一次・二次面接と同じではNG 最終面接で語るべき志望動機の作り方

人事担当者や面接官が、思わず採用したくなる志望動機とはどんなものでしょうか。

リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として2万人以上と面接してきた「人事と採用のプロ」曽和利光さんに聞きました。

「その会社でなければならない理由」なんて必要ない

志望動機というと、多くの人が「その会社でなければならない理由」を言わなければいけないと考えてしまうようです。

もちろん最終面接の段階では、「なぜその会社で働きたいと思ったのか」をはっきりと伝える必要があります。でも、応募段階や初期の面接の時点であれば、「転職エージェントに紹介されて応募してみた」「求人情報を見て興味を持った」という人がほとんどですから、はっきりとした志望動機を言える人などいないはずです。

しかも、これだけ多くの会社がある中で、希望条件に合った会社であればどこで働いてもいいわけですから、「その会社でなければならない理由」なんてあるはずがないでしょう。

それでも、履歴書には志望動機を書く欄がありますし、初期段階の面接でも志望動機を聞く質問が定番になっています。つまり、その会社のことをほとんど知らない段階で、「なぜうちの会社を志望したの?」と聞かれることが採用選考では当たり前に行われているのです。

これを恋愛に置き換えるなら、合コンで初めて出会った男性が「なんで僕のことを好きなの?」と聞いてくるようなものです。聞かれた側としては困惑して当然ですし、「まだわかりません。これからいろいろ知った上で判断します」というのが本音でしょう。

でも選考の場では、その本音をそのまま伝えると、コミュニケーションが取れない人と思われて落とされてしまいます。では、応募書類や初期段階の面接では、どのような志望動機を伝えればいいのでしょうか?

初期段階の志望動機は「選社理由」を伝えればいい

応募書類や初期の面接で伝えるべき志望動機はどんなものなのか、結論からお伝えすると、「選社理由」を志望動機として伝えれば問題ありません

選社理由とは、「会社を選ぶ基準のことです。具体的には、「私は○○な理由で会社や仕事を選ぶ際に△△といった点を重視しています。御社は××な点で私の希望に合っているので応募しました」と伝えればいいでしょう。

実は企業側も、「その会社でなければならない理由」ではなく、その人が持っている会社や仕事に対する「価値観」や「考え方」を聞きたいと考えています。その人の価値観や考え方を聞くことで、自社にマッチしそうか、自社の仕事に適性がありそうかを見極めようとしているのです。

先ほどと同じく合コンにたとえると、「なぜ僕のことを好きなの?」と聞かれているのではなく、「どういう人がタイプですか?」と聞かれていると考えればわかりやすいのではないでしょうか。

志望動機の典型的な失敗例とは?

上で説明した、企業が初期段階で志望動機を聞く目的を理解しないまま、無理に「その会社でなければならない理由」を作ろうとすると、「志望動機の典型的な失敗」を犯してしまいがちです。

それは「御社はこんなビジネスを展開している会社なので志望しました」と、その会社の事業説明をしてしまうこと。それがどんなものなのか、具体例でご説明しましょう。

〈失敗例1〉メーカーの場合

面接官:なぜうちの会社を志望したの?

応募者:御社は高い付加価値をもった製品を販売することで、人々の生活と社会の利便性向上を実現している企業だからです。

〈失敗例2〉出版社の場合

面接官:なぜうちの会社を志望したの?

応募者:御社は多くのベストセラーを出版し、読者の心と生活を豊かにすることに貢献している企業だからです。

一見、きちんと答えているように思えるかもしれません。でも、少し厳しい言い方になりますが、これではその企業の事業内容や経営理念を説明しているのと何も変わりません。企業が知りたがっている、「その人の価値観や考え方」がまったく伝わらないことがおわかりいただけると思います。

このような志望動機なら誰が話しても同じですし、企業側から見れば何も言っていないのに等しいものです。面接ではもちろん応募書類の段階でも、企業から評価してもらうことはむずかしいでしょう。

こうした失敗を避けるためにも、初期段階では「選社理由」を志望動機として伝えればいいのです。

最終面接で伝えるべき志望動機とは?

次に、最終面接で伝えるべき志望動機について考えてみましょう。

初期段階とは違い、最終面接では「なぜその会社に魅力を感じているのか」「なぜその会社で働きたいと思っているのか」を志望動機としてきちんと語らなければなりません。

そのためには、志望動機を「what」と「why」の2つの軸で考える必要があります。「what」はその会社の「何に魅力を感じるか」、「why」はその会社に「なぜ魅力を感じるか」ということです。

たとえば、私が以前勤めていたリクルートなら、「人生の節目節目で情報提供することで、人の生き方の多様性を生み出す企業だというところに魅力を感じた」といった答えが「what」。一方、その多様性を生み出すという価値に「なぜ魅力を感じたのか」を答えるのが「why」です。

実は面接の場でも、多くの人は「what」しか話しません。でも「what」はその会社についての話ですから、「what」だけを話してもその人自身のことが伝わらないのです。でも、なぜそこに魅力を感じたのか、「why」を話せばその人の考え方や価値観を伝えることができます。ですから、「what」だけでなく「why」を伝えることが大切なのです。

ここで注意していただきたいのが、「why」は表層的な理由を言うだけではダメということです。なぜその企業に魅力を感じたのか、自身の過去の経験やライフストーリーに紐づいた価値観、つまり自分の中に深い根っこがある価値観に照らし合わせて語れるかどうかが重要です。

たとえば、「過去にこうした経験をして、こういった考え方を持っているから」とか「これまで一貫してこういう考え方で物事を判断してきたから」などと、具体的に語ることが求められるのです。

「what」「why」の考え方 what その会社の何に魅力を感じたか why その会社になぜ魅力を感じたか 自分の価値観に紐づいたwhyがあるか? なぜ「多様性を生み出す」という価値に魅力を感じたのか (例)学生時代、多くの留学生と友人になり、その生活を知ったことで、誰もが共存できる多様性のある社会を実現したいと考えるようになったから

なぜそのような「why」が求められるのでしょうか。それは面接官が、その人が語る「why」を通して「その会社の仕事に、どれだけの思い入れを持って取り組んでもらえそうか」ということを見極めようとしているからです。

もし、その人が語る「why」の中に深い根っこがあれば、面接官は「それだけの思い入れがあるなら、つらい仕事があっても力を発揮してくれるだろう」と考えることでしょう。

逆に、答えの中に深い根っこが見つからなければ、「そんな表面的な理由で入社しても、つらいことがあったら辞めてしまうのではないか」と疑われて、不採用という結果になってしまいます。このように考えると、志望動機を語る上での「why」の重要性を理解していただけるのではないでしょうか。

評価される志望動機の考え方

ここまでご説明したように、志望動機は「what」と「why」の2つの軸で考えること、特に説得力のある「why」を語れるかどうかが非常に重要です。

とはいえ、「why」は潜在的で自覚しづらく、言語化できていないことが多くあります。そのため、多くの人は自分の価値観に根付いた志望動機を語れず、「what」だけで伝えてしまうのです。

では、説得力ある「why」を作るにはどうしたらいいのでしょうか。その方法は、次の3つのステップに分けられます。順にご説明しましょう。

説得力ある「why」を作る3つのステップ ステップ1:自分の価値観を自覚する ステップ2:価値観が形成されたきっかけを探る ステップ3:信頼できる第三者に評価してもらう

ステップ(1)自分の価値観を自覚する

まず自分がどんな価値観を持っているのかを自覚することが必要です。その具体的な方法は、自分の基準で選んだ企業ランキングを作成するこです。

ランキングは、世間一般の評価とは関係なく、「自分が興味を持てるどうか」「自分が入社したいと思うかどうか」を基準に選んでください。現実的に入社できそうかどうかは、ここでは無視しましょう。

「興味がある企業」と「興味がない企業」、もしくは「入りたいと思う企業」と「入りたくない企業」それぞれをランキング形式で20〜50社ずつあげます。会社の数が多すぎて選べないという場合は、興味のある業界に絞って選んでもいいでしょう。

そうして作成したランキングの傾向を分析してみると、「自分は何に興味を持っていて、何を重要視しているのか」といったことや「自分は何をやりたくないと思っているのか」といったことが見えてくるはずです。

たとえば、興味ある企業ランキング上位に外資系企業が多いなら「多様な文化・価値観の中で働くこと」を重視しているのかもしません。また、ベンチャー企業が多いなら「新しいことに挑戦したい」「リスクを取ってでも高いリターンを狙いたい」といった価値観を持っていると考えられます。

逆に、入りたくない企業のランキングを見れば、自分が「やりたくないと思っていること」が見えてくるでしょう。

ステップ(2)価値観が形成されたきっかけを探る

自分の価値観が見えてきたら、なぜそのような価値観が形成されたのか、自分の人生を振り返ってみましょう。

これまでのキャリアはもちろん、大きな影響を受けた出会いや経験、子どもの頃の生活環境まで遡ると、何かきっかけがあるはずです。多くの人は中高生までの間に価値観のベースができると言われているので、そこまで振り返ってみるといいかもしれません。

たとえば、規模は小さくとも高い業績を上げている企業に魅力を感じる人であれば、中高生時代の「部活で少人数のチームを強化し、部員数の多い強豪チームを破った経験」がきっかけとなって、そのような価値観が形成されたということに気づくかもしれません。

自分の価値観の裏づけがわかってくると、なぜその会社を選んだのか「why」を言語化できるようになってきます。

ステップ(3)信頼できる第三者に評価してもらう

自分の価値観とその裏付けが見えてきたら、会社の上司や先輩、友人など信頼できる人に話を聞いてもらい客観的なフィードバックを受けるといいでしょう。

自分では気づかなかった点を指摘されたり、わかりにくい表現を指摘してもらったりすることで、より説得力ある「why」を作ることができるはずです。

企業とのミスマッチを防ぐために

「what」と「why」の2つの軸から、自分の価値観に裏付けられた志望動機を考える目的は、採用選考を通過することだけではありません

仮に、自分に嘘をついて志望動機を作り上げ、選考を通過できたとしても、入社後にミスマッチが明らかになれば、それほどつらいことはありません。自分の価値観を知り、自分がどんな会社に魅力を感じるのか、どんな仕事をやりたいのかを自覚することは、自分に合った会社・仕事を選ぶためにも必要なことなのです。

ここで紹介した考え方と方法を活用して、自分自身の価値観を改めて問い直し、志望動機の「why」をしっかり語れるようにしておきましょう。

取材・文/藤田佳奈美(@yakou_chuu_

この記事の話を聞いた人

人事コンサルタント

曽和利光

株式会社人材研究所 代表取締役

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート、ライフネット生命などで人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(星海社、共著)など多数。

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