郵送方法や添え状例文も 退職時、保険証を返却する方法
退職に伴う手続きのひとつに、健康保険証(以下、保険証)の返却があります。さまざまな事情から保険証を手渡しで返却できなかった場合、郵送方法や添え状の書き方に迷うこともあるでしょう。
保険証の返却の仕方から、返却しなかった場合のトラブルまでお伝えします。
退職後、保険証を返却するには?
保険証の返却方法は、担当者に直接手渡しする方法と、郵送する方法の2つです。
保険証の返却は手渡しが確実
退職後は、担当者に手渡しで保険証を返却するのが安全で確実です。
しかし、退職後に遠方へ引っ越してしまった、渡しに行くタイミングがないなど、手渡しで返却できない場合は郵送することもできます。郵送する場合は、企業に以下の点を確認してください。
- 保険証を郵送してもいいかどうか
- 送り先の部署名・担当者名
宛て先などを確認してから郵送することで、保険証の紛失を防ぐことができます。
郵送は対面受け渡しで
保険証は以下のいずれかの方法で郵送します。
- 簡易書類
- 一般書類
- レターパックプラス
これらの方法は対面受け渡しのため、郵便事故などのトラブルを防ぐことができます。
- 簡易書留
同じ市内や県内など、近距離から郵送する場合におすすめです。料金は基本料金+310円。 - 一般書留
どこの郵便局を経由したかを確認できるので、退職後に他県などの遠方に引っ越した場合におすすめです。料金は基本料金+430円。 - レターパックプラス
A4サイズ・重量4kg以内であれば厚さ3cmを超えても利用できるので、保険証以外の返却物がある場合におすすめです。料金は日本全国一律520円。
封筒と添え状の書き方
保険証を郵送する際の封筒と添え状の書き方を紹介します。
封筒の書き方
保険証を郵送する場合、封筒の表面に「保険証在中」と記入してはいけません。
書類などを企業へ郵送する際、中身が何なのかをわかりやすくするために、封筒の表面に「○○在中」と記入することがありますが、保険証の場合はNGです。
保険証は身分証明書になる大切なものなので、封筒に「保険証在中」と記入してしまうと、第三者に保険証を悪用される可能性があるからです。
封筒の書き方は下記の通りです。
- 保険証を郵送する企業の住所・部署・担当者名を書く
- 「親展」(宛名本人以外は開封禁止という意味)と赤字で宛名の左下に書く
- 自分の住所・氏名を書く
- 封をしたという意味の〆マークを書く
添え状の書き方
添え状に書くべき内容は以下の通りです。具体的な例とともに確認してみましょう。横書きやPC作成でも問題ありません。
- 企業名・担当者名
- 在職時の自分の情報(退職時期や所属部署など)
- 保険証を返却する旨
- お世話になったお礼
添え状の書き方見本
添え状は必ず必要というわけではありませんが、つけたほうが丁寧です。
保険証の返却期限はいつまで?
保険証は、退職日の翌日には返却をしましょう。
企業は退職者の保険証を、退職日から5日以内に年金事務所または企業の健康保険組合に返却する必要があるからです。もし間に合わない場合は事前に担当者に相談しましょう。
なお、保険証は退職日までしか使えません。もし退職職日以降に誤って使用した場合は、負担しなかった医療費(全体の7割)を、加入していた健康保険組合や協会けんぽに返還しなければなりません。
退職日以降は速やかに国民健康保険や任意健康保険などへ加入しましょう。国民健康保険の場合、資格喪失日から14日以内の届け出が必要です。
保険証を返却しないとどうなる?
保険証を返却しないと医療費が全額自己負担になるだけでなく、退職した職場に手続きの負担をかけたり、新しい保険への加入手続きが遅れる可能性があります。
手続きの負担が大きくなる
保険証を返却しなかった場合、手続きが増えて退職した会社に迷惑をかけるだけでなく、新しく加入したい保険の手続きが遅れる可能性もあります。そのため、保険証はできる限り早く返却するようにしましょう。
万が一、新しい保険に加入したいのに返却が遅れてしまった場合は、退職時に受け取る書類などがあれば加入できるケースもあります。無保険状態を避けるためにも、加入したい保険先に確認してみましょう。
とはいえ、前いた会社や自分が困らないためにも、早期の手続きをすることが大切です。「面倒くさいから」「前職に郵送するのは気まずいから」と返却を後回しにしてはいけません。
新しい保険の加入手続きは早めにしよう
新しい保険の加入手続きをしなかった場合、医療費が全額自己負担となる期間ができてしまいます。
退職日の翌日に転職先の社会保険に加入するなどの場合以外は、退職後14日以内に国民健康保険への切り替えが必要です。14日以内であれば、資格を喪失した日に遡って医療費が保険給付の対象となりますが、14日を過ぎた場合は届出日以降が対象となります。
そのため、退職後14日過ぎた日から国民健康保険への切り替え日までの医療費は全額自己負担(10割負担)となります。
保険証を紛失した場合はどうすれば良い?
保険証を返却する際、紛失してしまったことに気づいた場合は、速やかに退職した企業に連絡してください。
企業から年金事務所や健康保険組合に「被保険者証回収不能届」や「被保険者証滅失届」を提出すれば、保険証がなくても被保険者喪失処理の手続きができます。
被保険者証回収不能届は下記のリンク先よりダウンロードすることができます。ただし、自分で提出する書類ではないので注意してください。
任意継続の場合はどうする? 条件や流れを紹介
退職後、健康保険証の切り替え方法には「これまでの健康保険を任意継続する」「国民健康保険に加入する」「家族の社会保険の扶養に入る」の3パターンがあります。
ここでは、これまでの健康保険を任意継続する場合の条件や手続き方法、保険証は返却すべきかどうかについて説明します。
その他の手続き方法について詳しくは、下記の記事をご確認ください。
健康保険を任意継続する場合に満たすべき条件
任意継続する場合は、下記の要件を満たしていることが条件です。
- 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
- 資格喪失日から20日以内に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を申請者の住所を管轄する協会けんぽ支部または企業の健康保険組合に提出すること
健康保険任意継続被保険者資格取得申出書の提出後、退職時に加入していた健康保険の資格喪失を確認できたら、新たな保険証を発行してもらえます。
任意継続加入とともに家族を被扶養者として手続きする場合は、生計維持していることを確認できる書類の添付が必要な場合がありますので、管轄の協会けんぽや退職した企業の健康保険組合に問い合わせてください。
任意継続の期間は2年間です。その後は国民健康保険など他の保険の加入手続きをする必要があります。
任意継続でも前職の保険証は返却する
任意継続する場合でも、保険証は返却する必要があります。新しい保険証は、手続きして1週間ほどで郵送されます(退職を証明できる書類の添付がなければ2~3週間)。
保険証が届いていない間も保険自体は適用されるので、医療機関にかかった場合、一度立て替える必要がありますが、手続きをすれば自己負担分を除いて返金されます。
任意継続の資格を喪失する条件やタイミング
任意継続の期間は2年ですが、期間中に以下に該当した場合はそのタイミングで資格を喪失します。
もし資格喪失後に保険証を使って受診した場合、後から医療費を全額自己負担しなくてはいけません。
ただし、そのときに他の保険に加入していれば、手続きをすることで加入している保険先からお金が返金されます。
期間満了後は保険証を返却する
任意継続の期間満了後は、保険証を協会けんぽや健康保険組合に返却してください。
資格喪失日以降に前職の保険証を使って受診すると全額自己負担になります。
郵送する場合は管轄の協会けんぽや健康保険組合へ連絡し、どの部署の誰宛に送るべきかを確認してください。
まとめ
保険証は退職日以降使えなくなるため、速やかに返却し、必要に応じて任意継続や国民健康保険への切り替えを行いましょう。
もし失くしてしまった場合は、その旨を企業に伝えることで手続きがスムーズになります。
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。