よくある悩みから結婚出産まで 女性のキャリアはどうあるべき?

昨今、「女性の活躍」が声高にうたわれています。

昔と比べて女性が働きやすくなった反面、育児・介護との両立が難しい、参考にできるモデルケースがないなど、キャリアに戸惑いや悩みを抱える女性も多いでしょう。

本記事では、女性に多いキャリアの悩みを分析し、解決のヒントを探りました。

女性のためのキャリアプランとは

スキルや働き方のタイプ別に、女性のキャリアプランについて取り上げます。

キャリアアップしたい方向けにはスキル・方法別の例、ワークライフバランス重視の方には働きやすい環境・勤務方法の例を紹介しています。

キャリアアップしたい女性向け

仕事に妥協せず、キャリアアップしたい女性向けのキャリアプラン例を3つ紹介します。

この場合のキャリアアップとは、昇進だけに限定されるわけではありません。自分のスキルやライフプランと合わせて、適性を発揮できるようなキャリアプランを思い描いてみましょう。

専門技術を磨きスペシャリストに

キャリアをストップする時期があっても復職したいという方や、転居が多いためどこへ行っても働けるようにしたい方には、資格や専門スキルを生かす仕事が適しています。

システムエンジニアや看護師などの職業は、女性の平均的な所得よりも収入が多い傾向にあります。簿記などの資格を持っているなら、数年かけて税理士資格の勉強をしてスキルアップすることもできます。

興味のある方は、自分に合った資格がないか調べてみましょう。

困難だがやりがいある管理職

女性の管理職の割合は14.9%(2018年)と依然として少ないものの、政府の方針もあって管理職になるチャンスが増えているのは事実です。

化粧品メーカーや保険会社など、女性社員が多い企業では必然的に女性管理職も多く、お手本となる先輩社員が身近な存在になります。

女性管理職の割合の推移を表した折れ線グラフ。係長・課長・部長クラスのいずれも平成元年から見て大幅に増加傾向にある。(平成29年度現在)

※引用:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 平成30年版」

管理職になるメリットは、手当などで給料が上がることと、マネジメントスキルを身に付けられることです。

一般社員よりも権限があるため、非効率な慣習を変えたり、女性を代表する意見を発信したりという行動は起こしやすくなります。

以下に、女性管理職が多い会社や業界のランキングを紹介します。

女性管理職比率が高い会社トップ15の表

女性管理職比率が10%を超える業種:保険業(19.39%)、サービス業(17.66%)、銀行業(15.94%)、証券・商品先物(14.74%)、小売業(13.52%)、その他金融業(11.9%)、不動産業(10.3%)、海運業(10.02%)

※参考:東洋経済オンライン「女性管理職」の登用が目立つ50社ランキング

転職でキャリアアップ

会社が女性管理職の登用に消極的であるなど、現状の仕事でキャリアアップが望めない場合、転職も視野に入れてみましょう

将来的にマネジメントができる職場、職種や専門性を生かせる仕事を検討し、可能な場合は給与交渉をしてみると良いかもしれません。

語学力が高ければ、経験した業種の外資系企業などに挑戦する可能性も開けます。

キャリアアップを目指す転職では「未経験歓迎」の求人ではなく、自分のスキルや実績が評価に直結するような、現職の上位互換と考えられる仕事にチャレンジしましょう。

ワークライフバランス重視の女性向け

キャリアアップや収入増ではなく、短時間勤務や柔軟なシフトなどプライベートとの両立を重視している方は、以下のようなキャリアプランを描きましょう。

地域限定社員・リモートワークで働きやすく

「全国転勤、勤務地の制約があるとキャリアプランを考えにくい」と感じている方は、転勤なしの地域限定社員や、リモートワーク(在宅、テレワーク)が可能な仕事を選ぶことで、キャリアが決めやすくなるかもしれません。

近年では大手企業も、地域限定社員制度やリモートワーク活用に取り組んでいます。

「転勤なしでキャリアを継続する」という視点を持って仕事を探してみてはいかがでしょうか。

産休・育休取得数が多い職種・会社への就職(転職)

企業の産休・育休取得数の高さは、ワークライフバランスの良い企業選びで1つの指標となります。

また、女性の割合が多い企業や職種では、「社員が出産・育児を経て仕事を再開する」という前例が豊富で、仕事量の調節や引き継ぎに慣れている人も多いでしょう。

一般に長時間労働が常態化している会社よりも、理解のある職場でスムーズに休職・復帰をするほうが、子育てにエネルギーを注ぎやすいと言えます。

ワークライフバランスを考えるときに重要なこと

ワークライフバランスを考えるときに重要なのは、生活・キャリアを安定させることと、長期的な視点を持つことです。

日本労働組合総連合会が行った「非正規雇用で働く女性に関する調査2017」によると、配偶者がいる女性の割合は、1社目が正規雇用の場合70.9%なのに対し、非正規雇用の場合は26.9%となっています。

子どもがいる女性の割合も同様に、正規雇用が54.1%、非正規雇用が21.6%です。

「結婚・出産をするなら正社員ではなくパートで働く」イメージは強いかもしれませんが、実際には結婚・出産を実現しやすいのは正社員といえるでしょう。

生活上のリスクヘッジの観点からも、「プライベートを優先するために仕事を辞める」より、「職は手放さずにプライベートに注力する方法を考える」ほうがおすすめです。

退職してしまうと育児休業給付金や厚生年金保険などの社会保険を活用できないため、子育ての時期に家計が苦しくなる可能性も。

結婚・出産後も見据えた、長期的なワークライフバランスを考えることが大切です。

※社会保険については→育児休業期間は最長で何年まで取れる?厚生年金保険とは?疑問をわかりやすく解説

コラム:キャリアアップしたくない? 板挟みになる女性の現実

仕事が好きで意欲の高い女性であっても、仕事と家庭生活の両立が難しく、キャリアを諦めざるを得ないこともまだまだ多いのが現実です。

日本では、育児と仕事を両立しやすい環境が整っているとはいえません。

男女格差の度合いを示すジェンダーギャップ指数(2020年)は153ヶ国中121位。

日本経済新聞の2018年5月公開の調査「6割超が我慢「仕事に影響」 働く女性セクハラ調査 」によれば、42.5%の女性がセクハラを受けたことがあり、被害を相談しても28.6%は改善されなかったなど、依然として女性の働く意欲が削がれかねない状況にあります。

家庭での過ごし方では、6歳未満の子どもを持つ妻の家事・育児の時間が1日7時間34分なのに対し、夫は1時間23分となっています。

ほかの先進国では妻5~6時間、夫2~3時間が多いのに比べ、女性の家事・育児の負担が極端に大きい状況です。

「女性活躍」のためには、家庭や仕事を取り巻く環境の改善が不可欠です。

妻・夫の家事・育児関連時間の国際比較表

※引用:内閣府「令和元年版 少子化社会対策白書

女性のキャリアの悩みや解決策は?

女性が悩まされることの多い課題と、その解決策を並べてご紹介します。

給与・評価が同じ仕事の男性より低い

同じ仕事でも女性の昇進は遅い、スタート地点の役職が同じでもキャリアの選択肢に男女差があるなど、改善されていない面もあるようです。

しかし最近は、2016年に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提示され、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月に施行されるなど、同じ仕事での賃金格差を解消する機運が高まってもいます

相談・解決の仕方

給与の差が雇用形態によるものであれば、正社員への転職や、キャリアアップがしやすい総合職などの職種を目指すことで、年収アップが期待できます。

雇用形態などの差がなく性別によって違った扱いをされてしまう場合は、評価の基準の明確化を求めるといった働きかけができるかもしれません。

労働基準法や男女雇用機会均等法により、性別による待遇上の差別は禁止されているため、ひどい場合は各都道府県の雇用均等室や雇用環境・均等部に相談してみましょう。

※全国の雇用均等室、雇用環境・均等部の所在地一覧→厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」

ロールモデルになる女性管理職がいない

日本政府は「2020年代の可能な限り早期に指導的地位の女性の割合30%」を目指していますが、前述の通り日本の管理職に占める女性の割合は14.9%で、まだまだ少ないのが現実です。

そのため、女性がいざキャリアについて考えようとしても、参考にできるようなロールモデルが少ないという課題があります。

国際的にみると、フィリピンの48.9%、アメリカの43.8%を始めとしてスウェーデンやイギリス、オーストラリアやシンガポールなど30%を超える国が多くあり、日本の水準が特に低いことがわかります。

身近な管理職の女性をキャリアのお手本にしたくても、実際には難しいという状況があるようです。

管理職に占める女性の割合

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 「データブック国際労働比較2019」

相談・解決の仕方

ロールモデル不在という課題解消のカギは、複数の社員を「良いとこ取り」で手本にすることです。

現状では「理想となる1人の管理職の女性」を探すのは難しいものの、男女関係なく数人の社員のキャリアステップを参考にすることはできるでしょう。

例えば「多くの部下を抱える上司のAさんが、介護のため長期の休職・復帰をしたときの引き継ぎや指示出しが的確だった」「パートで長年働くBさんはフルタイムではないが責任ある仕事を任されており、育休後の時短勤務を考えると参考になる」など、自分が目指すキャリアステップを部分的に参考にすることで、社会人としてのロールモデルが見えてきます。

また、昇進や出産・育児に関連する就業規則や制度を確認し、本来自分が活用できる方法を見逃していないか調べてみるのもいいでしょう。

結婚・出産とキャリアの両立が難しい

内閣府の「平成30年版少子化社会対策白書」によると、妊娠・出産を機に女性が退職した理由は「仕事を続けたかったが両立が難しく辞めた(正社員22.5%、非正社員13.5%)」が、「家事育児に専念するため自発的に(正社員30.3%、非正社員46.3%)」に次いで2番目に多い項目となっています。

特に勤務時間が合わないことが大きな原因です。

また、職場によっては、妊娠・出産を理由に退職の要求や嫌がらせがあったり、体調を考慮しない仕事量を課されたりする「マタハラ(マタニティハラスメント)」が起きることもあります。

相談・解決の仕方

不本意な退職とならないよう、産休に入る前に綿密なキャリアの相談をしてみましょう。

時短制度があっても活用の前例がないような場合、細かい運用のルールやキャリアプランを作成するなど、自ら先例となるべく積極的に活動するのも手です。

マタハラは、法律違反にもなり得るハラスメントです。妊娠中のストレスは出産に悪影響をもたらす可能性があるため、我慢せずに雇用環境・均等部(室)といった相談窓口に連絡しましょう。

最近では産休・育休中の給与を保障している株式会社メルカリのように、育児サポートに力を入れている会社もあります。出産後も積極的に働けるか、という視点で転職活動を行ってみても良いでしょう。

職場でセクハラ・パワハラがある

ハラスメントが黙認されている職場や、激務で度を超した厳しい指導がまかり通っているような環境では、自分の実力を発揮しにくくなってしまいます。

ハラスメントに遭ったら一人で抱え込まず、相談したり「NO」という意思を明確にしたりすることが大切です。

相談・解決の仕方

社内に通報窓口や相談を受け付ける部署があれば、そちらに相談してみましょう。

加害者よりも立場が上である上司への相談は、相談内容が他者へ伝わってしまう心配がない場合に行うのが無難です。

人間関係が狭く社内での相談が不安なときは、雇用環境・均等部(室)などの外部機関を頼りましょう。

相談時には、メールや録音など、ハラスメントの証拠となる記録があるとスムーズです。

いざというとき証言してもらえるよう、信頼できる同僚などに相談しておくのも有効です。

普段の振る舞いとしては、遠慮するあまり「嫌がっているとは思わなかった」と捉えられてしまわないよう、可能な範囲で「不愉快であり、やめてほしい」ことを明言するようにしましょう。

【年代別】考えておくべき女性のキャリアビジョン

女性がキャリアプランや転職を考える場合、年代別の傾向や注意点を把握しておくと、自分に合った見通しを立てやすくなるのではないでしょうか。

20代後半の転職はあり?

売り手市場といわれる現在、20代後半での転職は有利だと考えられます。

厚生労働省の「平成27年転職者実態調査」では、20代後半(25~29歳)の転職者のうち、賃金が増加した人は47.1%で、減少した人の31.5%を大きく上回っています。

しかし、この差は年代が上がるとおおむね縮まっていき、45~49歳では「減少」の割合が「増加」の割合を上回ります。

「転職したい」という気持ちがあるのなら、早めに行動を起こすことが吉といえそうです。

30代に必要なスキルと出産・子育て事情

30代は家庭や子育てとキャリアの双方について考えるべき時期です。

約40年前には女性24~25歳、男性26~27歳ほどだった平均初婚年齢は、夫婦とも初婚の場合、2015年には女性29歳、男性30.7歳に上昇しています。

「20代は仕事、30代で家庭や子育て」というライフステージの歩み方は、性別を問わず一般的なスタイルとなってきていると言えます。

※参考:厚生労働省「平成28年度人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』」

妊娠に関しては、30代後半から流産率が上がり、妊娠率は下がっていく傾向があります。

子どもがほしいと考えている人は、35歳までを一つの目安として、キャリアよりも出産・子育てを優先させる時期を検討するのが良いでしょう。

30代での転職やキャリアチェンジは、20代のようなポテンシャル採用ではなく、「即戦力」として評価されるようになります。

40代で考えたいキャリアと職場環境

40代は、華やかな実績や肩書がないと大幅なキャリアアップは難しいかもしれません。就職氷河期にあたり、就活では仕事を選ぶ余裕がなかったというケースもあります。

しかし、育児経験によるタイムマネジメントスキルを生かすなど、ブランクがあってもポジティブなアピールは可能です。

体力や家庭環境などを考慮し、長時間労働が常態化している職場は避けましょう。

まとめ

女性がキャリアを考えるには、さまざまな壁があることがわかりました。

しかし、ライフイベントやキャリアアップのタイミングは、環境が変わるまで待ってくれません。

一人で悩み過ぎず、自分にできることに取り組んで、充実したキャリアを実現しましょう。

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