パワハラで退職すべき? 辞めない方法は? 事例から対処法まで

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働く人の約3割が職場で経験しているというパワハラ。被害者の中には、「退職するしかない」と思い詰めている人も少なくないはずです。

退職せずに問題を解決する、あるいはパワハラを理由に退職するにはどうしたら良いのでしょうか。パワハラの具体的な事例と、辞める・辞めない場合の対処法をご紹介します。

【目次】
1.パワハラ理由の退職は自己都合?会社都合?
2.3人に1人が経験、パワハラの実態とは
パワハラの定義と具体例
部下から上司への「逆パワハラ」
3.パワハラにあった場合の対処法
4.まとめ

1.パワハラ理由の退職は自己都合?会社都合?

パワハラで退職を考える場合は、自分の状況に合わせてできるだけ損をしない方法を考えましょう。

とくに失業保険を早くもらいたいなら、「自己都合退職」ではなく「会社都合退職」を目指すべき。しかし、パワハラの事実を会社に認めさせる必要があるため、ハードルが高いのも事実です。

揉めたくないなら自己都合退職 

転職先が既に決まっており、会社と揉める時間がもったいない場合は「自己都合退職」をしてしまいましょう。

自己都合退職は一般的な退職の形式で、転職や結婚、介護など私的な理由による退職です。退職届には「一身上の都合により」と記して提出します。

退職届を提出するだけなので手続きもスムーズですが、会社都合に比べて失業保険の給付時期が遅く支給額も少ない、退職金が減るなどのデメリットがあるため、すぐに転職をしない人は注意が必要です。

なお、自己都合退職した後に「実はパワハラが理由だったんです」と訴えても、会社都合に変更することは難しいとされています。自己都合退職する場合は、「パワハラと認められなくても良い」と覚悟を決めましょう。

転職先が未定なら会社都合退職

パワハラを退職理由にしたい、あるいは転職先が決まるまで生活費を工面したい人は「会社都合退職」を目指しましょう。会社都合退職は失業給付金をすぐに受給できるため、転職先が決まっていなくても無収入にならずに済みます。

ただし、会社がパワハラを認めなければ会社都合退職にはできません。会社都合退職は企業のブランド低下につながり、場合によっては行政上のペナルティを受けることもあります。

そのため、企業が会社都合退職を拒否し労使間のトラブルに発展するケースが多いのも事実。パワハラが認められるまで戦う覚悟が必要です。

内容証明郵便で退職届を提出する方法

どうしても会社に行くのがつらい場合は、内容証明郵便で退職届を出す方法もあります。

内容証明郵便とは、その郵便物の内容や発送・受取の事実について郵便局が証明するものです。内容証明郵便で送った退職届を会社が受け取れば、「会社が退職届を受け取った」という事実が立証されます。

これにより、労使間で「退職届を受け取った・受け取っていない」と言い争う事態を防ぐことができます。

なお、封筒には「退職届在中」と書かないようにしましょう。中身が退職届だとわかると、事前に受取拒否される可能性があるためです。

大きな損害は訴えられる

パワハラを原因とした怪我や病気、失業などの大きな損害があれば訴えることも有効です。

身体的な攻撃により怪我を負った場合は暴行・傷害事件として刑事裁判になる可能性があります。また、損害賠償や慰謝料を目的とするなら民事裁判で訴えることも可能です。

慰謝料の相場は50~100万円程度ですが、被害の大きさによって金額は変動します。

一方で、裁判はたくさんのお金と時間を必要とします。

例えば民事裁判における労働関係訴訟の平均審理期間は約1年2ヶ月、弁護士費用はおよそ50~100万円程度といわれています。訴訟に持ち込む場合は弁護士に予算を伝え、費用を確認しておきましょう。


【コラム】「退職届を出す」=「自己都合退職」ではない

退職届があれば全て自己都合退職になると説明してくる企業もありますが、実際は異なります。退職届は「退職の意志」を示す任意の書面であり、「自己都合で辞める意志」を示すものではありません。

ただし、離職理由の内容には注意しましょう。「一身上の都合により」は自己都合退職と捉えられてしまうため、「パワハラにより退職」と必ず理由を明記してください。以下に例文を示します。

退職届

私事、

この度、パワハラに伴う心身疲労により、
来る平成◯◯年◯月◯日をもって退職いたします。

平成◯◯年×月×日
□□事業部 △△課

転職 太郎(自分の名前)

 

株式会社ABCソリューションズ

代表取締役社長 就職 一郎 様


2.3人に1人が経験、パワハラの実態とは

厚生労働省の調査によるとパワハラの相談件数は年々増加し、働く人のうち32.5%が「過去3年間にパワハラを受けたことがある」と回答しています。

パワハラによる病気や怪我、退職など被害者の人生が狂ってしまうケースもあり、問題となっています。実態を見てみましょう。

※参考→「パワハラ基本情報」データで見るパワハラ:3.パワハラはどの程度発生しているのか」―あかるい職場応援団

パワーハラスメントの定義と具体例

そもそもパワハラとは、地位や人間関係などを悪用し、職場の人間に対して業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与える行為労働環境を悪化させる行為を指します。

ここでは厚生労働省が分類した「パワハラの6類型」をもとに、パワハラと認定される事例を紹介していきます。心当たりがあれば、まず身近な相手や公的機関に相談してみましょう。

なお、同じ状況であってもパワハラの感じ方には個人差があります。明確な目的があり、業務上必要な指導などはパワハラに当たりませんので注意してください。

(1)身体的な攻撃

殴る・蹴るなどの暴力は典型的なパワハラです。例え被害者が仕事でどんなミスを犯したとしても、力に頼った指導や懲罰は認められません。怪我をした場合は刑事裁判になる可能性もあります。

(2)精神的な攻撃

暴言によって個人を侮辱・罵倒し、精神的な苦痛を与えることもパワハラです。脅迫や名誉毀損もこれに含まれます。言葉による「見えない暴力」は見逃されやすいため、注意が必要です。

(3)過大な要求

明らかに不要な仕事を押し付けられたり、自分の能力では不可能な仕事を強制されたりした経験はありませんか。個人の能力や経験を考慮しない、過大な仕事の強制はパワハラに該当します。

(4)過小な要求

能力や経験に見合わない程度の低い仕事を命じることや、正当な理由もなく仕事を与えないこともパワハラに該当します。

ただし「程度の低さ」や「理由の正当性」に関する基準は会社や状況によって異なり、判断が難しいところです。「閑散期なので営業職に倉庫整理の手伝いを命じた」などの例は、確かに能力に見合わない仕事を命じています。しかし「閑散期」という理由もあるため、パワハラと認めさせることは難しいかもしれません。

(5)人間関係からの切り離し

部署内で孤立させたり無視したりするのは悪質なパワハラです。

このケースは被害者が精神的に厳しい状況に追い込まれます。証拠も集めにくく、裁判に持ち込んでも有力な証言を得られなかったり、「被害者に原因がある」など責任を転嫁されたりする恐れがあります。

社内の窓口だけでなく自治体の労働局など公的機関への相談も検討しましょう。

(6)個の侵害

業務の適正な範囲を超えて、プライベートな事情を執拗に詮索することもパワハラになります。

モラハラやセクハラ、マタハラなどがこれに含まれるでしょう。こちらも「業務上適正な範囲」によってパワハラの判断基準は異なります。例えば、「繁忙期なので休暇の時期を変更してほしいのだが、予定を聞いてもいいか?」という状況であれば、「個の侵害」には該当しない可能性が高いでしょう。

部下から上司への「逆パワハラ」とは

パワハラといえば上司が部下に行うイメージがありますが、同僚や部下からのいじめ行為もパワハラに該当し「逆パワハラ」と呼ばれます

「新しい上司の指示をチーム全員で無視する」「同僚について根拠のない噂話を流す」などの行為もパワハラです。つまり、地位や役職に関係なく誰でもパワハラ被害者になる可能性があるのです。

3.パワハラにあった場合の対処法

それでは実際パワハラを受けた場合、どうすれば良いのでしょうか。

パワハラはその問題を解決するのか、諦めて退職するのかによって対応が異なります。「パワハラを解決して今の会社で働き続けたい」「耐えられないのですっぱり辞めて転職したい」など、目的に合わせた対処法をご紹介します。

上司や人事、専門機関に相談する

会社の上司や人事部、コンプライアンス窓口に相談し、解決を図るパターンです。

加害者に注意を促す、加害者を異動させるなど、具体的な改善策を期待できます。専門の産業医やカウンセラーから有効なアドバイスを得られるかもしれません。

ただし、企業によっては相談窓口が形骸化し機能していないケースもあります。その際は公的機関や弁護士への相談がおすすめです。

労働相談センター(NPO法人) 
各都道府県の労働局にある相談窓口。労使間の調整役を依頼することも可能

【相談用電話番号(東京都)】
0570-00-6110

法テラス
弁護士や司法書士に対して無料で法律相談を行える。電話・メール相談も可能。

【相談用電話番号】
0570-07-8374

かいけつサポート
司法書士会や社会保険労務士会などによる紛争解決サービス。話し合いによる解決を目指せる。

こころの耳 
厚生労働省が運営。心のケアを中心とした相談窓口を紹介してもらえる。

【相談用電話番号】
0120-565-455
※非通知ではつながりません。電話番号前に「186」をつけて発信者番号を通知した上で電話してください。)

異動を申し出る

特定の人物からパワハラを受けている場合、自ら異動や配置転換を申し出てパワハラから逃れる手もあります。勤務地や業務内容が変わってしまうものの、同じ会社でキャリアを継続でき、転職に比べてリスクの低い選択肢といえます。

かねてから興味のある別の部門へ移るチャンスと前向きに捉えることもできるでしょう。

転職する

現在勤める会社に未練がなければ、次の転職先を見付けて退職する方法もあります。

会社によっては「退職は◯ヶ月前までに申し出ること」と就業規則を設けているところもありますが、法律的には退職日の2週間前までに退職届を提出すれば退職可能です。

記録を残すことが大切

パワハラに遭ったとき、もっとも大切なのは「記録を残す」ことです。これは第三者が事実を把握するために必要で、社内の人事部に相談する、または裁判で訴える場合もパワハラを立証する重要な材料になります。

記録では「いつ・誰が・どこで・どんな風に・何をしたか」を明らかにします。日記やメモを書き、メール画面はプリントアウトして保存しましょう。暴言は録音しておくことも有効です。

4.まとめ

年々相談件数が増えているパワハラですが、記録を残して相談することが問題の解決につながります。

気になることがあれば、まずは勇気を持って誰かに相談してみましょう。「指導だと思って我慢していたことがパワハラだった」というケースもあるかもしれません。

自分の体や心を守るために、最善の方法を取ってください。