判断基準と対処法 これってモラハラ?【事例あり】
今職場で受けている被害は、モラハラ(モラルハラスメント)なのかと悩んではいませんか?
この記事では、被害の状況がモラハラに該当するのかを判断するためのチェックリストや、具体的な事例、解決につながる対処法をご紹介します。
モラハラの判断基準 【チェックリストあり】
職場で自分が受けている嫌がらせは、モラハラなのでしょうか。
簡単に判断できる基準を説明します。
モラハラとは道徳(モラル)に反する精神的暴力
モラハラとは正式には「モラルハラスメント」といい、人として守るべきモラル(道徳)に反した態度や言葉によって行われる精神的暴力を指します。
あくまで精神的暴力のため、殴る・蹴るなどの肉体的暴力は当てはまりません。
例えば、陰口を言われる、小さなミスにたいしても過剰に強い口調で叱責されるなどの場合はモラハラの可能性があります。モラハラは物的証拠が残りにくく、また加害者が正しいふるまいのように見せかけようとする傾向にあるため、周囲の人に気づかれにくい一面があります。
また、モラハラは部下・同僚・上司など立場を問わず行われることも特徴です。
権力の大きさは関係なく、女性から男性へ、同僚同士の間でモラハラが起きるなど、性別や立場を問わず発生する可能性もあります。
モラハラはパワハラ・セクハラとどう違う?
モラハラ・パワハラ・セクハラ……。さまざまなハラスメントがありますが、嫌がらせの内容や手段によって区別されます。
パワハラ(パワーハラスメント)
パワハラとは、権力を悪用した嫌がらせのこと。
職場の権力や人間関係などを使い、業務の適正範囲を超えて精神的・肉体的ダメージを与える、職場環境を悪化させるなどの行為を指します。
具体例としては、叩く・蹴る・殴るなどの暴行や、周りから見える場所で不必要なほどしつこく叱る、過大な業務を無理に押し付けるなどが挙げられます。
※パワハラについて詳しくは→パワハラで退職すべき?辞めない方法は?
セクハラ(セクシャルハラスメント)
セクハラとは、性的嫌がらせのこと。
加害者の性的な言動が被害者に精神的・肉体的ダメージを与えて業務に支障をきたす、加害者からの性的な誘いを断ったために業務に悪影響が出るといったケースが挙げられます。
とはいえ、モラハラ・パワハラ・セクハラの境界線は非常に曖昧で、どのハラスメントにも該当する被害もあります。紹介した違いは、あくまで傾向として捉えてください。
こんなことはない? リアルなモラハラ事例集
モラハラのイメージをより具体的にするために、被害のケースごとに具体的な事例をご紹介します。
【ケース1】孤立させられる
無視される、陰口をいわれる、噂を流される、飲み会に一人だけ誘われないなどの行為によって、孤立させられたらモラハラです。
陰口をいわれた、噂を流された人の体験談
私の上司は女性なのですが、1年前から嫌がらせをされるようになりました。
「幼稚園児でもできる仕事がこなせないなら、評価はつけられない」「バカなのに、よくあの大学を卒業できたね」とメールでしつこくいわれます。
最近は「業務でミスをした」と噂を流されました。最近後輩がよそよそしいです。オフィスに入るたび、お腹が痛いです。
【ケース2】仕事ができないような状態になる
資料・共有事項など業務に必要な情報が届かない、能力に見合わない仕事をさせられる、退職を促されるなど、仕事ができないような状態にさせられたらモラハラといって良いでしょう。
能力に見合わない仕事をさせられた人の体験談
課長が、いくら効率的に作業をしても終わらない仕事を私1人に与えます。相談しても「お前の作業が遅いせい。ただ頑張ればいい話」といわれるだけ。
挙句の果てに、「早く終わらせてよ。早く帰ってもらわないと俺が怒られる」と繰り返し注意します。
課長の仕事も私に投げるので、本来の仕事に集中できません。
【ケース3】プライベートに介入される
休日に連絡される、持ち物や服装について不必要なほどコメントされる、恋人の話を深掘りしようとするなど、プライベートの介入があればモラハラに該当します。
恋人の話を深掘りするような質問をされた人の体験談
飲み会になるといつも恋愛話になります。僕はお付き合いしている恋人がいるのですが、同僚がしつこく恋人の話を聞いてくるんです。
「何歳?」「写真見せて」「どんなデートをするの?」と、根掘り葉掘り笑いながら質問します。僕は会社の人に恋人の話をしたくありません。不快です。
モラハラから自分を守る対処法
モラハラ被害への対処法を、4つのステップで説明します。対処法に迷っている人は、ぜひ参照してみてください。
【1】自分が悪いという思考を変える
上司や同僚、部下から嫌がらせをされるのは自分が全て悪いから、という考えを止めましょう。
モラハラの被害に遭ってしまう人には、以下のような傾向が多くみられます。
- 自分の考えを突き通すことが苦手
- 素直で謙虚
- 我慢強い
- トラブルがあると自分を責めがち
- 責任感が強く、真面目
上記のような傾向から、モラハラ被害者は自分を責めてしまう人が少なくありません。
そのため、モラハラをされているかもしれないと感じたら、自分を責めるのではなく、周囲に相談して助けを求めましょう。
【2】被害を記録する
モラハラをされたという証拠を残すために、被害の事実を記録しましょう。簡単なメモであっても、残しておくことで相談や交渉が進めやすくなります。
被害内容を記録する際は、5W1Hで書くのがポイント。できるだけ細かく書き、証拠としての価値を高めましよう。
When | 何年何月何日の何時頃に |
Where | どこで |
Who | 誰が誰に |
What | どのような言動があったのか |
Why | なぜ被害に遭う状況になったのか |
How | 被害はメールで受けたのか、直接受けたのか |
このほかに、被害に遭った際の自身の気持ちや健康状態に関してもメモしましょう。気分が悪くなった、気持ちが落ち込んだ、不眠症になった、うつ状態になったなど被害を詳しく明記することが重要です。
体の具合が悪い、精神的な不調があるといった場合は、病院へ行き、医者の診断書を取得するのがおすすめです。
もし可能であれば、実際に被害に遭っている様子を録音・動画で記録に残せるとさらに良いです。スマホの無料アプリなどをうまく活用してください。一般的に、ハラスメントの録音が違法になったり、懲戒免職の対象になることはありません。
また、メールやビジネスチャットなどで嫌がらせを受けた場合は、削除せずに保存しておくことも欠かせません。
【3】相談員に相談する
被害内容を記録した後は、法律家や労働局に相談しましょう。
相談員が記録を元に、冷静に被害の対応策を案内してくれるはずです。たとえば法テラスや各都道府県労働局などに設置された総合労働相談コーナーなどに相談できます。
【4-1】休職する
うつ状態や頭痛など精神的・肉体的にダメージを受けており、仕事を続けることで悪化する恐れがある場合は、休職するという方法もあります。
休職するためには、医師の診断書、上司や総務・人事担当者との相談が必要になることが多いようです。産業医の診察を必須とする企業もあるため、事前に休職するためのルールを把握することが大切です。
休職手続きが完了した後は、ぜひ休暇・治療に専念し、心身を回復させましょう。
【4-2】転職活動をする
会社に相談しても問題が解決しない、早急に会社を辞めたい場合は、転職活動を始めてみるのも手段のひとつです。
在職中に転職活動を行うのが望ましいですが、心身に不調をきたしているなどの場合は退職してから転職活動を始めても良いでしょう。
加害者によってはすぐに言動を変えられず、引き続きモラハラを繰り返す可能性があるので、転職する勇気も自分を守る対処法です。
※転職活動について詳しくは→転職活動の準備期間はどのくらい?進め方や必要書類は?
【4-3】訴える
モラハラによって退職する必要が出た、精神的・肉体的被害が現れたといった場合は、侮辱罪・名誉毀損罪・脅迫罪・傷害罪などに当てはまる可能性があり、訴えることも可能になるケースがあります。
また、被害内容や被害者の健康状態によっては、慰謝料を請求できることも。
ただし、罪の厳密な定義や慰謝料の相場は個々のケースで異なり、明言できないため専門家に相談してください。「法テラス」などが相談の窓口になってくれるでしょう。
まとめ
モラハラを受けていることに悩み、自分を責めてしまっている人は、まずは「自分だけの責任」「自分が全て悪い」という考えを見つめ直してみましょう。その意識を持つことが、加害者から自分を守るための第一歩です。
モラハラについて相談したい場合には、法テラスや労働局に足を運んでみてください。
この記事の監修者
社会保険労務士
山本 征太郎
山本社会保険労務士事務所東京オフィス
静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。