退職代行なんていらない! 会社を簡単に退職する方法

退職届を受け取ってもらえない、「訴えるぞ」と脅される……。勤め先からの強引な退職引き止めに困っている人もいることでしょう。

辞めさせてくれない会社を辞めるにはどうしたらいいのか。ブラック企業被害対策弁護団の代表を務め、労働事件を数多く手がける弁護士の佐々木亮先生に、「簡単に退職できる方法」を伺いました。

Q.退職を認めてもらえません。どうすればいいでしょう?

大丈夫です。辞められない会社はありません。退職の意思が固いのであれば、迷わず退職届を出しましょう

退職を申し出ても上司が応じてくれない、会社が退職を認めてくれない、といった場合でも、労働者が退職の意思を伝えれば、法的に会社が退職を拒否することはできません

お話を伺った弁護士の佐々木亮先生。取材はアクリル板越しに行いました。

民法では、一般の正社員の場合、退職の意思を伝えた日の2週間後には辞められるという規定があり(民法第627条)、退職に会社の許可は必要ありません(*1)

大げさと思うかもしれませんが、「職業選択の自由」は憲法で保障された人権です(日本国憲法第22条第1項)。そして、そこには「退職の自由」も含まれます。労働者が会社を辞める権利は、憲法や法律でしっかり守られているのです。

(*1)雇用期間が決まっている有期雇用の人は、期間途中の場合でも病気などの「やむを得ない事由」があれば退職できます。ただし、その「やむを得ない事由」が当事者の過失で生じた場合は、相手の当事者に対して損害賠償請求ができるとされています(民法628条)。もっとも、労働契約期間の初日から1年を経過している場合は「やむを得ない事由」がなくてもいつでも退職できます(労基法137条)。

Q.上司に恫喝されました。「退職届」を出すのが怖いです…

退職届は対面で出す必要はなく、郵送で問題ありません。また、書面にせず、メールやLINEで送っても効力は変わらないので、退職の意思を示すだけであれば、わざわざ弁護士や退職代行サービスに依頼する必要はありません。

なお、会社に退職の意思を伝えずに、無断で出社をやめてしまう「バックれ」的な辞め方はNGです。

トラブルのもとになるだけでなく、もし、無断欠勤と見なされて懲戒解雇になると、退職金は出ませんし再就職も難しくなります。

Q.退職届を受け取ってもらえなくても退職できますか?

退職届を受け取ってもらえない、というケースはよくあります。また、悪質な場合は、退職届を出したのに「受け取っていない」と言われるケースもあります。ですが、そうした場合も退職できます。

後から揉めないように、退職届を出した証拠を残しておくといいでしょう。メールやLINEで送った場合は、送信履歴を残しておきましょう。それでも心配な場合は、「内容証明郵便」を使えば確実です。また、この内容証明郵便には「配達証明」もつけましょう。

内容証明郵便は、「いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰あてに差し出したか」を差出人が作成した謄本(内容文書を書き写した書面)によって、郵便局が証明する制度です。

また、配達証明は、一般書留とした郵便物について、配達したという事実を証明してくれる郵便局のサービスです。

※参考:
内容証明について|日本郵便株式会社
配達証明について|日本郵便株式会社

配達証明付内容証明郵便を使えば、「退職の申し出を行った」という動かない事実を証明できます。配達証明付内容証明郵便は、所定のフォーマットで作成すれば、1,000円程度~(謄本の枚数や重量により変動)で送付が可能です。

※参考:内容証明 ご利用の条件等|日本郵便株式会社

なお、弁護士名義で内容証明郵便を送付することで、会社側がスムーズに対応してくれるケースもあります。弁護士に内容証明郵便の作成を依頼する費用は、3〜5万円が相場です。

Q.退職届には何を書けばいいんでしょう?

「退職日」「退職の事情」の2点を明記しましょう。特に問題がない場合には、「一身上の都合により」と書いておけば問題ありません。

ただし、パワハラや労働法違反になるような労働環境が原因で退職する場合には、「一身上の都合」とは書かずに、退職の理由を記載しておきましょう。場合によっては、「会社都合の退職」とみなされ、失業手当を早めに受給できる可能性があります

「会社都合」か「自己都合」かを判断するのは、ハローワークです。給与明細やタイムカードなどは証拠として取っておき、ハローワークに提出することをおすすめします。

失業手当の申請手続き後の流れ

会社都合:申請→1週間の待機期間後に失業状態と認定→失業手当給付
自己都合:申請→1週間の待機期間後に2か月の給付制限期間→失業手当給付

Q.一方的に退職して、訴えられるリスクはありませんか?

会社が「辞めるなら損害賠償を請求する」と言ってくるケースがあります。ですが、社員の退職により、会社側が損害賠償請求を起こし、その訴えが認められることはまずないので安心してください。

ただし、すぐに会社を辞めたい場合でも、退職のタイミングについては慎重に判断しましょう。

たとえば「退職の申し出は退職希望日の1ヶ月前までに」といったように、多くの会社では、就業規則で退職の申し出から退職日までの期間が決められています。

就業規則は会社独自のルールなので、原則としては「2週間で退職できる」という民法の規定が優先されます。ただ、民法第627条が「必ず2週間で退職させなければならない」という強制力を持つ規定かどうかは見解が分かれています。

当事者が、法律とは違う合意をした場合でも、法律が優先する規定を「強行規定」、そうではない規定を「任意規定」といいますが、任意規定の場合、当事者間の合意があれば、法律の規定よりも、その合意内容を優先してよいことになります。

「退職希望日の1ヶ月前」という規則は一般的によくあるもので、不当に長いとまでは言えないでしょう。そのため、2週間での退職を求めても、「1ヶ月」という合意があったとして、会社が訴訟などの強硬手段に出ることも、一応考えられます。

「2週間で退職」は、会社が退職に応じてくれないときの強硬手段。トラブルを避けたいなら、なるべく就業規則に沿ったスケジュールで退職手続きを進めるようにしましょう。ただし、「3ヶ月前」など、一般的な期間より長い場合は、退職の自由を侵害していると判断される可能性が高いので従う必要はないでしょう(*2)

(*2)年棒制など6ヶ月以上の期間で賃金を定めている場合は、3ヶ月前という規定があるので注意が必要です(民法627条3項)

Q.退職代行サービスを使えば問題なく辞められる?

退職代行サービスは、基本的に「退職の意思を会社に伝えるメッセンジャー」としての業務しか担えません。弁護士以外の人や業者が、本人に代わって、有償で退職交渉を行うことは、弁護士法に違反する行為だからです。

弁護士が退職代行サービスを行っている場合は別ですが、そうでない場合は、退職代行サービスを利用しても、退職交渉の段階になったら、結局は自分で会社と交渉しなければなりません

運営会社によりますが、退職代行サービスの利用には3〜5万円ほどかかるようです。「自分からは退職を言い出しにくい」という気持ちはよくわかりますが、「退職の意思を会社に伝えるためだけに、その費用をかける必要があるのか」と考えてみてはいかがでしょう。

また、社員の退職妨害をするような会社の場合、残業代の未払いや有給休暇の取得妨害など、何かしら請求できるものが潜んでいるケースも多くあります。思い当たることがある場合は、労働組合や弁護士に相談するのも選択肢のひとつです。

取材・文/中村英里(@2erire7

この記事の話を聞いた人

佐々木 亮

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。東京都労働相談情報センター民間労働相談員、ブラック企業被害対策弁護団代表、ブラック企業大賞実行委員。労働問題を軸に弁護活動を行い、ブラック企業への訴訟を精力的に行っている。

Twitter|@ssk_ryo

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