手取り・所得との違い、調べ方も 【かんたん解説】年収とは?
転職時や、扶養控除・ふるさと納税の控除を受ける際など、さまざまなシーンで出てくる「年収」。具体的には、どのような金額を指すのでしょうか?
この記事では年収という言葉の定義や、どんな書類を使って調べられるかなどを解説します。
年収とは
年収とは、総支給額のこと
年収とは、1年間で労働の対価として支払われる賃金から、税金・社会保険料を引かれる前の「総支給額」のこと。額面年収・給与収入とも呼ばれています。
なお、税金・社会保険料を引かれる前の年収であることから、税込年収とも呼ばれています。
年収に含まれるもの・含まれないもの
年収には12カ月分の給料と賞与、時間外手当などが含まれている一方で、通勤手当などの一部の手当・祝い金などは含まれないことが一般的です。
※企業やシチュエーションにより異なる場合があります。
手取り年収との違いは?
手取り年収とは、年収から税金・社会保険料を引いた金額のこと。働く人が実際に受け取れる金額はこちらです。
手取りの金額は、一般的に額面の8割程度と言われています。たとえば「年収400万円」の仕事の募集があった場合、実際に受け取れるのは「400×0.8=320万円」になる計算です。
年収の確認方法・計算方法
年収(額面年収・給与収入)を確認する方法は、主に2種類あります。
【方法1】源泉徴収票の「支払金額」を見る
自分の年収を確認する一番簡単かつ確実な方法は、源泉徴収票を見ること。「支払金額」欄に書かれている金額があなたの年収です。
この支払金額は、前年の1月~12月の期間で集計されたもの。交通費など、年収に含まれないものはあらかじめ除かれた金額となっています。
源泉徴収票は毎年12月~1月頃に会社から発行されるので、手元にないか確認してみましょう。
【方法2】給与明細&賞与明細を見る
おおまかな年収でよければ、直近12カ月分の給与明細と賞与明細を見て、直近1年間の年収を調べることも可能です。
この場合、給与明細・賞与明細の「総支給額」欄に書かれている金額を12カ月分合計した値が、あなたのおおよその年収になります。
ただし、この総支給額には通勤手当など、本来の年収には含まれない金額も含まれています。正確な年収を調べるには、合計額から下記の手当類を差し引く必要があるので注意してください。
コラム:書類がないときの年収計算方法
源泉徴収票や給与明細が手元に無いときには、下記の2つの方法で年収を計算しましょう。転職の面接で希望年収を伝える場合など、おおよその年収を知りたい場合に使えます。
1. 直近の月給に12をかける
一番簡単なのが、直近の月給とボーナスの金額を使う方法。シンプルに、月給×12カ月の金額と、ボーナスを足し合わせましょう。
おおよその年収
=直近の月給×12カ月+夏・冬のボーナス
2. 手取り金額を0.8で割る
手取りの月給しかわからない場合は「手取り金額を0.8で割ったもの」を12カ月分かけることで、おおよその年収を算出できます。
一般的に手取り金額は月給(総支給額)の8割程度。0.8で割ることで、月給(総支給額)を逆算できる仕組みです。
おおよその年収
=(手取り月給÷0.8)×12ヶ月
Q. 似ている用語との違いは?
年収と似ている言葉に、所得や世帯年収・想定年収などがあります。ここでは、それぞれの違いを確認していきましょう。
年収と所得の違い
所得とは、収入(年収)から必要経費を差し引いた金額のことを指します。
必要経費として差し引かれるものは、自営業と会社員で異なるので注意。自営業では、商品の仕入代金をはじめとした経費や個人事業税などの税金が、会社員は給与所得控除の金額が必要経費として差し引かれます。
※給与所得控除の概要は、下記の記事でくわしく解説しています。
世帯年収・想定年収などとの違い
「年収」とつく言葉のうち、代表的なものの意味は下記の通りです。年収とはニュアンスが異なるので、違いを確認しておきましょう。
年収 |
賃金から、税金・社会保険料を引かれる前の「総支給額(額面年収・給与収入)」のこと。税込年収とも言われる。 |
世帯年収 |
同一の生計を立てる世帯(=生活するためのお金が出ている財布が同じ状態の人)の年収を、合計したもの。 |
平均年収 |
ある集団における年収の総額を、人数で割ったもの。 日本の民間の事業所に勤める給与所得者の平均年収は、国税庁の「民間給与実態統計調査」で見ることができる。ちなみに令和4年の平均年収は、458万円。 |
見込み年収 |
直近の1年で得られる収入を、おおまかに計算したもの。 「通勤交通費・残業手当を除いたすべての手当てを含む月給×12ヶ月+賞与」で計算されることが多い。 |
生涯年収 |
一人の人が就職してから定年退職するまでの期間で稼ぐ、賃金・賞与の総額のこと。生涯賃金・生涯給与・生涯給料とも言われる。 |
申告年収 |
クレジットカードの申請や、金融機関を利用する際に申告する年収の俗称。 一般的に、直近の年収や「月給×12カ月分+賞与」の金額を指すことが多い。大まかな金額で問題ないため、手当などは引かなくてもOK。 |
Q.自営業・個人事業主の場合の年収は?
自営業・個人事業主における年収とは、1年間の売上・報酬の総額から経費を差し引く前の金額を指します。年商と呼ばれることもあります。
なお、会社員に転職する際の希望年収や、住宅ローンを組む際の年収は、年収から必要経費を引いた「所得」を伝えるのが一般的です。
Q.世帯年収の計算方法は?
世帯年収とは、同一の生計を立てる世帯の年収の合計です。
「同一の生計を立てる」とは、生活するためのお金が出ている財布が同じ状態を意味しています。夫・妻の収入のほか、同居している子や、別居しているが仕送りを受けている子の収入を合算しましょう。
世帯年収の平均や「同一の生計を立てる世帯」に関するくわしい解説は、下記の記事も参考にしてください。
Q.ふるさと納税における年収とは?
ふるさと納税の還付・控除の上限計算や、シミュレーションにおける年収は、ふるさと納税を行う年(1月1日~12月31日)の年収(自営業の場合は所得)を指します。源泉徴収票の「支払金額」の金額を確認して、計算に使いましょう。
なお、シミュレーションに使う金額は大まかな金額でOKです。最新の源泉徴収票が手元にない場合は、大きな昇給や減給がない場合に限り、前年や2年前の年収を使っても構いません。
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所