設計(建築・建設)向け 職務経歴書の書き方・ポイント
建設業界で働く設計職の職務経歴書の書き方や、書く上でのポイント・注意点を解説します。建設業界の最新動向や採用事情に精通したキャリアアドバイザーからのコメントも掲載中。
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設計職の職務経歴書テンプレート
設計の職務経歴書は「発注者か請負か」で書き方が違う
設計職が職務経歴書を作成する前にまず知っておきたいのが、「発注者」側と「請負」側のどちらに応募するかで「何をどれだけ、どのように書くか」を変える必要があるという点。
ゼネコンや設計事務所などの「請負」側であれば、どんな企業に転職しようと「施主のニーズを満たす設計を考える」というメインの仕事内容は大きく変わりません。
そのため「請負」側に応募する場合、職務経歴書には最低限「これまでどんな建物を設計してきたか」というくわしい職務経歴(設計歴)と、「一級建築士」などの必須資格さえ書けていればOK。
それらの内容から「応募先で扱う物件や業務内容との親和性がある」と判断されれば、書類選考を通過できるケースが多いでしょう。
一方の「発注者側」は…?
一方、デベロッパーやメーカーなどの「発注者」側の場合、書類選考の難易度はグンと上がります。
「請負」側と異なり、「発注者」側の業務は企画や業者選定、マネジメントや監理などがメインになるため、「立場や業務内容が変わっても活躍できる人材かどうか」、ポテンシャルを厳しくチェックされているからです。
そのため職務経歴書では、ただ職務経歴(設計歴)をくわしく記載するだけでは合格ラインには届きません。「職務要約」欄や「自己PR」欄などもフル活用し、「どんな立場で誰と連携し、何を考えどう行動したのか」といった、業務における工夫・取り組みの詳細やその成果までしっかりアピールする必要があります。
そうしないと人柄や思考パターンなどの人物像が伝わらず、採用担当者が自社との親和性を判断できない上に、「相手にわかりやすく伝える能力がない」「熱意が感じられない」といったマイナス印象を与え、書類選考段階で不採用になってしまうのが実情です。
では一体何をどう書けばいいのか、具体的な書き方・ポイントについて、「請負」側と「発注者」側の書き分けも含め、項目ごとに解説していきます。
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「発注者」側の採用基準の高さも影響している
「発注者」側で職務経歴書が厳しくチェックされる原因として、採用倍率の影響も大きいでしょう。
スーパーゼネコンなどでは多くて年間数十人単位の採用をするのに対し、デベロッパーはたった1~2人ほどに留まります。
さらに、その限られた採用枠に多くの転職希望者が殺到し、採用倍率が跳ね上がるため、合格ラインの水準も自然と高まるのです。
1)職務要約
重要度:★★・・・
関わった案件や役割・業務内容を5行前後でまとめる
設計職で「請負」側に応募する場合、採用担当者は後述の「職務経歴」欄を最も注視しているため、「職務要約」欄の重要度はそこまで高くありません。
時間に余裕がないときは最悪、項目ごと削除してしまっても大きな問題はないでしょう。
ただし「発注者」側に応募する場合、「職務要約」欄は加点につながる大切な項目。手を抜かず記載することで「自身の経歴をわかりやすく伝える能力」をアピールできるからです。
記載する場合、これまで関わった建築物・工作物の概要やそこでの役割・担当業務などについて、5行前後で端的にまとめましょう。
2)活かせる経験・知識・技術
重要度:★★・・・
「活かせる経験・知識・技術」欄も「職務要約」欄と同様、「請負」側に応募する場合はあまり重要視されません。
ただ、やはり「発注者」側に応募する場合は、記載した方がより強みや人物像、入社意欲などが伝わりやすくなるため、書いておくことをおすすめします。
記載する場合、例えば「塩害地域など、素材の考慮が必要な建築物の設計経験」「プロジェクトを推進するなかでの各ステークホルダーとの協調性」など、自身の経験・スキルのうち強みとなるものや、応募先の企業でも活かせそうなものをいくつかピックアップし、箇条書きにしましょう。
CADやBIMについて記載する場合は「3D CAD(AutoCAD)」「BIM(Revit)」など、具体的なソフト名も記載します。
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「職務経歴」欄より前に持ってくるのが◎
職務経歴書のレイアウトに厳密なルールはないため、「活かせる経験・知識・技術」欄を記載する場合、後述の「職務経歴(設計歴)」欄よりも前に置くのがおすすめです。
書類選考は、部門担当者が設計業務の合間を縫って対応するケースが一般的。そのため、いきなり具体的な職務経歴(設計歴)を読み込むより、先に経験・スキルの概要や要点がわかった方が理解しやすく、自社との親和性も判断しやすいからです。
3)職務経歴(設計歴)
重要度:★★★★★
業務内容や建物の規模をくわしく記載する
「職務経歴(設計歴)」欄は、設計職の職務経歴書において最も重要な項目であり、ここをいかにくわしく・具体的に書けるかで合否が決まると言っても、過言ではありません。
採用担当者は「職務経歴」欄から、応募者が設計に関わってきた物件やそこでの役割などをくまなくチェックすることで、その内容やレベル感が自社で求めるものとフィットするかを精査しているからです。
採用担当者がイメージしやすいよう、担当物件ごとに下記の項目を記入しましょう。
- 業務内容(※特にくわしく!)
- 工事規模・構造
(発注者、用途、延床面積、構造形式、階数など) - チームの規模/役割
- 実績・取り組み
とくに「業務内容」は細かく記載するのがポイント。経験・スキルの内容やレベル感が伝わりやすくなり、書類選考通過に近づきます。
具体例には、意匠設計・構造設計・設備設計はもちろん、そのなかでも基本計画・基本設計~実装設計、確認申請や工事監理のうち、どこからどこまで担当していたのかや、施主や協力会社との打ち合わせなど、設計以外の業務も漏らさず書き出しましょう。
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「発注者」側への応募なら「実績・取り組み」もぬかりなく
「発注者」側に応募する場合、「職務経歴」欄のなかで「実績・取り組み」もしっかり記入する必要があります。
採用担当者はこの欄から、応募者の仕事の進め方やスタンス、課題解決能力などをチェックしているからです。
例えば「施主と設計段階から密な連携を行い、各要望に応える設備設計を提案し採用された」「通常とは異なる設計のため、リスク分析を行い社内で評価された」など、顧客の要望や課題に対し、どんな工夫をしてどんな結果を得られたのかについて、具体的に記載しましょう。
非住宅か住宅かで、書き方が異なる
「職務経歴(設計歴)」欄の書き方は、これまで非住宅・住宅のどちらに携わってきたかによって異なります。
非住宅(オフィスビル・商業施設など)
オフィスビルや商業施設など、非住宅の物件を手掛けてきた場合は、おおよそ30代まではすべての担当物件を物件ごとに区切って書くのが基本です。
40代以降で物件数が10件以上などと多くなったり、昔の記録が残っていない場合などは、適宜省略しても問題ありません。
住宅(戸建て・木造保育施設など)
ハウスメーカーなどで戸建てや低層の木造建築の設計をメインに行なっている場合、担当物件数が多く、かつプライバシーの問題で詳細を書くのが難しいことも。
その場合は担当物件ごとに区切って詳細を記載するのではなく、下記のように一つの会社での担当物件を総括して書くのが一般的です。
〈記入例〉
株式会社◯◯設計
- 工法:木造軸組工法が中心。一部枠組み工法(ツーバイフォー)も経験あり
- 案件:分譲(8.5割)/集合住宅(1割)/注文住宅(1割)
4)保有資格
重要度:★★★・・
設計・建築関係の資格ならすべて記載する
基本的に資格の内容は履歴書でも確認できるため、職務経歴書にも同じものを書いておけば問題ありません。
ただ、履歴書はスペースが限られるため、書ききれないものがあれば職務経歴書に追加で書いておくのがおすすめ。
設計職の場合、必須となる建築士の資格以外にも、CASBEE建築評価員や認定コンストラクション・マネジャーなど、設計・建築関連の資格であればどんなものでも評価につながります。あるだけ書いておきましょう。
5)自己PR
重要度:★★・・・
「発注者」側に応募する場合は2つ以上記載する
「自己PR」欄も「請負」側に応募する場合はあくまで「あれば加点」の要素であり、時間がない場合は記載しなくても大きな問題はないでしょう。
一方「発注者」側の採用担当者は先に述べたとおり、応募者の人物像やポテンシャルを把握しようと、「自己PR」欄も判断材料の一つにしています。
書かないことで最悪の場合「人物像を判断しきれない」「やる気が感じられない」として不採用になるリスクもあるため、面倒でも書いておいた方が無難です。
数やボリュームとしても、1つだけではなく2つ以上、それぞれ最低5行は書くのがおすすめです。
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「請負」側でも書いておくと面接対策になる
「請負」側に応募する場合は自己PRは必須ではありませんが、書いておくことでのちのちの面接対策につながるというメリットがあります。
というのも、面接では多くの場合「ご自身のどんな経験・スキルが、当社に活かせると思いますか?」といった、自己PRに関連する質問をされるからです。
職務経歴書の自己PRを通して、あらかじめ自身の経験・スキルを言語化しておけば、面接で聞かれた際に回答に困らずに済むでしょう。
折衝経験や受賞歴、課題解決能力をアピールすると◎
設計職の自己PRでは、下記のような経験・スキルをアピールすると高評価につながります。
〈設計職の自己PRでアピールになる経験・スキルの例〉
- 施主や協力会社・現場スタッフなどとの折衝経験(調整力)
- 課題・トラブルに対する対応力(課題解決能力)
- デザイン賞などの表彰歴
折衝経験(調整力)
とくに「発注者」側に応募する場合、社内外の多くのステークホルダーと関わることになるため、マネジメントをする立場としてうまく取りまとめができるかどうか、折衝経験や調整力が問われています。
これまでの経験を振り返り、例えば「より機能的で合理性のある計画立てのため、構造/設備設計担当者と密な連携を行った」など、「誰と関わるなかで、何を意識してどんなことをしたのか」について触れましょう。
対応力(課題解決能力)
建設業界では昨今、エネルギー効率や環境・景観への配慮など、設計職に求められることが増えており、よりよい設計に向けて顧客の要望や課題を汲み、それに応えるために自らPDCAを回せる対応力(課題解決能力)が強く求められるようになっています。
よって自己PRでは例えば下記のように、顧客の課題や要望に対して工夫したエピソードなどを記載できるとよいでしょう。
〈設計職の自己PRの例〉
- (課題・要望)オフィス街で交通量も多く、殺伐とした雰囲気かつ、商業施設が少なく飲食するのに不便。
→(工夫)ビジネスマンの憩いの場となるよう、人工芝の広場やカフェを併設した - (課題・要望)北向き物件で日当たりが悪い
→(工夫)LDKは光が入りやすい2階にし、大開口の窓や白壁によって光量・明るさを確保した
表彰歴
デザイン賞や社内表彰などの受賞歴があれば、設計職としてのスキルのアピールにつながります。
表彰の事実だけではなく「顧客のどんな要望に対し、何を意識した設計を行ったのか」についても記載しましょう。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。