金額変更の4つのタイミングとは 社会保険の金額の計算方法を解説!

給与明細などで目にすることがある社会保険料。しかし「なぜこの金額なのかよくわからない」という人もいるでしょう。

ここでは社会保険の金額の計算方法や、変更のタイミングについて解説します。

社会保険の金額はどうやったらわかる?

社会保険とは健康保険厚生年金保険介護保険雇用保険労災保険の総称です。給与明細にそれぞれの金額が記載されています。

狭義では、これらのうちの会社員を対象とした健康保険と厚生年金保険の2つを「社会保険」と呼ぶこともあります。

各保険の概要は、以下のとおりです。

保険 概要
健康保険
  • 労災以外の医療費の一部を負担したり、病気やケガ、出産などで一定期間働けなくなった場合に給付金を支給したりする
厚生年金保険
  • 65歳からもらえる老齢厚生年金、ケガや病気などで障害が残ってしまった場合にもらえる「障害厚生年金」と、保険の加入者が亡くなった際に遺族がもらえる「遺族厚生年金」がある
  • 国民年金(基礎年金)に上乗せされて受給できる
介護保険
  • 加入者に介護が必要な状態になった場合、介護サービスを1割負担で利用できる
  • 40歳以上になると介護保険への加入と保険料の負担が義務付けられている
雇用保険
  • 万が一失業した場合、生活の安定や再就職活動を助ける給付金などがもらえる
労災保険
  • 仕事中・通勤中の事故などが原因で、労働者が病気やケガをした場合に医療費を負担したり、一定期間働けなくなった場合に給付金を支給したりする

社会保険の金額は「標準報酬月額」を見ればわかる

健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険の金額は、自分の給料を「標準報酬月額」をもとにした保険料表に当てはめれば、いくらなのかが簡単にわかります。

「協会けんぽ」であれば、ホームページの保険料額表から確認することができます。また、自分の標準報酬月額は、「ねんきん定期便」でもわかります。

※参考:
協会けんぽ「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」

標準報酬月額は原則として4月~6月の基本給や残業代、手当などをすべて足した平均額によって決まります。その額によって健康保険料は1~50まで、厚生年金保険料は1~31までの等級に振り分けられ、等級ごとに保険料の金額が決まっています。

例えば、東京都の企業に勤務している40歳未満の会社員で、4月~6月の平均の給与額が23.5万円の場合、標準報酬月額や各種保険料は以下のとおりです。

  • 標準報酬月額は24万円で、健康保険料は19等級、厚生年金保険料は16等級
  • 毎月の給与から差し引かれる健康保険料は12,000円、厚生年金保険料は21,960円

※40歳以上になると、さらに介護保険料2,184円が引かれる
※いずれも会社と折半した金額

なお、失業時の生活の安定や再就職のための給付金などを支給する目的の雇用保険料は、標準報酬月額よりも対象となる賃金の範囲がより広い毎月の「支給額合計」をもとに決まります

標準報酬月額についてくわしく

社会保険の金額を計算式を使って出す方法

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料の計算式は、以下のとおりです。

健康保険料

健康保険料
標準報酬月額×一般保険料率×0.5(会社と折半になるため)

健康保険料率は、会社が加入しているのが健康保険組合(組合健保)なのか、それとも全国健康保険協会(協会けんぽ)なのかによって変わります。

協会けんぽの場合は、都道府県によっても健康保険料率が変わりますが、だいたい9~10%前後です。

厚生年金保険料

厚生年金保険料
標準報酬月額×厚生年金保険料率18.3%×0.5(会社と折半になるため)

厚生年金保険料率は2017年9月から18.3%で固定されています。

厚生年金保険についてくわしく

介護保険料

介護保険料
標準報酬月額×介護保険料率×0.5(会社と折半になるため)

介護保険料率も健康保険料と同じく、会社が加入しているのが健康保険組合(組合健保)なのか、全国健康保険協会(協会けんぽ)なのかによって変わりますが、協会けんぽの場合は1.82%です。

※2023年3月分・5月1日納付期限分から

雇用保険料

雇用保険料
毎月の支給額合計×雇用保険料率

雇用保険料率は一般の事業であれば6/1,000、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業は7/1,000となっています。

社会保険の支払い金額モデル

東京都のIT系企業に勤務している30歳・独身男性、協会けんぽ加入、月給29万円(標準報酬月額は28万円)の場合

  • 健康保険料の標準報酬月額21等級…280,000円
  • 厚生年金保険料の標準報酬月額18等級…280,000円
  • IT系企業…一般の事業に含まれるため、雇用保険料率は3/1,000

社会保険の計算式と自己負担額の合計は、以下のとおりです。

〈社会保険の計算式〉

健康保険
280,000円×10.0%×0.5
14,000円

厚生年金保険
280,000円×18.3%×0.5
25,620円

雇用保険
290,000円×6/1,000
=1,740円

※40歳未満なので介護保険は未加入

健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を合わせた自己負担額は41,360円

※参考:
協会けんぽ「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
日本年金機構「厚⽣年⾦保険料額表」
厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率」

コラム:社会保険の加入条件は?

社会保険は、基本的に正規雇用・非正規雇用に関わらず労働時間が週20時間以上であれば加入対象になります。

パートやアルバイトなどの場合は、以下の条件をすべて満たせば加入できます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
  • 賃金月額が月8.8万円以上
  • 2カ月以上の雇用が見込まれている
  • 学生ではない(夜間や定時制などの学生は加入できる場合もある)
  • 従業員101名以上(厚生年金の被保険者数)の企業で働いている

※参考:厚生労働省|社会保険適用拡大ガイドブック

社会保険の金額変更の4つのタイミング

社会保険の金額が変わるタイミングは、以下の4つです。

  • 入社時
  • 毎年7月
  • 給料が大きく上がる・下がるとき
  • 産前産後休暇・育児休業後

入社時

入社時には、今後受け取るであろう給与額をもとに標準報酬月額が決まります。

決定のタイミングによって適用される期間が異なり、1月1日~5月31日に決定した場合はその年の8月まで、その他のタイミングで決定した場合は翌年8月まで適用されます。

毎年7月

毎年7月に、その年の4〜6月に支払われた給与の平均額をもとに標準報酬月額が決まります。その額は同年9月〜翌年8月まで適用されます。

給料が大きく上がる・下がるとき

昇給などで給与額が大きく変動した場合、その月からの3カ月間の給与の平均額をもとに標準報酬月額が決まります。

その結果、それまでより2等級差以上あった場合に社会保険の金額が変わります。

社会保険の金額が変わるタイミングは、その企業が当月分の社会保険料を給料から天引きするタイミングが翌月か当月かによって異なります。

例えば、10月分の社会保険料を翌月(11月)に徴収しているのか、当月(10月)に徴収しているのか、といった違いです。前者の場合は標準報酬月額改定月の翌月から、後者の場合は標準報酬月額を改定したその月から変わります。

産前産後休暇・育児休業後

産前産後休暇や育児休業を取得して給与が下がった場合、社員の申し出により復帰後3カ月間の給与の平均額をもとに標準報酬月額を改定することができます。

その結果、休業前よりも1等級差以上あった場合に社会保険の金額が変わります。

例えば、4月末に育児休業が終了した場合、5~7月の3カ月間の平均給与から標準報酬月額を決定し、休業前に比べて1等級差以上あった場合は翌8月から保険料が変わります。

コラム:社会保険の任意継続と国民健康保険ではどちらがお得?

会社を退職した後、社会保険の任意継続か国民健康保険のどちらに加入するかで迷った場合、月収35万円以上、または扶養家族3人以上であれば国民健康保険よりも社会保険の任意継続のほうがお得になる可能性が高いでしょう。

国民健康保険の場合は、扶養という概念がなく、世帯人数が多くなるとその分金額も増えますが、社会保険の任意継続であれば扶養家族が何人いても金額が変わりません

また、保険料の年間上限額は社会保険の任意継続よりも国民健康保険のほうが高額です。そのため、年収が任意継続の保険料の年間上限額を超える場合は、社会保険の任意継続のほうが安くなります。

ただし、自治体によって国民健康保険の税率が変わるため、自分の住んでいる自治体の国民健康保険について確認し、任意継続した場合の金額と比べてみるのがおすすめです。

退職時の健康保険切り替え手続きについてくわしく

社会保険の金額に関するQ&A

社会保険に関するよくある疑問について解説します。

Q.家族を扶養に入れる場合、社会保険の金額は変わる?

家族を扶養に入れても、社会保険料の金額は基本的には変わりません。社会保険の金額は扶養の人数ではなく、給与額で変わるためです。

ただし、家族を扶養に入れたことで家族手当などがついて給与額が上がった場合は標準報酬月額が変わり、それに伴って社会保険の金額も変わる可能性があります。

Q.パートやアルバイトの社会保険の金額はどうやって決まる?

パートやアルバイトの場合は、勤務先で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けたパートやアルバイトの給与の平均額で標準報酬月額や社会保険の金額が決まります。

社内に同じ業務を担当するパートやアルバイトがいない場合は、想定される平均的労働時間をもとに標準報酬月額や社会保険の金額を出します。

ちなみに、パートの場合は年収106万円を超えると場合によっては社会保険の加入が義務付けられ年収130万円以上であれば必ず社会保険に加入する必要があります。

まとめ

社会保険の金額は標準報酬月額をもとに決まっており、給与明細や協会けんぽのホームページなどで確認できます。

入社時、毎年7月、給与が大きく変動した時、産休・育休取得後のタイミングで変わることもあるため、働き方が変わった場合には負担額を確認しておきましょう

(作成:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

特定社会保険労務士

成澤 紀美

社会保険労務士法人スマイング

社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。

社会保険労務士法人スマイング 公式サイト

  • HOME
  • 法・制度
  • 社会保険の金額の計算方法を解説!金額変更の4つのタイミングとは?