臨床開発(CRA・CS・CL) 職務経歴書の作成における3つのポイント
この記事では「CRA(Clinical Research Associate・臨床開発モニター)」向けに、製薬業界の臨床開発が職務経歴書でアピールすべき3つのポイントを紹介します。
プロトコールの立案・実施を手掛ける「Clinical Science(クリニカルサイエンス)」や総合的なプロジェクトマネジメントを行う「Clinical Lead(クリニカルリード)」として働く人、また、それらの職種にCRAからキャリアアップを考えている人に向けたキャリアアドバイザーからのコメントも掲載しています。
製薬業界の臨床開発(CRA・CS・CL)職務経歴書テンプレート
職務経歴書で伝えたい3つのポイント
製薬業界の臨床開発が、職務経歴書で意識して伝えたいポイントは以下の3つです。
それぞれについて、実際のサンプルとあわせてくわしく解説します。
ポイント1
業務経験:担当の製剤と業務範囲
CRAの職務経歴書で最も重要なポイントは、これまでの業務経験を詳細に書き出すことです。なぜならCRAは、企業ごとに「担当する製剤の種類」と「業務範囲」が異なるから。
そのため、どのような製剤・フェーズの臨床開発経験があるのか、どのような業務範囲を担当していたのかをつぶさに伝えられなければ、企業側はあなたが自社の求める経験・スキルを持っているのか判断できず、「よくわからないから不採用」という結果になってしまうのです。
業務経験を詳細に伝えるには、【職務略歴】と【職務詳細】をどう書くかがポイントになります。さっそく、それぞれの書き方を見ていきましょう。
【職務略歴】の書き方・ポイント
5行前後で3つの内容を簡潔にまとめる
【職務略歴】では「在籍してきた会社名」「製剤名・フェーズ」「担当業務」の3つを5行前後で簡潔にまとめましょう。
在籍してきた会社名を記載することで、製薬メーカーであれば、個々の製剤に関する深い知識とモニタリング業務以外の幅広い業務経験があること、CRO(Contract Research Organization・医薬品開発業務受託機関)であれば複数の領域やフェーズの経験から汎用性の高いモニタリングスキルを持っていることが伝わります。
また、「糖尿病治療薬」「アルツハイマー型認知症」など、どの領域の製剤の経験があるのかもしっかりと書き出しましょう。企業が自社の注力領域とマッチするかどうかの判断材料になるためです。
治験の立ち上げ経験は評価ポイントの一つ
担当業務については、Study Start Up(試験立ち上げ)の経験があれば高評価につながるので記載しておきましょう。ルーチンワークとしてモニタリングを行っていただけではなく、初回申請に伴う選定施設・医師との調整業務などの役割も経験したことが伝わります。
キャリア
アドバイザー
リーダー・マネジメント経験は+αの評価につながる
CRAのマネジメント行うOperation Lead(オペレーションリード)や、臨床開発の全体進捗などを担うStudy Manager(スタディマネージャー)、Clinical Trial Manager(クリニカルトライアルマネージャー)など、リーダー・マネジメント経験がある場合は+αの評価につながるため、職務略歴でも触れておきましょう。
ここでは、どのような立場でどういった業務をしていたのかを明確にするのがポイント。同じStudy Managerであっても、製薬メーカーとCROのどちらに属しているのか、関連するファンクションとの職務の棲み分けによって、担当する業務が異なるからです。
【職務略歴】では「××製剤/第Ⅱ相試験時にオペレーションリーダーとして後輩指導の経験がある」「Clinical Trial ManagerとしてPMとの連携、プロジェクトごとのCRAの進捗管理と予算管理を担当」など簡潔に記載し、具体的な業務内容は【職務詳細】で箇条書きしてください。
【職務詳細】の書き方・ポイント
【職務詳細】では、テンプレートに沿って、下記の情報を担当してきたプロトコールごとにまとめましょう。
オンコロジー領域や希少疾患の経験は高評価に
「担当領域(製剤)」では、特にオンコロジーや希少疾患にまつわる領域の経験は評価されやすいので、ぜひともアピールしたいところ。プライマリー領域に比べて症例獲得が難しく、患者さんひとりひとりの症状の違いが大きいので、臨機応変な判断と専門的な情報提供が求められるためです。オンコロジー領域への転職でない場合も、そこでの経験は評価されます。
業務内容はすべて箇条書きする
「業務内容」は在籍していたのがメーカーかCROかによって異なるため、実施する施設や医師の探索・選定、説明会の実施など、どのような業務を担当していたのかがわかるようにすべてを箇条書きしてください。
Study ManagerやClinical Trial Managerは業務経験の幅広さが評価されるため、CRAの管理、試験の予算や進捗の管理、監査や実地調査の対応など、担当業務をすべて記載することがポイント。Clinical ScienceやClinical Leadの経験者も、業務をできるだけ細かく分解して書き出すことが重要です。
適合性調査申請の経験は必ずアピールを
モニターとして適合性調査の対応経験があれば必ず記載しましょう。CRAのなかで適合性調査を経験している人は少なく、適合性調査を任されている=社内でも一定の評価を受けているという印象になり、応募先の企業からも高く評価されます。
キャリア
アドバイザー
プロトコールはレビューよりも立案・作成が高評価!
Clinical ScienceやClinical Leadの経験者であれば、プロトコールへのレビューよりも、ゼロから立案・作成した経験のほうが高く評価されます。
また、本国で固められたプロトコール骨子をローカライズするだけではなく、国内の状況に即して要件申請の方法やデータの解釈などを調整する力が求められます。
「本国の臨床開発担当者とディスカッションをしながらプロトコール作成を行った経験」や「ガイドラインを遵守しながら、本社の意向を踏まえて計画立案から承認申請までを実施した経験」といった経験は高評価につながるため、必ず記載しましょう。
ポイント2
英語力:グローバル試験経験やTOEICのスコア
グローバル試験の経験があれば評価される
近年は、新薬の臨床試験を世界で同時に行う「国際共同治験」が増加傾向にあるため、Global study(グローバル試験)経験は企業から評価される実績の一つ。CRAとしてグローバル試験の経験や、それに伴う英語を使った業務経験があれば【職務略歴】や【職歴詳細】に記載しておきましょう。
国内のグローバル試験はフェーズⅢに近いLate試験からスタートするため、Clinical ScienceやClinical Leadに応募する場合は、Late試験寄りの経験があるとよいでしょう。加えて、CTDの承認申請や当局対応は、Late試験を担当していなければ経験できないものなので、経験がある場合は必ず職務経歴書内に盛り込んでおきましょう。
記入例
【職務略歴】
大学院卒業後、△△株式会社にてモニター業務を計○年○ヶ月、臨床企画業務を◯年経験しました。CRAとしては××製剤/第Ⅲ相試験、××剤/第Ⅲ相試験、糖尿病治療薬/第Ⅲ相試験(Global Study、e-CRF、IVRS、海外中央検査など)にて、一連業務を経験。現在は、◯◯部の臨床開発部門において××製剤/第Ⅲ相試験をプロジェクトリーダーとしてプロトコール立案、予算計画の管理、試験実施のマネジメントを行っております。
TOEICは750~800点以上であればぜひ記載を
TOEICのスコアも英語力を示すわかりやすい指標なので、取得している場合は【保有資格】に記載するか、【英語力】という項目を立ててぜひ記載を。応募職種にもよりますが750〜800点以上が一つの目安になります。
求人によっては「電話会議やメールでのコミュニケーションが可能な方」などの条件があるため、「本社チームメンバーとのディスカッション(週1回)」など、実務での具体的な使用場面や頻度を記載するとなおよし。企業側があなたのレベルを理解しやすくなります。
記入例
【英語力】
TOEIC 760点
読み書き:メール(毎日)、レポートのレビューや翻訳(週1回程度)
会話:テレカンによる本社チームメンバーとのディスカッション
キャリア
アドバイザー
内資系から外資系に転職する場合、経験次第で選択肢が広がる
外資系の製薬メーカーはジョブ型雇用が顕著であり、職種ごとに担当業務やその範囲がかなり明確に分かれています。
その一方で、内資系ではCRAの業務範囲が広く、担当業務がモニタリングだけに留まらないケースも多いため、CRO管理業務やプロトコル作成などの経験もある方は、Clinical ScienceやClinical Trial Managerといった他職種も転職の選択肢となり得ます。CRA以外の職種へのキャリアアップも視野に入れている場合は、求人票などから具体的な仕事内容を確認の上、そこに合致した自分の経験があれば必ず打ち出すようにしましょう。
ポイント3
成功体験:課題解決に向けた主体的な工夫や取り組み
CRAは医療機関や治験責任医師の選定から計画手続き、モニタリング業務、報告書の作成まで、治験に関する一連の流れをスケジュールに基づき円滑に行わなければなりません。
とはいえ、実際の業務は想定どおりにスムーズにいくことばかりではないため、企業側は円滑に臨床試験を進めた経験だけではなく、成功に至るまでのプロセス、すなわち課題にぶつかった際に、解決に向けてどのような行動を取れるのかを知りたいと考えています。
これらの内容は職務経歴書の【自己PR】の項目で詳細に記載しましょう。
実際のエピソードを書く際は「どのような課題に対して、どのような対応を取ったのか(+どんな結果が得られたのか)」を盛り込むのがポイントです。その内容が具体的であれば、企業側は「これまでの経験を活かして自社でも活躍してくれそうだ」と思うことができるでしょう。
こうした課題解決に向けた主体的な行動については面接でも聞かれますが、職務経歴書にも整理して記載することで、課題の背景や自分の行動をきちんと棚卸しし、言語化できる人物だという印象を与えることができます。
では、どのような取り組みをアピールすればいいのか、CRAが自己PRで取り上げたい3つのエピソードを紹介します。
1)症例獲得率を上げるための工夫点
CRAとして最も難しく重要な業務が「症例(被験者)を獲得すること」。【職歴詳細】では触れにくい具体的なエピソードを、【自己PR】で詳細に記載しましょう。
症例獲得時に生じがちな課題は「プライマー領域」と「オンコロジー領域」のそれぞれで異なります。下記を参考に、状況にあったエピソードを記載しましょう。
加えて、試験が計画どおりに進むかどうかは、どの医療機関のどの医師のもとで実施するのかに大きく左右されるため、施設選定時の工夫や施設の状況にあわせた具体的なアクションを記載するのが大切です。これによって、日々の業務をただこなすだけではなく、主体性をもって能動的に行動していることが伝わり、書類選考を通過しやすくなります。
2)マネジメントでの取り組み
マネジメント経験はCRAとして+αの評価につながるため、【自己PR】で具体的な取り組みをアピールしましょう。
後輩やチームにどのような課題があり、どのような行動を取ったことで、どんな結果につながったのか、具体的なエピソードをもとに伝えられると説得力のある内容になります。
〈エピソード例〉
- 課題:受け持ちの新入社員の書類管理は煩雑で、CROと連携が取れずにトラブルになるケースが続いた
→対応:その都度、原因解明と再発防止策の2点をしっかりと考えるように指導している
→結果:本人のなかで対策のフレームワークが確立できたことで、書類を紛失することが減り、モチベーション高く業務に打ち込んでいる姿を見ることができた。 - 課題:開発部門が立ち上がってから日が浅く、新人への指導方法が確立されていなかった
→対応:ほかの社員にも相談しながら、指導方法のマニュアルの作成を進めた。この際、自身が新人時代に躓きやすかった事例をポイントとして挿入した
→結果:翌年4月に無事新人2名を迎え入れることができ、チームで育成する雰囲気の醸成にもつながった。
3)グローバル試験ならではの対応
そもそもグローバル試験の経験自体がCRAの転職で有利になりますが、せっかくなら【自己PR】でもアピールしたいところ。
グローバル試験の決定権は基本的には本国にあるため、プロトコールに国内では見ない事例や疑問点が存在するなど、通常の治験では想定されない課題やトラブルが発生することも少なくありません。そのため、具体的なエピソードをもとに課題への対処方法を伝えられれば、「自社でも主体的に業務を遂行してくれそうだ」「臨機応変に対応する力がありそうだ」と印象づけることができます。
〈エピソード例〉
- 課題:プロトコールに国内では見ない事例や疑問点が存在する
→対応:事前にクライアント(本国の製薬会社)に確認し、想定Q&Aを作成して、医師や医療機関からの質問に備えた - 課題:治験資材の納品遅れにより、クライアントに提示されたスケジュールどおりに進行できない事例が続いた
→対応:「被験者の来院日」に余裕を持った計画を立て、納品が間に合わなかった場合に備えて緊急対応用の資材を準備した - 課題:手順書などにわからない英語の単語や言い回しがある
→対応:その都度調べるだけでなく、プロジェクト内で展開できるドキュメントにまとめ、報告書作成の効率化に貢献した
コラム:イシュー・リスクへの対応を書けると評価アップ!
現在Clinical ScienceやClinical Leadとして働く人や、それらへのキャリアアップを目指している人であれば、臨床試験の品質やその管理への高い意識もアピールしたい能力の一つ。【自己PR】で取り上げるか、【最も対応に苦慮したIssueおよびその対応策】といった項目を別途設けて、臨床開発のプロセス(実施手順)への具体的な行動を記載しましょう。
題材は「Issue Management(イシューマネジメント・顕在的な課題への対応)」か「Risk Management(リスクマネジメント・潜在的な課題への対応)」を取り上げるのがおすすめです。
前者のIssue Managementを取り上げる際には、下記の一連の流れに沿って具体的なエピソードを記載しましょう。この内容から「課題解決力の高さ」をアピールできます。
後者のRisk Managementについて記載する場合は、下記の流れに沿ってまとめてください。なかでも「想定されるRiskに対する予防措置」では、医療機関やCRCなどを巻き込んだエピソードを取り上げるとベスト。先回り力があるといった印象にも繋がります。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。