臨床開発(CRA・CS・CL) 職務経歴書の作成における3つのポイント

この記事では「CRA(Clinical Research Associate・臨床開発モニター)」向けに、製薬業界の臨床開発が職務経歴書でアピールすべき3つのポイントを紹介します。

プロトコールの立案・実施を手掛ける「Clinical Science(クリニカルサイエンス)」や総合的なプロジェクトマネジメントを行う「Clinical Lead(クリニカルリード)」として働く人、また、それらの職種にCRAからキャリアアップを考えている人に向けたキャリアアドバイザーからのコメントも掲載しています

製薬業界の臨床開発(CRA・CS・CL)職務経歴書テンプレート

職 務 経 歴 書|20XX年XX月XX日 現在|氏名: 山田 太郎|【職務略歴】|〇〇株式会社、△△株式会社にてモニター業務を計○年○ヶ月経験しました。これまで、××製剤/第Ⅲ相試験、××剤/第Ⅲ相試験、糖尿病治療薬/第Ⅲ相試験(Global Study、e-CRF、IVRS、海外中央検査など)にて、一連業務を経験。現在担当の糖尿病治療薬プロジェクトでは、モニタリングチームリーダー業務を担当し、グループメンバー●名の取りまとめを実施しています(症例進捗管理、各種ツール作成、CRF回収進捗管理など)。|【職歴詳細】|△△株式会社|事業内容 : 医薬品、医薬部外品、医療用具などの製造・販売・輸出入|従業員数 : ○○○○人 資本金 : ○○○億円|在籍期間 : 20XX年X月~現在|臨床開発部配属|業務期間/配属先|業務内容詳細|20XX年X月~20XX年X月|○○グループ|第Ⅲ相試験|担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学|症例数:○○○症例 症例獲得率:○○%|・医療機関および責任医師の選定|・SMOの選定(担当CRCの面接も含む)責任医師の同意説明文書作成補助業務|・IRBでの治験概要説明、質疑応答対応|・症例登録|・症例報告書回収|・治験資材の準備|・SDVおよびクエリ対応の実施|・終了手続、中止手続|・申請業務補助|20XX年XX月~20XX年XX月|○○グループ|第Ⅲ相試験|チームリーダー(メンバー●名)|担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学|症例数:○○○症例 症例獲得率:○○%|・施設探索、施設選定、新規施設立ち上げ|・説明会実施|・医療機関および責任医師の選定|・SMOの選定(担当CRCの面接も含む)責任医師の同意説明文書作成補助業務|

・医療機関でのIVRS、海外中央測定検査機関、e-ECGに関する医療機関スタッフへの説明、問題発生時の日英の翻訳作業|・IRBでの治験概要説明、質疑応答対応|・症例登録|・症例報告書回収|・SDVおよびクエリ対応の実施|・ドクターへの説明|・治験計画書作成|・CTD作成|・PMDAでの書面調査対応|・医療機関への承認取得報告対応|・チームメンバーの育成|20XX年XX月~現在|○○グループ|第Ⅲ相試験/global study|チームリーダー(メンバー●名)|担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学|症例数:○○○症例 症例獲得率:○○%|・モニタリング業務全般(Global Study、e-CRF)|・シニアCRAとしてモニタリングチームの取りまとめ(プロジェクト全体に係る資料作成、関連部署との交渉、症例進捗状況の管理・報告など)|・本国とのネットミーティングの運営・参加|・海外ベンダーとの交渉・問題の協議|・医療機関および責任医師の選定|・SMOの選定(担当CRCの面接も含む)責任医師の同意説明文書作成補助業務|・IRBでの治験概要説明、質疑応答対応|・医療機関でのe-CRF使用環境調査、医療機関スタッフの教育およびPC設定|・医療機関でのIVRS、海外中央測定検査機関に関する、医療機関スタッフへの説明、問題発生時の日英の翻訳作業|・治験責任医師および治験薬管理者との治験薬管理についての協議・折衝(処方印、治験薬直送対応など)|・スタートアップミーティング関連対応業務|・症例確保のためのスタッフモニタリングおよび症例モニタリング|・SDVおよびクエリ対応のサポート(既往歴・合併症、併用薬などの英GCP必須文書などの保存確認)|・GCP必須文書などの保存確認)|・e-CRF Ver.アップに伴う、関係者へのトレーニング実施・サポート|・SAE発生時のJ-GCP規制用件対応およびEMEA(欧州医薬品庁)規制用件対応該当事象への対応)|・担当医療機関への監査(社内監査部門)のための準備・IRB手続きおよび監査当日の業務(On site audit)|・Debarmentに関する対応(FDA要求事項)|・Site Closeに伴う一連業務(必須文書の保管、治験費用の精算など)|

〇〇株式会社 事業内容 : 医薬品、医薬部外品、医療用具などの製造・販売・輸出入 従業員数 : ○○○○人 資本金 : ○○○億円 在籍期間 : 20XX年XX月~20XX年XX月 20XX年XX月~20XX年XX月 新人研修(ビジネスマナー、医薬品知識などを学ぶ) 20XX年XX月~20XX年XX月 臨床開発部配属 業務期間/配属先 業務内容詳細 20XX年XX月~20XX年XX月 ○○グループ 第Ⅲ相試験 担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学 症例数:○○○症例 症例獲得率:○○% ・SDVの実施 ・症例登録 ・症例報告書回収 ・治験資材の準備 ・ドクターへの説明 ・終了手続、中止手続 ・申請業務補助 【保有資格】 ・普通自動車第一種運転免許 (20XX年X月取得) ・薬剤師免許 (20XX年X月取得) 【自己PR】 〈綿密なコミュニケーションに向けた行動力〉 長期試験になる場合は、医療機関起因の問題が発生しないように、綿密なコミュニケーションを取るように心がけています。目標達成に向けた終了ができるように先回りして準備を進めることを意識し、担当CRCの他試験の状況から連絡のつながりやすい時間帯を見極め、迅速な相談ができる体制を取っています。また、症例の減少などによって症例登録が非常に難しい場合には、受け入れ状況の確認と組み入れが難しい理由をヒアリングし、毎月PI・SIとWeb面会など対話の機会を設けることで組み入れを意識していただくように動いています。 〈チームマネジメント〉 シニアCRAとして取りまとめを担当した際には、7人のチームで75症例を進行しました。対応漏れや遅延を起こさず目標計画どおりの進行を実現するために、業務管理ツールを導入してチーム全体のタスクを可視化しました。また、チームワークを発揮するには、メンバー同士のコミュニケーションが重要だと考え、ランチセッションを企画し、会議では議論が活発になるように、メンバーを名指しして意見や質問を確認するようにしていました。次第に連携が取れるようになり、その結果、計画どおり納期内の提出を完了することができました。 以上

職務経歴書で伝えたい3つのポイント

製薬業界の臨床開発が、職務経歴書で意識して伝えたいポイントは以下の3つです。

製薬業界の臨床開発|職務経歴書で伝えたい3つのポイント|業務経験:担当の製剤と業務範囲|英語力:グローバル試験経験やTOEICのスコア|成功体験:課題に対する主体的な工夫や取り組み

それぞれについて、実際のサンプルとあわせてくわしく解説します。

ポイント1 
業務経験:担当の製剤と業務範囲

CRAの職務経歴書で最も重要なポイントは、これまでの業務経験を詳細に書き出すことです。なぜならCRAは、企業ごとに「担当する製剤の種類」と「業務範囲」が異なるから。

そのため、どのような製剤・フェーズの臨床開発経験があるのかどのような業務範囲を担当していたのかをつぶさに伝えられなければ、企業側はあなたが自社の求める経験・スキルを持っているのか判断できず、「よくわからないから不採用」という結果になってしまうのです。

業務経験を詳細に伝えるには、【職務略歴】と【職務詳細】をどう書くかがポイントになります。さっそく、それぞれの書き方を見ていきましょう。

【職務略歴】の書き方・ポイント

職務略歴】|〇〇株式会社、△△株式会社にてモニター業務を計○年○ヶ月経験しました。これまで、××製剤/第Ⅲ相試験、××剤/第Ⅲ相試験、糖尿病治療薬/第Ⅲ相試験(Global Study、e-CRF、IVRS、海外中央検査など)にて、一連業務を経験。現在担当の糖尿病治療薬プロジェクトでは、モニタリングチームリーダー業務を担当し、グループメンバー●名の取りまとめを実施しています(症例進捗管理、各種ツール作成、CRF回収進捗管理など)。

5行前後で3つの内容を簡潔にまとめる

【職務略歴】では「在籍してきた会社名」「製剤名・フェーズ」「担当業務」の3つを5行前後で簡潔にまとめましょう。

製薬業界の臨床開発|【職務略歴】に盛り込みたい3つの内容|1 在籍してきた会社名|2 製剤名・フェーズ|3 担当業務

在籍してきた会社名を記載することで、製薬メーカーであれば、個々の製剤に関する深い知識モニタリング業務以外の幅広い業務経験があること、CRO(Contract Research Organization・医薬品開発業務受託機関)であれば複数の領域やフェーズの経験から汎用性の高いモニタリングスキルを持っていることが伝わります。

また、「糖尿病治療薬」「アルツハイマー型認知症」など、どの領域の製剤の経験があるのかもしっかりと書き出しましょう。企業が自社の注力領域とマッチするかどうかの判断材料になるためです。

治験の立ち上げ経験は評価ポイントの一つ

担当業務については、Study Start Up(試験立ち上げ)の経験があれば高評価につながるので記載しておきましょう。ルーチンワークとしてモニタリングを行っていただけではなく、初回申請に伴う選定施設・医師との調整業務などの役割も経験したことが伝わります。

キャリアアドバイザー

キャリア
アドバイザー

リーダー・マネジメント経験は+αの評価につながる

CRAのマネジメント行うOperation Lead(オペレーションリード)や、臨床開発の全体進捗などを担うStudy Manager(スタディマネージャー)、Clinical Trial Manager(クリニカルトライアルマネージャー)など、リーダー・マネジメント経験がある場合は+αの評価につながるため、職務略歴でも触れておきましょう。

ここでは、どのような立場どういった業務をしていたのかを明確にするのがポイント。同じStudy Managerであっても、製薬メーカーとCROのどちらに属しているのか、関連するファンクションとの職務の棲み分けによって、担当する業務が異なるからです。

【職務略歴】では「××製剤/第Ⅱ相試験時にオペレーションリーダーとして後輩指導の経験がある」「Clinical Trial ManagerとしてPMとの連携、プロジェクトごとのCRAの進捗管理と予算管理を担当」など簡潔に記載し、具体的な業務内容は【職務詳細】で箇条書きしてください。

【職務詳細】の書き方・ポイント

【職歴詳細】|△△株式会社|事業内容 : 医薬品、医薬部外品、医療用具などの製造・販売・輸出入|従業員数 : ○○○○人 資本金 : ○○○億円|在籍期間 : 20XX年X月~現在|臨床開発部配属|業務期間/配属先|業務内容詳細|20XX年X月~20XX年X月|○○グループ|第Ⅲ相試験|担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学|症例数:○○○症例 症例獲得率:○○%|・医療機関および責任医師の選定|・SMOの選定(担当CRCの面接も含む)責任医師の同意説明文書作成補助業務|・IRBでの治験概要説明、質疑応答対応|・症例登録|・症例報告書回収|・治験資材の準備|・SDVおよびクエリ対応の実施|・終了手続、中止手続|・申請業務補助|20XX年XX月~20XX年XX月|○○グループ|第Ⅲ相試験|チームリーダー(メンバー●名)|担当施設:○○大学病院、○○クリニック、○○病院、○○大学|症例数:○○○症例 症例獲得率:○○%|・施設探索、施設選定、新規施設立ち上げ|・説明会実施|・医療機関および責任医師の選定|・SMOの選定(担当CRCの面接も含む)責任医師の同意説明文書作成補助業務|

【職務詳細】では、テンプレートに沿って、下記の情報を担当してきたプロトコールごとにまとめましょう

【職務詳細】で書き出したい4つの内容|1 担当領域(製剤)|2 担当施設名・規模|3 役職名|4 業務内容|

オンコロジー領域や希少疾患の経験は高評価に

「担当領域(製剤)」では、特にオンコロジーや希少疾患にまつわる領域の経験は評価されやすいので、ぜひともアピールしたいところ。プライマリー領域に比べて症例獲得が難しく、患者さんひとりひとりの症状の違いが大きいので、臨機応変な判断と専門的な情報提供が求められるためです。オンコロジー領域への転職でない場合も、そこでの経験は評価されます。

業務内容はすべて箇条書きする

「業務内容」は在籍していたのがメーカーかCROかによって異なるため、実施する施設や医師の探索・選定、説明会の実施など、どのような業務を担当していたのかがわかるようにすべてを箇条書きしてください。

Study ManagerやClinical Trial Managerは業務経験の幅広さが評価されるため、CRAの管理、試験の予算や進捗の管理、監査や実地調査の対応など、担当業務をすべて記載することがポイント。Clinical ScienceやClinical Leadの経験者も、業務をできるだけ細かく分解して書き出すことが重要です。

適合性調査申請の経験は必ずアピールを

モニターとして適合性調査の対応経験があれば必ず記載しましょう。CRAのなかで適合性調査を経験している人は少なく、適合性調査を任されている=社内でも一定の評価を受けているという印象になり、応募先の企業からも高く評価されます。

キャリアアドバイザー

キャリア
アドバイザー

プロトコールはレビューよりも立案・作成が高評価!

Clinical ScienceやClinical Leadの経験者であれば、プロトコールへのレビューよりも、ゼロから立案・作成した経験のほうが高く評価されます。

また、本国で固められたプロトコール骨子をローカライズするだけではなく、国内の状況に即して要件申請の方法やデータの解釈などを調整する力が求められます。

「本国の臨床開発担当者とディスカッションをしながらプロトコール作成を行った経験」や「ガイドラインを遵守しながら、本社の意向を踏まえて計画立案から承認申請までを実施した経験」といった経験は高評価につながるため、必ず記載しましょう。

ポイント2 
英語力:グローバル試験経験やTOEICのスコア

グローバル試験の経験があれば評価される

近年は、新薬の臨床試験を世界で同時に行う「国際共同治験」が増加傾向にあるため、Global study(グローバル試験)経験は企業から評価される実績の一つ。CRAとしてグローバル試験の経験や、それに伴う英語を使った業務経験があれば【職務略歴】や【職歴詳細】に記載しておきましょう。

国内のグローバル試験はフェーズⅢに近いLate試験からスタートするため、Clinical ScienceやClinical Leadに応募する場合は、Late試験寄りの経験があるとよいでしょう。加えて、CTDの承認申請や当局対応は、Late試験を担当していなければ経験できないものなので、経験がある場合は必ず職務経歴書内に盛り込んでおきましょう。

記入例

【職務略歴】

大学院卒業後、△△株式会社にてモニター業務を計○年○ヶ月、臨床企画業務を◯年経験しました。CRAとしては××製剤/第Ⅲ相試験、××剤/第Ⅲ相試験、糖尿病治療薬/第Ⅲ相試験(Global Study、e-CRF、IVRS、海外中央検査など)にて、一連業務を経験。現在は、◯◯部の臨床開発部門において××製剤/第Ⅲ相試験をプロジェクトリーダーとしてプロトコール立案、予算計画の管理、試験実施のマネジメントを行っております。

TOEICは750~800点以上であればぜひ記載を

TOEICのスコアも英語力を示すわかりやすい指標なので、取得している場合は【保有資格】に記載するか、【英語力】という項目を立ててぜひ記載を。応募職種にもよりますが750〜800点以上が一つの目安になります。

求人によっては「電話会議やメールでのコミュニケーションが可能な方」などの条件があるため、「本社チームメンバーとのディスカッション(週1回)」など、実務での具体的な使用場面や頻度を記載するとなおよし。企業側があなたのレベルを理解しやすくなります。

記入例

【英語力】

TOEIC 760点

読み書き:メール(毎日)、レポートのレビューや翻訳(週1回程度)

会話:テレカンによる本社チームメンバーとのディスカッション

キャリアアドバイザー

キャリア
アドバイザー

内資系から外資系に転職する場合、経験次第で選択肢が広がる

外資系の製薬メーカーはジョブ型雇用が顕著であり、職種ごとに担当業務やその範囲がかなり明確に分かれています

その一方で、内資系ではCRAの業務範囲が広く、担当業務がモニタリングだけに留まらないケースも多いため、CRO管理業務やプロトコル作成などの経験もある方は、Clinical ScienceやClinical Trial Managerといった他職種も転職の選択肢となり得ます。CRA以外の職種へのキャリアアップも視野に入れている場合は、求人票などから具体的な仕事内容を確認の上、そこに合致した自分の経験があれば必ず打ち出すようにしましょう。

ポイント3 
成功体験:課題解決に向けた主体的な工夫や取り組み

CRAは医療機関や治験責任医師の選定から計画手続き、モニタリング業務、報告書の作成まで、治験に関する一連の流れをスケジュールに基づき円滑に行わなければなりません。

とはいえ、実際の業務は想定どおりにスムーズにいくことばかりではないため、企業側は円滑に臨床試験を進めた経験だけではなく、成功に至るまでのプロセス、すなわち課題にぶつかった際に、解決に向けてどのような行動を取れるのかを知りたいと考えています。

これらの内容は職務経歴書の【自己PR】の項目で詳細に記載しましょう。

【保有資格】 ・普通自動車第一種運転免許 (20XX年X月取得) ・薬剤師免許 (20XX年X月取得) 【自己PR】 〈綿密なコミュニケーションに向けた行動力〉 長期試験になる場合は、医療機関起因の問題が発生しないように、綿密なコミュニケーションを取るように心がけています。目標達成に向けた終了ができるように先回りして準備を進めることを意識し、担当CRCの他試験の状況から連絡のつながりやすい時間帯を見極め、迅速な相談ができる体制を取っています。また、症例の減少などによって症例登録が非常に難しい場合には、受け入れ状況の確認と組み入れが難しい理由をヒアリングし、毎月PI・SIとWeb面会など対話の機会を設けることで組み入れを意識していただくように動いています。 〈チームマネジメント〉 シニアCRAとして取りまとめを担当した際には、7人のチームで75症例を進行しました。対応漏れや遅延を起こさず目標計画どおりの進行を実現するために、業務管理ツールを導入してチーム全体のタスクを可視化しました。また、チームワークを発揮するには、メンバー同士のコミュニケーションが重要だと考え、ランチセッションを企画し、会議では議論が活発になるように、メンバーを名指しして意見や質問を確認するようにしていました。次第に連携が取れるようになり、その結果、計画どおり納期内の提出を完了することができました。

実際のエピソードを書く際は「どのような課題に対して、どのような対応を取ったのか(+どんな結果が得られたのか)」を盛り込むのがポイントです。その内容が具体的であれば、企業側は「これまでの経験を活かして自社でも活躍してくれそうだ」と思うことができるでしょう。

こうした課題解決に向けた主体的な行動については面接でも聞かれますが、職務経歴書にも整理して記載することで、課題の背景や自分の行動をきちんと棚卸しし、言語化できる人物だという印象を与えることができます。

では、どのような取り組みをアピールすればいいのか、CRAが自己PRで取り上げたい3つのエピソードを紹介します。

製薬業界の臨床開発 【自己PR】で取り上げたいエピソード3つ |1 症例獲得率を上げるための工夫点 |2 マネジメントでの取り組み |3 グローバル試験ならではの対応

1)症例獲得率を上げるための工夫点

CRAとして最も難しく重要な業務が「症例(被験者)を獲得すること」。【職歴詳細】では触れにくい具体的なエピソードを、【自己PR】で詳細に記載しましょう。

症例獲得時に生じがちな課題は「プライマー領域」と「オンコロジー領域」のそれぞれで異なります。下記を参考に、状況にあったエピソードを記載しましょう。

製薬業界の臨床開発|担当領域(製剤)と効果的なエピソード|プライマリー領域(糖尿病など)|=症例が集まりやすい|⇒「数多くの症例をいかにトラブルなくハンドリングしたのか」がわかるエピソードを伝える|オンコロジー領域(難病など)|=症例が集まりにくい|⇒「少ない症例をいかに取りこぼさずエントリーにつなげられたのか」がわかるエピソードを伝える|

加えて、試験が計画どおりに進むかどうかは、どの医療機関のどの医師のもとで実施するのかに大きく左右されるため、施設選定時の工夫や施設の状況にあわせた具体的なアクションを記載するのが大切です。これによって、日々の業務をただこなすだけではなく、主体性をもって能動的に行動していることが伝わり、書類選考を通過しやすくなります。

2)マネジメントでの取り組み

マネジメント経験はCRAとして+αの評価につながるため、【自己PR】で具体的な取り組みをアピールしましょう。

後輩やチームにどのような課題があり、どのような行動を取ったことで、どんな結果につながったのか、具体的なエピソードをもとに伝えられると説得力のある内容になります。

〈エピソード例〉

  • 課題:受け持ちの新入社員の書類管理は煩雑で、CROと連携が取れずにトラブルになるケースが続いた
    →対応:その都度、原因解明と再発防止策の2点をしっかりと考えるように指導している
    →結果:本人のなかで対策のフレームワークが確立できたことで、書類を紛失することが減り、モチベーション高く業務に打ち込んでいる姿を見ることができた。
  • 課題:開発部門が立ち上がってから日が浅く、新人への指導方法が確立されていなかった
    →対応:ほかの社員にも相談しながら、指導方法のマニュアルの作成を進めた。この際、自身が新人時代に躓きやすかった事例をポイントとして挿入した
    →結果:翌年4月に無事新人2名を迎え入れることができ、チームで育成する雰囲気の醸成にもつながった。

3)グローバル試験ならではの対応

そもそもグローバル試験の経験自体がCRAの転職で有利になりますが、せっかくなら【自己PR】でもアピールしたいところ。

グローバル試験の決定権は基本的には本国にあるため、プロトコールに国内では見ない事例や疑問点が存在するなど、通常の治験では想定されない課題やトラブルが発生することも少なくありません。そのため、具体的なエピソードをもとに課題への対処方法を伝えられれば、「自社でも主体的に業務を遂行してくれそうだ」「臨機応変に対応する力がありそうだ」と印象づけることができます。

〈エピソード例〉

  • 課題:プロトコールに国内では見ない事例や疑問点が存在する
    →対応:事前にクライアント(本国の製薬会社)に確認し、想定Q&Aを作成して、医師や医療機関からの質問に備えた
  • 課題:治験資材の納品遅れにより、クライアントに提示されたスケジュールどおりに進行できない事例が続いた
    →対応:「被験者の来院日」に余裕を持った計画を立て、納品が間に合わなかった場合に備えて緊急対応用の資材を準備した
  • 課題:手順書などにわからない英語の単語や言い回しがある
    →対応:その都度調べるだけでなく、プロジェクト内で展開できるドキュメントにまとめ、報告書作成の効率化に貢献した

コラム:イシュー・リスクへの対応を書けると評価アップ!

現在Clinical ScienceやClinical Leadとして働く人や、それらへのキャリアアップを目指している人であれば、臨床試験の品質やその管理への高い意識もアピールしたい能力の一つ。【自己PR】で取り上げるか、【最も対応に苦慮したIssueおよびその対応策】といった項目を別途設けて、臨床開発のプロセス(実施手順)への具体的な行動を記載しましょう。

題材は「Issue Management(イシューマネジメント・顕在的な課題への対応)」か「Risk Management(リスクマネジメント・潜在的な課題への対応)」を取り上げるのがおすすめです。

前者のIssue Managementを取り上げる際には、下記の一連の流れに沿って具体的なエピソードを記載しましょう。この内容から「課題解決力の高さ」をアピールできます。

「Issue Management」のエピソードの流れ 発生したIssueの内容 ↓ 発生したIssueの根本原因 ↓ 発生したIssueに対する是正措置・再発防止策

後者のRisk Managementについて記載する場合は、下記の流れに沿ってまとめてください。なかでも「想定されるRiskに対する予防措置」では、医療機関やCRCなどを巻き込んだエピソードを取り上げるとベスト。先回り力があるといった印象にも繋がります。

「Risk Management」のエピソードの流れ 想定されるRiskの内容 ↓ 想定されるRiskに対するプロセス改善案 ↓ 想定されるRiskに対する予防措置

この記事の担当者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。

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