なりやすい3つの傾向と対策 社内失業の実態
近年、社会問題になりつつある「社内失業」。
社内失業の意味や、なりやすい人の傾向やポジション、対策方法について解説します。
社内失業とは?
社内失業の意味や、発生する理由について説明します。
在籍中なのに仕事がない状態のこと
社内失業とは、社員として会社に在籍しているにもかかわらず、仕事が十分に与えられない状態を指します。
出社してもやることがなく手持ち無沙汰になってしまうため、自虐的なニュアンスで「社内ニート」や「オフィスニート」と自称する人もいます。
エン・ジャパンの2019年調査では、社内失業者がいる企業は予備軍を含めて全体の23%、1,000名以上の大企業では41%という結果に。企業と労働者の双方にとって深刻な問題であることがわかります。
※参考:800社に聞いた「社内失業」実態調査|エン・ジャパン
社内失業者が生まれる理由
社内失業者が生まれる理由として、企業側が適切な人事配置をできていないことが挙げられます。
「現場が必要としている人数以上に採用する」「研修が不十分のまま現場に配置する」といったことが重なると、仕事がなくなる社員が出てきてしまうことも少なくありません。
他にも、上司が部下の仕事量をコントロールできていない、終身雇用の考え方が根強い日系企業では簡単に解雇できないといった背景も、社内失業者が生まれる原因となっています。
社内失業が原因でうつになる人も
社内失業になると「会社や世の中の役に立っていない」などと、自責の念で思いつめてしまうことも多く、うつ病を患ってしまう人もいます。仕事がないのにもかかわらず、長時間職場に居続けることのストレスも大きいでしょう。
うつ病は自分では気付きにくいことも多いので、まずはチェックシートで確認してみましょう。
不眠・食欲不振といった身体的な症状が表れるようであれば、心療内科や精神科の受診を検討しましょう。
社内失業に追い込むことはパワハラ?
会社側がわざと仕事を与えない状況は、自主退職を促すことを目的としたパワーハラスメントとされることもあります。
実際に、女性教諭に対して授業や担任の仕事を外すなどの社内失業状態にさせた学校側が、600万円の損害賠償義務を負った事例もあります。
会社から故意に仕事がもらえないことで、上司から「仕事をさぼっている」「給料泥棒」と言われる、給料・賞与(ボーナス)が低くなる、といった扱いを受けたときは、パワハラと認められる可能性が高いでしょう。
※自主退職を促される状況について詳しくは→ パワハラで退職すべき? 辞めない方法は? 事例から対処法まで
※追い出し部屋について→追い出し部屋の実態とは?違法性や対策まで解説
コラム:人手不足なのに社内失業になるのはなぜ?
『ユースフル労働統計 2018 労働統計加工指標集』によると、過剰雇用の企業は全産業で 2013 年以降マイナスが続いているため、国内は慢性的に人手不足であることがわかります。
それにもかかわらず社内失業者が増えている原因の1つとして、特定の業務に対して過剰に人員を配置していることが考えられます。
具体的には、景気や業界全体の変化などの影響から、会社で注力すべき業務が変わってきているにもかかわらず、人事配置の変更が満足にできていないという状況などが挙げられます。
過剰人員の再配置が進めば、生産性の向上だけでなく人手不足の解消にもつながるとして、富士通では2018年10月、グループ全体で約5,000人という大規模な配置転換を行うことを発表しました。
2020年度をめどに、間接部門である人事・総務・経理などの社員を対象に、営業やシステムエンジニアといった収益部門への異動を促進。さらに通常の退職金に割増金が加算される「転進支援制度」を設け、グループ外への転職を促しました。
結果として、約5,000人のうち2,850人が「転進支援制度」に応募し、早期退職を選びました。同社の試みは大規模な配置転換でありながら、実質的なリストラでもあるといえます。
社内失業になりやすい3つのポジション
社内失業になりやすい3つのポジションと、その背景・対策ついて解説します。
新卒
新卒の中でも、入社後の研修が十分に行われていない場合、業務関連の知識やスキル不足による社内失業状態になりやすくなります。中途採用でも、業界未経験者だと同じ状況になりやすいようです。
この場合は、直属の上司や人事に相談するのが適切です。
配属された現場と採用を行った人事部で連携が取れていない場合、現場はどのような考えで新人を採用したのかわからず、任せるべき業務を判断できないこともあります。
できる仕事がないときは、まず直属の上司や人事に相談し、現状を理解してもらいましょう。
派遣
派遣社員でも過剰な人員が派遣された結果、社内失業になってしまうケースがあります。
派遣会社とやり取りする担当者が現場の実態を正しく把握していない場合、必要以上の派遣社員を受け入れてしまうことがあります。
その場合は、まず派遣会社に相談して、派遣先の人事と話し合いをしてもらいましょう。同じ派遣先で働き続けるか、別の派遣先に移るかなどを相談してもらえるはずです。
40代以降
40代以降の社員は、仕事に使うパソコンなどのツールが進化したことなどから、自分のスキルが追い付かず、社内失業になってしまう人が多いようです。特に終身雇用制度を前提に大量採用された社員が、その安定性に甘んじ仕事をしないまま在籍期間が長くなると、40代以降に「窓際族」として社内失業状態になることは珍しくありません。
在籍期間が長くなり「これはできない」「あれはできない」といったことが増えると、徐々に仕事の依頼が減っていきます。
この場合は、仕事を断らず少しでもできることを増やす必要があります。終身雇用や年功序列に甘んじず、時代に合わせた業務を行えるよう、常に勉強・成長する姿勢を心がけましょう。
「社内失業になりそう」と思ったときの対策
社内失業になりそうなときは、どうしたら良いのでしょうか。任される仕事が少ない、もしくは少なくなってきたときに、できる対策を解説します。
自分ができる仕事を探す
当たり前ですが、仕事がないという場合は、自分からできることを探しましょう。
上司やマネージャーに余裕がない場合、社内失業者がいることに気づかない上に、そうした社員にどんな仕事をどこまで任せていいのかの判断もできないことが多いので、ある程度は自分から意思表示をすることも大切です。
上司や第三者機関に相談する
自分で仕事を探しても見つからない場合、上司に仕事がなくて困っていることを相談しましょう。
上司本人からわざと仕事を回さないといったパワハラを受けている場合は、人事担当者やハローワークなど、労働相談を受けている第三者機関に相談します。
相談しても変わらないなら転職するのもあり
上司やまわりの人に相談しても状況が変わらないのなら、転職も視野に入れましょう。
無理をして続けたとしても、精神的な負担が大きくなります。さらに仕事がないまま時間だけが過ぎ、スキル向上も見込めないでしょう。
自分の能力が発揮できるかどうかは会社という環境による部分も大きいため、今の会社で改善が見込めない場合、転職が解決の糸口になるかもしれません。
社内失業の実体験エピソード
実際に社内失業になってしまった人は、どのような体験をしたのでしょうか。社内失業者の実体験をご紹介します。
新入社員の場合
上司に仕事がないか聞いたのですが、「とりあえずマニュアルを読んで勉強していて」といわれる日々。結局入社から数ヶ月経っても具体的な仕事が覚えられず、社内失業状態となってしまいました。
このままでは良くないと感じ、上司のさらに上の上司に仕事がないことを相談した結果、人手不足で困っていた別の部署に異動することが決まり、社内失業状態から脱出できました。
ベテラン社員の場合
業務効率化のため、AI技術やRPAなどの新システムが導入されたのですが、使い方が覚えられなくて困りました。
後輩社員に使い方を何度も聞くのも申し訳ないと思っていたら、自分ができる仕事がどんどん少なくなっていき、気付いたら社内失業状態になっていました。
そんな時にちょうど知り合いの会社が求人募集をしているという話を聞き、思い切って転職することにしました。以前に比べて給料は下がりましたが、これまでの経験を生かせる業務を担当しているので、後悔はありません。
まとめ
社内失業とは、企業に在籍しているのに仕事がない状態を指します。
企業側が適切な人事配置をできていないことが主な要因ですが、本人のスキルが業務内容に追いついていないことが原因となっているケースもあります。
仕事がない状態が続くとストレスも大きいので、まずは原因を明らかにして適切な対応を心がけましょう。