無理なく楽しく暮らせる? 年収300万ってどんな生活?家計簿覗き見

「ぜいたくな生活」とはなかなか縁遠いイメージの年収300万。

とはいえ、現在の日本では民間企業に勤める人の約35%近くが、この300万という枠のなかで生活しています。

「年収300万円」の人は現在どのくらいいるのか、どんな工夫をして暮らしているのか、そして結婚や住宅購入は可能なのか……。ここでは、そのような疑問にお答えします。

「年収300万円」の人って、どのくらいいるの?

民間企業に勤める人の約35%が年収300万円以下

国税庁が実施した給与に関する調査(※)の結果によれば、年収300万円以下の人の割合は、34.6%です。

ちなみに、ここでいう「年収」は、「給料」「手当」「賞与」を合算した「額面」のことであり、税金や社会保険等を支払うと、手取り額は240万円前後になります。

※参照:国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」(公表日:2023年9月27日 参照日:2024年4月5日)民間企業に勤務する、1年を通じて勤務した給与所得者5,078万人が対象。

▼年収別の労働人口割合:全体(男女合算)

【男女合算/年収別の労働人口の割合】<年収/割合(%)>100万円以下/7.8|200/万円以下/12.7|300/万円以下/14.1| 400/万円以下/16.5|500/万円以下/15.3|600/万円以下/10.9|700/万円以下/6.9

グラフからわかるように、年収が「200万円超~300万円以下」という人の割合は、14.1%です。
また、「300万円以下」「200万円以下」「100万円以下」を合計すると、34.6%になります。

つまり、給与所得者(非正規雇用を含む)の約35%が、年収300万円以下です。
これは実数にすると約1,760万人。もはや少数派ではないのです。

ただし、男女別にすると、その割合が大きく異なるので、それぞれ確認してみましょう。

▼年収別の労働人口割合:男女別

男性
【男性/年収別の労働人口の割合】<年収/割合(%)>100万円以下/3.4|200/万円以下/6.2|300/万円以下/9.8|400/万円以下/15.5|500/万円以下/17.7|600/万円以下/14.2700/万円以下/9.5700万円以上/23.9

女性
【女性/年収別の労働人口の割合】<年収/割合(%)>100万円以下/14|200/万円以下/21.5|300/万円以下/20|400/万円以下/17.9|500/万円以下/12.1|600/万円以下/6.4|700/万円以下/3.4|700万円以上/4.8男女別で見たときに、差が大きいのは100万円以下と200万円以下を合わせた割合です。300万円以上400万円以下の割合には男女間でそこまでの差はありませんが、200万円以下所の割合の合計を見ると男性が10.2%であるのに対し、女性は36.8%という結果に。

これは、非正規雇用で働く人の割合が男性よりも女性の方が多いということが一因として挙げられます。

年収300万円の人の家計簿を覗いてみた

年収300万でも無理なく暮らしている人は多い

年収300万だと生活はなかなか厳しい…と思っている人も多いかもしれませんが、少しの工夫や節約に目を向けることで、無理なく暮らすことは可能です。

ここでは、「単身者」「夫婦2人」「夫婦+子ども1人」「ひとり親+子ども2人」というケースに分けて、実際の暮らしぶりを家計簿から見ていきましょう。暮らすうえでの何かしらのヒントが見えるかもしれません。

なお、下で紹介している家計簿の「手取り月収」は、年収300万円(額面)から、所得税、社会保険料、住民税等を引き、12カ月で割った金額とします。

【単身者の家計簿】少しの節約を心がければ、無理なく遊べて貯金も可能

単身者の場合、「年収300万円」はそれほど厳しい生活とは言えません。
少しだけ節約をすれば、遊びの費用を削る必要もありません。将来を見越して貯金もできそうです。

▼単身者Aさん 年収300万円(手取り240万円)の場合

【夫婦2人の家計簿】 自炊や弁当を増やし、共働きをする

夫婦だけで子どもがいない世帯のケースです。

妻がフルタイムで働けるのであれば、世帯の年収はぐんと上がります。フルタイムが無理であれば、パートでもOK。それだけで無理なく暮らせるはずです。

▼Bさん夫婦 世帯年収約358万円(手取り約286万円)の場合

<項目/金額(円)/収入/支出/備考>手取り月収(夫)/208,000/-|手取り月収(妻)/31,500/-|児童手当/-/75,000|家賃/-/25,000|食費/-/5,000|外食費/-/10,000|水道光熱費/-/10,000|通信費/-/5,000|日用品/-/12,000|被覆・理容費/-/5,000|医療費/-/20,000|保険料/-/20,000|貯金/-/20,000|趣味・娯楽/-/5,000|家具・架電/-/3,000|夫の小遣い/-/15,000|妻の小遣い/-/5,000|子どもの小遣い/-/500|教育費/-/10,000|車の維持費等/-/20,000|交通費/-/5,000|その他/-/10,000|合計/268,000/260,500

【夫婦+子ども1人の家計簿】保険や通信費などを見直す

小学2年生の子どもがひとりいるケースです。

子どもの教育費などが必要ですが、保険や通信費などを見直せば、貯金や学資保険加入も可能です。

▼Cさん夫婦 世帯年収387万円(手取り約310万円)の場合

<項目/金額(円)/収入/支出/備考>手取り月収/(夫)/208,000/配偶者控除あり。|手取り月収/(妻)/52,500/時給1,050円のパートタイムで、月間50/時間労働。|児童手当/10,000/小学生で第一子。|家賃/75,000/郊外で築年数の長い、安めの物件。|食費/25,000/基本的にお弁当をつくる。|外食費/5,000/月に一度、家族でファミリーレストラン/等へ。|水道光熱費/10,000/節電等で工夫。|通信費/10,000/格安携帯電話を利用。|日用品/5,000/被服・理容費/12,000/ファストファッション、格安理容院等を利用。|医療費/5,000|保険料/20,000/生命保険、学資保険に加入。|貯金/20,000||趣味・娯楽/5,000|家具・家電/3,000/めったに買わないが、月平均で|夫の小遣い/15,000/お弁当のない日のランチ代、飲み代含む。|妻の小遣い/5,000|子どもの小遣い500/小学2年生なので500円。|教育費/10,000/給食費、/スイミングスクールの月謝など。|車の維持費等/20,000/交通費/5,000|その他/10,000|予備費として/合計/270,500/260,500

【ひとり親+子ども2人の家計簿】手当や控除などの支援制度を利用する

母親と、小学4年生と小学2年生の子どもが2人いるケースです。

ひとり親家庭に対する手当や控除などがあるので、よく調べて上手に利用しましょう。

▼Dさん一家 世帯年収約340万円(手取り約270万円)の場合

<項目/金額(円)/収入/支出/備考>/手取り月収/(夫)/208,000/配偶者控除あり。/手取り月収/(妻)/31,500/時給1,050円のパートタイムで、月間30/時間労働。/家賃/85,000/食費/外食費/水道光熱費/通信費/25,000/基本的にお弁当もつくる。/5,000/10,000/節電等で工夫。/10,000/格安携帯電話を利用。/3,000/日用品/被服・理容費/12,000/ファストファッション、/格安理容院等/を利用。医療費/保険料/貯金/趣味・娯楽2,000/10,000/生命保険に加入。20,000/5,000/3,000/めったに買わないが、/月平均で。/25,000/お弁当のない日のランチ代、飲み代含む。/家具・家電/夫の小遣い/妻の小遣い/車の維持費等/交通費/5,000/5,000/0/車は持たない。/その他/合計/10,000/予備費として。239,500/235,000

コラム: ひとり親家庭への支援制度を知っておこう

日本のひとり親家庭の相対的貧困率は、44.5%(2022年国民生活基礎調査)と、先進国の中では比較的高い数値になっています。先進諸外国に比べて手薄とはいえ、それでも、ひとり親への支援制度がいくつかあります。

しっかりと調べて、賢く利用しましょう。ちなみに、下記で頻出する「控除」とは、その金額分が課税対象額から減額される、ということです。例えば、年収300万円に対して寡婦控除27万円が適用されれば、課税対象は273万円になり(年収273万円相当の課税額となり)、手取りは増えます。

寡婦控除とひとり親控除

夫と死別や離婚をしていて、一定の条件を満たしている女性は、寡婦控除として27万円の所得控除が受けられます。

また婚姻歴の有無や男女を問わず、「生計を一にする子がいる」「合計所得金額が500万円以下」などの条件に合致していれば、ひとり親控除として35万円の所得控除が受けられます。

※寡婦控除とひとり親控除は併用できず、重複した場合はひとり親控除が適用されます。

ひとり親控除が適用されると、年収300万円の場合、年間で所得税が約17,500円、住民税が約30,000円、合計で47,500円ほど安くなります(概算)。

児童手当

ひとり親にかぎらず、所得制限を超えない場合、以下の児童手当を受け取ることができます。

▼児童手当の支給額

児童手当の支給額

年収300万円では全額支給されますが、所得額622万円(収入額目安833.3万円)以上になると扶養人数に応じて所得制限限度額が設定されます。なお、2024年10月から児童手当が拡充されます。最新の情報は下記のこども家庭庁のサイトなどでご確認ください。

※詳しくは→児童手当Q&A|こども家庭庁

児童扶養手当

ひとり親家庭の場合、所得額の条件などがありますが、児童扶養手当を受け取ることができます。児童手当と同時受給が可能です。

支給額の計算はかなり複雑なので、詳しく知りたい場合は、住民票のある市区町村に問い合わせてください。

住宅手当

ひとり親家庭の場合、自分で家賃を払っていれば、市区町村によっては住宅手当が支給されます。

支給額や支給条件は、市区町村によって異なります。

ひとり親家庭等医療費助成制度

「ひとり親家庭」などに該当すると認定された世帯の保護者や児童が、病院や診療所で診療を受けたときに、健康保険の自己負担分を市区町村が助成する制度です。

所得制限などがあり、また市区町村によって条件が異なるので、問い合わせてみましょう。

年収300万の人が手取りを増やす方法とは?

年収300万円では、無駄使いをする余裕はほとんどなく、常に節約を心がける必要があります。

しかし、節約して支出を減らすといっても限界がありますし、「24時間」「365日」いつも節約のことばかりを考えていては辛くなるばかりです。

そこでご紹介したいのが、今注目のiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用した、貯蓄しながら給与の手取りを増やす方法です。

その具体的なやり方は、下記の記事でご紹介しています。見るだけでスッと頭に入る図解なので、お金の話が苦手な方にもおすすめです。

年収300万で、結婚できるの?ローンで家は買える?

無駄づかいをしなければ、結婚しても大丈夫

年収300万円の「夫婦2人」「夫婦+子ども1人」の家計簿を、先に紹介しましたが、それらを見ていただければ、赤字もなく、貯蓄もできているのがわかるはずです。

もちろん、家賃は住む場所によってその額が異なるため、仮に「東京の人気エリアに住まざるをえない」などの制約があるなら、年収300万円での生活は難しいかもしれません。

しかし、そのような制約がなければ、そして贅沢や無駄づかいをしなければ、家族で楽しい生活が送れるはずです。

むしろリスクヘッジという意味では、一方が失業したり病気で倒れたりしたときでも、他方が働いて収入を得ることができるため、単身者よりも夫婦のほうが安心です。

子どもが産まれると、夫婦の一方は(あるいは両方が)子育てのためにできる仕事が制限されることもあります。その時期までは、できるだけ共働きをして収入を増やし、貯金をしておきましょう。

年収300万円でも住宅ローンは組めるが、頭金を貯めるのが先

貯金イメージ「年収300万円で家は買えるのだろうか?」という疑問をよく耳にしますが、購入する住宅の価格や、預貯金があるかどうかによって、答えはまったく異なります。

頭金をしっかりと貯めている人を除けば、まずは、「住宅ローンの審査に通るかどうか」という問題があります。

銀行が貸してくれる住宅ローンの目安は、「年収の6倍」と言われています。300万円の6倍であれば、1,800万円。

しかしローンの種類によっては、「前年の年収が400万円以上」という条件がついていることがあるので、まずはその確認から始めましょう。

たとえば、「2,000万円の物件」で、「頭金が500万円」くらい貯まっていて、「返済期間35年」が可能なら、それほど無理ではないかもしれません(諸経費200万円として1,700万円の借入)。

金利にもよりますが、月々の返済額は5万~7万円。

マンションの場合は、これに管理費と修繕積立金を加えた額が、今の家賃と同等か下回るようであれば、それほど無謀ではありません。

しかし、「2,000万円の物件」というのは、都市部であれば、何らかの条件(築年数や立地や広さ)を我慢しなければなりません。

そして、「頭金が500万円」というのも、「年収300万円」の人には、ややハードルが高いのではないでしょうか?

「どうしても持ち家を」というのであれば、まずは頭金を貯めることから始めましょう。

割り切って「ずっと賃貸」という選択肢もある

年収300万円で頭金がなくても、保証人を立てるなどの方法を模索すれば、住宅ローンは可能かもしれません。しかし、月々の返済額は、「年収に見合った額」ではなくなります。

また、固定資産税も必要になりますし、家の修繕などで予定外の出費が必要になることもあります。

人口減少により、これからは住宅が余ると言われています。

どうしても家を買わなければならない理由がないのであれば、無理せず、一生賃貸で暮らす、という選択肢もあるのです。

住宅ローンの返済のためにさらに辛い思いをするよりも、その分、旅行に行くなどして生活を楽しむのもいいのではないでしょうか。

まとめ

いかがですか?年収300万円以下の人の割合は労働者の約35%に達していることや、少し節約や工夫に力を入れれば無理なく暮らせることなどがおわかりいただけたかと思います。結婚や持ち家なども無謀な夢ではありません。

ただし、ぜいたくが楽しめる収入でないことは事実。各種手当の給付を受けたり、日常生活の中で節約を心がけたりなどして、少しでも余裕を生み出せるようにすると良いでしょう。

この記事の担当者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。