企業の事例や経験談も紹介 休み方改革とは|働き方改革と違う?

休み方改革」といえば、働き方改革とあわせて耳にすることが多いですが、具体的な取り組みの違いについて知っているという人は、意外と少ないのではないでしょうか?

ここでは、休み方改革の目的や施策について説明します。

休み方改革とは?

休み方改革とは、どのような取り組みなのでしょうか。

まずはその内容や働き方改革との違いについて説明します。

労働者が休みやすい環境をつくる取り組み

休み方改革とは、有給休暇の取得促進や長時間労働の抑制を、官庁と民間企業が一体となって進めている取り組みです。

休み方改革が行われる背景には、日本人の有給休暇取得率の低さや長時間労働などの問題があります。

厚生労働省が行った調査によると、全国の民営企業6,387社の有給休暇の取得率は58.3%でした(令和3年の1年間)。

企業規模別でみた場合、従業員数1,000人以上の企業では63.2%、300~999人では57.5%、100~299人では55.3%、30~99人では53.5%という結果になっています。

※参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概要 (4) 年次有給休暇」

休み方改革の目的は「働き方の見直し」

休み方改革は労働者の働き方を見直す目的で行われます。

働き方を見直して休みを取りやすくすることで、ワークライフバランスを重視した働き方ができ、生産性の向上や休暇を利用した地域活性化が期待できます

働く人々が積極的に有給休暇を取れるようにするには、誰かが休んでも他の社員にしわ寄せがいかない職場環境を企業に整えてもらう必要があります。

そのため、厚生労働省では企業の休み方改革を後押しするために、中小企業や小規模事業者に対して社員の休みを取りやすくする取り組みに応じた助成金を支給しています。

休み方改革と働き方改革の共通点や違い

休み方改革と働き方改革は取り組み方が異なるものの、労働環境を改善してワークライフバランスを整えるという目的は共通しています。

それぞれの実施目的は以下の通り。

休み方改革

労働者がしっかり休みをとれれば、仕事のモチベーションを維持できるようになり、かつ消費促進にも繋がる。

働き方改革

職場環境改善などの「魅力ある職場づくり」が人手不足解消につながり、「業績の向上」「利益増」といった好循環を生む。

なお、厚生労働省は共通の取り組みとして、主に有給の取得促進や残業の削減などを挙げています。

※参考:
厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」
厚生労働省「働き方改革特設サイト」

休み方改革の施策と企業の事例

休み方改革では具体的にどのような施策が行われているのでしょうか。

企業が実際に取り入れている休み方改革の事例についても紹介します。

休み方改革の施策

政府は会社員が休みやすいように、さまざまな休み方改革の施策を設定しています。

主な施策は下記の通りです。

  • 年5日の有給休暇取得義務
  • 仕事休もっ化計画
  • ゆう活・プレミアムフライデー

年5日の有給休暇取得義務

年5日の有給休暇取得義務は会社が社員に休みを与えるための、休み方改革の一環といえます。

労働基準法により会社には、有給休暇の付与から1年以内に必ず5日間以上取得させることが義務付けられています。また、取得日数が5日に満たない場合は、企業が日にちを指定して社員に取得させます。

政府はこうした取り組みにより、有給消化率の向上を目指しています。他にも、厚生労働省は2014年から毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」として有給休暇を取得するよう呼びかけています。

有給休暇の取得義務についてくわしく

仕事休もっ化計画

「仕事休もっ化計画(しごとやすもっかけいかく)」とは、有給休暇を取得しやすい職場環境づくりを目的とした休み方改革の取り組みです。

具体的な内容としては、飛び石連休中の平日や年末年始、土日の前後などに年次有給休暇を取得することで連続休暇にする「プラスワン休暇」、地域ごとに学校の夏休みなどを分散して大人がそれに合わせた有給取得を取得し、家族で過ごす時間を増やす「キッズウィーク」があります。

キッズウィークに関しては、子どもの休みを分散したとしても、親がそれに合わせて有給を取得するのが難しい場合も少なくないことから実効性に乏しい点が指摘されています。

なお、文部科学省の調査(2018年)によると、学校休業日の設定の工夫について「行なっている」と答えた都道府県教育委員会は63.8%、市町村教育委員会は32.1%となっています。

そのうち、2日以上の連休になるよう休業日を設定している教育委員会は43.7%(257団体)となっています。

※参考:文部科学省「学校休業日の設定の工夫状況等に関する調査結果」

ゆう活・プレミアムフライデー

日照時間が長い夏に早い時間から働き、早めに仕事を終えることで、まだ外が明るい夕方の時間を有効活用する「ゆう活」や、月末の金曜日に日常よりも少し豊かな時間を過ごせるよう、15時に退社するなどの取り組みを行う「プレミアムフライデー」も推進しています。

ただし、業種によって夕方は多忙な時間帯であることから、これらは休み方改革の施策として定着しているとはいえないのが現状です。

※参考:厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」

企業の導入事例

企業による休み方改革の具体的な導入事例として「サントリー」と「富士通」の例を以下で紹介します。

サントリー

  • 年次有給休暇
    …原則として全員16日以上の取得促進。
  • リフレッシュ休暇
    …勤続年数に応じて特別休暇および奨励金を付与する制度。
  • ウェルカム・ベビー・ケア・リーブ
    …男性の育児休職取得促進を目的に育児休職の一部を有給化した制度。

※参考:サントリーホールディングス株式会社:働き方・休み方改善取組事例 | 働き方・休み方改善ポータルサイト

サントリーは2011年より男性社員の育児休職取得促進のために、育児休職の一部有給化した「ウェルカム・ベビー・ケア・リーブ」に取り組んでいます。

その結果、2021年には女性の育児休職取得率が100%、男性では63.2%復職率は女性が96%、男性が100%と、育児休職が取りやすく、育休後も働きやすい環境となっています。

富士通

  • 有給休暇
    …最大40日(初年度は入社時期により異なります)
  • 積立休暇
    …20日を限度として休暇を積立でき、連続3日以上の私傷病の療養、ボランティア活動、子どもの看護、家族の介護、不妊治療などに利用できる制度。
  • リフレッシュ休暇
    …勤続満10年、満20年、満30年を経過した正社員に対して休暇を与える制度。

※参考:ライフサポート | 富士通Japan株式会社 リクルートサイト

富士通では通常の年次有給休暇にプラスして「積立休暇」が付与されます。利用できる条件は、通院や家族の看護など特定の目的に限定されます。

これは社員から「急病などいざという時に備えて、有給がなかなか消化できない」との声があったことから、旅行やリフレッシュの目的でも有給を使いやすくするために作られた制度です。

通常の有給休暇は1年しか繰越ができませんが、積立休暇は20日までであれば毎年繰り越すことができます。社員が悩みがちな「有給を使う理由」に着目した、社員の立場を考えた制度といえるでしょう。

【経験談】休み方改革に満足?不満足?

実際、休み方改革によって生産性が上がったり、休暇を満喫できたりするのでしょうか?

ここでは、休み方改革によって満足度が上がった例と、そうでない例について経験談で紹介します。

休み方改革に満足しているAさん

勤務先のクリニックはシフト制で希望休がとりにくかったのですが、昨年からリフレッシュ休暇制度ができ、4日間以上の連休取得がルール化されました。

そのため、以前はなかなか行けなかった家族旅行に行けるようになりました。リフレッシュ休暇のために仕事を頑張ろうと思えるようにもなり、モチベーションも上がったので満足しています。

休み方改革に不満を感じているBさん

勤務先のIT企業では一般社員らから「管理職が休んでいないので自分たちも休みにくい」という声が上がったため、半年前から管理職の有給休暇が推進されるようになりました。そのため、管理職である私も積極的に有給休暇を取得するように。

しかし、休みをとることで仕事が回らなくなり、さらに残業することも良しとされていないため、業務に支障が出始めています。
この制度を改善できないか、上層部に相談しようと考えているところです。

コラム:働き方・休み方のセルフチェックが可能

厚生労働省が開設した「働き方・休み方ポータルサイト」では、労働者が労働時間や休暇の取得状況について問題がないかどうかセルフチェックすることができ、問題があった場合に必要な対策についても確認できます。

さまざまな企業の事例もみることができるので、ぜひ参考にしてみてください。

※参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト 社員向け自己診断」

まとめ

休み方改革とは、官庁と民間企業が一体となって労働者が休みやすい環境をつくる取り組みです。

働き方改革と同様、目的は働き方の見直しですが、取り組み内容としては「休みを取りやすくすること」に重点が置かれています。

休み方改革によって、休みが取りやすくなり満足しているケースがある一方、不都合が生じているケースもあるのが現状です。

今後、休み方改革をさらに広げていくためには、官民が連携して、社員のニーズを反映した取り組みを行うことが重要といえるでしょう。

この記事の執筆者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。

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