いくらまでなら良い?罰則は? 失業保険受給中のアルバイトはOK?

失業保険(失業給付)受給中にアルバイトをすること自体は問題ありません。ただし、いくつかの条件があるので、詳しく見ていきましょう。

ポイント画像:失業保険受給中にアルバイトをしても問題ない!ただし、(1)アルバイトをするなら待機期間終了後から(2)失業認定報告書をハローワークに提出する(3)勤務時間は週20時間以内、契約期間は31日未満に抑える(4)1日4時間以上働けば減額されない

そもそも失業保険とは?

失業保険とは国から支給される「次の仕事が決まるまでの手当」

失業保険(失業給付)とは、失業した人が次に就職するまでの間に給付される手当のこと。正式な名称は「雇用保険の失業等給付の基本手当」です(本記事では「失業保険」と表記します)。再就職するまでの間、最低限の生活を送れるように支給されるもので、給付を受けるためにはハローワークでの手続きが必要です。

自らの意思で会社を辞める「自己都合退職」の場合、失業保険を受け取る際には以下の3つの条件を満たしている必要があります。

  1. 退職する前の2年間に雇用保険に加入していた期間が12カ月以上ある
  2. 失業状態(求職活動をしているのに職につけない状態)にある
  3. 再就職する意思があり、現在就職活動中である

また、倒産やリストラなどが理由で退職する「会社都合退職」の場合、(1)については退職する前の1年間に雇用保険に加入していた期間が6カ月以上あれば失業保険を受け取れます。(2)と(3)は「自己都合退職」の場合と同様です。

※自己都合退職で失業保険を受ける方法については→自己都合退職でも失業保険で損しないための3ポイント

失業保険受給中にアルバイトをしてもいい?

失業保険を受給しながらアルバイトをしても問題ない

失業保険受給中にアルバイトをすることは問題ありません

ただし、以下の4つの条件をクリアしないと、減額されたり受給できるタイミングが遅れたりすることがあります。そもそも失業保険自体を受給できなくなる可能性もゼロではありません

以下で詳しく解説します。

【1】7日間の待機期間が終了するまで待つ

ハローワークで失業保険の手続きをしてから7日間の「待機期間」中は、その人が失業状態であるのかを確認するための期間です。この7日間にアルバイトをした場合、失業給付の開始が遅れることになります。失業保険を受給する場合、アルバイトをするのは待機期間の終了後にしましょう。

というのも、失業保険の待機期間は、申請者が本当に失業中なのかを国が調査する期間。この間にアルバイトをすると就業しているとみなされ、失業保険の給付が遅れてしまう可能性があります。

失業保険受給中にアルバイト「できる期間」と「できない期間」の図:自己都合退職・会社都合退職ともに、失業保険の手続き日から7日間の待機期間はアルバイトができない。待機期間終了後から給付期間中はアルバイトできる。

待機期間に失業状態であることが認められれば、会社都合退職の場合は7日間の待機期間終了後すぐ、自己都合退職の場合は7日間の待機期間+2カ月の給付制限期間後に失業保険が支給されます。

※会社都合退職については→会社都合退職とは?
※自己都合退職については→自己都合退職とは?

【最新情報】自己都合退職の給付制限が2カ月に短縮されました(2020年10月1日更新)

自己都合退職の給付制限が、3カ月から2カ月に短縮されました。なお、期間短縮の対象者は2020年10月1日以降に退職した方です。ただし、最新の離職日からさかのぼって5年以内に3回以上自己都合退職をしている場合は、引き続き3カ月の給付制限がかかります。

※出典:「給付制限期間」が2か月に短縮されます|厚生労働省

【2】必ずハローワークに申告する

失業保険をもらいながらアルバイトをする場合は、必ずハローワークに申告しましょう。4週間に1度ある失業認定日に、働いた日数や収入などを記入した「失業認定申告書」を提出すればOKです。

  • 失業認定申告書

失業認定申告書の様式※参照:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内

申告書に記入する際は、書類上部のカレンダーに、1日4時間以上のアルバイトをした日(就職・就労)は丸4時間未満の日(内職・手伝い)にはバツで印をつけます。アルバイトをしていない日には、印をつけなくてOKです。

※詳しくは→失業認定報告書の書き方

【3】労働時間は週20時間以内、契約期間は31日未満にする

失業保険受給中にアルバイトをする場合は、労働時間は週20時間以内、契約期間は31日未満に抑えましょう

これは、労働時間週20時間、契約期間31日を超えると、雇用保険の加入条件を満たしている(就職した)とみなされて、失業保険の受給資格を失ってしまうためです。

■雇用保険の加入条件

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用が見込まれる

【4】1日あたり4時間以上働くようにする

失業保険受給中にアルバイトをするなら、1日あたりの働く時間に気をつけましょう

1日に4時間以上働いた日は失業保険が支給されず、その代わりにアルバイトをした日の失業保険は最終支給日の1日あとに繰り越されることになります。

1日4時間以上のアルバイトを行った場合の支給日イメージ:月の第5日曜日が最終支給日で第1月曜日と金曜日に4時間以上働いたとすると、アルバイトをした日は失業保険が支給されませんが、第5日曜日の翌日と翌々日に支給日が繰り越されます。

それに対し、1日4時間未満の場合は、アルバイト収入と前職の収入の兼ね合いによって差額が調整され、給付金額が減額される可能性があります

ちなみに、失業保険が支給される期限は1年間以内です。先延ばしをしすぎて1年を過ぎるとその分は支給されないので注意しましょう。

失業保険受給中のアルバイトに関するQ&A

Q1.いくらまでなら稼いでOK?

1日あたりいくらまでならアルバイトで稼いで良いのかは、前職の賃金や年齢によって異なります。また、1日にアルバイトで稼いだ金額によって失業保険が満額支給されたり減らされたりします。

例えば、28歳で前職の1カ月分の賃金が37万5000円の場合は以下のとおりです。

1日あたり5056円まで→失業保険が満額支給される
1日あたり5056円以上→差額を減額した額が支給される
1日あたり10000円以上→支給額は0円

稼いで良い金額と失業保険の計算方法

アルバイトで稼いで良い金額と受給できる失業保険を計算するには、まずは以下の2つの金額を算出する必要があります。

「賃金日額」の80%…A
「基本手当日額」…B

■賃金日額とは
賃金日額とは、前職の6カ月分の賃金(通勤手当、住宅手当、残業手当などを含む総支給額)を180日で割ったもの。ボーナスや退職金は含まれません。

■基本手当日額とは
1日あたりに支給される失業保険の金額。賃金日額に離職時の年齢ごとに定められている割合(45~80%)をかけたもの。

※出典:雇用保険の基本手当日額の変更

例えば、28歳で前職の1カ月分の賃金が37万5000円の場合賃金日額は12500円になります(375000×6÷180)。基本手当日額は6250円です(12500円×0.5)。

また、Aは10000円Bは6250円です。

失業保険が満額支給されるか、差額が減額されて支給されるか、そもそも失業保険が支給されなくなるのかは、以下の3つの計算式より求めることができます。

▼失業保険が満額支給される
A≧B+アルバイト収入-1331円(控除額)

上の計算式に当てはめると、

10000円≧6250円+アルバイト収入-1331円
5056円≧アルバイト収入

となり、1日あたり5056円までであればアルバイトをしても失業保険を満額受給することができます。

▼差額を減額した額が支給される
A<B+アルバイト収入-1331円(控除額)

上の計算式に当てはめると、

10000円<6250円+アルバイト収入-1331円
5056円<アルバイト収入

となり、1日あたり5056円以上を稼いでしまうと差額が減額されてしまいます。

▼失業保険が支給されない(支給額が0円)
A<1日のアルバイト収入

上の計算式より、1日あたり10000円以上稼いでしまうと失業保険の支給額は0円となります。

Q2.アルバイトを申告しなかったときの罰則って?

アルバイトしていたことを申告せずに失業保険を不正に受給していた場合、もらっていた失業保険の3倍の額を支払わないといけないと言われています。

不正受給をした場合の罰則は、以下の3つです。

  • 失業保険の打ち切り(支給停止)
  • 基本手当と同額の返還(返還命令)
  • 支給額の2倍に相当する額の支払い(納付命令)

アルバイトをする際は、必ずハローワークに申告しましょう。

Q3.申請していないことがバレることはある?

失業保険受給中にハローワークに申告しないでアルバイトをすると、以下の理由でバレることがあります

  • アルバイト先での雇用保険の加入
  • アルバイト先とハローワークに提出するマイナンバー
  • 第三者からの密告

雇用のセーフティネットを、不正に利用することは絶対にNG。失業保険をもらいながらアルバイトをする場合は、きちんと申告するようにしましょう。

まとめ

労働時間や勤務日数を守ることで、失業保険を受給しながらのアルバイトは可能です。実際にアルバイトをする際は、1日4時間以上で週20時間を超えないようにすると良いでしょう。

ただし、失業保険とは、再就職することを前提として支給されているもの。アルバイトはあくまで一時的な生活費の足しと考えて、早めに転職活動を行うのがベストです。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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