに少し上がって、その後に下がるイメージです。
お腹をしっかり凹ませるために、右手をお腹に添えると良いでしょう。3回ほど繰り返します。
次に「はぁっ↷」とやや短く、鋭い声を出します。これも3回。
最後に通常のトーンより高い声・低い声で同じように「はぁあぁぁぁぁぁあ↷」と、それぞれ3回声を出しましょう。
腹式呼吸で声を出すと、いつもより大きな声が出るので「やりすぎ感」があるかもしれません。しかし、面接という場で印象を残すにはそれくらいでちょうどいいのです。
お腹から息を出しながら、いつもの自分より少しオーバーな声を出してみましょう。
3)滑舌
面接で印象に残る声を出すための最後のポイントは「滑舌」です。
滑舌を良くすることで、より聞き取りやすく、面接官の印象に残りやすい声にすることができます。
腹式呼吸での発声を意識しながら、まずは下記の2音の単語を順番に読み上げます。単語ごとに息を吐き切り、お腹を凹ませましょう。
すると自然に鼻から息が入り、またお腹がふくらむので、次の単語も同じようにお腹を凹ませて発音します。単語ごとにお腹がペコペコするイメージです。
お腹がしっかり凹んでいるか確認するため、右手をお腹に添えるとやりやすいですよ。
- 恋
- 見る
- 好き
- 愛
- ただ
- 波
- 風
- 胸
次は5音の単語も同じように声に出して、読み上げます。
- 届けたい
- おもしろい
- 会いたくて
- 華やかな
- 久しぶり
- さようなら
- 偶然に
- 夜明けまで
この読み上げを面接前にも行えば、いつもより滑舌良く話すことができるはずです。
実践編:話すときも2音~5音で区切ってみよう
実際に面接で話すときも、上記のトレーニングのように2~5音ごとに息を吐き、単語の頭を強く発音してみましょう。例えば冒頭の挨拶では、下記のようなイメージです。
こんにちは。秋竹(あきたけ)朋子(ともこ)です。
本日(ほんじつ)はどうぞ、よろしくお願いします。
※太字部分で息を吐く
こうすることで、はっきりとした声で、早口にもならず話すことができるので、面接官からすると「信頼できる」「仕事ができそう」といったイメージにつながります。
おまけ:「ら行」の発声で滑舌はもっと良くなる
舌が回りにくい「らりるれろ」の発声をトレーニングすることで、滑舌をより良くすることができます。
下記の順番で、「ら行」を徹底的に発声します。もちろん、1回ごとに息を吐く腹式呼吸も忘れずに。
はじめに「ららららら」と発音してお腹を凹ませたら、自然と鼻から息が入り再びお腹がふくらみます。そうしたら同じように「ららららら」と言いながら凹ませます。この繰り返しで、3音~5音ごとにお腹をペコペコさせましょう。
- ららららら×5回
- れれれれれ×5回
- ろろろ×3回
- るるる×3回
- りゃりゃりゃ、りゅりゅりゅ、りょりょりょ×3回
- りゃりゅりょ、りゃりゅりょ、りゃりゅりょ×3回
「声は生まれつき」とあきらめないこと
――最後に一言、面接を控える求職者の方にアドバイスをお願いします。
秋竹さん:「声は生まれつきのものだから変えられない」とよく言われますが、そんなことはありません!
みなさん正しい発声方法を知らないまま、悪いクセが付いてしまっているだけなんです。
話す姿が魅力的な経営者の方、トップセールスの方だって、自分から言わないだけでボイストレーニングを受けている方も多いんですよ。
日本語は英語と違い、腹式呼吸をしなくても話せてしまう言語なので、はじめは感覚がつかみづらいかもしれません。でも、赤ちゃんの頃の「オギャー」という泣き声は紛れもなく腹式呼吸なので、もともとはみなさんできていたはずなんです(笑)
今回ご紹介したボイストレーニングは、できるだけ面接に近い時間帯にやってみてください。とは言え応募先の会社や向かう途中の駅ナカなどでは難しいので、朝に自宅でやった上で、会社で話すときもできるだけトレーニングと同じような話し方をしてみましょう。
いつの間にかその発声方法に体が慣れ、実際の面接でも「いい声」で話せるようになりますよ。
(取材・文/金子龍介)
この記事の話を聞いた人
ビジネスボイストレーナー
秋竹 朋子
株式会社エデュビジョン【ビジヴォ】代表
「ビジネスマンのためのボイストレーニングスクール」(株)エデュビジョン【ビジヴォ】代表。東京音大ピアノ演奏家コース卒。ウィーン国際音楽コンクール及び国内の受賞歴多数。開校16年の東京スクールを拠点に北海道~沖縄まで、全国各地への企業研修を行っており、大手企業のコールセンター、金融機関、証券会社なども研修として取り入れいる。これまで4万人以上300社の企業研修を実施。
個人のクライアントも上場企業の経営者、芸能人、著名人を多数持つ。
2011年~2012年、経済産業省のグローバル人材派遣として「ビジネスボイス」が選ばれフィリピンに赴任、日本にとどまらずアジアにて「声」の指導をして活躍中。
著書:「話し方」に自信がもてる『1分間声トレ』(ダイヤモンド社)、「ビジネスの発声法」(日本実業出版)